保育のヒント~「科学する心」を育てる~

発見~ペットボトル~/玉野市立荘内南幼稚園(岡山県)

子どもたちが、身近な素材や材料に関わって遊びを楽しんでいる姿に注目したことは、ありますか?

今回は、ペットボトルに関心をもった子どもたちが、屈折や乱反射から見える世界を体験し、さらに他の素材と組み合わせることで様々な発見や気づきを重ねていく事例をご紹介いたします。

子どもの姿に寄り添い共感したり、環境を構成したりする保育者の関わりが「科学する心」の育ちを支えています。

ペットボトルから広がる世界/3・4・5歳児

場面1[4月]:ペットボトルを通して見てみよう

水の入ったペットボトルでニワトリのイラストを見る子どもの写真
写真1:ツルツルのペットボトルで
ニワトリが大きく見えたよ
水が半分入ったペットボトルで魚のイラストがどう見えるか実験している子どもの写真と、魚のイラスト
写真2:半分の水のペットボトルで
魚がどう見えるか実験中
水が入ったペットボトルごしにこちらをみている子どもの写真
写真3:ペットボトルを通して
保育者を見ている

以前から探究心旺盛な子どもたちが、“水の入ったペットボトルで物を見るという実験”を絵本で見て興味を示した。すぐに、凹凸の多くあるペットボトルに水を入れて流し台の横の花をみんなで見てみると、「凸凹してあまり見えない」との声が聞かれた。再度絵本を見ると、凹凸のない表面がツルツルのペットボトルがよく見えることに気づいた。

翌日、Aさんが、家からツルツルのペットボトルを持参する。昨日の続きを楽しみにしながら、子どもたちの探求がスタートした。早速水を満タンに入れて、絵を見てみると、「ニワトリが太っちょになった!」と興味津々だった。

5歳児だけではなく、3・4歳児も集まってきて、「貸してー」との声の中で実験ごっこが始まった。スプーンやフォークが大きく映ったり、プランターに植えてある花が大きく映ったりする様子を見た子どもたちから、「全部大きく映るみたい!」、「水を入れると虫眼鏡みたいに大きく映る!」といった声が聞こえた。

水を満タンにしていろいろな物を見ている子どもの中で、絵本を見て不思議そうにしているBさん。上下で左右の向きの違う魚の絵(写真2)が絵本では同じ方向に映っているのに、いくら見ても絵が大きくなるだけで、上下の魚の向きが同じ方向にならず困っていた。保育者は、一緒に考え、水の量に着目するような声掛けをした。

Bさんは、絵本の様に水を半分ぐらい入れて再度試してみた。今度は、水を通して見た下の魚の向きが逆になり、水の入っていない上半分から見た魚と同じ向きになった。「あー、魚が同じ向きになった!」との大喜びの声に、友達もその不思議さに興味をもち、水の量を加減して試す姿も見られた。

次の日は昨日の経験から、それぞれペットボトルに好きなだけ水を入れての実験がスタートした。5歳児が3歳児に見せてあげる様子も多く見られ、異年齢の関わりによる学び合いの姿につながった。ペットボトルを通して、友達や保育者を見たり、友達や保育者など相手からどの様に見えるかなどに関心を寄せたりする姿が多く見られた。

最初はCさんが、水が満タンではないペットボトルを回転させながら保育者を見ると、目の大きさが変わったり、逆さまになったり、保育者の顔がたくさん見えたりすることを発見した。「回すといろんな顔になるんだね。大発見だ!」と言いながら、他にも花や道具、顔など、いろいろな物を見たり、試したりして嬉しそうに遊びを続ける姿が見られた。

Dさんからは、「私の顔はどんな風になっとる?」と保育者に質問があり、「目が逆さまに映っているよ」と答えると、Dさんからはすぐに「見せてー」との反応があった。

早速カメラで撮った写真を見せると、Dさんは、目が逆さまに映った自分の顔を見て「ワァーお化けじゃ」と反応し、「他の所も逆さまになるかやってみる」とさらに関心を示した。この後、大きく逆さまになった口を見て、他の友達に見せに行った。

場面2[5月]:ペットボトルの中で浮かぶ? 沈む?

連休明けの5月、子どもたちは、草花・実から色水を作ることを楽しみ始めた。(保育者は、場面1からの流れで、ペットボトルに色水を溜めることができるようにと、ままごとコーナーにペットボトルを置くなどの環境を構成した)

写真5:自分で作った色水を
ペットボトルに入れて
周りを見ている
写真6:ペットボトルの中で
豆と花が浮遊している
写真7:ニンジンを擦りおろして
ジュース作り

子どもたちは、色水を作った後に、場面1と同様に、色水を通して色の付いた世界を見たり、相変わらず物が大きく映る様子に喜んだりするなど、場面1から遊びが展開している様子が見られた。

そうした姿が見られる中、3歳児Eさんが、園で採れたスナップエンドウや花を、ペットボトルに入れてジュースを作り始めた。蓋を閉めてペットボトルを振り、ひっくり返してみると、豆と花が水の中に上下反対方向に浮遊している様子を不思議そうに見ていた。

その様子を見守りながら、「面白そうだね」と、保育者が言葉を掛けるとうなずき、「これ(豆)は下に行って、……これ(花)は上に行くよな……」と発見したことを口にした。思わず保育者も、「そうよな。すごい発見!」と共感すると、周囲にいた子どもも、ペットボトルをひっくり返すたびに、豆と花が上下反対に浮遊する様子をじっと見ていた。

3歳児Fさんが、ペットボトルにサクランボの実をたくさん入れて、サクランボジュースを作っていた。「見てー、できた。サクランボジュース」と大はしゃぎ。Eさんとは違い、サクランボが下に沈んでいる様子を見て、言葉には表さなかったが、サクランボが下に沈むことを実感している様子がうかがえた。

3歳児Gさんは、ニンジンを擦りおろし、ニンジンジュースを作っていた。水の中に、ほのかに混じるニンジン色と、ゆっくりと擦りおろしたニンジンが下に沈んでいる様子をじっと見ていた。

子どもたちは、作ったジュースのペットボトルを並べてみることで、色の違いに気づいたり、浮いているもの、沈んでいるものがあることを発見したりした。いろいろな素材を使って、ものの浮き沈みや、色水の不思議さや面白さを実感していた。

その後、ペットボトルの中の水の色への興味は、絵の具の色水遊びに展開した。保育者は、日々の帰りの会で、子どもたちの、気づきや発見を伝え合い、共有する機会を作っていった。遊びを振り返り、翌日への期待をもつ姿が見られた。

考察

遊びの振り返りの様子
写真8:遊びの振り返り
様々な素材や色水が入ったペットボトルがたくさん並べられている写真
写真9:様々な素材や色水でジュースを作り
ジュース屋さんのようにペットボトルを並べる
  • 水を入れて実験をしたことをきっかけに、子どもたちが、ペットボトルの世界に関心を向け遊びが広がっていった。そのためには、ペットボトルの素材に様々な観点から興味をもっている子どもの姿を見逃さず、さらに意欲をもって関われるような保育者の的確な援助と環境の工夫が大切であると思われる。
    • 子どもたちが、自由にじっくりと試行錯誤や工夫ができるよう、様々な大きさで十分な数のペットボトルを準備したところ、ペットボトルをままごと遊びやジュース作りに使ったりして遊びが広がっていった。
    • 子どもたちの発見や感動の言葉に耳を傾けタイミングを逃さず共感していったこと、試したり工夫したりする姿を見守り認めながら支えていったこと、興味の方向や関心に沿った環境の準備や再構成が行われたこと、子どもたちとともに遊びの振り返りを重ねていくなどの保育者の援助が大切であった。
  • ペットボトルを通して、屈折や乱反射から見える様々な世界や、ものの浮き沈み、色水の不思議などを実体験していた。多くの気づきや発見を友達と共有していくことで体験が広がり、「科学する心」が育まれていく姿につながったと思われる。
  • ペットボトルに入れた豆や花が上下に浮遊する不思議との出合いにより、様々な工夫が生まれた。また、草花から色が出たり、色を混ぜ合わせたりすることで新たな色が生まれる感動が、次の活動への意欲と「科学する心」を育むことにつながったと考えている。
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