保育のヒント~「科学する心」を育てる~

気づき・発見~チョウと関わる~/姫路市立中寺幼稚園(兵庫県)

皆さんの園の子どもたちは、最近どのようなことに疑問をもちましたか?

今回は、一人の子どもの「卵やで!」との一言で、キャベツを見ていた子どもたちの興味が“見つけた卵”に集中し、「アオムシになるだろう」「チョウになるかな?」などと考え合い、飼育を始める事例です。

子どもたちは、友達と様々な気づきをし、図鑑では調べられないような疑問をもち、興味を深めていきます。その過程から、「科学する心」の育ちを捉えることができます。

モンシロチョウ/5歳児

  • 紫斜体太文字…環境構成
  • 赤太文字…子どもの気づき・発見

発見「卵やで!絶対!」<4月中旬>

葉の裏側を虫眼鏡で観察する子どもたち
  • 園舎の隅のプランターに植えたキャベツの苗を全員で見に行く。「これ何の葉っぱ?」と不思議そうに覗き込む子どもたち。「キャベツやろ」と家で植えた経験のある子どもが教えると、「大きくなったら、食べられるかな?」とキャベツの生長に興味をもつ。キャベツの所に行き、葉の裏に小さな黄色い粒を見つけた。「卵やで!絶対!」と言い、友達に「キャベツに卵あったんやで」と次々に教えていく。「え?どこどこ?」と興味津々の友達を連れてキャベツの様子を見に行く。「ほんまや!すごい!」と他の子どもたちも探し始める。
  • 次々に黄色い粒を発見し喜ぶ。そこで、キャベツの葉の一部をちぎって部屋に持ち帰る。持ち帰った葉の黄色い粒をみんなで見て、「何の卵かな?」と話し合う。「きれいなチョウチョ」「ガやで」「あかいチョウになる!」と様々な意見が出た。そこで何になるのか飼うことにする。卵を発見したことはクラス全体の関心事になった。保育者が、絵本や図鑑を、絵本棚に揃えたり、虫メガネを飼育箱の横に置いたりすることで、虫への興味がなかった子どもも、関心をもつようになった。
  • 登園後すぐに、キャベツの葉を見るのが日課になった子どもたち。朝一番に登園したBちゃんとCちゃんが、葉に小さなアオムシが付いているのを見つけ、「卵がかえっとう!」と言い、友達に知らせる。次々に子どもたちが飼育箱に集まった。
  • 「何チョウのアオムシか?」「餌は何か?」など話し合うが、はっきりしなかった。そこで、キャベツ畑に行って観察したことで、「見て!アオムシおった。キャベツ食べとう!」と確認ができた。みんなはキャベツの穴の周りにいるアオムシを見て、「やっぱりキャベツ食べるんや」「よかった、餌あったなぁ」と安心した。

疑問「あれ?アオムシのウンチ、黒と緑がある」<4月下旬>

ほぼ芯だけになったキャベツの葉
  • 成長したアオムシはキャベツを勢いよく食べ、金曜日にたっぷり入れた葉は、月曜日にはほぼ芯だけになっている。子どもたちが飼育ケースを覗き込み、キャベツの葉の下の大量のウンチを見て、「臭い!」「アオムシもトイレ作ったらええのに」「はよ変えたろよ」と、飼育箱の掃除を始める。
  • キャベツを外に出すとFちゃんが、「あれ?アオムシのウンチ、黒と緑がある」と気づく。「ほんまや。なんでやろ」と、Aちゃんは覗き込む。「違うアオムシのウンチとちゃうか」「蓋してあったのに、外から入られへんで」「下痢しとんと違う?」と様々な意見が出るが、分からない。
  • そばでDちゃんが図鑑を片っ端から見るが、アオムシのウンチが載っている本はなかった。そこで、アオムシのウンチを調べるにはどうしたらいいか、全員で話し合う。「お母さんに、聞いてみる」「スマホで調べたら?」「図書館行ったら?」など、各自思いつく案を出すが、どれも時間がかかる。するとGちゃんが、「ウンチを全部きれいにして、新しいウンチを見たら?」と提案する。その言葉に全員が納得。早速、全てを洗い、新しいキャベツを入れ、アオムシのウンチを待つことにした。
  • 食前、飼育ケースを覗いた子どもたちから、「ウンチしとうで!」「見て!緑や。アオムシのウンチ緑やで!」「へえ、アオムシって緑のウンチするんやな」「はよ分かって、良かったな」「あれ?なんで、あんまり臭くないんやろ」など、それぞれに納得しながら昼食をとることができた。

観察「動かへんで」「何でかな?」<4月下旬>

飼育ケースの蓋に張り付いたサナギ
  • Hちゃんが、飼育箱のアオムシが一匹足りないことに気づく。「一匹おらへん!」と言い、周りにいた子どもたちも集まって心配そうに見ている。
  • 下から覗いていたCちゃんが、「おった!蓋にくっ付いとう!」と教えてくれる。慎重に蓋を外すと一匹のアオムシが飼育ケースの蓋にぴったり張り付いている。
  • 体が丸くなっているアオムシを見て、「寝てるんかな?」「動かへんで」「死んでもたんやろか?」と子どもたちが不安になる。「何でかな?」「お腹がいっぱいやから?」と首をかしげる子どもたち。そんな友達の様子を見たDちゃんが、「サナギになりようと思うで」と声を掛ける。「そうか」「やった!どんなサナギになるんかな?」「これ違う?」と早速図鑑を出して調べ始める。
  • 次の日、すぐに飼育箱の蓋を開けてみる子どもたち。すると、蓋に付いていたアオムシはしっかりサナギになっていた。「やった!」「サナギになった!」とクラス全員で喜ぶ。「触ったら、あかんで」「サナギは落ちたら死んでしまうんやで」と互いに注意し合う。他にも、何匹か蓋に移動しているアオムシがいて、子どもたちの期待が高まった。

納得「やっぱりモンシロチョウや」<5月上旬>

サナギから羽化したチョウ
  • 朝一番に「チョウになってる!」と、羽化を喜ぶ子どもたちの歓声が部屋に響いた。子どもたちは大喜びで飼育箱を観察している。「良かったね!きれいなチョウになったね」と、保育者も喜ぶと、「うん!これ、キチョウやったんやな」と、図鑑を広げて見ている子どもがいる。「え?何でそう思ったの?」と保育者が尋ねると、「だって羽が黄色いもん。ほら!」とチョウを指さす。確かに羽化したてのチョウの羽は黄色っぽく、閉じているので中の模様も見えない。子どもたちが見ている図鑑は羽を広げた状態のチョウが載っており、色もキチョウの色合いとよく似ている。図鑑のモンシロチョウは白く、紋がはっきりしており、この図鑑と比べるとどう見てもモンシロチョウには見えない。互いに注意し合う。他にも、何匹か蓋に移動しているアオムシがいて、子どもたちの期待が高まった。
  • しばらくするとうっすら紋が見えてきた。「あれ?黒い丸が出てきたで」「これって、もしかしてモンシロチョウと違う?」と子どもたちは再び図鑑をめくる。すると「ほら!これやで」と指さすが「ええ?はっきり見えへんから分からへん」といぶかる子どももいる。「そうや、キチョウに丸はないで」「そしたらモンキチョウ違う?」「色が薄いわ」など、子ども同士で言い合いをしていると、突然チョウが羽ばたいた。その瞬間チョウの紋がはっきり見えた。「やった!やっぱりモンシロチョウや!」「ほんまや!これ(図鑑)と同じや」「そうか、キャベツ食べるアオムシは、モンシロチョウやもんな」と全員が納得した。

考察

ツマグロヒョウモンの幼虫
ジャコウアゲハのサナギ
  • キャベツに見つけた卵から、幼虫、サナギ、成虫へと育てていく過程で、子どもたちは幾度も、「何だろう」「どうなるのかな?」という好奇心や疑問をもち、興味を深めていった。気づいたことや不思議に思ったこと、疑問に思ったことを友達と共有し、「調べる」「確かめる」ことに興味をもち、分かった時の達成感や満足感を味わうことができた。
  • 図鑑と実物が全く同じではないことや、図鑑には載っていないことなどについて、子どもたちは話し合い、探究していた。
  • 子どもたちは、自分の意見と違う見方があることや、そこからいろいろな発見につながることを体験した。
  • 保育者の思いと援助

    保育者は、子どもたちが多くの発見をし、自分たちで疑問を解決していく柔軟な発想や気づきに驚かされた。その後も、ツマグロヒョウモン、ジャコウアゲハ、アオスジアゲハなど、8種類のチョウの飼育や観察をした子どもたちが、疑問をもったり考え合ったりする姿を大切にし、納得するまで活動するよう援助した。

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