保育のヒント~「科学する心」を育てる~

5歳児の飼育活動~オタマジャクシ~/社会福祉法人相友会 諏訪保育園(東京都)

小さな生き物を、子どもたちが観察することができる自然は、園の近くにありますか?

今回は、子どもたちがカエルの卵を見つけ、観察を続ける事例です。保育者は、子どもたちが生き物に関わる姿を温かく見守りながら、観察や興味を深める環境を示し、「科学する心」が育まれる姿を捉えています。

カエルの卵を育てよう/5歳児

カエルの卵との出合い(2月下旬)

  • 散歩に行った小川でカエルの卵を見つけた子どもたちが、「お部屋で育てたい」と、言った。担任は、“生態系を壊してしまうのではないか?”“自然を荒らしてしまうのではないか?”と心配になり、その日はよく考えるために持ち帰らず園に戻った。
  • 園に帰って園長に相談したところ、「ヘビや、鳥、そして人間など、どのみち厳しい自然環境の中で生きていくわけだから、ほんのちょっとなら大丈夫だと思うよ」との助言を受け、子どもたちの“自分たちで飼いたい”という気持ちの強さと、生き物を通じて学ぶことも多いのではないかと、子どもに添った保育の方向性を考えた。
    翌日、再び小川に行って、少しだけ卵を持ち帰った。

ちゃんと育てるために、調べよう

  • 5歳児が作成した“育て方の絵本”「かえるのそだてかた」の画像「カエルの卵をちゃんと育てたい」という思いと、「分からないことが多すぎる」ということで、5歳児が「自分たちで調べる」活動を始めた。4歳児当初から続いていた、“調べたら記録する”という活動に自然につながっていたため、子どもたちは2日間で「育て方の絵本」を作った。
  • 子どもたちは、3歳児に、「育て方の絵本」と一緒に卵を分けた。
    心配だった5歳児たちは、この日から毎日見に行き、3歳児から憧れの対象となり、異年齢の子ども同士の親密な関係につながった。
育て方を調べる5歳児の様子 育て方の絵本を作る5歳児の画像 5歳児が3歳児に水の替え方などを伝えながら手伝っている様子

このまま飼っても、大丈夫なのかなあ

  • カエルの卵は、一週間ほどでオタマジャクシになった。丸まったり、伸びたり…。一生懸命に動いているのが分かり、子どもたちは飽きることなく、ずっと見ている。すると、オタマジャクシは、プルプルしている周りのゼリー状のものを食べ始めた。
  • 丸いまま形が変わらずに、白くなってしまったものが10個程あった。これは、死んでしまって孵化できなかったものだと分かった。白い卵が増える様子を見て心配になった子どもたちは、小川に返しに行くことを決めた。
  • たくさんの卵の中から半分程「川に帰してあげよう」と、持って行った。
    「みんな、どうする?ここに逃がしてあげる?」「自然の中で生きるのが一番だよ」「たくさん飼い過ぎても死んじゃうから!」と、子どもたちは、全て飼いたいと思いながらも、オタマジャクシのために良いことだと考えて、川に逃がした。
  • ところが、「温かい室内環境だからこそ、早く孵化したのかもしれない」と、心配になった。翌日、子どもたちは再び確認しに行き、生きているオタオマジャクシを見て、「生きてた、生きてた」「ちゃんと生きてた」「動いている、動いている」と安心し、観察していた。そして、これからも、飼育しているオタマジャクシと同様に、見守っていこうと子ども同士で話していた。

オタマジャクシとの関わり

ケガなどで弱ったオタマジャクシを飼うための水槽“オタマジャクシのびょういん”
  • オタマジャクシの大きさに合わせて紐を切ったり、透明容器に入れて紙に形を写し取ったりして、園のオタマジャクシと、小川のオタマジャクシの大きさを比べた。動くものの大きさを測るのは難しかった。
  • 共食いを始めてケガをしたオタマジャクシを、“びょういん”と看板を付けた水槽に分けて飼う。「少しずつ良くなっている」「裏返ったままだけど、一生懸命頑張って生きている」と、よく観察して世話をした。

オタマジャクシのためにやっているのに、何でお礼を言われるの?

  • 逃がした後の様子を観察したり、水や水草を取ったりする中で、小川の汚れにも気付いた。
    「オタマジャクシがかわいそう」と、行く度に小川のゴミ拾う子どもたち。するとそこで畑をやっているおじさんが近づいてきて、「君たち、いつもありがとう。きれいになったね」と、声をかけてくださった。しかし、子どもたちは「オタマジャクシのためにやっているのに、何でお礼を言われるのだろう」と不思議がっていた。この関わりが、地域の方とのつながりになった。
紐を使い、オタマジャクシの大きさを測る様子 オタマジャクシの成長や活動の絵を描き、絵本にする。絵本を作っている様子。 子どもたちが作った絵本の画像

オタマジャクシとの92日を振り返って

オタマジャクシとの92日間を、子どもと保育者とで振り返ったところ、 たくさんの感想が聞かれ、みんなで共有した

オタマジャクシとの92日間を振り返りを記した掲示物の画像
  • 卵を持って帰った日:2月21日
  • 足が出た日:3月1日(卵が来てから9日目)
  • 手が出た日:4月26日(卵が来てから65日目)
  • カエルになった日:5月1日(卵が来てから70日目)
  • 全部のカエルとさよならした日:5月22日(卵が来てから92日目)
  • お世話をして、大変だったこと
    • 「オタマジャクシをどのくらいの力で持ったらいいかが分からなかった」
    • 「水を替えても、すぐに濁ってしまった」
    • 「カエルになってからの水替えが、逃げてしまいそうで大変だった」
    • 「カエルが、アブラムシをなかなか食べてくれなくて心配だった」
  • お世話をして、楽しかったこと
    • 「3歳児さんや4歳児さんと一緒に育てたり、川に行ったりできた」
    • 「水替えの時に、手に乗せられたのが可愛かった」
    • 「水草を採りに行ったのが楽しかった」
    • 「アブラムシの調査に行ったのが楽しかった」
  • 感想
    • 「生き物を育てるのは大変だと思った」
    • 「さよならのときが寂しかった」
    • 「死んじゃったオタマジャクシやカエルがかわいそうだった」
    • 「最初はすごく苦手だったけど、そっと触ったり、お世話をしたりしてみたら可愛かった」
    • 「“病院のこ”が頑張って生きていたからすごいと思った」
    • 「“病院のこ”がカエルになってくれて嬉しかった」
    • 「卵からカエルまで飼えてよかった」

振り返って

  • 子どもたちは、オタマジャクシとの関わりを通して、命の大切さを知る体験を重ねることができた。
  • 卵からカエルまでの成長の過程や餌の変化、棲み処やその場所(環境)による成長の違い、丁寧に観察して世話をすることの大切さなど、子どもたちは多くのことを学んだ。このようなたくさんのことを、身をもって体験させてくれたオタマジャクシに、感謝の気持ちでいっぱいになった。
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