教育助成

2017年度教育助成プログラム 入選発表教育助成(論文・発表)

今年度は、全国の小・中学校より180件、幼稚園・保育所・認定こども園より126件、合計306件の論文応募があり、書類審査、現地調査および厳正なる最終審査を経て、下記の通り入選校・入選園が決定しました。

最優秀校・最優秀園

ソニー子ども科学教育プログラム 最優秀校(2校)/教育助成金300万円とソニー製品

  • 西尾市立西尾小学校/愛知県

    西小科学教育プロジェクト~実体験を通して科学が好きな子どもを育てる~
    講評

    目指す「科学が好きな子ども」を育てるために、「西小科学プロジェクト」を掲げて10年にも及ぶ取り組みを展開してこられました。校長先生を筆頭に代々の先生方の真摯な取組みが実践を着実に深化させ、特色ある教育活動として結実しています。
    貴校の取り組みでは、地域の自然や人・もの、環境を活かした活動が教育計画に効果的に位置づけられ、学校全体の研究主題である「ふるさとを愛し、語れる子の育成」という教育目標と「科学が好きな子どもを育てる」実践を重ね合わせた取り組みとして理科・生活科・総合の学習の学習内容や展開に活かされています。4年生の「二の沢川」の学習では、地域の自然に目を向け、地域の人材を活用して子どもたちの環境への関心と理解を深める学習が展開されると同時に、その内容を校内のビオトープの環境構成にも反映させて、これを活用した生活科の学習等が行われており、身近な自然に目を向けたすぐれた取り組みとなっています。また、このような学習の充実を図るため、校内の自然環境を整備することにより、学校生活全体が自然への興味関心を高めるものとなっています。
    理科・生活科の授業づくりにおいては、このような地域や学校の自然に目を向けた問題解決の活動に加えて、「生活と結び付く単元構成の工夫」や「ワクワクする教材・教具の開発」など、子どもの追究意欲を高める教材を導入するなどの創意工夫を行った学習活動が積極的に展開されていることが評価されました。

    論文概要

    本校は、「はじめに子どもありき」の精神のもと、子どもが主体的に学びを進めていく学習を大切にしている。私たちは、科学が好きな子どもを育てるために、「対象との印象的な出会いの場を設定する」→「子どもの素朴な疑問を取り上げる」→「その疑問をもとにして問題解決のプロセスを含んだ単元を構想する」といった授業づくりに取り組んでいる。その中で、子どもの心が揺さぶられ、追究意欲が高まるように、実体験を重視し、かかわり合いの場を設けるとともに、教科横断的なカリキュラムを組んでいる。この学習を経て、子どもは、思いや考えを表現する術を身につけ、科学が好きな子どもへと育っていくと考える。

  • 刈谷市立刈谷南中学校/愛知県

    科学する心を育む刈南中プロジェクト2017~”全員参加”の授業から生まれる感動!感性・主体性・創造性を伸ばす生徒を目指して~
    講評

    「『全員参加』の授業から生まれる感動!」をテーマとして掲げ、「科学する心をもった生徒」を育てる取り組みを展開されました。これまでに、本プログラムにおいて「最優秀校」や「入選プロジェクト校」をそれぞれ2回受賞されるなど、常に実践の深化を目指してきた弛まぬ取り組みが、貴校の理科教育の全体計画や学習環境の充実に確実に受け継がれています。
    現地調査においても論文で報告いただいた実践を裏付ける「疑問や巧みさを感じる事象提示の工夫」「学んだことを活用する場の設定」「学びを深めるモデルの活用」などこれまで積み重ねてきた手立てがしっかりと授業の中に活かされていました。2年生の「動物の生活と種類」では、子どもたちが本物を通して知り得た目の仕組みの巧みさに気付き、知的好奇心をもって実際の豚の目を調べるなど、探究を深める学習が展開されていました。引き続き、実践を重ねる中で子どもが探究意欲を高める単元づくりに結び付けられることを期待しています。
    また、「全員参加の授業」への取り組みでは、「個⇔グループ⇔集団」の子どもたち同士の考えの交流が機能的に行われ、一人一人が自分なりの確かな考えをもって取り組む工夫が、1時間ごとの学習展開に具体化されています。現地調査においても、「全員参加の授業」の取り組みが、教科の枠を超えて学校全体の指導体制と教師間の連携により実践されていることが確認できました。
    子どもたち一人一人が学習の中で記録した内容をまとめた単元ノートの活用も評価されました。子どもたちの学習での思いや考えを教師が把握して次の授業に活かす、理科室に掲示して考えを紹介するなど、一人一人を認め、学習意欲を高める有効な手立てとなっています。

    論文概要

    本校の生徒は、大変素直であり、学習や運動に真剣に取り組んでいる。しかし、与えられた課題に対して真剣に取り組む生徒は多いものの、自ら課題を追究したり、進んで思いや考えを深めようとしたりする姿はあまり見られない。この生徒の実態から、本校では全校体制で「自ら学ぶ生徒の育成~学びを深める授業を目指して~」と主題を掲げ取り組んでいる。それを踏まえて、理科では、生徒全員が「科学する心」をもてるように、「科学する心を育む刈南中プロジェクト2018~“全員参加”の授業から生まれる感動!感性・主体性・創造性を伸ばす生徒を目指して~」というスローガンを掲げ、実践研究を行っている。ただダイナミックな演出をするのではなく、本年度の実践が来年度も行えるように地道な取り組みを継続していくことを大切にしている。

ソニー幼児教育支援プログラム 最優秀園(2園)/教育助成金100万円とソニー製品

  • 岡崎市豊富保育園/愛知県

    科学する心を育てる~失敗は大発見のもと!~
    講評

    本園は、「失敗は大発見のもと!」という、子どもたちの意欲が伝わる魅力的なテーマを挙げ、乳幼児の全てのクラスが、子どもの興味や関心に応じた飼育栽培活動ができるように、自然環境はもちろん、子どもが必要を感じる物的環境を工夫し、主題「科学する心を育てる」保育に取り組まれています。
    ささいなことに思える事象にも、子どもたちは「何だろう」「なぜだろう」と不思議さや不安を感じながら、丁寧に観察を重ねて飼育栽培物に関わっています。こうして育まれた観察力が根幹となり、子どもたちの問題意識は高く、多くの場合、仕方がないと諦めたりやり過ごしてしまったりしそうなことにも、強い願いをもち、やり遂げる姿に繋がっています。
    子どもたちは、丸まったキュウリの実を見付け、「まっすぐなキュウリを作りたい」との思いから再び栽培にチャレンジする過程で、対象をよく観察して原因を探りました。そして、本格的な育て方の本や家庭から情報を収集して栽培方法を試したり、肥料の必要性に気付いたりなど、友達と協同して失敗を乗り越える姿がありました。このことは、対象をさらによく観察することに繋がっており、栄養や水や土を温めることの必要性や、以前のキュウリとの形状や大きさの違いなど、新たな発見をしました。また、オクラに生じたアブラムシの問題では、子どもたちが、鋭い観察力を発揮し、アブラムシの天敵とされるテントウムシを探し出し、また、ほかにも天敵がいないか試しました。アブラムシが減っていくかを見届ける過程で、オクラへの愛着を感じ、静的な観察から生長を守るために行動する姿へと成長していることが分かります。
    このように、みずみずしい感性を発揮して飼育栽培物の変化や生長を観察し、特徴を知って、生き物や植物の立場に立った関わりをしようとする子どもたちには、確かな「科学する心」が育まれています。
    保育者は、子どもたちが「科学する心」を育む体験を重ねられるように、発想や試行錯誤の場面をしっかり捉えて子どもたちに寄り添い、保育を工夫することで、どの事例の子どもたちも、友達と一緒に、「観察、発見、比較、気付き」という体験を重ねています。こうした飼育栽培活動を通して、「チョウが羽化する際に液体がでることへの探究」「植物や昆虫が成長するために関係している」「友達と栽培物を守るために考え合い、植物や昆虫の特長に気付いたことを共有する」「植物にとってよりよい環境を知り、栽培する」など、家庭や地域で見聞きする農作の豊かな環境や知恵も手伝って、子どもたちは多様な学びをしています。
    さらに、子どもたちが、「友達と問題を共有し、異年齢の子どもを思いやる」、「問題を解消しようと、諦めずにやり遂げる協同体験から学ぶ」事例では、その過程を保育者が丁寧に見取り、家庭や地域との連携を活かして、子どもと思いを共有しながら保育の工夫を重ねておられ、質の高い保育を実践されていることが分かります。また、複数の子どもたちの、視線の高さで植物の生長を観られる円形の園芸プランターは、体験を共有するための効果的な環境になっています。このように、栽培物や虫との関わりなど、どの園でも日常的に行われることに焦点化し、子どもたちのつぶやきやひらめきを支え、子ども主体の保育に丁寧に地道に取り組む姿勢は、他園を勇気づけ、大いに参考となる取り組みであり、高く評価されました。
    現地調査では、クラスの枠を越えた5歳児同士の活発な情報交換により、問題解決に繋がるヒントを得たり、水遣りの量や、栽培物にとって益虫か否かなど、栽培物や虫によって関わり方が違うことを知る体験をしたりしていることが分かりました。加えて、子どもたちが生き物への思いやりのある関わりをしている姿や、生き物との関わりを共有する体験を通して、異年齢の子ども同士が深く繋がり合う姿も確認できました。

    論文概要

    本園は、「科学する心を育てる」~失敗は大発見のもと!~をテーマとし、特に、「動植物に親しみ、自然の不思議さや美しさに驚き、感動する心」「様々な体験を通して自分の思いや考えを表現したり、試したり工夫したりしていく楽しさや成功感を味わう心」を育むことを目指して実践した。子どもたちへの理解を深め、園全体で保育の工夫に取り組み、乳児クラスから幼児クラスまで、全ての子どもたちに、身近な動植物への関わり方が変容したり、多様な学びをして成長したりする姿を捉えることができ、それらを事例にまとめた。
    0歳児は、生き物への興味があるものの、触れる時の力加減は難しいので、保育者がカブトムシを飼育し、毎日関わる環境を設定したことから、自然に触れるようになり、親しみの感覚が生まれた。トマトは赤い実と理解している1歳児では、トマトに顔を書いて観察をし、実の色や大きさが変わっていくことを感じ、話題にした。こうした工夫により、1~2歳児は、トマトが赤く大きくなるように、実を見て水やりをするようになった。幼児組3~5歳児クラスでは、キュウリの実が丸まったり球型になったりする不思議から、「まっすぐのキュウリ作り」に挑戦したり、アブラムシからオクラを守る「テントウムシで蘇る」工夫をしたりした。このように、飼育栽培物をよく観察し、不思議や問題を感じて探究を深め、諦めずに解決した。
    子どもたちは、育まれた観察力により問題意識が高く、子ども同士の情報交換も活発に行われた。また、保護者や地域からの情報や必要な教材の提供もあり、諦めずにやり遂げようとする子どもたちの支えとなっている。

  • 富田林市立新堂幼稚園/大阪府

    科学する心の育成をめざして
    講評

    本園は、4年間にわたり継続して取り組んできた成果と課題をもとに、主題に改めて正対して、「科学する心の育成」に取り組まれました。「科学する心の育成」の原点を、「人として豊かに生きる学びの根幹を育む」「自然と向き合い小さな生き物、命、仲間と触れ合うことを基盤とする」とし、目の前の子どもたちの実態と向き合い、保育者の願いを重ねた、熱意溢れる取り組みが伝わってきます。丁寧な実践記録と振り返りから、子どもたちの「科学する心」の育ちとその要因を明らかにし、これらを環境の再構成や保育者の援助の在り方に繋げていることが分かります。
    「命をどう感じていくのか」をサブテーマとした事例では、アリを踏むような関わりをしていた子どもたちが、カエルや烏骨鶏と出合い、日々の観察を通して興味を深める中で愛着が生まれ、さらに、卵を産まなくなる、糞が少ないなどの小さな異変にも気付くようになりました。烏骨鶏の死と直面して、命の大切さを感じ、生き物の立場に立ったり、生き物にふさわしい環境を作ったりする姿へと変容しています。
    「知りたい思いの実現」をサブテーマとした事例では、子どもたちが幼虫と出合って、生き物の成長過程に強い興味をもち、日々の観察を通して卵の色の変化により孵化が近いことに気付いたり、チョウになる前の蛹便に気付いたりなどの細かい観察力が育まれ、探究心に繋がっていることが分かります。さらに、身体表現や絵などへと、質の違う活動に展開するなど、体験の広がりを捉えることができます。
    このように、「科学する心」がどのようなタイミングで育まれるかを中心に置いた研究と実践からは、子どもたちが実体験を通して自然の摂理を学んでいく過程での「科学的探求の深まり」を読み取ることができます。また、子どもたちの「科学する心」が育つ背景として、保育者や友達との信頼関係を築くことを基盤に、主体的で豊かな遊びの展開を図りながら、この心を育てることに重点を置いていることが挙げられます。さらに、子どもの視点に立った、自然環境への細やかな配慮や、子どもたちが主体的に関われるようにする丁寧な工夫も影響しています。
    本園の大きな特徴として、小学校以降への「学びの繋がり」を、学校の先生方との恒常的な交流を通して明らかにしようと、並々ならぬ努力をされていることが挙げられます。学校の先生方との意見交換が、その後の実践や子どもの理解を深めることにも繋がるなど、特出した幼小中の連携であることが分かります。加えて、保護者や地域の方々との温かい交流や連携にも工夫をされていることが伝わってきます。小学校に上がった卒園児からのフィードバックによって明らかになった幼稚園での学びが小学校での学び(モンシロチョウの羽化の学習など)に繋がった事例は、連携の大きな成果と言えます。このような、綿密で心の通った連携の積み重ねと主題に迫る保育の創意工夫は、他園の参考となる実践として高く評価されました。
    現地調査においても、豊かな自然をさらに子どもたちに意味あるものとするための環境への工夫が見られ、地域や校区、保護者との長期にわたる連携への努力の積み重ねや、保育情報の発信と共有の工夫などを確認いたしました。また、子どもたちが、身近な自然に思いやりをもって大切に関わる姿や、友達と思いや情報を共有しながら、生き生きと主体的に活動を展開する姿も確認できました。

    論文概要

    本園の「科学する心の育成」は、活動に教師も子どももどれだけ、想いを込めたか、その深みで価値が決まるのではないかと考える。そこで、教師と子どもの信頼関係を基盤に、互いの想いが絡まり合う体験が、豊かな学びに繋がると捉えた。また、「自然と向き合い小さな生き物、命、仲間と触れ合うことを基盤に豊かな人へと成長してほしい」という願いは以前から大事にしていることである。教師は、子どもと本気で向き合うことや子どもの興味に合わせ環境構成と適切な援助を行い豊かな遊びを展開することを基本とした。
    「命をどのように感じていくのか」に注目した28年度の事例は、アリを平気で踏むような行動をしていた子どもたちが、次第に生き物に愛着が湧き、秋には烏骨鶏を仲間の一員として大切に受け入れ、思いやりが育まれていく、変容を見出すことができた。「知りたい思いの実現」に注目した29年度の事例は、実際に生き物と関わったり不思議な事象に心を動かしたりする出来事があると、「なぜ」「どうして」と知りたい思いが溢れ、探究する子どもたちの姿を見出した。子どもたちは、考え合って、図鑑と比べたり、同様のモノや出来事と比べたり、情報を教えていただける相手に尋ねたりして、納得できるまで追求している。知りたい思いが満足するには、自分たちの考えたこととすり合せる言葉のやりとりや確認し合う仲間の存在がある。
    このような子どもたちの理解を深め、保育の質の向上を図るために、園内のカンファレンスや地域・保護者との連携、小中学校の先生方との連携にも力を入れてきた。特に小学校への学びの繋がりを把握する取り組みは積み重ねて、多くの意見交換ができた。少人数ならではの良さを最大限にいかした保育を今後も展開していきたい。

優秀園 審査委員特別賞

ソニー幼児教育支援プログラム 優秀園 審査委員特別賞(1園)/教育助成金20万円とソニー製品

  • 石垣市立いのだ幼稚園/沖縄県

    科学する心(学びの芽)を育てる~身近な自然とのかかわりをとおして~
    講評

    本園は、昨年の「科学する心を育てる」取り組みを踏まえて、子どもたちに「つけたい力」を、「感性」「認識力・判断力」「たくましさ」と示しています。また、「科学する心」については、「好奇心や探求心が深まっていく姿や、様々な感覚・感性を働かせて感じ取ったり気付いたりする姿から、読み取ることができる」と示しています。このように、本園による独自の観点を明らかにして実践したことで、保育者は、生き物との関わりの中で気付いたことや疑問を探求する子どもたちの姿を見逃すことなく、寄り添いながら、支える保育に繋げています。また、地域の豊かな自然環境の中での生き物との出合いに注目し、好奇心が揺さぶられて夢中になって活動する子どもたちに寄り添い、子どもと共に夢中になって生き物と関わる保育者により、「科学する心」を育む保育が展開したことが分かります。
    事例の子どもたちは、セミ、チョウ、カマキリなどの昆虫と関わる体験や、カメやカナヘビと関わる体験など、様々な生き物と関わることによる質の違う体験を通じて、活き活きと主体的に活動を展開しています。園児数が少ない環境であっても、多くの発見や疑問を共有する自然体験により、好奇心や探究心、人との関わりが深まり、一人一人が生き生きとして輝いているこれらの実践は、多くの小規模園の参考となる取り組みです。
    子どもたちが、セミの種類や雄雌の違いなどに関心をもち、分類して関わってきたことを、保育者が視覚化したことが、殻の魅力を感じる体験となり、独創的で創意工夫のある殻のアートに展開しています。また、カメやカナヘビとの関わりでは、子どもたちは、「自分たちに飼えるのか?」と考え合った末に、命を大切にするために「放す」という、昆虫の事例とは質の違う、より生き物の生態を意識する高度な判断や愛着をもつことに繋がっています。このような、多様な生き物との関わりを通して体験が深まり、「科学する心」が育まれていることが高く評価されました。
    様々な生き物と関わり、生き物の立場になって探究を深めた体験は、活動の広がりにも繋がっています。様々なチョウを見分け、幼虫から飼育して羽化までを観察したことが、身体表現や虫新聞作りへと広がりました。また、カマキリの脱皮の確認から、その他の虫の脱皮へと興味を広げています。
    現地調査では、このように子どもたちは生き物と関わり、探究を深めたり体験を広げたりするとともに、保育者は子どもたちに寄り添い、子どもの姿に刺激や喜びを感じながら、情熱をもって保育に取り組まれていることが分かりました。また、子どもたちの成長と自身の成長を実感され、環境の工夫にトライし続けていることも確認できました。

    論文概要

    本園は、「科学する(学びの芽)を育てる~身近な自然とのかかわりをとおして~」をテーマとし、昨年の課題を踏まえ、「つけたい力」と称して「感性」「認識力・判断力」「たくましさ」を挙げ、研究に取り組んだ。地域の大変豊かな自然環境で培われた基礎的な知識を使って保育をするために、チョウ、セミ、カマキリなど子どもたちの興味が強いものについての情報を整理し、保育者間で共有した。
    セミの事例では、刻々と姿を変えるセミの羽化の観察をして感動したり、飛び立つ際の排尿を観て、話題にして動きを表現して楽しんだりした。日々集めた160を超える抜け殻を雄雌で分けて、ヒマワリの花のアートを作るなど、ユニークな活動に繋がった。
    チョウの事例では、様々な種類のチョウと出会い、幼虫から飼育して羽化の感動を味わったり、観察して気付いたことを調べたり、確かめたりした。心に残ったことを身体表現で伝え合う姿もあった。カマキリでは、脱皮への興味を深め、カマキリ以外の7種類もの虫の脱皮を収集して標本にした。また、セマルハコカメやサキシマカナヘビなどは、餌の問題など飼育することについて考え合い、命や関わり方など学ぶ機会になった。
    4歳児と5歳児2名ずつの4名の少人数の子どもたちであっても、事例毎に、「感性」「認識力・判断力」「たくましさ」を観点に考察をまとめたことで、自然や生き物への関わりを深め、気付いたり問題を感じたりすることで子ども同士の関わりが深まり、「科学する心」が育まれていったことが分かった。保育者は、子どもたちとともに、新たな知識や生き物の生態を知り、関わる喜びや湧き出てくる感情を味わいながら、子どもたちの成長を捉えることができた。保育者は小学校の同一敷地という環境を生かし、自然に関わる戸外活動を意図的に増やした。さらに、自然体験を紙面に書いたり全身で表わしたりする環境の工夫をしたことで、子どもたちの豊かな表現活動に繋がった。

優秀校・優秀園

ソニー子ども科学教育プログラム 優秀校(11校)/教育助成金50万円とソニー製品

  • 平川市立柏木小学校/青森県

  • 上山市立西郷第一小学校/山形県

  • 匝瑳市立八日市場第二中学校/千葉県

  • 千葉市立花園中学校/千葉県

  • 横浜市立権太坂小学校/神奈川県

  • 小千谷市立小千谷小学校/新潟県

  • 岐阜市立陽南中学校/岐阜県

  • 刈谷市立小垣江東小学校/愛知県

  • 刈谷市立富士松南小学校/愛知県

  • 山口大学教育学部附属山口小学校/山口県

  • 北九州市立藤松小学校/福岡県

ソニー幼児教育支援プログラム 優秀園(11園)/教育助成金20万円とソニー製品

  • 南陽市立赤湯幼稚園/山形県

  • 社会福祉法人龍美 陽だまりの丘保育園/東京都

  • 学校法人恵愛学園 幼保連携型認定こども園 愛泉こども園/新潟県

  • 山梨大学教育学部附属幼稚園/山梨県

  • 京都市立中京もえぎ幼稚園/京都府

  • 学校法人常磐会学園 認定こども園 常磐会短期大学付属常磐会幼稚園/大阪府

  • 加古川市立両荘幼稚園/兵庫県

  • 奈良市立六条幼稚園/奈良県

  • 学校法人水谷学園 北陵認定こども園 北陵幼稚園・北陵保育園/島根県

  • 丸亀市立あやうたこども園/香川県

  • 学校法人押野学園 幼保連携型認定こども園 せんだい幼稚園/鹿児島県

奨励校・奨励園

ソニー子ども科学教育プログラム 奨励校(81校)/教育助成金10万円とソニー製品

  • 北海道教育大学附属旭川小学校/北海道
  • 札幌市立円山小学校/北海道
  • 美幌町立北中学校/北海道
  • 三沢市立三沢小学校/青森県
  • おいらせ町立木ノ下小学校/青森県
  • 横浜町立横浜小学校/青森県
  • 秋田市立旭川小学校/秋田県
  • 秋田市立上新城小学校/秋田県
  • 山形大学附属小学校/山形県
  • 会津若松市立謹教小学校/福島県
  • いわき市立小名浜第一小学校/福島県
  • いわき市立好間第二小学校/福島県
  • 相馬市立桜丘小学校/福島県
  • 田村市立滝根小学校/福島県
  • 福島市立三河台小学校/福島県
  • 福島市立森合小学校/福島県
  • 福島大学附属小学校/福島県
  • 天栄村立広戸小学校/福島県
  • 稲敷市立新利根小学校/茨城県
  • かすみがうら市立下稲吉東小学校/茨城県
  • 取手市立取手第一中学校/茨城県
  • 美浦村立美浦中学校/茨城県
  • 川越市立川越小学校/埼玉県
  • さいたま市立大谷口小学校/埼玉県
  • さいたま市立上里小学校/埼玉県
  • さいたま市立芝原小学校/埼玉県
  • 埼玉大学教育学部附属小学校/埼玉県
  • 越生町立越生小学校/埼玉県
  • 千葉市立こてはし台中学校/千葉県
  • 千葉市立さつきが丘東小学校/千葉県
  • 千葉市立高浜中学校/千葉県
  • 千葉市立都賀小学校/千葉県
  • 千葉市立本町小学校/千葉県
  • 千葉市立若松小学校/千葉県
  • 中央区立城東小学校/東京都
  • 横浜市立稲荷台小学校/神奈川県
  • 横浜市立白幡小学校/神奈川県
  • 横浜市立立野小学校/神奈川県
  • 佐渡市立相川中学校/新潟県
  • 長岡市立栃尾南小学校/新潟県
  • 新潟市立内野小・中学校 希望が丘分校/新潟県
  • 松本市立鎌田小学校/長野県
  • 富士見町立富士見中学校/長野県
  • 長野県諏訪清陵高等学校附属中学校/長野県
  • 静岡市立安西小学校/静岡県
  • 刈谷市立朝日中学校/愛知県
  • 刈谷市立雁が音中学校/愛知県
  • 刈谷市立刈谷東中学校/愛知県
  • 刈谷市立依佐美中学校/愛知県
  • 知立市立知立南小学校/愛知県
  • 豊川市立西部中学校/愛知県
  • 西尾市立平坂中学校/愛知県
  • 京都市立梅小路小学校/京都府
  • 京都市立洛央小学校/京都府
  • 堺市立八田荘西小学校/大阪府
  • 堺市立浜寺石津小学校/大阪府
  • 姫路市立妻鹿小学校/兵庫県
  • 東広島市立河内小学校/広島県
  • 熊野町立熊野中学校/広島県
  • 下関市立向井小学校/山口県
  • 阿南市立中野島小学校/徳島県
  • 阿波市立土成小学校/徳島県
  • 徳島市国府小学校/徳島県
  • 今治市立乃万小学校/愛媛県
  • 今治市立吉海小学校/愛媛県
  • 松山市立道後小学校/愛媛県
  • 北九州市立大蔵小学校/福岡県
  • 北九州市立上津役小学校/福岡県
  • 北九州市立曽根東小学校/福岡県
  • 北九州市立田原小学校/福岡県
  • 福岡市立照葉小中学校/福岡県
  • 福岡市立能古小学校/福岡県
  • 合志市立西合志東小学校/熊本県
  • 山鹿市立稲田小学校/熊本県
  • 別府市立上人小学校/大分県
  • 姫島村立姫島小学校/大分県
  • 出水市立出水小学校/鹿児島県
  • 鹿児島市立瀬々串小学校/鹿児島県
  • 鹿児島大学教育学部附属小学校/鹿児島県
  • 薩摩川内市立平佐西小学校/鹿児島県
  • 南さつま市立阿多小学校/鹿児島県

ソニー幼児教育支援プログラム 奨励園(61園)/教育助成金5万円とソニー製品

  • 札幌市立もいわ幼稚園/北海道
  • 社会福祉法人五倫会 美郷保育園/青森県
  • 社会福祉法人福振会 津志田保育園/岩手県
  • 学校法人ろりぽっぷ学園 ろりぽっぷ幼稚園/宮城県
  • 学校法人ろりぽっぷ学園 ろりぽっぷ保育園/宮城県
  • 学校法人中沢学園 みなみ若葉こども園/福島県
  • 二本松市立石井幼稚園/福島県
  • 二本松市立小浜幼稚園/福島県
  • さいたま市立植水保育園/埼玉県
  • 学校法人勝田学園 大成幼稚園/埼玉県
  • さいたま市立本太保育園/埼玉県
  • 学校法人武蔵野学院 武蔵野短期大学附属幼稚園/埼玉県
  • 学校法人鴻ノ巣学園 きたかしわ幼稚園/千葉県
  • 学校法人くるみ学園 認定こども園 くるみ幼稚園/千葉県
  • 足立区立中島根保育園/東京都
  • 学校法人渡辺学園 東京家政大学附属みどりケ丘幼稚園/東京都
  • 墨田区立柳島幼稚園/東京都
  • 社会福祉法人種の会 世田谷はっと保育園/東京都
  • 特定非営利活動法人東京学芸大こども未来研究所 東京学芸大 学芸の森保育園/東京都
  • 学校法人織田学園 おだ認定こども園/東京都
  • 学校法人錦秋学園 錦秋幼稚園/東京都
  • 社会福祉法人相友会 諏訪保育園/東京都
  • NPO法人東村山子育てネットワークすずめ つばさ保育園/東京都
  • 社会福祉法人立野みどり福祉会 立野みどり保育園/東京都
  • 学校法人あおい学園 あおい第一幼稚園/東京都
  • 学校法人あおい学園 あおい幼稚園/新潟県
  • 社会福祉法人なのはな 菜の花保育園/山梨県
  • 学校法人山梨学院 山梨学院幼稚園/山梨県
  • 伊那市立高遠保育園/長野県
  • 社会福祉法人信州福祉会 わかば保育園/長野県
  • 静岡市立小島こども園/静岡県
  • 静岡市立登呂こども園/静岡県
  • 安城市立城ヶ入保育園/愛知県
  • 安城市立東部保育園/愛知県
  • 安城市立錦保育園/愛知県
  • 岡崎市豊富第二保育園/愛知県
  • 社会福祉法人豊津児童福祉会 泉の杜保育園/愛知県
  • 西尾市立鶴城幼稚園/愛知県
  • 幸田町立大草保育園/愛知県
  • 社会福祉法人徳雲福祉会 大井保育園/京都府
  • 社会福祉法人徳雲福祉会 千代川保育園/京都府
  • 社会福祉法人堺暁福祉会 幼保連携型認定こども園 かなおか保育園/大阪府
  • 学校法人常磐会学園 幼保連携型認定こども園 常磐会短期大学付属いずみがおか幼稚園/大阪府
  • 富田林市立錦郡幼稚園/大阪府
  • 社会福祉法人種の会 幼保連携型認定こども園 池田すみれこども園/大阪府
  • 学校法人長尾学園 長尾幼稚園/大阪府
  • 社会福祉法人長尾会 長尾保育園/大阪府
  • 社会福祉法人長尾会 第2長尾保育園/大阪府
  • 学校法人西学園 認定こども園 みどり丘幼稚園/大阪府
  • 学校法人七松学園 認定こども園 七松幼稚園/兵庫県
  • 社会福祉法人友愛福祉会 伊丹ひまわり保育園/兵庫県
  • 姫路市立中寺幼稚園/兵庫県
  • 学校法人米子幼稚園/鳥取県
  • 出雲市立窪田保育所/島根県
  • 出雲市立高松幼稚園/島根県
  • 社会福祉法人鏡福祉会 あおば保育園/広島県
  • 丸亀市立西幼稚園/香川県
  • まんのう町立琴南こども園/香川県
  • 福岡市立雁の巣幼稚園/福岡県
  • 諫早市立諫早幼稚園/長崎県
  • そらいろえん/沖縄県

審査委員長総評

ソニー子ども科学教育プログラム

2017年度「ソニー子ども科学教育プログラム」に、全国の小学校・中学校より合わせて180校から論文の応募をいただきました。本プログラムの趣旨に賛同され、「科学する」ことの楽しさを子どもたちに伝えるために熱心な取り組みを行われている先生方に心より敬意を表します。

本年度は、連続応募の学校が多く、「科学が好きな子ども」を育てる構想や手立てを昨年度から継続し、深化させた実践をされている学校が多く見られました。また、論文執筆の研究代表者やそれに関わっている若い先生方を含め、学校全体で取り組んでいる学校も多く、大変喜ばしく思います。

論文内容については、レベルの高い授業実践の報告が多くみられましたが、授業実践の創意工夫や、子どもたちの変容を詳しく記述している一方、全体的に次年度の「教育計画」についての具体的な内容が少ない傾向があります。本プログラムにおいては、先生方の思いのこもった実践を大事にしていますが、そこで留まることなく、実践の成果と課題を明らかにして、それを具体的な次年度の計画に落とし込んで新たな実践に繋げていただきたいと思います。また、理科や生活科の授業実践だけでなく、学ぶための環境整備、他教科との連携、外部講師や地域の方々との連携など、「科学が好きな子ども」を育てるために各学校において実践している特色ある取り組みも積極的に記述していただきたいと思います。

本年3月に新しい学習指導要領が公示されました。小学校は2020年度から、中学校は2021年度から全面実施されます。学校教育の新たな方向が示されたこの機会に、ぜひ、それぞれの学校や地域の特色を生かしながら来年度以降の新たな教育計画を策定し、実践に取り組んでいただきたいと思います。

本年度の優秀校は13校が選ばれました。優秀校の論文内容はいずれも充実しており、審査委員による最優秀校の審査の評価は拮抗しましたが、現地調査の結果も踏まえて慎重な審議を行った結果、最優秀校には西尾市立西尾小学校と刈谷市立刈谷南中学校が選ばれました。

最優秀校、優秀校の論文は当財団ホームページで閲覧できます。一人でも多くの先生方に論文をご覧いただき、これからの実践の参考にしていただければ幸いです。

最後に、子どもたちの未来のために、日々創意工夫をして実践に取り組んでいる学校をご支援いただいている保護者や地域の皆様に改めて敬意を表しますとともに、引き続き「ソニー子ども科学教育プログラム」に対するご理解とご支援を賜りますようお願いします。

審査委員長
  • 御手洗康/元文部科学事務次官
審査委員(五十音順)
  • 渥美雅子/弁護士
  • 大髙泉/筑波大学 名誉教授
  • 清原洋一/文部科学省初等中等教育局 主任視学官
  • 久保田重夫/元東京大学生産技術研究所 特任教授

優秀校の論文は2018年2月以降公開予定

ソニー幼児教育支援プログラム

2017年度は、「ソニー幼児教育支援プログラム」に、全国32都道府県の幼稚園、保育所、認定こども園から126件という、2002年度の本プログラム開始時から最も多くのご応募をいただきました。今年度は、継続応募されている園も増え、保育者の皆さまが、「科学する心」の視点をもって保育に取り組んだ結果として、保育の質の向上に繋がったことを実感されている論文が多く寄せられました。

子どもたちが、主体的に豊かな体験ができるように環境を工夫し、意欲的に実践されている甲乙付け難い園が多く、選考の過程は困難を極めました。詳細な現地調査も踏まえた厳正な審査の結果、最優秀園2園、優秀園12園、奨励園61園を選出いたしました。また、優秀園の中で、特にユニークな実践をご報告いただいた1園を審査委員特別賞といたしました。

応募論文からは、子どもたちが、人やもの、ことと関わり、対象に心を寄せ、「好奇心を膨らませてよく観て、様々な学びをしている姿」「探究から、科学の本質に迫る体験をしている姿」「疑問や困難を友達と共有し、協同して試行錯誤している姿」「命の大切さに気付いていく姿」など、「科学する心」を捉えた姿が伝わってきます。

また、子どもたちに「科学する心」を育てたいと努力する保育者の熱意と保育への創意工夫が、しっかりと伝わってきます。さらに、さまざまな記録や園便り、子どもも参加しての掲示など、「保育情報の発信や共有」を記述する園が半数を超えており、保育者、子どもと保護者が、子どもの姿を可視化して共有し、振り返る工夫が増えていることも特徴です。

もう一点特筆すべきこととして、「科学する心を育てる」ために、園が保護者や他の教育施設(校種)、地域の方々との連携により、子どもたちの体験の質を向上させる取り組みが、従来にも増して多く見られました。これは正に、状況に応じて工夫した連携活動を、地道に継続されてこられたことによる成果と言えます。一方で、活動の一場面を多数取り上げた報告も半数を超えて増えており、多様な体験をしているものの、子どもの体験の深まりにまで及んでいるかを読み取ることが難しい面もあり、論文としてのさらなる深耕を期待したいところです。

総体として、応募いただいた実践からは、「科学する心を育てる保育の醍醐味」「子どもと共に探究する面白さ」が伝わって参ります。このような素晴らしい実践の数々をご報告いただいた先生方の熱意とご努力に敬意を表しますと共に、心より感謝を申し上げます。そして、これからも子どもたちのために、先生方がより高い視座から「科学する心を育てる」保育を目指して、子どもの主体的な遊びの見取りを共有し合い、質の高い幼児教育に取り組まれることを願って止みません。

次年度も地域や園の特徴を活かし、とりわけ独自の発想から生まれたユニークな実践のご応募に期待をいたしております。

審査委員長
  • 小泉英明/(株)日立製作所 名誉フェロー
審査委員(五十音順)
  • 青木清/上智大学 名誉教授
  • 秋田喜代美/東京大学大学院教育学研究科 教授
  • 大豆生田啓友/玉川大学教育学部 教授
  • 神長美津子/國學院大學人間開発学部 教授

優秀園の論文は2018年2月以降公開予定