保育のヒント~「科学する心」を育てる~

子どもの心が動くとき/新潟市立沼垂幼稚園(新潟県)

皆さんの園では論文主題「科学する心を育てる」と、園の大切にしたい保育を結び付けて考えられることはありますか?

今回ご紹介する園では、子どもが物事に出合い変化を感じた時、その変化に柔軟に対応する力を「科学する心」と定義し、子どもたちの日常を事例にして、子どもたちに何が育まれているのかを理解していこうと研究を重ねています。

子どもの姿から、出合う・感じる・重ねる場面を色分けして視覚化、子どもの経験を職員同士で共有し合い、成長を捉えています。

当園が考える「たくましさ」と論文主題「科学する心を育てる」を定義する

「科学する心」と当園が考える「たくましさ」との関係

当園は「科学する心」を「1物事の変化を感じ取ること(感性創造性)」「2物事の変化に柔軟に対応すること(主体性関わる力)」と考えた。12は、当園の育みたい「たくましさ」とも捉えることができる。

そして、子どもたちに12を育むためには、様々な人・もの・出来事に出合い、感覚感性を通して様々に感じ、そのことを繰り返し、積み重ねることが大切であると考えた。

そして次に示す「事例を整理し考察する方法」にて、研究を進めた。

事例を整理し考察する方法
  • 出合う・感じる・重ねる場面を文字色や囲み線などで区分けをし、子どもの経験を確認する。
    その中で、子どもの心が動くきっかけとなった出来事をチェックする。
    驚き・発見ひらめき
  • 保育者の援助や環境構成を網掛けしてナンバーリングする( 1)。
    事例の最後に抜き出し、共通点を見出す。
  • 上記12から、子どもに主体性・感性・創造性・関わる力のうち、何が育まれたのかを捉え考察する。

事例:池の不思議(1月)/3歳児

  • 園庭が真っ白な雪に覆われた。雪遊びの身支度を整える1と、子どもたちは喜んで戸外に飛び出した。
    保育者は、子どもが雪や氷に直接触れて感触を味わえるよう、子どもたちが働きかけている環境を工夫する。2
    子どもたちは、築山を滑り降りたり、寝転がったりと、思い思いに雪に触れて楽しんでいた。主体性・感性

  • 写真1

    そんな中、Aさんは握った雪をフワッと上に舞い上げた。
    すぐそばには池があり、Aさんは何かに気づいて池に目を向けた。驚き・発見
    その後、Aさんは四つんばいになり、池に向かって雪を押しのけながらせっせと池の周りを進んだ。ひらめき [写真1]

    Aさんが黙々とそれを続けていると、子どもが数名池の周りに集まってきて、Aさんと同様に池に雪を入れ始めた。特に言葉を発するわけではない。保育者も黙って近づき、様子を見守った。3

  • 写真2

    どの子どもも黙々とその行為を続け、最後にはみんなで大量の雪を勢いよく池に押し込んだ。ひらめき創造性・関わる力 [写真2]

  • 別の日、また雪が積もったので園庭に出掛けた。4
    また子どもたちが池の周りに集まっていた。池には白っぽい膜(氷)が張っている。驚き・発見

    写真3

    どの子どもも手袋を外し、冷たい池の水に手を入れようとしていた。Bさんは手をぐっと握り、池の幕(氷)めがけて拳を突っ込んだ。ひらめき 池に穴が空き、Bさんは何度もそれを繰り返した。Cさんは、広げた手をそっと池に入れ、氷を引き上げた。ひらめき [写真3]

    保育者も子どもの行為をまね、「面白いね」「取れた-!」と共感を表した。5主体性・感性・創造性・関わる

環境の工夫と保育者の援助

  • 園のまわりにある環境の変化を、子どもも大人も敏感に感じながら、タイミングを逃さず遊びに取り入れることを大切にしていく。また、子どもが関心を示した場所で、思い切り遊べる身支度の援助や、子ども自身がそのものに直接触れたり感触を味わったりできるよう、道具を出さないなどの選択をしていく。
  • 子どもの気づいたことへの行為や感じ入っている様子を黙って見守る。
  • タイミングを逃さず出合いの機会を作る(1
  • 直接触れて感触を味わえるよう、子どもが働きかけている対象に応じた環境を工夫する(2
  • 子どもの行為を黙って見守る(3
  • 繰り返し出合いの機会を作る(4
  • 同じように遊ぶ,共感する(5

考察

タイミングを逃さず戸外に出たことで、子どもが様々に雪や氷に触れる体験につながった。子どもたちは目の前にある対象物そのものの感触を味わえ、感じたままに表現したり、気づきへと繋がったりしていた。子どもならではの気づきや感じ方はとても面白く、保育者自身も新鮮な気持ちで共に「科学する心」を感じることができた。3歳児のこの時期は、気づいたことを繰り返し確かめる行為が多い。保育者も子どもと同じように、時には黙って子どもの行為を真似てみることで、面白さを共有することができる。

ページの先頭へ