保育のヒント~「科学する心」を育てる~

種から種へ/社会福祉法人 鏡福祉会 あおば保育園(広島県)

みなさんの園では、野菜を育てていますか?
野菜や草花を育てる過程で、子どもたちの「思いもよらない気づき」に出合うことはありますか?

今回は、ダイコンを育てている子どもたちの小さなつぶやきを受け止めて、その思いを実現した事例をご紹介いたします。収穫後に残していた1本のダイコンの生長に期待感をもって観察し、花と出合い、変化に気づく子どもたちの姿から、「科学する心」を読み取ることができます。

「種で命はつながっている?!」/4歳児

「ほっておいたらどうなるんかな?」11月下旬

収穫祭でダイコンを料理するこどもたちの写真
  • 昨年度の3歳児の時、ダイコンを植えた子どもたち。8月に種を蒔き、生長を楽しみに過ごした。秋には、抱きかかえるほど大きいダイコンをたくさん収穫した。
  • 後日、園の「収穫祭」では、保育者と子どもたちとで、大鍋で豚汁を作った。その中で、3歳児は、ダイコンをピーラーで皮むきしたり、初めて包丁を使ったりする経験をした。
  • ダイコンを収穫した時、「ダイコンをほっといたらどうなるんかなあ?」というAちゃんのつぶやきを受け止めて、1本だけ抜かずに残しておくことにした。
保育者の読み取りと願い
畑に植えたダイコンの写真
  • 子どもたちは今まで、園の環境の中で、いろいろな植物を育てたり観察したりしてきているので、なんとなく花が咲き、萎んでいくのではないかとわかっているようだが、ダイコンについては、食べる分の収穫でいつも終わっていた。
  • Aちゃんのつぶやきから、その後のダイコンの様子に興味をもち始めた子どもたちの気づきを受け止め、興味が深められるようにしていきたい。

「前見た時より伸びとる」4月初旬

  • そのままにしたダイコンはどんどん大きくなっていき、年も越した。子どもたちは自分たちで植えたダイコンが、冬の間もどんどん変わっていく様子にとても興味を示し、畑に行く度にその変化を気にしていた。
  • 年度が変わり、子どもたちは進級した。進級当初、新しい担任と畑に行くと、ダイコンから、薹(とう)が立っているのを発見した。
    1. 子ども:「前見た時より(茎が)伸びとる」
    2. 子ども:「白い花が咲いたよ」
    3. 子ども:「白い花の先に紫の色もついとる」
  • 子どもたちは、気づいたことを口々に話している。花の色や茎の長さに気づく子どももいた。
    1. 子ども:「もっと花が咲くかな?」
    2. 子ども:「花の色が変わっていくかも?」
  • 子どもが描いたダイコンの絵保育者は、一人一人の子どもたちの発見や期待感を受け止め、このまま残しておくことにした。また、絵で表現できるような機会や場をつくった。
保育者の読み取りと願い

絵画表現の様子や子どもたちの言動から、ダイコンをよく観察し、変化に気付いていることが把握できた。子どもたちが自ら、これからの生長に期待感をもって観察していけるようにしたい。

「実ができとる!」4月下旬

花が咲き、さやができたダイコンの写真
  • 花が咲いた後、さやができているのを見て、
    1. 子ども:「豆ができている!」
    2. 子ども:「トウガラシみたいじゃなあ?」
    3. 子ども:「赤くなるんかな?」などと、気づいたり、驚いたりする姿が見られた。
  • また、サヤの形を見比べたり触ったりして、「太っちょのと、細いのがある」と、つぶやく子どももいた。
    1. 子ども:「実ができとる!」

「ダイコンが腐っとる!」7月中旬

  • 一週間半、雨が続いた後、畑に行くと、サヤやダイコンが腐っているのを見つけた子どもたちは、「枯れとる」「腐っとるんじゃ…」と言った。
    1. 子ども:「水が足りんかったんじゃない?」
    2. 子ども:「でも、雨いっぱい降っとったよ」などと、友達同士で考えていた。
  • そして、腐っていないサヤを採ったところ、中から種が出てきた。
    1. 子ども:「魔法の種じゃ」
    2. 子ども:「それを土に植えたらまた、ダイコンができるんじゃない?」というつぶやきがあった。
  • 保育者は、子どもたちの思いに寄り添い、「なぜ腐ったのか」との子どもたちの考えを受け止め、一緒に考えたり、採った種が植えられるように環境を整えたりの援助を行った。
保育者の読み取りと願い

ダイコンが腐っている姿を見て「かわいそう」という子どもがいたので、自分たちが育てている植物を大事に思う姿を大切にし、「なぜ腐ったのかな」と、子どもたちに問いかけ、子どもたちなりに考えられるようにする。また、種がサヤの中から出てきた驚きと、「植えたらどうなる?」という子どもたちの興味を大切にしていこうと考えた。

「芽が出た!!」7月下旬

畑でダイコンの芽を見る子どもたちの写真
  • 数日後、子どもたちと一緒に採ったダイコンの小さな種を大事に蒔いた。
  • 小さな種から芽が出ることや生長に期待をもっている子どもたちの気持ちを受け止め、ダイコンの生長を大切に見守っていけるよう、保育者は、子どもたちと畑に行き、一緒にジョウロで優しく水やりをした。
  • 種を蒔いて一週間。
    「双葉が芽を出したよ」と、子どもたちは、大喜びをした。
保育者の読み取りと願い

大事に取っておいたダイコンは腐ったけれど、サヤから採れた種を蒔いたら芽が出たという経験を通して、子どもたちなりに、ダイコンが腐った意味を感じたり、次の命の芽生えを共に喜んだりなど、命のつながりを感じる体験ができた。これからも、このような体験を大切にしていきたい。

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