保育のヒント~「科学する心」を育てる~

探究力/国立大学法人 京都教育大学附属幼稚園(京都府)

子どもの探究する姿には、「どのようになるのだろう?」と、大人も心惹かれるのではないでしょうか。

今回は、子どもが主体的に遊ぶ日頃の生活の中にある探究の姿に注目している事例をご紹介いたします。園独自の視点で丁寧に分析した探究のプロセスからは、「科学する心」につながる体験を読み取ることができます。

探究のプロセスを探る/5歳児

本園の捉える「探究力」

本園では、平成28年度より、「幼児の“探究力”を探る」を研究主題として、幼児期における「探究力」とはどのようなものであるかを具体的に明らかにする研究に取り組んできた。「幼稚園教育要領」では、探究については「探究心」や「好奇心」といった言葉が用いられている。本園が「探究心」ではなく「探究力」という言葉を用いたのは、対象を知りたい、という心情・意欲・態度だけでなく、より能動的・主体的に対象にかかわろうとする姿を捉えていきたいと考えたからである。

そして、子どもの姿を考察していく過程で、探究に向かうには、「何となく気になる、知りたい・面白い・不思議」など、子どもなりに感じたり、気づいたり、疑問に思ったりしたことなどがきっかけとなっていることがわかった。さらにそこから、主体的に対象に働きかけ、科学的に証明されている真実とは違う場合であっても、その子なりの見方・考え方で子どもなりに“意味”を見出そうとしている姿が共通して見られた。そこで、「探究力」を図1のように定義した。

子どもが探究していると思われる場面を、「探究力」の三つの要素「ひっかかり」「かかわり」「自分なりにわかる」から分析し、子どもの探究の過程を可視化し、探究の構造を探ることとした。

図1:探求力

探求プロセスを図式化する

実際に、エピソードの子どもの探究の経過を「探究プロセス」として図式化(図2)してみていくことで、「ひっかかった」ことに「かかわって」「自分なりにわかる」、という単調なプロセスだけではない、幼児の「探究のプロセス」の具体的な姿が見えてきた。

  • 「自分なりにわかる」に至らないものの、感覚的に「ひっかかり」「かかわり」を繰り返す姿
  • ひと・もの・ことをきっかけに様々に「かかわり」を広げる姿
  • 目的達成のために視点や方法を変えながら「かかわり」続け「自分なりにわかる」に至る姿
  • もともと知っていること(既存の知識)としての「自分なりにわかる」をもとに、「こうなるだろう」と仮説的に「かかわる」姿
図2:探究プロセス図

事例:石の発掘

既存の知識の「自分なりにわかる」をもとにかかわる”場面の一例を紹介する。

  • 5月中旬の園外保育で桃山城運動公園に出かけた時、桃山城の様子から、子どもたちは、忍者のイメージをもって遊び始めた。 この日も散策中に見つけたものを“忍者の○○”と見立てて遊んでいた。
  • 地面に埋まっている石をほりだそうとしている子どもの写真地面に埋まっている石を見て、何人かの子どもたちが「忍者の秘密のボタン発見した!」と、言い始める。周りで盛り上がる中、Aさんは近くに落ちていた木の枝を手に取り、石の輪郭に沿うように周りの土を掘っていく。
  • 周りの子たちが他のものにも目が移っていく中、Aさんは黙々と掘り進めて行く。最初は木の枝を使って掘っていたが、その枝を一度離し、次は先がとがった細い枝に持ち替え手で掘り始めた。
  • しかし、その細い枝はすぐ折れてしまった。次に、石に持ち替え掘り始めるが、また最初の枝に戻す。今度は、枝を石の下のほうに引っ掛け、栓抜きのように力を加え始める。すると、周りから徐々に石のかけらを掘り出すことができてきた。帰る時間になる中、最後の最後に一番大きな石の本体を掘り起こすことに成功する。Aさんは発掘で出てきた細かな石のかけらもすべて袋に入れて持ち帰る。本事例は、図3のような「探究プロセス図」に表した。
図3:「石の発掘」探究プロセス図

振り返って

  • 子どもの姿を「探究のプロセス図」にして振り返ることで、子どもの探究には、年齢にかかわらず、多様な「探究のプロセス」の在り様があることが見えてきた。
  • 「自分なりにわかる」で探究が終わるのでなく、「自分なりにわかった」ことが、「ひっかかり」となり、新たな「かかわり」が始まったり、「かかわり」を重ねるうちに、新たな「ひっかかり」が生まれたりなど、「ひっかかり」「かかわり」「自分なりにわかる」が、絡み合って探究していくことが、子どもの姿から明らかになった。
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