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保育のヒント ~科学する心を育む~
キャベツの葉、ミカンの葉、様々なところで見かける幼虫に、心躍らせる子どもたち。みなさんの園でも、そんな光景に出合うことがあることと思います。
今月の保育のヒントは、幼虫と出合い、生態の不思議さを感じたり関心をもったりする中で探求していく子どもたちの様子をご紹介いたします。
子ども達が、遊びや生活の中で、「生き物と関わり、生命の尊さ、自然の不思議さを感じる」ことが科学する心につながると捉えている。
生き物に興味を持ち触れ合うことで、たくさんの気づきが生まれ好奇心が膨らむ。子どもたちは自分たちなりに考え、観察し、調べ、予想し、確かめていくようになる。そのプロセスの中で好奇心・探究心が深まっていく。
生き物を育てる、自然とかかわる中で、生命の尊さ、不思議さを自分たちなりに感じながら、心動かされる体験につながっていくものと考えている。
5歳児の子どもたちは、アゲハやツマグロヒョウモンを育てたことから「ほかの幼虫も育ててみたい」という気持ちが高まり、園庭で幼虫探しを始めた。キャベツの葉にいた緑の虫を、プランターごと部屋の前に持ってくる。
Aさんが、「逃げちゃう。早くカゴに入れよう」と虫カゴに入れ、みんなで図鑑を広げて育て方を調べることになった。キャベツの葉を水に差して与えるとよい
と書かれてあったので同じように飼育ケースで育てることにした。※小学館の図鑑 NEO「飼育と観察」より
Bさんが「おしりから糸が出ているよ」と気づく。
子どもたちは幼虫だけではなく、排せつしたものにも興味・関心をもち、他の幼虫と比較して考えるようになってきた。
「幼虫の身体からなんか出ている」とBさんがウジ虫のような黄色い虫を見つける。
小学館の図鑑NEO「飼育と観察」で調べると「アオムシコマユバチ」だということがわかり、子どもたちは「バチ」と呼んでいた。
モンシロチョウに寄生していたハチが羽化していた。
「なんか形が違う幼虫がいる」「違う虫かな」「触るとこっちはプニュプニュしているけどこっちは固いよ」図鑑で調べると違う形で硬くなっていたのはサナギだったことが分かった。触っていたらサナギが落ちてしまったので、図鑑にあるように紙の中に入れてそっと置く。
Bさんが、「生まれている」と気づく。みんなで見ていると、羽の形が変形してうまく飛べない様子。飛びやすい所へ移そうとしたが、あんまり触るとかわいそうとなった。この蝶は、サナギになった時に触って落ち、羽化したモンシロチョウだった。サナギになってから触ったり落ちたりすると、うまく成虫になれないことが分かった。
サナギになったモンシロチョウが羽化し、蝶になっていた。Bさんが「モンシロチョウもチョウになるときにおしっこじゃなくてうんちをするのかな?」と飼育箱にあったうんちを見てつぶやく。アゲハはサナギになる時にべちょべちょのうんちをしていたが、ツマグロヒョウモンは、蝶になる時に赤いおしっこをしていた。モンシロチョウはサナギになる時にどうだったのか確認できていない。子どもたちも自分たちが見ていないので分からない様子であった。
いろいろな種類の幼虫を育てることで、子どもたちはさらに幼虫に関心を示し「育ててみたい」という気持ちが高まっていった。自分たちで育て方を図鑑で調べる姿なども見られるようになり、幼虫の色、サナギ、排せつ物など様々なものに興味を広げ、アゲハやツマグロヒョウモンと比べるなど関心は深まっていったと捉えられる。幼虫に寄生していた「バチ」の存在には驚いた様子であったが、寄生していた「バチ」も育てたいと観察するなど、生き物に対する興味や、幼虫がどんな成虫になるのか、生命の不思議さに心動かされている様子から、子どもたちの中にある「科学する心」を感じた。