保育のヒント~「科学する心」を育てる~

「なんだろう その先へ」~光遊び~/レイモンド川崎保育園(神奈川県)

日頃子どもたちと遊ぶ中で、不思議を共に感じたり感動したりすることはありませんか?

今回の事例は、段ボールハウスをきっかけに異年齢の子ども同士やその周りにいる大人が自然に関わりあい、試したり考えたりして、「科学する心」を育んでいった事例をご紹介いたします。「なんだろうその先へ」と子どもたちが探究しています。

光を感じて(5月)/4歳児

クラスで段ボールの家を作った。穴を開けてセロファンを貼り、懐中電灯で照らす。最初は園の携帯電話のライト。次は懐中電灯で照らす(図1)。乳児も興味をもち光を追いかけ触ろうとする(図2)。
段ボール箱の中で光が散りばめられる様子に、Aさん「花火みたい!」(図3)。

図1:携帯電話のライトで照らす
図2:興味をもつ乳児
図3:花火と表現
図4:壁に映る光
図5:トレース台の光遊び
図6:段ボールハウス内に光を当てる

Bさんは、懐中電灯やライトを使い、影が壁に映るのを見ている(図4)。

段ボールハウスの中にトレース台を設置すると、手をかざす子どもやトレース台をひっくりかえして裏を確認する子ども、トレース台の真上にあった天蓋を見つめる子ども、トレース台の端からも光が出ていることに気づき、持ち上げてダンボールハウス内にかざす子どもなど、それぞれに光に関わる姿が見られた。

また、スマートフォンのライトを手にトレース台にかざすと、「ほら、火だよ」「あついよ」などの言葉が発せられた(図5)。

段ボールハウス内におままごとのおもちゃを持ち込んだ子どもがいたためか、食材のおもちゃが落ちており、CさんとDさんがその食材をトレース台に乗せて、バーベキューに見立てる。「あちち!」「もう焼けた?」と対話が生まれる。

しばらくすると、「あ、海!」と声があがる。たまたま足元にあった絵本バッグの紙のシワに懐中電灯の光があたり、段ボールハウス内に揺らめいた光が映っていた。

「エビだ」と今度はその絵本バッグを直接懐中電灯で照らしてみて、段ボールハウス内に影を映す(図6)。紐の部分がエビに見えたようだ。Eさん「エビどこ?」と影に気がつかず、絵本バッグの中を直接のぞくが、わからない様子。すると、Dさんが、「違うよ」「こっち」と伝える。しかし、この時は分からなかった。

Eさんが懐中電灯の光を赤い色水に向けて「オレンジになるよ」と驚きを言葉にする。するとFさんが「見せて、ほんとだ」と関心を示す。

振り返りと保育者の思い

この活動は、大きな段ボールから始まった一つの活動だった。

コロナウィルスが蔓延する中、室内での異年齢保育。異年齢で過ごす中で、落ち着いて個の時間を取りたいと思う子どもに大きな段ボールの箱を用意することで、気持ちの切り替えや落ち着きをもって過ごせるのではないかと職員で考えた。段ボールハウスにガムテープでくっ付けたり切ったり、カラーセロファンが環境にあったことで、活動が発展していった。

たまたま暗くてつけたスマートフォンのライト(各クラスで記録用に配給されている携帯電話)から懐中電灯へと発展し、懐中電灯から照らした対象物の光へと興味・関心が移行していく。その活動は刺激的で、感動的だったのか、その日一日に限らず、しばらく『懐中電灯』の遊びは続いた。

最初は職員の携帯のライトから始まった遊びだったが、非常用にある懐中電灯へと興味が移り、様々な大きさの懐中電灯から、遊びの展開も変わってきたように思う。子どもたちの日常の生活でさわれるものではないものが興味・関心となり、光を使うことで影の大小に気がついたり、角度に気がついたりと色々な気づきに繋がったようだ。

図7:保育者の記録

この時、最初に関わっていたのは、幼児の担任ではなく乳児の担任や主任、フリーの保育士であった。その様子を幼児の担任へ引継ぎ、様子を伝えていったことで、この段ボールハウスは壊されることなく子どもの遊びへと発展していった。

興味・関心を職員も持たなければ「ただの遊び」として一時的なもので終了していたと思う。

その後に子どもと共に興味をもった「ひかりとかげ」「ひかりと色」について探究していった様子を記録に残した(図7)。

記録することで、担任だけでなく、他クラスも巻き込んでいったことが再認識できた。その一つとしてのトレース台は、より子どもたちに光との出合いを楽しめるものとなった。

クラスの垣根を越え、いろいろな子どもたちの変化や楽しむその姿を、今回のコロナの影響もあり、多数の大人がかかわることで、子どもたちの様子を共有することができた。対話の中で大人からもいろいろなアイデアが生まれ、子どもの遊びの保障もできていったのではないかと考えている。

ページの先頭へ