保育のヒント~「科学する心」を育てる~

「なんだろう?」~実~/学校法人勝田学園大成幼稚園(埼玉県)

子どもたちが「なんだろう?」と興味の対象に関わる姿を、どのように受け止めていますか?

今回は「この実何の実?」と、一人の子どもの疑問が友達に広がり、探究していく姿に注目した事例です。

やっと答えに辿り着き、納得した時の子どもたちの喜びや、実が大きくなるのを待つ気持ちからは、「科学する心」につながるワクワク感が伝わってきます。

保育者は、答えを急がず寄り添って一緒に考えたり、友達と共有する機会をつくったりの援助をしています。

「これ何?」/4歳児

場面1:実との出合い/5月初旬

飼育ケースの中の様子を見ている子どもたち
  • 子どもたちは、テントウムシと出合い関わりを楽しんでいた。特にAさんは積極的に世話をしていた。虫かごの中の古くなった葉っぱを取り出し、新しい葉っぱを入れていると、近くにたくさん、実が落ちているのに気がついて、「これも入れよう」と楽しみながら実を入れた。
  • Aさんが、「喜んでる?」とつぶやくと、Bさん、Cさん、Dさんも、テントウムシがとてもよく動き回り始めたことに気がついて、一緒に実を入れ始めた。そして、「ブドウ入れよ」「あった、ブドウ」と言って実をどんどん入れた。
  • 「これ何?」というAさんの疑問を受け止めた担任は、クラスで共有する機会をつくった。Aさんは、「実を入れたこと」「テントウムシがよく動き回ったこと」「この実は何か?」をみんなに聞いた。 子どもたちは、「ブドウじゃない?」「違うよー」「ブドウだよ!」と口々に言う。
  • 担任は、「ブドウかな?」「ブドウかどうか知りたい?」などと、子どもたちの気持ちをよく聞き共感した。「うん、知りたい!」と、積極的な子どもたちの姿があった。そこでみんなで、ブドウの庭にあるブドウの木を見に行くことになった。子どもたちは、3歳児の時にブドウを採って食べたことを覚えていた。

場面2:ブドウかな? 本物のブドウの木を見てみよう

滑り台の上からブドウの木を観察する子ども
  • 子どもたちは、東側園庭(ブドウの庭)に出た時に、ブドウの木の下から上を見上げたり、より近付いて滑り台の上から探してみたりした。
    1. Fさん:「ブドウあった!」
    2. Gさん:「ツブツブしてる!」
    3. Fさん:「違うよ!」(西側園庭に落ちていた実と違うという意味)
  • 子どもたちは、ブドウの木を見て分かったことを話し合って、「ブドウじゃなかったねー」との結論になった。担任が「ブドウじゃなかったねぇ。この実はなんの実なんだろうね。どうやって調べようか?」などと次の方法を尋ねてみるが、なかなか出てこなかった。そこで担任は、「この実の木ってどれか知っている?」と、聞いた。それがきっかけで、子どもたちはさらに考え合い、「実がどの木に生ってるか分かれば、実のことも何か分かるかもしれない」という発想に至った。そして、「(木を)知ってるよ!」「探してみる」と、実の付いた木を探しに行った。

場面3:木を探そう!

園庭にある実のなる木を探す子どもたち
  • 「あった! これだよー」興味をもっていたTさんは、実の生っている木を園庭に出て早速見つけた。そして、実の生っている木を見つけたことをみんなに話した。
  • 木から採った実をみんなで触ってみる。
    子どもたちは、「サラサラしてる」「固い」「白い毛」「線」「お尻みたいー」「丸いね」「いい匂い」と、口々に言う。
  • 担任は、「そうだねぇ」と、子どもたちの気づきを受け止めて、「この実の木は分かったねぇ。どうしたら実のこと分かるかな?」と尋ねた。
    1. Hさん:「そーだ! 木の説明書を作ったら?」
    2. 担任:「木の説明書?」
    3. Hさん:「うん、木のことを紙に書いたらいいんじゃない?」
    4. 子どもたち:「いいねぇ!」

場面4:木の説明書作り、ウメボシ?!/6月初旬

木の説明書を作る子どもたち
木の説明書
  • 説明書作りに興味のある子どもたちが集まり、作り始めた。書ける字を、書ける子どもが書いた。分かったことを思い出しながら書き、できた説明書をみんなに見せた。
  • Dさんが「ウメボシじゃない?!!」と、閃いた様子で目を輝かせて言う。
    1. 子ども:「あー、ウメボシだぁ!」
    2. 担任:「この実、ウメボシに見える?」
    3. 子ども:「うん!!」(“そーだ!”という雰囲気)
    4. 担任:「ウメボシねー。ウメボシって何でできているか知ってる?」
    5. Dさん:「ウメボシは塩漬けなんだよ!」知っていることを力を込めて言う。
    6. 担任:「そうだね。ウメの実を塩漬けしたものがウメボシなんだね」
    7. 子ども:「(やっぱり)ウメボシだよ!」
    8. 担任:「この実はウメの実ってこと?」
    9. 子ども:「うん!!」「ウメボシー!!」
    10. 担任:「ウメの実か確かめてみる?」
    11. 子どもたち:「うん」

場面5:ウメと比べる

ウメを調べる子どもたち
  • 担任が持ってきた本物のウメと園庭の木から採った実を見比べることになった。子どもたちは、触ってみたり匂いをかいでみたりしてよく見ていた。そして、「中が見てみたい!」と、手で梅を剥いてみた
    1. 「ウメの方が大きい!」
    2. 「ウメは毛が無い」
    3. 「サラサラしてないねー」
    4. 「お尻みたいな線がないよ」
  • 友達の言葉を聞いて思いついたのか、ある子どもが、「桃なんじゃない……?」と言った。
    1. 子ども:「桃は線あるよ」
    2. 担任:「お尻みたいな線? 桃にはあるの?」
    3. 子ども:「あるある!」「あるねー!」
    4. 担任:「この実は桃かもしれない? 桃か確かめてみる?」
    5. 子どもたち:「うん!」

場面6:聞いてみよう!

木の説明書を見せて実の説明をする子どもたち
  • 「どうやってモモなのかを確かめるか?」子どもたちからは、「スマホで調べる?」「ネットは?」との話も出たが、幼稚園の木のことをよく知っている先生や園長先生に聞いてみることになった。
  • 木の説明書を持って、5歳児のM先生の所や園長先生の所へ聞きに行った。
    1. 子ども:「この木はなんの木ですか?」
    2. 園長:「それはね、モモの木ですよ。ピンクのモモ色の花が咲くよ」と教えてくれた。
    3. 子どもたち:「モモだー!」「やっぱり!」「モモだって!!」
    4. 担任:「モモだったねぇー。聞いて分かったねぇ。モモ、どうしたい?」
    5. 子ども:「食べる!!!!」
    6. 担任:「モモ食べたいねぇ、食べるために何かすることあるかしら?」
    7. 子どもたち:「待つっ!」「実が大きくなるの、待ったらいいんだよ!」
  • 子どもたちは、モモの実が大きくなるのをワクワクしながら待っている。

振り返り

  • 保育者は、子どもたちの「正体を知りたい!」との思いを受け止め、どうやって調べたり確かめたりしたらよいのか、同じ気持ちになり一緒になって考えたり、提案したりしながら進めた。中でも、去年食べた体験があり、普段も見ているはずのブドウの木に気づいていない姿にはとても驚いた。関わる体験はしていても、自分の知っていることと結びつかないこともあるのだと気づかされた。
  • ブドウの木、モモの実やウメの実に実際に触れたり、見比べたりしたことから、その違いに気づいたり、それを言葉で表現したりする姿につながった。また、友達のウメボシやモモについての閃きには興味をもって賛同し、特に、「木の説明書作り」には喜んで参加する姿があり、知っていることを話す姿が多くなった。「なんだろう?」「知りたい」という意欲と、感覚感性をフルに使って感じたことを言葉で表現する力の育ちを感じた。
  • 保育者は、体験したことを振り返る場をつくり、子どもたちの気づきに共感し、様々に表現する姿を受け止めていくことが、その子なりの考える力や工夫する力、問題解決力の育ちを支えていくと思われる。
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