保育のヒント~「科学する心」を育てる~

保育の質の向上を目指して/足立区立中島根保育園(東京都)

保育指針、幼稚園教育要領、認定こども園教育・保育要領が改訂されました。みなさんの園では、どのような保育の質の向上に結び付いていますか?

目の前の子どもたちとの生活や明日以降の保育のための工夫、保護者はもちろん、学校や地域施設との連携、様々な事務や環境整備など多忙な日常の保育の中で、「保育の質の向上を目指す取り組み」を進めることは、一人一人の保育者の意識と園全体の協力体制が重要です。今回は、園内研究の事例をご紹介します。

園内研究~「科学する心」を捉えるために~

保育の質の向上を考えたとき、「子ども一人一人について、より理解を深めることが必要不可欠である」「子どもたちが心身ともに満たされ、豊かな感性や創造性を育まれる」ということが、日常に話題にあがっていた。しかし、具体的な方法が見つけられずにいた。そこで、保育の質の向上の実現のためにはどうしたらよいのかを、園内研究会で探った。

1.日誌の見直し

話し合いを重ねるうちに、何度も話題に上がったのは「日々の積み重ね」という言葉である。毎日の保育はつながっており、単体ではない。「日々の積み重ね」があるからこそ保育は深まり、そして質の向上にもつながるのではないかという考えに至った。日々の保育をより丁寧に行うために、保育を分析、考察をしたり、振り返ったりすることができる記録の方法はないかと考え、毎日記録している日誌を見直すことになった。

今までの幼児クラスの日誌:時系列に保育の実施内容を記述する。
問題点
子どもたちが「何に夢中になっているのか」「どんなことを感じているか」が読み取り難い。日々の保育の分析、考察や振り返りが十分にできていない。
  • 子どもたち同士のつながりが見える日誌にしたい
  • 子どもたちを中心にした援助が考えられるような日誌にしたい
新たな幼児クラスの日誌:担任以外の保育者も日誌を読めば子どもたちの姿を理解できたり、園内研修の際の事例検討にも日誌を活用したりできる様式に変更する。
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新しい日誌(クリックで拡大)
  • 登園、視診を記述。
  • 実施内容と子どもの姿をエピソードで記述。
  • エピソードの分析と考察、保育者の援助を記述。
  • 評価と反省、明日への展望を記述
  • 記述された日誌には、園長が適宜アドバイスやコメントを入れている。

日々の保育の記録を取ることで、担任以外の保育者も日誌を読めば子どもたちの姿を共有できたり、園内研修の際の事例検討にも日誌を活用したりできるようになった。

また、子どもたちが夢中になっていることややってみたいこと、感じていること、人とのつながりが見えるようになり、毎日の振り返りができるようになった。園が目指す子どもたちを中心にした援助ができる保育につながった。

2.『科学する心を育てる』を研究するに当たって

今年度、本園では 保育の質の向上について話し合う機会が多くなった。そして日誌の形式を変更したことで、日々の子どもたちの姿を具体的に、より丁寧に捉えられるようになった。また、その日誌に記述された内容から、子どもたちの『科学する心』の芽生えを多く発見できるようになった。

さらに保育を掘り下げて考え、その質の向上を目指すためには、一つ一つの事例から子どもたちが探求していく場面や、その援助の方法を探らねばならないと考えた。探求する姿は『科学する心』と密接であり、“保育にはなくては、ならない”と職員間で共有し、今年度はどの視点で研究するかを考えた。

遊びは結果では評価できない。そのプロセスを育み、大切にしたいとの願いから、今年度は、「『やってみたい』を支える」の視点から、子どもの主体的な遊びと保育者の援助を探ることとした。

子どもたちが自分で遊びを選び、興味をもち、考え、試し、繰り返す中で生まれる、子どもたちの『やってみたい』の姿に対し、保育者が具体的にどのような援助をしたらよいのか、またそうした遊びの中から『科学する心』がどう育まれるのかを追求したいと考えた。

昨年度までの研究から

一つの遊びは、様々な要素が重なりあったり並行したりしてできていることが分かった。子どもたちの姿から図1のITTAサイクルを通して、遊びから学びへ、そして様々な要素と絡み合って「科学する心」の芽生えへとつながっていくと考えている。

興味をもつ「INTEREST」(意欲の芽生え、好きなことの発見、心揺さぶられる出来事との出合い)→やってみる「TRY」(挑戦する、真似る、自分の体を動かす、成功と失敗)→考える「THINK」(疑問に思う、思考の発達)→もう一回やってみよう「AGAIN」(試す、繰り返す、知識の獲得)のサイクルが「科学する心へつながる
図1 ITTAサイクル

3.今年度の取り組み

園内研修の様子

保育の質の向上を考えたとき、保護者の保育への理解や、子どもたちの姿の共有は必要不可欠であると考えたことから、今年度の研究は保護者にも参加してほしいと職員間で声が上がった。
また、一つ一つの事例から子どもたちが探求していく場面や、その具体的な援助の方法を探るために、より具体的に、そしてもっと分かりやすく『科学する心』を捉え直す必要があると考えた。

そこで、『科学する心』をもっと分かりやすく、捉えやすくするにはどうしたらよいのか?考え合った。「子どもの成長を木の生長とリンクさせて、あそびを『木』に例えたら分かりやすいんじゃないかな?」と言う提案から、「枝になるのはどんな部分?」「土って何?」「何が葉っぱになるの?」「どんな花を咲かせるのかな?」と、職員間で何度も話し合いを重ねた。

昨年度までの取り組みのITTAサイクルを、子どもの成長を木の生長とリンクさせ、木に例えて捉え直すことにした。

子どものアイデア
「科学の木」と、「実」を作る子ども

研究を進めるにあたり、作りかけの『科学の木』を掲示し、保護者にも研究の経緯が見えるようにした。すると『科学の木』を見た子どもたちが「どんな実が生るのだろうね」と、実を作ってくれた。保育者は『花』を咲かせる予定だったが、子どものイメージとの違いがこんなところにもあったと感じた場面であった。

子どもの意見を採用し、『実』を作成することにした。遊びを通して育つ姿、育ってほしい姿、願いやねらいが実になると仮定し、木を完成させた。

4.科学する心の捉え

「科学する心の捉え」の図(この次に詳細内容を記載)
図2 科学する心の捉え
  • 土:『やってみたい』こと
  • 木の幹:遊び
  • 木の枝:Interest(興味をもつ)、Think(考える)、Try(試す)、Again(繰り返す)
  • 葉:遊んだときに感じること・育つこと
  • 実(赤丸):願い、ねらい、育ってほしい姿
  • 自然事象:援助(太陽:見守り / 雷:新しい考えや知識との出合い / 雨:提供、支援 / 風:あと押し)
  • 1つの遊びのプロセスを『科学する心』と捉え、木が生長する過程に置き換えて考えた。具体的な事例をもとに検証していく。(『科学の木』と命名)
  • 事例検証は新しい形式の日誌を用いて行った。分析する際、分かりやすくなるよう事例の文章に、「『やってみたい』が分かる記述」には赤い破線を、「『やってみたい』を支える援助」には、水色で細かい破線を入れた。
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