保育のヒント~「科学する心」を育てる~

1歳児の心が動いた瞬間に寄り添う~アリ~/伊那市立手良保育園(長野県)

身近な自然で、子どもたちはどのような発見をしていますか?

今回の事例は、1歳児が散歩で穴を見つけた姿に注目しています。3歳から5歳児のような言葉やダイナミックな動きはありませんが、注視している視線の先や動き、つぶやきなどを記録し、読み取る工夫をすることで、1歳児の世界が見えてきます。

2019年度よりソニー幼児教育支援プログラムでは、1歳児からの実践を募集いたします。詳しくはこちら

何の穴かな/1歳児

保育者の思い

  • 本園は小規模園ならではの良さを生かし、保育者は子どもの感性を引き出しながら「遊びの中から学ぶ保育」を心掛けている。
  • 園内や園庭、散歩に出かけた先で、不思議がったり気づいたりした対象に関わりたいと行動する子どもの「心の動いた瞬間を活かす」保育をテーマに、保育者はどのような援助をし、環境を設定したらよいのか保育者間で考え合いながら保育をしている。

子どもの理解を深め、援助や環境について検討する手立て

  1. 子どもの視線、発見、喜びや驚きのつぶやきなどを受け止め、記録する。
  2. 子どもや保育者の姿を分析する。
  3. 分析の観点ごとに、子どもの姿を次のように示す。※実践事例集Vol.15参照(PDF)
    • 「あっ!」好奇心
    • 「どうして?」疑問
    • 「やってみよう!」探究
  4. 園内研修において事例検討を行う。

記録

【事前の姿】散歩で小学校の校庭に行き、アリの巣穴を見つけた子どもたちは、座りこみ、巣穴をのぞいていた。これまでにアリの巣穴を何度も見つけ、見ている姿があった。

子どもの姿 保育者の関わり

Kちゃん:持っていた長い花の茎で穴を突く。穴に花の茎を入れる子ども疑問
保育者と一緒に穴の中に茎を入れる。
花の茎を穴から引っ張り出すと巣穴にいたアリが茎にしがみついて出てくる。

巣穴を指さして「穴があるね」と声をかける。
「穴の中に入るかな?」
「奥まで入ったね」と一緒に楽しむ。

「わぁーアリが出てきたね」と一緒に喜ぶ。

Uちゃん:「おー」と声を出して反応する。好奇心
アリが出てきたのが面白かったのか、
自分で花の茎を穴に入れようとするがうまく入らず探究
保育者に「もう1回」と花の茎を渡す。疑問

一緒に何度か穴に茎を入れる。
出てきたアリを見て「大きなアリだねー」と話をする。

Kちゃん:アリが出てきたことで巣穴よりアリに興味をもちアリを目で追ったり、アリを指でつまんで見たりしては楽しんでいる。少しすると、保育者の膝にアリを乗せてはキャッキャッと笑う姿が見られた。

「先生の所に来たー」と言って手に移し替え、地面にそっと返した。

考察

  • 巣穴を茎で突き始めた子どもの行動に、保育者が寄り添い一緒に体験することで、子どもたちは「穴の中はどうなっているか」「何がいるのか」など、ワクワク・ドキドキを味わうことができたと考えられる。
  • 最初は2人とも巣穴に茎を入れる事に興味をもっていたが、アリが出てきたことによって、アリに興味を示す子ども、また変わらず茎を入れることをずっとやり続ける子どもなど、それぞれに移行していった。子どもの興味のもち方はそれぞれであり、子どもの興味をもったことに共感し認めていく。

園内研修での話し合いから

  • 保育者の関わりの中に、気持ちを代弁した言葉が多いことが分かる

    まだ発する言葉が少ないこの年齢の子どもたちが発した短い言葉「おー!」などに対して、心が動いた瞬間であり、その場に一緒いることで驚き、喜び、不思議、その時の気持ちなどを共感し、子どもが伝えたいと思っていると思われる言葉を添えることが大切である。また子どもが起こしたアクションに対しても言葉を添えることでそのアクションが意味をもち、子どもを認めることにつながっていく。また言葉の獲得にもつながっていく。

  • 遊んでいる中で子どもが保育者を見てくることにどう応えるか

    何を訴えてきているか読み取ることが大切で、笑顔を返し、ここにいるからね、見ているよ、楽しいね、びっくりしたね、など共感することで子どもたちは安心し、遊びを続けていく。その安心感から、自ら心を動かして行動する喜びや意欲につながり、保育者から離れて世界を広げるようになっていく。乳児は特に安全への判断は難しい場面もあり、危険も伴っていくので園全体で見ていくようにしたい。

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