ソニー幼児教育支援プログラム 幼児教育保育実践サイト
保育のヒント ~科学する心を育む~
一枚の写真から、明日の保育を描く。ドキュメンテーションを作り、保護者にその日の様子を伝えながら、子どもの心もちを理解する。2歳児の子どもたちが今、何に興味を示しているのか、自分たちはこの姿の何を大切にしたいかなど記録に残し、子どもの興味や関心に思いを馳せていく園の事例をご紹介します。
本園では、子どもたち一人一人の試行を尊重し、その時々に生まれる“発想”や“気づき”に沿い、遊びを展開していくような、“目的を決め込まない「余白のある保育」”を目指している。
子どもたちと生活や活動を共にする中で、最も重要なことは、“結果”を求めず、“経過”に寄り添うことと本園では考えている。日々の活動や遊びの中で、様々なモノを見て・聴いて・触れて、経験していく過程に応じて、保育者も常にアップデートしなければ、子どもたちの求める環境を提供することは難しい。つまり、終わりのない探求を保育者も共に行い、失敗や学びを共有し協力することで、活動や遊びを拡大させることができる。「科学する心」とは完成を決めつけない“未完成”であることだと本園では考えている。
保育や活動の中で保育者が印象に残った子どもたちの「行動・視線・言葉」などを記録し、写真と共に簡潔に記したものを保育者間で「今日の一枚」として共有。
振り返り、その子が今どういう事に興味や関心を持っているのかを把握することで、より良い活動の構成に活用している。
また、保護者との共有では、毎日の活動を写真や文章で記録し、ドキュメンテーションとして玄関に掲示。さらに、より手軽に保護者に子どもの様子を見てもらうため、30daysというアプリに毎日活動の様子をアップしている。
秋になり、公園に落ち葉やドングリなどの自然物が増えた。春、夏は虫を中心に追いかけていた子どもたちの遊びが変化していく。子どもの目線の先にあるものを写真や記録から振り返る。
公園で葉っぱを見つけたHさん。保育者の元に走ってきて「見て!茶色の色が違う」と葉っぱを見せる。その葉をよく見てみると、表と裏で茶色の濃さが違った。
「どんぐりってめくったら何色になるんやろう?」と疑問をもったMさん。
緑色が大好きなAさん。選ぶ色は絶対に緑色。葉っぱも緑だけを選んでいた。
毎日のように公園に行き、自然を集め気づきを深めていく子どもたち。今の年齢しか出ない言葉、気づき、興味を振り返れることができたら…と保育者は考えた。そこで、子どもたちが発見したもの、言葉、場所、写真を図鑑にして残し、定期的に子どもたちとも一緒に振り返ってみた。
すると、「これ~公園で見たやつやなぁ」「これ見たことある」と覚えている様子であった。また、子ども同士で互いに見せ合い、「これ○○くんの?」と関心を示す様子が見られた。
子どもたちが今、何に興味を示しているのか、一人一人の“行動・視線・言葉”などを記録し、写真と共に振り返ることで、子どもたちの中にある「科学する心」を見つけようとする保育者の気持ちにつながっていった。
また、保育者が声をかけすぎないよう、子どもの主体性に任せることを大切にしていく中で、子どもの方から「~してみたい」という思いが引き出されたと思われる。一人一人の姿に対応できる余白を残しておくことが、子どもたちが自由にのびのびと発信できる姿につながったと思われる。