- TOP
- つながるまなざし研究会〜「科学する心」で語り合う幼保小連携
お知らせ
- 2024年11月11日(月)
- 名古屋の先生方が企画した「<幼保こ小>つながるまなざしカフェ in 名古屋」を12月15日(日)名古屋市内にて開催します。お申し込みはご案内PDFをご覧ください
「つながるまなざしカフェ」ご案内PDFはこちら [PDF/348.23 KB ]
小学校と園の先生が、互いの論文を読み合い、実践を見合い、議論し合いながら、子どもたちの「科学する心」を共通言語に「幼保小連携」を考える研究会を発足しました。
幼児期に育まれた「科学する心」の主体的な遊びや経験を、学校での深い関心や学びへの興味にどのようにつなげていけるのか。子ども主体の「幼保小連携」の形を、現場の先生方、専門家、そして賛同いただくみなさまと共に研究し、発信してまいります。
- 監修
- 学習院大学 教授
秋田喜代美氏
-
- 講師・コーディネーター
- 武蔵野大学 教授
箕輪潤子氏
- 講師
- 東海大学 准教授
寳來生志子氏
-
- 研究員(小学校)
- 横浜市立立野小学校
境孝先生
- 研究員(小学校)
- 福島市立三河台小学校
野口卓也先生
-
- 研究員(保育)
- 京都市立中京もえぎ幼稚園
中岡雄介先生
- 研究員(保育)
- 認定こども園みどりの森
藤沢友香子先生
秋田喜代美先生からのメッセージ
文部科学省の「幼保小の架け橋プログラム」では、5歳の4月から1年生の終わりまでの2年間を「架け橋期」と呼んでいます。この2年間は、0歳から18歳までを見通したときに、人生の始まりとして大変重要な生涯の学びの基盤となる時期なのです。「幼保小連携」を考える上で大切なことは、園と小学校の先生が交流をしたり、対話をしたりすること、そしてその足跡を残していくことだと考えます。互いの保育、教育実践を見合いながら子どもたちの「科学する心」の姿を中心に議論を重ねる本研究会を参考に、園と小学校の先生が交流を深め、みなさまの地域の特色を生かした「幼保小連携」の形を見つけていただけることを期待しています。
つながるまなざし研究会が行った主な活動についてご紹介します
- 2024年7月13日(土)つながるまなざしカフェ in 京都
- 京都市こどもみらい館にて開催。保育者、教員、行政、先生をめざす学生など約40名が参加しました。「幼保小連携の担当になったが何をすればよいかわからない」とヒント得るために来られた先生もいました。
- 2024年3月2日(土)つながるまなざしカフェ in 福島
- 小学校と園の先生による、子どもの姿を中心とした実践紹介の後、コーヒーやおやつをいただきながら、自校・自園のお話や相談事など、ゆっくり、じっくり、楽しく、子どもへのまなざしをつなげていきました。
- 2023年11月17日(金)幼保小連携勉強会
- 全国小学校理科研究協議会研究大会 神奈川大会の会場校(横浜市立立野小学校)で「幼保小連携勉強会」が開催され、つながるまなざし研究会メンバーが実践発表と提言を行いました。
- 2023年7月29日(土)保育者の夏Fesss!
- ソニーグループ本社で開催した「保育者の夏Fesss!(フェス)」に、つながるまなざし研究会のブースを出展し、保育者と小学校教員が連携について語り合いました。
- 2023年5月27日(土)みんなで園を訪問!
- 「読み合った論文の執筆園を実際に見てみたい」という声が上がり、メンバーで宮城県の2園を訪問しました。多くの園の先生方にもご参加いただき率直に話し合うことを通して、幼保小の先生が“対話”することの大切さを改めて感じました。
- 2022年9月11日~2023年3月14日研究会
- ソニーグループ本社での初顔合わせ(キックオフ)の後、数か月に一度、学校と園の先生が同じ論文を読み合い、子どもたちの「科学する心」と連携について考える研究会を行いました。研究会の様子は「つながるまなざし」の足跡に順次掲載します。
つながるまなざしカフェを開催しませんか?
「つながるまなざしカフェ」は「科学する心」の視点で幼保小連携について語り合う場です。開催を希望される方はつながるまなざしカフェ リーフレット[PDF/785.72 KB ]と開催支援概要[PDF/670.39 KB ]にて開催条件等をご確認いただきソニー教育財団のお問い合わせフォームよりご連絡ください。
これまでの研究会の様子をメンバーのコメントとともに振り返ります
「乳幼児のための“科学する心”ネットワーク(「科学する心」の視点で保育者同士が仲間を作り学び合う個人会員組織)」のリアルイベント「保育者の夏Fesss!(フェス)」に、研究会より3名の研究員が参加しました。参加者100名のうちのほとんどが園の先生でしたが、そこに「つながるまなざし研究会」ブースを設け、おしながき(下記)と称したお題を元に、居酒屋にでもいるような雰囲気で、先生同士、幼保小連携について熱く、熱く語り合いました。
多くの保育者が幼保小連携に関心を示され、学校の先生ともっと話をしたいと思われていることが伝わってきました。「つながるまなざし研究会」ではこれからも、このような環境づくり、仲間づくりをしていきたいと考えています。
下記「おしながき」は、研究員が論文を読み合うことを通じて見つけた、幼保小の先生が語り合うための共通のテーマです。幼保小連携に限らず、身近な先生ともこのようなテーマでお話しされると、“科学する心”が見えてきませんか?
おしながき(研究員が考えた話し合いのための共通テーマ)
- 「あ、今子どもの心が動いた!」と思った瞬間
- 子ども一人一人を探究の主人公にする上で大切なこと
- 「遊び」をどう捉えるか
- 「子どもに寄り添う」とは
- 保育者・授業者に必要な子どもと向き合う構え
- 個と集団のバランス
- 「偶然」を生かす
- 子どもの主体性をどう引き出すか
- 子どもの失敗の扱い方
- 同僚との連携の工夫
- 環境構成で大切にしていること
- 小学校の授業ってどんなイメージ?
第2回の研究会で、全員で論文を読み合った「やかまし村」と、その姉妹園の「みどりの森」に、実際に足を運び、環境や保育の様子を見学させていただきました。保育現場の見学の感想と合わせてこれまでの研究会の振り返りをしながら、同園の先生方と一緒に、子どもを中心とした幼保小連携が、今後どのようにしたら進んでいくのかについて話し合いました。
- 生活や暮らしという話がありましたが、子どもたちはそれぞれのところで不安も抱えながら園に来たり学校に来たりしています。そこで、あなたはあなたのままでいいんだよと受け入れてくれる仲間や先生がいることが大前提で、安心しないと自己発揮できないというのは、どこにいてもそうだと思います。子どもを一人の人間として尊重する私たちの構えや、安心感が前提にあって、「科学する心」が引き出されるのではないかと思います。
- “科学する心”の本研究会のまとめの資料を作っていた時に、つながっているところばかりで、「ここは違いますね」と語られていた部分も実は繋がりがあるからこそ違いとして見えたものに感じられました。小学校になると、意味が与えられたり子どもが意味を見出したり、言葉・用語での説明をしていくようになる点で、違いというのは経験の繋がりの中で出てくるのだと思いました。このつながりがどうしたら多くの幼児教育、学校の先生方に伝わるかを、多くの先生方と一緒に考えていけたらと思っています。
-
選定理由
両論文とも、自然、生き物や植物との出会いを大切にしている。園の論文には子どもたちと一緒に生き物が暮らす園庭環境や図鑑づくりの事例があり、小学校の論文には生き物・植物との関わりや、その地域での暮らしを大切にした事例が含まれている。
- 最近、小学校の先生のことをもっともっと知りたいと思い始めています。論文に出てくるダイズの「根粒菌」のエピソードでは「ここは教師の出番!」と書いてありました。きっと子どもの興味や関心に合わせるため、教科書に書いてあるより少し深い内容を理解されようとしている。幼児教育でも、子どもが発する一言を、専門知識が無いためにうまく拾えない、スルーしてしまったみたいなことがあります。
- 教科のエキスパートの先生もいらっしゃると思いますが、そうではない先生も多いです。授業研や先輩の授業を参考に、単元について深く勉強しないと、子どもの言っていることが分からないときがたくさんあります。どちらの論文にもチームで取り込む様子があったのですが、一人よりも、みんなで取り組んだほうが絶対学びが多くて、いろいろな方法が見つかると思います。若手の先生とみんなで話していると、「あ、それだったらこうしたほうがいいんじゃない」ってことがあったりしますよね。
-
選定理由
園の事例には牛乳パックなどで作った船を水に浮かべ、浮く・浮かない、滑る・滑らないなど子どもたちの試行錯誤の姿があり、小学校の論文には「電流のはたらき」「風やゴムのはたらき」などの試行錯誤、実験の事例が含まれている。
- 論文の中で素敵だなと思ったのが「冬の大三角を学んでから、学校の帰りにこれは冬の大三角だとお母さんと話しています」というところ。今まで何気なく見ていたことが、知ることにより、学ぶ喜びや新しい価値を感じているのだと思いました。幼児教育で子どもが生活や遊びの中で出会ったものやこととの間に、保育者の思いや関わり、環境設定があることで、その結びつきを強くしていくことに似ています。
- 共に楽しむ悩む大人の存在って、とても大きいのかもしれないですね。「どうしたらいいのだろうね」とか「どうしようか?ちょっと時間ちょうだい」とか。学校では答えを求めてきがちな子どもたちですけど、「先生もどうしたらいいか分かんないんだな」っていう姿を見せるって、子どもの育ちに大事なんだなあと思いました。そうすると、子どもも自分で考え始めたり、なんとかしなきゃって動き出したりすんじゃないか。
-
選定理由
地域の自然、ビオトープ、生き物、外部人材の活用などで共通する点が多くあり、小学校の論文にも「自然に親しみ、自然を見つめ、感じる心を育てる」とあるように、両論文ともに自然を通じて、子どもたちの主体性や興味関心を深めるための、先生方の環境の工夫が含まれている。
- 小学校の論文から、先生が子どもの感情、心の動きに着目して単元構想を行ったり環境構成したりすることで、学びに対する意欲が持てるようになっていることが読み取れました。それは幼児教育も同じであると思います。園との違いは、学校教育が9年もしくは12年間の体系的な知識教授の過程にあり、教えるべき内容が事前にあること。とはいえ、先生の意図と子どもの思いを絡めていくという点では、学校も園も同じですね。
- 子どもが身近な生き物との出会うときに、園の先生がたくさんの手立て行うことで、「自然」、「環境」、「共生」という言葉こそ使わないまでも、子どもたちはその「中身」がわかるようになってくるのですね。それらは学校の生活科だけでなく、道徳の教科書に載っている外来生物のことや、理科の人と環境、四季の変化、社会科の国土の保全、地方自治にもつながっていると思いました。園も学校も、身近なものを本当に身近にする、対象との関係を太くすることが重要なのですね。
-
選定理由
園論文には園庭に流す水や色水遊びなど「水」を扱う事例があり、小学校では理科と社会科の単元で「水」を扱った事例がある。また、学校論文では珍しい「音」の事例は、幼児期の聞こえる、震えるなどの体験、興味関心とつながるものはないだろうか。
- 小学校でも水を流して遊ぼうという授業があり、子どもたちがいろいろなことに興味関心を持って試行錯誤をしています。しかし、園では実はもう、遊びというか、学びというか、探求というか、水を流す遊びは自然に行われていて、その姿を保育者が見て、褒めたり、投げかけたりして、次につなげたりを当たり前のようにしているのですね。このことを世の中の小学校の先生がどれだけ知っているのかなって、疑問に思いました。
- 学校の論文を読むことで、園では単元や教科にとらわれず時間が保障されていること、原体験を深めたり、生活や遊びを通して学んだりできる場所があることを改めて認識しました。 子どもが科学的な根拠をもっている発言をしたときに「それいいなあ」と思うこともあれば、ちょっとファンタジーが入っているような意見にも「そういう風に感じたんだね」とそこに価値を見出すような言葉をかけていることもあり、そのようなところが学校と少し違う所なのかな?
メンバーが初めてソニーグループ本社に集まりました。秋田喜代美先生の「科学する心」への想いやこれまでについてのお話のあと、園の先生と学校の先生それぞれが「“科学する心”が芽生えている・育っていると思う事例」をもちより発表と話し合いを行いました。園の先生と小学校の先生では、視点がかなり違いそうで議論することができるだろうかと心配もありましたが、初日から、先生の子どもへのまなざしに違いが無いことに気付きます。
- 園の優れた実践は論文から読み取ることもできますが、実際の空気感はやはり会って話し合う方が伝わってきます。小学校と幼保の実践を共に語り合うことは、連携のために具体的な取り組みではなく、目指すところだったり、枠組みだったり、ビジョンのようなものが見えてくると感じました。それがないと、どのようなシステムを作ってもうまくいかないと思います。スタートから、愉しさしか感じられません。
- 幼保では基本的には子どもの「好きなこと」を軸に保育を展開していくのですが、「するべきこと」が学習指導要領で予め決まっている小学校においても、難しいこと、嫌だと思うこともやってみたり、それを先生が支えたり、周りとつなげたりすることで授業が楽しくなってくることや、取り組みを続けることで子どもの心に変容が起こっていくという事例を聞くことができました。大変興味深かったです。