保育のヒント~「科学する心」を育てる~

繰り返している遊びに注目する/幼保連携型認定こども園 かなおか保育園(大阪府)

子どもたちは、砂場でどのような発見や学びをしていますか?

右の写真の子どもたちは、砂場をスコップでトントンと叩き、砂を固めています。この姿を、「遊びを楽しんでいる」との見方からさらに踏み込んで見取ると、どのような捉え方ができるでしょうか?

「目当てをもって遊んでいる」「気づいたことを手がかりに、思いを実現しようとしている」「土を固める方法を探究している」など、今回の事例からもいろいろな捉え方ができるのではないかと思います。

水が消える?/3歳児

園庭にある砂場で遊んでいる時に子どもたちが不思議な体験をする。掘った穴の中に水を入れると水が消えてなくなる。子どもたちは、水がどこに消えたのか疑問に感じていた。その後、山作りや川作りに発展していくが、そこでも水が消えてなくなることを何度も経験する。

RちゃんとKちゃんが砂場で穴を掘って遊んでいる/6月9日

子どもの姿と保育者の読み取りや関わり
子どもの姿 保育者の読み取りや関わり
  • 「あー…水なくなってきた」「アイスみたいになくなった」「ここに水入れて」と、掘った穴の中に水を入れて欲しいと言う。「水がなくなってきた」「ここから水入れて!」と、掘っては、水をもっている保育者に言い、水を入れることを繰り返す。
  • 水を入れてしばらくすると、水は吸い取られ消えてなくなる。消えていく水を、じーっと見つめ不思議そうに見ている。
  • 再度、穴を掘っては水を入れ、水が消える様子を繰り返し試しじっと見ている。
  • 砂場で遊んでいる子どもに、余った花の水やり用の水を持っていき、「何か遊びが広がるかもしれない」と思い、見守る。
  • 少しずつ消えていく水を見つめ、不思議そうにしている子どもの表情を見て、保育者自身も「面白い」と感じる。
  • 「水どこにいったんやろね」と、子どもの思いを言葉にして共感する。

Rちゃんが友達を誘い、砂場で山を作っている/6月9日

子どもの姿と保育者の読み取りや関わり
子どもの姿 保育者の読み取りや関わり
  • 砂山ができてくる。
  • 「水かけよー」と言い、砂山に水をかける。
  • 保育者の問いかけに、「固くなるねん」と、答える。
  • 「道作ろ」と言い、山からつながる道を作って、ジョウロに水を入れて流している。
  • 水を流した所に注目して、「また、水消えてくるわ」「どこにいった?」「ここの下かな?」などと、やりとりをする。しばらくすると消えてなくなる水をじっと見つめ、水がどこにいったのか指を突っ込んで探している。
  • 「どうして水をかけるの?」と声をかける。
  • 昨年度2歳児の時の山作りで、濡れた土で作ると固くなるということを学んだ経験から、水をかけたのではないかと予測した。
  • 「樋を出せば遊びが広がるのでは?」と考えるが、もう少し見守ることにする。

「固くしたら、シューってならないねん」/6月14日

子どもの姿と保育者の読み取りや関わり
子どもの姿 保育者の読み取りや関わり
  • 繰り返し、川を作る中で最初は浅かった溝が段々深くなってくる。「川作ろう」「これで、がーってする!」と言って掘り、水を流し、「あ!流れた」「あ…水、無くなってきた」とのやりとりをする。
  • 使う玩具はスコップからT字のスコップに変えて、(深く掘れるように)立てて使うようになる。
  • 保育者の問いかけに、「土の下にいくねん」「ここ(土)固くしないと!」「固くしたら、シューってならないねん」などと、会話が繰り広げられた。固くしなけなれば、土の間から水が抜けて無くなってしまうこと、固めることで土の間から水が抜けずに溜まるということを子どもたちのなりの言葉で伝えている。
  • 「どうして、水がなくなるのだろう?」と、問いかける。
  • 「どうしたら水がたまるのかな…」と言い、一緒に考える。
  • 「なるほど、水が土の間から消えていくことに気付いているんだ」と、読み取った。

「固めたら…」確かめる、確信する/6月15~16日

子どもの姿と保育者の読み取りや関わり
子どもの姿 保育者の読み取りや関わり
  • 足に力を込め、ギューっと、土を踏み潰し土を固めながら川を作っている。
  • 水を流すと、「ゆっくり無くなる」と言い、水がゆっくり吸い込まれることに気づく。そして、「足で固めたからやで」と、因果関係にもつながる気づきを言葉にし、「土を固めたら水が浸み込まない」ことを確信する。
  • T字のスコップで何度も同じ所を掘ることで深い溝になる。そこを、手や足を使って固める。何度も繰り返すうちに水が消えにくいことに気づき、友達と協力して川作りをするようになる。
  • 水を流すが水が途中で止まってしまうことに気づき、「あれ、なんか止まっちゃう」と言う。すると、Sちゃんが、「坂道になってないやん」と気づき、少し掘って調整すると最後まで水が流れる。
  • T字スコップの平面で土を固め、足で踏み固めながら川を作る。
  • 水が流れるのは坂道であることを経験の中で知ったRちゃんは坂を作る。
  • そこへSちゃんがやってきて葉っぱを浮かばせると流れていく。坂道は水が流れることを体験の中で実感しているようであった。
  • 昨日の砂遊びでの出来事を覚えているのか分からなかったので、必要があれば、保育者から昨日の振り返りをしようと思いながら、しばらく見守る。
  • 「水、溜まるかなー?」「ほんとだね、なんでゆっくりになるのだろう?」と、一緒に注目しながら、子どもたちの気づいていることを受け止めて語りかける。
  • 坂になってないことに、今までの経験から子どもたち自身が気づき、坂道になるように調整していたので、見守る。
  • 「わ!水流れたね!」と、認め、思うように流れた嬉しい思いを共感する。

「砂が水に負けちゃうねん」確かめる、確信する/7月10日

子どもの姿と保育者の読み取りや関わり
子どもの姿 保育者の読み取りや関わり
  • 雨天が続き、久しぶりの砂場遊び。数日空いていたが道を深く掘り、固めながら作っている。
  • 数名の子どもが集まってきて川の周りを囲み、水が無くなった後の川をじっと見ている。
  • 「水が砂に負けちゃうねん」と言う。
  • 「(道に)葉っぱ置くねん」と言い、大きな葉っぱを探すが、見つからない。
  • 「おっきな紙にしよう」「新聞紙がいい」と言い、早速、敷いて確かめる。「おー、水無くならない!」「あれ…無くなってきた…」などのやりとりをする。
  • 側で見ていた4歳児が、「ビニール袋でやってみたら?」と提案する。
  • 実際に水を流してみると水が溜まり、「水が溜まった」と、何度も試して確かめ、共感している。子どもたちは、袋を使うことで水が溜まるということを確信した。
  • 「また、水なくなっちゃったね」と、一緒に見ながら言葉をかける。
  • 「どうやったら勝てるのかなー」と、問いかける。
  • 「葉っぱないね…」「どうする?」と、子どもの言葉を受け止めて、問いかける。

考察

子どもたちは、「水が無くなる」という不思議さを感じ、本当に無くなるのか何度も試し、確かめていた。川作りでも同じように水がなくなってしまうということを知った子どもたちは、何度も繰り返し作る中で、「T字スコップを立てて深く掘ること」「土を固めることで水が溜まりやすいこと」に気づいた。

保育者は、その過程でその場の子どもたちの思いや気づきを受け止めて、共感したり共有したりする言葉かけをした。保育者は、遊びの展開を想定し、常に迷いながら、側で一緒に寄り添い援助する方法を選んでいる。継続する遊びを大切にして保育を振り返ったことで、その場で気づかなかったことも、「この時の援助はこっちの方がよかったかな」と保育者自身の援助方法を見直す機会を多くもつことができた。保育者は、子どもの興味や夢中になっていることを理解しようと努めたことで、納得するまで試行錯誤を重ねる子どもの体験を読み取り、「科学する心」の育ちを実感した。

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