保育のヒント~「科学する心」を育てる~

可視化の工夫/川俣町立川俣南幼稚園(福島県)

子どもたちが、生き物との関わりを通して、感動したり不思議と出合ったりした場面では、どのようなことを大切にしていますか?

今回は、子どもの興味・関心に応じて環境の工夫をしている園の事例をご紹介いたします。特に、生き物の成長過程とともに、子どものつぶやきを記録して掲示するなど、可視化の工夫により、友達や他の学年や保護者との共有の場となり「科学する心」につながる体験が広がっています。

アゲハとの触れ合いから「科学する心」を育てる/4〜5歳児

5月、5歳児の子どもたちは、アゲハチョウの卵の成長を楽しみに保育室で飼育していた。特に、虫メガネを使い興味をもってよく観察する姿が見られた。保育者は、飼育環境の工夫として、黒い幼虫が良く見えるように、また、糞が見やすいように、飼育ケースから白いケースに入れ替えた。

場面1:「フワフワしていてかわいいね」

卵を見ている子どもたち
卵から幼虫が生まれた喜びを絵に表現する姿
つぶやきカード
  1. Aさん:「あ、生まれてる! 卵から生まれたんだ」
  2. Bさん:「どれどれ?小っちゃくて見えないよ」
  3. Aさん:「ほら、今動いたでしょ」
  4. Cさん:「フワフワしていてかわいいね」
  5. Dさん:「卵の殻ないね。食べちゃったのかもしれないよ」
  6. 保育者:「卵の殻はどこにいったのかな?」などと、一緒に考え合う。
「科学する心」が育っている姿

卵から継続して観察してきた子どもたちが、1齢幼虫に成長したことに気づき、さらに卵の殻がないことに考えを膨らませ予想している姿

  1. Cさん:「絵に描いてみようかな!」
  2. Aさん:「なに描いてるの? わたしも描いてみたい!」
  3. 保育者:「茶色い線や小さい足までよく見て描いているね」などと一人一人の表現を丁寧に受け止める。
「科学する心」が育っている姿

卵から幼虫が生まれた喜びを絵に描いて表現する姿や、よく見て観察する姿

環境づくり
  • 描きたい子どもが自由に描けるように観察用紙の準備しておく。また、一緒に観察をしながら描く姿を見守っていく。
  • 図鑑『うまれたよ! アゲハ』を、幼虫の成長段階や子どもたちの興味に合わせて子どもたちと一緒に見ていく。
  • 子どものつぶやきを「つぶやきカード(付箋)」に記入し、「観察コーナー」に写真とともに貼付していく。

場面2:「ポツポツは、卵?」

糞をよく見ている子ども
観察コーナーを子どもと一緒に見ている保護者
  1. Aさん:「このポツポツ何? すごい小さいんだけど、卵 かな?」
  2. Bさん:「どれどれ、見せて! 違うよ、これは、アオムシのうんちだよ。ほら、絵本を見てみて。同じでしょ」
  3. 保育者は、子どもの気づきを受け止め、「小さいツブツブと大きいのがあるね。どうしてかな?」など、共に考える。
  4. Dさん:「大きい方のアオムシが」大きいうんちをして、小さい方のアオムシが小さいうんちをしたんだよ」
「科学する心」が育っている姿

幼虫への成長だけでなく、黒い粒が糞かどうかを考え、予想したり調べたりする姿

環境づくり
  • 子どもたちが糞にも興味をもっているので、よく見たり、大きさを比べたりできるよう、糞は捨てないでおいた。
  • 子どもたちの気づきやつぶやきを写真や記録をしていくことで子どもの変容を捉えていくようにした。
  • 保護者にも子どもたちの観察の様子や掲示物を実際に見てもらい、子どもたちの観察力に成長を感じてもらえるようにした。

場面3:「あおむしは、声が聞こえる!?」

観察コーナーの掲示板
臭角について調べる子どもたち

5齢幼虫となり、動きが活発になったことでさらに観察意欲が高まってきた。

掲示板の写真で、臭角に関する説明を見ながら、保育者や友達と臭角の情報を共有する。また、4歳児学級の掲示板を一緒に見に行き、さらに臭角の情報を得る。
臭角(しゅうかく)とはアゲハチョウ科のチョウの幼虫が持っている異臭を放つ角のような外分泌器官

4歳児学級で飼っているアオムシと比べて観察する子どもたちもいた(大きさ・色・臭角を出すかなど)。

  1. 4歳児:「さくら組(4歳児学級)のアオムシは、大きな声を出すと角を出すよ。来てみて」
  2. Aさん:「ほんと? 行ってみる!」
  3. みんなでアオムシに声を掛けてみる。
  4. 4歳児:「悪い言葉を言ったら怒って角を出すんじゃないかな?言ってみてよ」
  5. Bさん:「ふざけるなー! おいっ! ……出ないな」
  6. 園長が「おはよう、アオムシ君」と低い声を掛けてみると、アオムシが角を出す。
  7. Aさん:「出した! 出した! もう一回言って!」
  8. Bさん:「男の人の声じゃないと出さないのかも知れないね。すごーい」
「科学する心」が育っている姿

臭角が出たことに驚く子どもたちの様子4歳児学級の幼虫にも関心が向けられ、臭角について比べたり、予想したりして不思議さを感じる姿。また、幼虫の生長に興味や関心が高まり、幼虫の世界にますます引き込まれていく姿。

その後、アオムシはサナギになり、羽化した。その間、子どもたちは、友達と一緒に観察や絵画表現などを楽しみ、アゲハチョウへの興味を深めていった。さらに、ペープサートでチョウチョや花を作るなど、羽化の喜びは、子どもたちの発想から表現遊びにつながった。

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