保育のヒント~「科学する心」を育てる~

気づき~砂~/社会福祉法人堺暁福祉会 幼保連携型認定こども園 かなおか保育園(大阪府)

砂と関わる子どもの姿に注目した事例です。2歳児が、友達の動きに興味をもちながら、自分なりに砂とカゴに関わり、試したり考えたりすることで、「科学する心」につながる体験を重ねています。

保育者は、子どもの感じ方や考え方を大切に受け止め、丁寧に場面を振り返ることで、環境構成の工夫につなげています。

「石になるねん!」 /2歳児

場面1:石になるねん/6月下旬

子どもの姿
  • 平らなプラスチック製のカゴに砂を入れて揺すっている子どもたちの写真砂場の玩具入れから3歳児が玩具を出し、中に砂を入れて振って小石集めをしていた。それを見ていたAさん(2歳8ヶ月)は、同じ様にカゴの中にある玩具を全て出して、砂を入れて一緒にカゴを前後に揺すって楽しんでいた。
  • Aさんは、しばらく夢中になってカゴを前後させていたが、突然Aさんが「先生!石になるねん!」と満面の笑みで保育者にカゴの中の石を見せる。保育者が受け止め、「どうしたら石になるの」と尋ねると、Aさんが、カゴに砂を入れてカゴを前後に揺すって再現して見せる。楽しそうにしているAさんと保育者の姿を見て他の子どもたちも興味津々で集まってきたが、見ているだけで「石になるねん」という意味は分からない様子だった。
振り返り

A児は3歳児の行為を真似てカゴを揺すっていた。偶然にも「揺すると砂が石になる」という事象に気づいたA児は繰り返しカゴを揺すって試すことで、“何度やってもやっぱり砂が石になる”と確信しているように思えた。それを伝えたくて保育者の所へ来たA児の表情は、自信に満ちていて、気づいたというより“分かった”ことを伝えにきているようだった。「友達が楽しそうにしているから、自分も楽しい」と言う1歳児の頃のような共感の仕方から、「他の子どもの行為に誘発されるが、自分が体験して分かったから共感する」というように、共感の仕方に質的な変化が生まれているように思えた。A児は砂を入れてカゴを揺すると砂が石に変化すると思っている。カゴの網目から砂が落ちていることは気がついていない。様々な試しが楽しめるように、そばに網目のないプラスチックの箱も置いてみることにした。

場面2:魔法のカゴ/6月下旬

子どもの姿
プラスチックの箱に入れていた砂を平らなカゴにうつしている子どもの写真。カゴと箱の違いに気づいて保育者にその違いについて説明をしている様子。
  • 網目のないプラスチックの箱に、Aさんは気づき、砂を入れて前後に振っていた。プラスチックの箱とカゴを交互に繰り返し試してみるが、「できひんな…」とプラスチックの箱では石ができないことに気づく。なぜできないのかが分からずがっかりしていた。
  • 引き続きカゴで“石になるねん”をして遊んでいたAさんを見ていた子どもたちが、一緒に遊び始める。一緒に遊んでいた子どもたちに何をしているか尋ねると、「石になるねんで」「そうやで」「石できるんやんな」と始めから知っていたかのように皆で次々に言う。どうして石になるのかを保育者が尋ねると、Bさん(3歳2ヶ月)は、「網やからじゃない?」とカゴと箱の違いに気づいていた。保育者は、子どもたちの気づきを受け止め共感した。
振り返り

網目のないプラスチックの箱は、形が似ていたからかすぐに手にしてカゴの時と同じように砂を入れて前後に揺する。しかし、石に変化しないと気づく。A児にとってカゴは、砂を石に変える“魔法のカゴ”であり、とても愛おしい大事なカゴである。B児によってカゴと箱の違いに気づかされるが、A児もB児も網目になっているから砂が下に落ちていることには気づいていなかった。

2人はカゴが網になっていることには気づいたが、この“魔法のカゴ”だけが石を作ることができると思っているようだった。場面1ではA児の「石になる」が、周りの子どもたちは分からず共感できていないように思えたが、場面2では最初から知っていたかのように、「そうやで」「石になるねんなー」と自慢げに話していた。友達の気づきが、あたかも自分の気づきのようになることがあり、後で自身も試すことで確信になっていった。下に砂が落ちている様子が目に見えると、新たな試しにつながったり、砂が落ちて石が残ることが分かったりするのではないかと考え、透明の容器の蓋に穴を開けたものも用意しておいた。

場面3:フワフワ/7月下旬

子どもの姿
蓋に穴をあけた透明容器の写真と、その容器に砂を入れる子どもたちの写真""
  • 蓋に穴を開けた透明の容器に砂を乗せ、“魔法のカゴ”と同じように両手に持って前後に揺すり始める。するとBさんとCさん(3歳1ヶ月)が、蓋の上に乗っていた石と、蓋つき容器の中に落ちた砂をじっと眺めていた。
  • 保育者が、「どうして石が蓋の上に残るのか」を尋ねると、「小さいのは入る」「そうやで」「大きいのは入らない」と言っていた。そして蓋を開けて中にある砂を触って「フワフワ、クリームみたい」と言って、指先でそぉーっと触って感触を確かめていた。その姿は、特別な物を触っているようだった。

場面4:石、一緒違うやん!でも…一緒?/7月下旬

子どもの姿
“魔法のカゴ”で砂をふるい、カゴに残った石を友達に見せている子どもの写真
  • Dさん(2歳9ヶ月)は、蓋つき容器の蓋の上に残る石を見て、「カゴ!」と何かひらめいたようで、急いで“魔法のカゴ”を取りにいき、“魔法のカゴ”でできた石と、蓋に残った石を比べて「石なった。一緒」と確信してAさんに、「一緒」と見せに行った。しかし、Aさんは「一緒違うやん」と言う。保育者がDさんに、「石になったね。一緒だね」と言っているのを聞いて、「あれ?もしかして一緒?」とAさんも思い始め、何度も容器の蓋に砂を乗せて揺する。
  • 8月上旬2人は、フルイにかけた石と砂に分けて、“フワフワ”は『クリーム』、“石”は『お米』に見立てて遊んでいた。

考察

  • 1歳児クラスの時は保育者との関わりが多かったが、2歳児クラスになると保育者よりも友達がしていることに影響を受けていることが分かった。これまでの経験から予測を立てているが、予測していなかったことに直面した時に、ただ受け入れるのではなく、なぜそうなるのかを考え試した結果“魔法のカゴに砂を入れて振ると石になる”という自分なりの「確信」につながる法則性を見出すようになってきていると思われる。
  • 友達の気づきに同意せず、自分が行為として体験しなければ納得しないことも分かった。その反面、友達の気づきが自分の気づきのように思えることがあり、心の動きの曖昧さが発達の質的な変化を迎えているのではないかと保育者は気づかされた。
  • 自分で納得したい気持ちが強く表れるが、最終的にはやはり保育者に共感してもらうことで、「確信」につながっていると思われた。
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