保育のヒント~「科学する心」を育てる~

影と色~工夫~/学校法人ろりぽっぷ学園 ろりぽっぷ幼稚園(宮城県)

子どもたちが影や色に興味をもって環境に関わり、遊びを楽しんだり、探究したりしていく場面に出合うことはありますか?

今回は、「映画を作ろう」との目的をもった子どもたちが、影絵遊びの中で試したり工夫したりしている姿に注目した事例をご紹介いたします。自分が作り出したい色に近付くように試す、映画のストーリーの場面に合う色を工夫するなど、友達と関わりながら取り組む過程に「科学する心」を育む体験の深まりを読み取ることができます。

影絵の映画を作りたい!~Kちゃんの変容~/5歳児

始まり(4月下旬)

5歳児が、「自分たちで一から作り上げるお泊り会」をテーマに話し合った時、「お泊り会では、映画を観ながら寝たいなー」という一人の子どもの思いから、映画作りが始まった。影絵に興味をもった子どもたちは、光源と物体の距離によって大きさが変わることなど、身近な影の不思議や面白さを実際に遊びながら感じた。また、影に色が付いたことに感動した子どもたちは、影の形から色へと興味が広がっていった。自分たちで考えたストーリーに沿って、登場する人や物の影絵作りが始まった。

場面1:茶色ない、どうする?

スクリーンに影をうつす子ども
セロファンを利用して色をつけた影絵
  • その後も、影絵(画用紙に登場する人や物の形に切ったものに、セロファンを貼り付け製作した物)を、どんどん作り上げていった子どもたち。中には友達と協力しながら作る子どもや、スクリーンを用意すると、できた影絵を用いて演じる練習をする子どもの姿も少しずつ見られるようになってきた。
  • 保育者も子どもたちの仲間の一員となって、共に影絵作りを楽しんだ。保育者が肉の影絵を作っていると、子どもたちから、「焼き色を付けたら?」と意見が上がった。しかし、用意していたセロファンの色は赤、青、黄、緑、ピンクの5色のみ。茶色がないことを伝える。
  • するとAちゃんは、「色重ねればできるよ」と言った。「どの色を重ねたらよいのか」を、保育者が尋ねる。
  • 「赤と黄色混ぜるとオレンジになるし…」「赤と青混ぜたら紫だよ!」「茶色は…わかんない、やってみればいいんだ!」と話し、色をいろいろと重ね合わせたり、全ての色を重ね合わせたりした。すると、ピンクと黄色を重ねると最も茶色に近い色ができ上がった。子どもたちは、イメージに近い色になったことを喜んだ。
  • その後、プリンを作りたいBちゃんが、「カラメルに茶色を使いたいけど、色がない。どうしよう?」と悩んでいた。保育者が、Aちゃんに尋ねてみることを勧める。Aちゃんは、「黄色とピンク混ぜたら茶色だよ!」とBちゃんに伝えていた。それを聞き、Bちゃんは、実際に自分で色を重ねて、「本当だ!」と言い、その後、カラメルの部分を茶色にして、何個もプリンを作った。
振り返り

子どもたちは3・4歳児の時に、絵具や色水など色を使った様々な遊びを経験している。A児の、「混ぜれば無い色も作ることができる」という発言から、これまでの経験が本児の“知っている”という自信となっていると感じた。しかし、その中でもまだ本児も知らないことがあると気付けたことが、様々な色を重ねてみる行動へとつながったと考える。繰り返し色を重ねる中で得た気づきが、本児の喜びとなり、さらなる自信へとつながっていた。また、セロファンも重ねれば色が変化するという気づきは、B児にとっても心揺さぶられる体験となっていたと感じた。全てを保育者が用意してしまうのではなく、子どもの学びが充実するために本当に必要なものは何なのかを見極め環境を考えることも重要であると感じた。A児の行動が他の子どもたちに刺激となり、さらにたくさんの想像を働かせながら活動を進める子どもたちの姿につながった。

場面2:青の世界

青色のスクリーン
赤から青へ色が変化していくスクリーン
  • 物語に必要なほとんどの役の影絵ができ上がり、自然と繰り返し自分たちで演技を行うことを楽しむ姿が増えてきた。
  • 子どもたちの提案したストーリーを基に演技をしていると、その中で、Kちゃんが、場面に合うであろうセロファンを手に取りふと光源にかざした。するとスクリーン背景に色が付いた。Kちゃんは、他の赤、青、黄のカラーセロファンを交互にかざした。
  • その姿を見ていた子どもたちは、「すごい!」「青の世界だ!」と感動して話した。そして、色のない背景と色の付いた背景を比較してみると、「こっちがいい!」と全員が色の付いた背景を指した。
    その後も「サメが出てくるところは青がいい!」「黄色は戦いの時!」「赤は火の色だから爆弾が爆発した時は?」と、次々と友達から意見が挙がった。Kちゃんは、「ちょっと待って!」「次は何色?」と、他の友達に聞きながら背景の色を物語のイメージに合わせて、次々に変化させていた。
振り返り

K児は保育園のクラスに所属し、日頃接することの少ない幼稚園クラスの子どもと打ち解けるまでに少し時間のかかる性格であった。保育園から映画作りに集まったのは3人であり(そこで同じ思いをもった保育園と幼稚園合わせて22名の子どもたちが集まった)保育園以外の子どもとの会話はほとんど見られていなかった。今回、K児の行動が他の子どもたちに認められた。そのことが喜びとなり、さらに頼りにされたことが自信とへとつながり、多くの言葉のやり取りが見られるようになっていた。自分の役割を見つけたことでK児自身、これまで以上に活動に意欲的に取り組む姿が見られるようになった。

場面3

影絵を作る子どもたち
  • その後もKちゃんは、自分でその場面に適した色合いを考えたり、友達の意見を聞いたりしながら繰り返し背景の色を映していた。やり方として、一枚セロファンを使い、別な色にしたい時はまた別なセロファンを光源にかざす方法をとっていた。
  • 「一回ずつ変えるの大変だなぁ」と言ったKちゃんは、「そうだ!ちょっと待って!」と言い、セロハンテープを持って来て赤、青、黄のセロファンを一枚に貼り付け、光源に映し始めた。
  • 偶然、青と黄のセロファンが重なった様子を見ていた他の子どもたちが「緑だ!」と色が新たに作り出されたことに気づいた。
    他の子どもたちも「本当だ!」「すごい!」と話し、Kちゃんに「紫作って!」「赤と青重ねればなるよ!」と話していた。
  • Kちゃんはその後もその場面に合わせた色を考え、セロファンを折りながら次々と色を作り出した。画面の半分ずつ異なる色を映すなど、自分で考え、映し方にも変化を加えていた。色の変化をみて子どもたちは「綺麗…」「すごい!」と話すと共に、「上黄色で下が赤にして夕焼けみたいにしたい!」など、次々とアイデアを出していた。
振り返り

初めは、友達に何色がいいかを尋ね、言われた色を映していたK児であったが、繰り返していくうちに自分でも場面に合わせた色を考えるようになった。また、自分でより新たなものや便利なものを作り出すなど、益々意欲的に活動する姿が見られるようになった。これらの姿に成長を感じ、保育者も驚いた。また、初めは友達に認められることに喜びを感じていた本児であるが、徐々に“もっと他の色も!”と自ら色を工夫して創り出していくことに楽しさと喜びを感じるようになっていた。

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