保育のヒント~「科学する心」を育てる~

探究につながる姿~3歳児~/札幌市立きくすいもとまち幼稚園(北海道)

砂に手をついている子どもたちの写真3歳児の探究する姿を記録に取られることはありますか?

本事例では3歳児の「探究につながると思われる姿」に注目したことで、子ども一人一人の体験していることを読み取ることにつなげています。本事例で紹介する10点の「探究につながると思われる姿」は、子どもの姿から「科学する心」を見つけたり、体験を読み取ったりする際の視点の参考になると思います。

探求につながる大切にしてきた姿/3歳児

本園に入園してくる3歳児は、入園前の集団経験が少ないことから、この実態を踏まえ、一人一人の育ちや経験、興味・関心を丁寧に捉えて、それぞれの“いまココ!” を見つけて援助することが肝要と考えた。

そのために保育者は、子ども一人一人が心を動かすことのできる環境(モノやコト) を構成し、その関わり方を観察し、それぞれが「楽しい」「面白い」と感じていることに共感的に援助することを大切にしている。

また、3歳児の経験は偶然性に満ちていて、その時その時、その場その場の楽しさに浸っている姿が多く見られる。15人いれば15通りの楽しさに浸っていると考えると、一人一人の心もちを瞬時に理解し、受け止めながら関わるためには、保育者の感性や専門性が必要でありそれを高めていく必要がある。

そこで3歳8月までの記録をもとに、探究や対話につながると思われる体験を整理し、「科学する心」が今後豊かに育まれていくための「はじめの一歩」を見つけていきたいと考えた。(ここでは、探究につながるエピソードを抜粋)

すぐに真似る

トイレットペーパーの芯でアイスを作る子どもの写真紙粘土でアイスを作って売る5歳児のお店に3歳児も興味をもち買物を楽しんでいた。
簡単にアイスが作れるような、トイレットペーパーの芯をつぶした物にストローで棒を付けて色を塗ることができる環境に3歳児は関わり、自分で作ったアイスで、売り買いを楽しんだ。粘士で作りたい子どもはストローを使い、自分の思ったように作った。

感触を楽しむ・確かめる

園庭でイガグリを拾う子どもの写真園庭の大きな栗の木。強風でまだ青いイガグリが落ちていた。Bさんは、発見して拾いに行く「痛てててて!」「トゲトゲだ!」「何だ?」など、触ってみた感想をつぶやき、気をつけてそっと指先でつまんで集めたりする。

集中してモノに関わる姿

たくさん並べた容器に色水を入れている子どもたちの写真3歳児はモノの共有が難しいところがあり、「自分のもの」と、はっきりすることで安心して遊びに集中できる。保育者は、一人一人が物や素材を専有できて集中できる環境をつくった。
子どもたちは、食紅の色水が混色しても濁った色にならない透明感を楽しみじっくりと遊んだ。
子どもたちは、いろいろな容器にちょっとずつ入れては、違う色になることを確かめながら楽しんでいた。

変化や反応に気づく

タライの中のカタツムリを見る子どもたちの写真アリやダンゴムシを探すのが大好きな子どもたち。保育室でカタツムリを育てることになった。ある日、タライにいた2匹のカタツムリに、子どもが霧吹きで水を吹きかけると、カタツムリが殻から頭を出す。さらに水が掛かるとピクッと動いて反応することに気づき、何度も試す。「あ、動いた!」「引っ込んだ!」などの言葉を保育者は受け止め共感する。

自分の体を動かす

水たまりをジャンプして飛び越えている子どもの写真自分の体を動かしていろいろなことをやってみようとする姿があった。「できそうだな」と思うと、「先生見てて一」と言って川に見立てた水たまりをジャンプして渡ったり4歳児の真似をして鉄棒にぶら下がったりなど、意欲をもって挑戦している。保育者は、その姿をとにかく認めるようにした。

道具を使う

ペットボトルに砂を入れている子どもの写真入れ物を満たす遊びが大好きな3歳児、夢中になって行う遊びである。スコップ、シャベル、お椀、お玉などいろいろな道具を使って試す姿があった。スコップではペットボトルの口から砂が入らず、大量にこぼれることに気付き、とがったタイプのシャベルに取り替えて入れ直していた。様々な道具と触れ合いながら目的に合うモノを選ぶ経験をしている。

見立てる

粘土で作ったパンを並べパン屋さんごっこをしている子どもの写真パン屋遊びでは、クルクル丸めた粘士や伸ばした粘土で偶然できた形に、いろいろなパンの名前をつけていた。同じ作業の繰り返しのように見えるが、ネーミングが増えていくことで、自分たちがバラエティに富んだパンを作っている感覚で遊んでいる。保育者もその楽しさに、共感し、店を作るなど多くの人に認められる場を作った。

興味のアンテナを働かせる

飼育ケースのオタマジャクシを見ている子どもの写真4歳児の保育室に、大量のオタマジャクシがやってくる。生き物が大好きですぐに気づいたFさん。動きをじっくり見て面白がる。4歳児の担任にお願いし、5匹分けてもらうと、絵本に出てくるおばけを連想し「おばけの赤ちゃんだ!」と言い始める。「モニョ」「ムニョ」など名前をつけて可愛がる。保育者は、正体は明かさず、カエルになるまで待った。足が出てカエルになった時、「カエルだ!」「カエルになった!」と発見し喜ぶ姿があった。

気に入ったモノや遊びがある

粘土で色々なモノを作っている子どもの写真6、7月、Eさんは室内で遊ぶ時、粘土でモノを作ることが多い。特に立体的な構成が得意で動物や怪獣など、場所と時間が保障されていることで、集中して細かく作っていた。 今はまだ偶然できた形から連想しながら貼り付けて作っていることも多いが、自分で満足するものができると、保育者に見せる。

伝えたくなるモノ・コトに出合う

ダンゴムシを乗せた子ども手のひらの写真木のくぼみにダンゴムシを見つけたGさん、保育者の手を引き、その場まで連れて行き、「ここにいた!」と教える。着眼点が他と違うことに感心した保育者は、「すごいね、そこに隠れていたんだ」と驚くと、その後も熱心に木の皮の下を探した。

振り返って

3歳児の1学期の姿をつぶさに見つめながら、一人一人が感じている面白さの中から「探究」につながると思われる遊びと保育者の関わりを振り返った。

その子どもの発達、入園前の経験などをありのまま受け入れ、今楽しんでいる姿から次を予測して援助することで、子どもたちは自己を思うままに発揮し、自ら環境に関わり、のびのびと園生活を楽しむことができるということを確認できた。

また、保育者が「探究」を視点にもつことで、援助の方向性が明確になり、子どもに寄り添い共に遊びながらその場で瞬時に判断して対応する際にも、意図をもって関わることができた。そして、この視点を明確にもって保育について語り合うことで保育者間の連携が図りやすくなってきたことは、「保育の質の向上」に直結したと思われる。

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