保育のヒント~「科学する心」を育てる~

気づく力考える力~子どもフィールド~/幼保連携型認定こども園こばと保育園(宮崎県)

いつの間にかもう、水を使って遊ぶことが楽しい時期になりました。土や水に触れ、感覚や感性をフル回転させて遊ぶ子どもたちの表情が目に浮かびます。

今回は、「本当にこれは子どもがしたい遊びなのだろうか」「保育者のしたいことにはなっていないだろうか」という視点に保育者が立ち止まり、子どもが求めている環境を考えている事例をご紹介します。

また、子どもの気づく力考える力に注目して表した「科学する心」を、考察図を基に振り返りをしています。

「砂あそび~竹をつかって~」/5歳児

背景

ある日、保育者は地域のイベントで使用されていた竹を、遊びに使えるかもしれないと持ち帰った。園の玄関脇に積まれた3本の長い竹を見て、「さあ、この竹をどうしよう?」と保育者で考え合った。

ある保育者は、「こんなことを考えてみたのですが……」と想像した遊びを嬉しそうに語った。しかし、「それは先生が考えた遊びであって、本当に子どもがしたいことなのだろうか?」と、保育者みんなで立ち止まった。「与えられた遊びの中で遊ぶこと、それも楽しいかもしれない。夢中になるかもしれない。だが、もっと子ども自らつくり出す遊びを見守ってみたい」ということになった。結局、竹は砂場の近くに環境の一つとして置いてみようとなった。そして、その竹をどのように子どもが触り、使おうとし、どのように遊びが展開していくのかを見守ろう、と全クラスの保育者の間で確認され、竹は運ばれていった。

この考え方のもと、子どもの様子を見守っていると、子どもが主体的に物事に関わり夢中になっている姿が見えてきた。そこには「気づく力」と「考える力」がとても大切な役割を果たしていることが分かってきた。

「科学する心」と「気づく力」「考える力」の関係性についての考察図

考察図
考察図の考え方

子どもにはもともと「科学する心」(探究心、想像力、忍耐力、応用力)の種子があり、ものや事象と関わりながら「科学する心」が芽生え、育ってゆくと本園では考えている。
また、ものや事象と遭遇しても、それに「気づく力」がなければ「探究心」は芽生えることなく、一風景として通り過ぎてゆくのではないだろうか。「あれっ?」と気づき、「どうして?」と疑問に思い、考えることで「探究心」は大きく育つ。「想像力」「忍耐力」「応用力」も同様、「科学する心」は、物や事象が傍にあるだけでは子どもの中に育たないと考え考察図に表してみた。

事例

机の上の竹に水を流している子どもたちの写真
竹を持ち上げて、どこに置こうかと竹を動かしている子どもたちの写真

8月の雨上がり。5歳児の子どもたちは、砂場でままごとや型抜き、スコップで泥をすくい、「落ちてくるー」など、それぞれに砂の動きを楽しんでいた。そのうちに、「道をつくろうよ」ということになる。たくさんの水を砂場に入れ続けたことで、砂場のしきり(六角ブロック)の脇から外に、水がしみ出す。目ざとくそれを見つけたAさんは、「わあ。水があふれた! 流れてる! もっと流してみよう」と、砂場の仕切りの部分に水をかけ、その外側に受け皿を置いた。砂場の脇からしみ出す水を受け止め、集めようとしているらしい。
ふと、砂場の傍にある木机の上の竹を見つけたBさん。Bさんは、ペットボトルに水を汲み、机の上の竹に水を流し始めた。他の子どもたちも気づいて集まってくる。「やってみたい!」と、それぞれの容器に水を汲み、竹に水を流し始めた。

そのうち、竹を持ち上げて、どこに置こうか皆で竹を動かしはじめる。「ここ、いいじゃん!」と、砂場の傍にある遊具の上に立てかけた。
砂場に向かって斜めに立てかけられるちょうどいい場所だった。さあ、いよいよ水を流すぞ!と、ペットボトルや鍋に水を汲み、竹に水を流し始めた。

積み上げた6個の六角ブロックに竹を立てかけている子どもたちの写真3段2列に並べた六角ブロックに竹を立てかけ水を流す子どもたちの写真

砂場に水が流れ込むと、歓声が上がる。「もっと高くしよう!」と傍にあった六角ブロックを積み上げる。6個の六角ブロックを積み上げると、自分たちの背丈よりも高くなった。そこに竹をたてかけると、竹の端に自分たちの背が届かないことに気づく。「竹の途中から水を流すことはできるけれど、何だか物足りない」と考えた子どもたちは、六角ブロックの段数を3段に減らした。水を流そうとするが、六角ブロックの上に立てかけただけの状態では、ふらふらと不安定で、誰かが支えておかなければならない。「これもダメか……。」その時、Aさんが「あっ!」と言い、六角ブロックを2列に並べ始めた。3段を2列。そして、竹をその真ん中で挟むようにたてかけた。

考察

新しい物に気づき、「使ってみよう」と子どもたちは動き出したが、思い描いたように上手くいかなかった。しかしそのことが、考えを深めた。「こんな方法で、もう1回やってみよう」「次はこんなことができるんじゃないか」という何度も試そうとする忍耐力や、理解したことを使って新しいことをやってみようという応用力が育っていく。子どもたちは、同じ空間にいて同じ材料で遊んでいても、それぞれに興味は異なる。自分の心に芽生える「ワクワク感」に従って活動する。そして、時々、友達の遊び方が気になり、見たり、尋ねたり、真似したりしながら、自分の考えになかったことを友達が考えたり、試したりしていることを知る。自分の経験知を増やすことにつながっている。子どもたちは互いに学び合い「科学する心」を育て合っている、と捉えられた。

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