保育のヒント~「科学する心」を育てる~

畑〜腐葉土への興味〜/富田林市立錦郡幼稚園(大阪府)

みなさんの園では、野菜を育てていますか?
子どもたちが、土や畑に興味をもった時、どのような環境の工夫をされていますか?

腐葉土に出合った子どもたちが、自分たちで作れることを知り、益々興味を深めていく実践です。取り組みの過程では、地域の方から情報を得る機会、保護者と共に活動する機会、子どもの気付きを可視化するなどの保育の工夫が、子どもたちの「科学する心」の育ちを支えていることが読み取れます。

腐葉土を作りたい/5歳児

12月中旬「この土なんか匂いがする!」

  • 4歳児と一緒に、エンドウマメを植えることになった。腐葉土を混ぜて土作りから 始めた。
  • 子どもたちは、腐葉土を手に取り、「黒い土やなぁ」「木が土の中に入っていた!」「根っこみたいなのがあるで」「この土なんか匂いする」「フワフワしてる」などと気づいたことを伝え合う姿があった。そして、「腐葉土ってなんだろう」という問いが出てきた。
  • 以前に読んだ絵本『ふようどのふよこちゃん』(作・絵:飯野和好 / 出版社:理論社)を思い出しながら、「落ち葉の栄養が、土にいくから栄養たっぷりの土になるってことかな?」などと、腐葉土ができていく様子を自分なりに考えて話す姿があった。
    このような声が聞かれたので、「腐葉土って作れるみたいよ」と保育者がつぶやく。
  • 子どもたちは、「えっ?自分たちで作れるの?」「やってみたい!」と驚き、興味をもった。
保育者の読み取り・大事にしたい姿や育てたいこと
  • 「黒い土やなぁ」というつぶやきから周りの子どもたちも、他の土との違いを感じ始め、目に留めて問う姿があった。1学期に、セミとの関わりから土の中の表現遊びになった土への興味が、12月になっても、子どもたちの中でつながっていることが分かった。
  • 「腐葉土を自分で作れる」ということに興昧をもつ。今まで、自分たちでいろいろと考え出した経験から「自分たちでできる!」という主体的な姿につながっていると思われる。

12月中旬「腐葉土って自分たちで作れるの!?」

  • 腐葉土を自分たちで作ることができると知り、早速、園庭の落ち葉集めが始まった。翌日、「昨日、錦織公園で(葉)拾ってきた!」とAちゃん。「朝、小学校の近くにいっぱい葉っぱ落ちてた」と、Mちゃん。いつもは気づいていなかったところにも目を向け、葉っぱを集めてくる姿があった。Aちゃんは、「錦織公園で見つけた落ち葉と同じ葉が幼稚園にあるか探してみる!」と話し、葉っぱ探しが広がる。保育者は、Aちゃんの気づきを受け止めた。
  • 葉っぱを集めることだけでなく、形や色、模様など他の子どもたちと違った視点で考える姿に、保育者は共感した。また、比べることができるように可視化するなど環境を工夫し、みんなでいろいろな葉っぱ探しをする時間や場を保障した。
  • 4歳児も興味をもち、形や色、模様、葉脈などを見比べる姿があった。
  • 腐葉土作りのきっかけや落ち葉探しからの子どもたちの気づきなどを保育者は、冬休みに入る前に保護者に向けて『わくわく発見アルバム』として発行した。
保育者の読み取り・大事にしたい姿や育てたいこと
  • 普段、積極的に自分の思いや考えを伝えることが少ないA児であったので、自ら考えを伝えようとする姿を大事にしたいと考えた。
  • A児の葉っぱ探しのように、一つのことに注目して観たり、そこから違いに気付いたりする姿や時間を大切にしたいと考える。

12月下旬~「どんなふうに作るのか知りたい」

落ち葉の上に土を重ね、その上にシートを被せた絵と、「まず3かげつおいておく」という説明文が書かれている
写真4 Yちゃんが描いたわくわく発見カード
掲示物の拡大画像へ
写真5 写真を交えて可視化した掲示物
(画像クリックで拡大)
  • 冬休み中に落ち葉を探したり、葉の種類などを図書館で調べたりして分かったことを“わくわく発見カード”で知らせてくれたAちゃん。保護者からも、カードにメッセージをいただく。(写真6,7)
  • 腐葉土の作り方に興味をもっていたYちゃんは、休み中にタブレットを使って調べて、“わくわく発見カード”に絵や言葉で描いてきた。そして、絵を使ってクラスの友達に腐葉土の作り方を説明した。(写真4)
  • 保育者は、「落ち葉や藁、雑草を集めて腐葉土を作っていること」「大学で作られた腐葉土を使ってイチゴの苗やミカンの木などの植物を育てていること」など、教えていただいたことを、写真を交えて可視化して貼り出した。(写真5)
    1. Bちゃん:「土の上に落ち葉がいっぱいある!」
    2. 保育者:「これはあえて掃除をせずにおいておくんだって」
    3. Cちゃん:「そうか そうしたらまた葉っぱから土に栄養がいくってことかな」
    4. Dちゃん:「雑草も栄養になるんや…そっか!根っこにも栄養があるからか」
Aちゃんの“わくわく発見カード”と保護者からのメッセージ
保護者のメッセージが書かれたわくわく発見カードの画像
写真6図書館で借りた本の中に載っていた葉っぱを2つ描きました。あと1つは、図書館前でとってきた葉っぱです。いろいろな葉っぱがあって面白いですね。
保護者のメッセージが書かれたわくわく発見カードの画像
写真7公園で拾ってきました。他の葉っぱには目を向けないで、これだけを拾いました。とても気に入ったみたいで絵も描きました。
保育者の読み取り・大事にしたい姿や育てたいこと
  • 保育者が先を急がずに、腐葉土の作り方をすぐに知らせなかったことが、Y児の知りたいという気持ちにつながったと思われる。
  • 映像で知ったことを自分なりに咀嚼し、わかりやすく友達に絵や言葉で伝えている。
  • 写真を見ながら、「雑草の根っこにも栄養があるから雑草も栄養になるんかなぁ?」と、今までの経験を思い起こし予想する姿があった。まずは、自分なりの見方や考えに共感したり応答したりしてきたことで、「~だからこうかもしれない」と、自分なりの考えをまず伝えようとする姿が定着してきている。

1月中旬「腐葉土作り始まる!」


  • 連携している近隣の大学の先生に、腐葉土を作る揚所について教えていただいた。『日がよく当たる場所』『雨水もかかる場所』を目当てに、子どもたちとよく考えて穴を掘ることにした。
  • 穴を掘り出すと、木の皮やセミの抜け殻があったり、根っこが張っていたりすることが分かった。また、「セミの幼虫の顔みたいやよ」「ウワー!セミの幼虫やー!」と、セミの幼虫が出てきことに子どもたちは驚いた。「根っこの近くにいる!」「やっぱり根っこの蜜を吸っているってことかなぁ?」と考える。そのことを基に、掘る場所を考えている様子が伺える。
  • 土を掘るとセミの幼虫が出てきたため、「年少さんに知らせよう」と呼びに行った。「来年の夏に出て来るかなぁ」「来年やったら僕たち居ないで…」「でもまだ土の中かも…5年間土の中やもんな」「いつ入ったんやろ(土の中)」などと話していた。
  • 4歳児が駆けつけると、「この揚所をまちがえて掘らないようにして欲しい」ことを、5歳児は伝えていた。4歳児は、セミの幼虫の看板作りを始めた。その後、数日この揚所を見に来る4歳児の姿があった。
保育者の読み取り・大事にしたい姿や育てたいこと
  • 10月に昆虫館で、土の中のセミの幼虫を見たり、感じたりする体験をした。さらに、11月には、土の中のイメージを膨らませる遊びを創り出していた子どもたちは、今回、実際に土の中にいる幼虫に出合うことができた。土の中にいるセミの幼虫に出合った体験は、子どもたちだけでなく、保育者たちも子どもたちと同じように心を動かした。
  • 自分の目で実際に確かめて感じたからこそ、「やっぱり根っこの蜜を吸っているってことかな」と言うつぶやきになったと感じる。
  • 4歳児が来年の夏、この揚所でセミに出合った時には、どのようなつぶやきや関わりをするのだろうか。この体験を保育者もしっかり覚えておきたい。
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