保育のヒント~「科学する心」を育てる~

匂い~地域の環境を生かして~/西尾市立鶴城幼稚園(愛知県)

子どもたちが、“匂い”に注目して、自然やものと関わっている場面はありますか?

色の違い、葉の匂い、硬さ柔らかさ、味など感覚感性を働かせて、お茶の葉に関わり、感じたこと考えたことを友達と伝え合いながら、お茶摘みやお茶作りをする子どもたちの姿をご紹介いたします。地域の学校との交流が、子どもたちの体験を豊かにしていることも伝わってきます。

手揉み茶を作りたい/5歳児

始まり

園の近隣の高校でジャガイモ堀りをした際に、「あっちは何の畑?」と、茶畑に関心を示す姿があったので、高校の先生に頼みお茶の葉を少しいただいた。その茶葉を使って園長が、レンジでお茶を作った。子どもたちは、匂いを嗅いだり、お茶を味わったりした。その香りのよさと美味しさに、自分たちも「お茶を作ってみたい」と、さらに興味を示す姿が見られた。そこで、高校にお願いし、お茶摘みをさせていただくこととなった。

場面1:お茶摘みに行こう!

茶葉を摘む子どもたち
積んだ茶葉の香りを確かめる子どもたち

5歳児の子どもたちが、近くの高校(鶴城丘高校)に茶摘みに行った。

  1. Aちゃん:「葉っぱいっぱいあるけど、どの葉っぱを採ってもいいの?」
  2. Cちゃん:「これ全部お茶?」
  3. Bちゃん:「濃い葉っぱじゃない?だっておばあちゃんが飲んでるお茶はこの色の葉っぱだもん」と、自分の知っているお茶の色から、どの葉を摘めばよいのか考える姿があった。
  4. 保育者:「どの葉っぱの方が美味しそうに見える?」と、実際に葉をちぎり触れてみた。
  5. Cちゃん:「黄緑の葉っぱ!こっちの方が柔らかい!」
  6. Dちゃん:「うん、こっちの方がお茶の匂いがする。濃い緑の葉っぱは、あんまり匂いしないし硬い!」と実際に触れることで、葉の硬さや匂いの違いに気づき、皆に伝えることができた。
  7. 保育者:「どの葉っぱがいいのかな?」
  8. Aちゃん :「じゃぁ、いろんな葉っぱを採っていく?!」と、実際に柔らかい葉・硬い葉などいろいろな葉を摘んだ。
  9. Dちゃん:「お茶の匂いがする」
  10. Aちゃん:「しないよ。お茶っぽくない。葉っぱの匂いだよ」と、言い一生懸命に香りを嗅ぎ合う。
  11. Bちゃん:「ねぇ!この中の匂い、嗅いでみて!すごくいい匂い!!」と、Bちゃんが摘んだお茶を入れた袋の中に、顔を近づけて、嬉しそうに叫んだ。
  12. Aちゃん:「さっきよりも本物のお茶の匂い!」
  13. Dちゃん:「本当だ!すごい、すごい!お茶だ!」と袋の中で香りがこもり、よりお茶の匂いに近づき、みんなで驚いた。
  14. Eちゃん:「でも、葉っぱをちぎって潰すともっと匂いがするよ!」と、葉をちぎってすり潰すことで、香りがさらに強く出ることに気づき、友達に発見を知らせた。
  15. A・Dちゃん:「本当だ!もっと匂いがする!!」と、香りを共有した。
考察

初めてのお茶摘みでは「どの葉を摘んだらいいのか」という疑問をもったことで、実際に触れ、匂いを嗅ぎ、自分たちなりに考えようとする姿が見られた。柔らかさや硬さ、香りを感じることで『葉』の違いに気づくことができ、どの葉がお茶作りに向くのかも考えることができた。自分の発見や考えを友達に伝えたり、友達の考えを聞いたりしながら、今度はこうしたいという気持ちがでてきたようだった。

場面2:手揉み茶作り ※衛生上の配慮を十分に行う

園長の所に、前回のお茶の作り方を確認しに行った。『自分達で作る』ということで、子どもたちの表情にはワクワクする気持ちが溢れ出ていた。園長に教えてもらった作り方を基に、葉を蒸してからレンジで乾燥させていく方法で行うことにした。

蒸した茶葉を揉む(水分を出す)
乾燥前と乾燥後の茶葉の香りを
比較する様子
  1. Aちゃん:「あ! 全然違う!」
  2. Bちゃん:「本当だ! さっきよりもいい香りになった!」(蒸すことで香りが強くなり、葉っぱの匂いからお茶の香りになっていく変化に驚く)
  3. Cちゃん:「でもビチャビチャだよ。お茶ってカサカサだもん。全然違うよね」「濃い緑の葉っぱは硬くて柔らかくならないよ。ちょっと変だよ」
  4. Dちゃん:「失敗した?」
  5. Fちゃん:「今からカサカサのお茶にする方法はないかなぁ?」
  6. Dちゃん:「絞ればいい? 葉っぱの中のお水がなくなればいいんじゃない?」と言い絞る。
  7. Cちゃん:「緑の水が出てきた! 色水作る時みたいにやるんだね!」色水遊びが大好きなCちゃんは、色水を作る要領で茶葉を揉み、水分を上手に出していく。
  8. Aちゃん:「上手だね。本当に色水みたいにきれいな緑色だね」と、受け止める。
  9. Cちゃんは得意気に、揉む作業を繰り返す。
電子レンジで乾燥させ、擦るように揉む…数回繰り返す
電子レンジで茶葉を乾燥させる子どもたち
完成したお茶を淹れる様子

摘んだままの茶葉、蒸した茶葉、乾燥させた茶葉を置いておくと、匂いを嗅ぎ比べる。

  1. Aちゃん:「何か、爽やかな匂いになったね」
  2. Cちゃん:「ねぇ、こっち(乾燥)の方が(香りが)濃いよ」
  3. Dちゃん:「本当だ。いつものお茶だ」と、自分が嗅いだことのある“緑茶”の匂いを思い出し、比べながらお茶作りを進める。
  4. Bちゃん:「何回もレンジでチンして、揉むの大変だね。なかなかできないね」
  5. Fちゃん:「お茶ってこうやって作るんだ。買ったらすぐ飲めるけど、葉っぱから作ると大変なんだね」
  6. Cちゃん:「本当だね。葉っぱとったらすぐ飲めると思った。知らなかった」
  7. Aちゃん:「早く飲みたいね」
  8. Bちゃん:「もうカリカリになったし、売ってるお茶みたいになったからできあがりかな?」
  9. Aちゃん:「でも、レンジでチンってすると、まだ水が出てくる。まだできあがってないよ」
  10. Dちゃん:「カサカサになるまでやらないとでき上がりじゃないよね」と、納得行くまでレンジに入れては擦りを繰り返す。
  11. Cちゃん:「ちょっと葉っぱが茶色くなってきた。焦げた?でも、すごくいい匂いがする」
  12. Dちゃん:「もうできあがりにする?」と、葉の色やにおい変化を感じながらでき上がりを決める。
  13. Aちゃん:「あー楽しみ!早く飲みたいなー!」
    翌日、自分たちのお茶や他のグループのお茶の容器に鼻を近づけ、匂いを嗅ぐ姿が見られた。
  14. Eちゃん:「あれ?匂いが違う!!」
  15. Aちゃん:「こっちの方が苦い匂いがする」Eちゃん:「こっちの方は匂いが濃い」
  16. Cちゃん:「こっちはちょっと甘い匂いがするよ」
  17. 保育者:「何で匂いが違うんだろう」
  18. Aちゃん:「味が違うんだよ。きっと」と、匂いから味を想像する姿が見られた。
飲んでみる
学生さんへのお手紙

お茶の色がわかるように、透明のポットに茶葉を入れお湯を注ぐと、みんなは、「わぁ!きれいな緑色!」と声を上げた。飲む前に匂いを嗅いでみると…。

  1. Aちゃん:「美味しそうな匂いがする」
  2. Bちゃん:「お店で売ってるお茶と同じ匂いだね」
  3. Fちゃん:「こっちの方がいい匂いがする」
  4. Cちゃん:「こんなに美味しいお茶飲んだことない!」
  5. Dちゃん:「お家のお茶よりずっと美味しい!」

後日、作ったお茶を4歳児にも飲んでもらった。「美味しい」「いい匂い」「年長さんすごい」と4歳児や保育者が言っている言葉を嬉しそうに聞き満足感や達成感を感じていた。茶葉をいただいた高校の先生やジャガイモ堀を手伝ってくれた学生さんにもお礼の手紙と一緒にお茶を渡した。自分たちで作ったことを伝えると大変驚かれ、認めてもらうととても誇らしげな顔をしていた。

考察

今回のお茶作りの中で「いつもの」「本物の」という言葉が聞かれた。今まで味わったことのあるお茶の味・匂い・見た色味などと比べながら、友達や先生と自分の感じた事や考えたこと、思ったことを伝えながら、自分たちで考えて、お茶作りを体験してきた。自分たちがやってきたことを周りの人に認めてもらったことで、「もっとーやりたい!」「こんな風にしたらどうかな?」「こんなことしたい」といろいろな思いが膨らんできたようだった。お茶作りでは、実際にお茶屋さんへ見学に行くことも、子どもたちの思いにあったが、今回は実現できなかった。今後は、専門家(お茶屋さん)との交流も考えていきたい。

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