保育のヒント~「科学する心」を育てる~

興味・関心に寄り添う/菜の花こども園(山梨県)

子どもたちの興味・関心に、注目していますか?

今回は、子ども一人一人の「やってみたい!」に寄り添うことを大切にしている園の実践を、ご紹介いたします。

やり遂げたいのに思うようにいかない場面は、諦めることのない子どもたちの次の考えや試しを引き出します。この経過は、「科学する心」の育ちに大切な体験です。また、日頃から、子どもたちの姿を記録し、その姿を園全体の職員で共有したり、共通理解したりするための工夫は、みなさんの参考となると思います。

トウモロコシのヒゲ/4歳児

事例

6月中旬
  • トウモロコシを収穫する子どもたち
  • トウモロコシのヒゲを鼻に当てる子ども
  • 畑のトウモロコシの収穫時、皮をむいた際に出てくるヒゲの部分に、子どもたちは興味をもっていた。急にヒゲを鼻に当ててサンタクロースにして友達に見せたり、笑い合ったりしている中で、Aちゃんが、「先生、このヒゲで色水できる?」と言う。
  • 保育者が「どうかな?」と言うと、早速Aちゃんは、色水を作る時にいつも使う道具を持ってきて試してみるが、色は出なかった。
  • Aちゃんは、「今日、お家でお母さんに聞いてくる」と言う。他の子どもたちも、「僕も、私も」と言い出し、明日までの宿題になった。
翌日
ヒゲを煮る様子
蒸気のにおいを嗅ぐ子どもたち
  • Aちゃんは登園してすぐ、「家にあったトウモロコシのヒゲを、昨夜さっそく母親と煮出してみた」ことを、保育者に言いに来る。そして、「みんなの前で伝えたい」と言った。
  • Aちゃんは、朝、登園してきた友達一人一人に、「トウモロコシのヒゲは、グツグツ煮ると色が出るんだよ!」と伝えている。みんなは、「そうなんだー」「やってみたい」と、さらに興味が湧いてきたようだった。
  • 朝の集まりの時間にもう一度、Aちゃんは、みんなに話をした。みんなは「やってみたい」気持ちになったので、ヒゲを煮ることにした。
  • Aちゃんの提案で、鍋と卓上コンロを用意してヒゲを煮ることとなった。
    保育者が、「熱いから先生がやっていい?」と聞くと、Aちゃんは、「うん、そうして」と言った。また、Gちゃんたちは、「じゃあ、少し離れて見ているね」と言ってよく観ていた。
  • 煮始めるとくすんだ色が出た。保育者は、「こんな色でよいのか?」と思ったが、そのまま冷めるのを待ち、手で色の変化を見た。
    あまりいい色ではなかったが、子どもたちは色が出ることを発見したことが嬉しかった様子で、よく観ていた。
  • 鍋から洗面器に移し、皆で観察すると蒸気から匂いがした。「臭い」「トウモロコシの匂い?」と、言葉にする子どもたちであった。
  • そして、保育者が用意した障子紙に付けてみたいという子どもがいたので、付けてみると色の変化は、なかった。子どもたちは、水分を含んだ障子紙を見て、「透明になった!!」と表現した。続いてガーゼのハンカチを試すが、色は付かなかった。
  • 次に「ティッシュは?」という考えが出たのでやって見たが色が付かず、保育者が「どうすれば色が出るんだろう?」と言うと、Gちゃんが、「絵の具を入れたら?」と言った。
  • Uちゃんの「絵の具を入れたらトウモロコシじゃなくなっちゃう!」という言葉に、みんなも納得。また家で聞いてくるという宿題になった。
その後
  • 子どもたちの興味は、「染める」ことに向かっていった。園の近くに咲いているヨモギを取りに行くこととなり、干して乾燥させたヨモギを使った草木染めを楽しんだ。
振り返りと考察

Aちゃんの提案を受けてトウモロコシで試したが、色が出なかった。しかし、興味津々で煮だした水の匂いや色味を感じながら、その工程をよく観て、次は…と言う子どもたちが逞しく思えた。保育者は、やるからには「子どもたちが思う結果になって欲しい」「成功させたい」と思ってしまうので、色が出なかったことは残念に思ったが、子どもたちの前向きな言葉に私たちの方が励まされた。こういった、やってみたけど思った結果にはならなかったという経験も、次の意欲につながる大切な体験なのだと感じた時間であった。

職員間の共通理解の工夫~伝え合いボード~

  • 本園は、12時間開所の中で、シフト制で動いているために、なかなか保育者間で、じっくりと語り合いができない。そこで、「伝え合いボード」(図1)を職員室の入り口に掲示し、子どもから拾い上げた言葉を付箋に記入したものを、保育者全体で分かち合うことにした。また、休憩室には、各クラスの「エピソード日誌」を置き、時間のある時に誰でも手にして読めるようにし、各クラスの保育の営みの共通理解を行っていった。
  • 保育の情報共有の工夫により、園全体の子どもたちが、どのクラスの保育者と出会っても、関心事を理解し、声をかけてもらうことができ、クラスの枠を越えた情報や知識の伝え合いもできる。
  • 職員同士で、明日の保育に対して、「どうしたらよいか?」の疑問への提案のやり取りが行え、風通しの良い空気が流れていくのを感じた。同時に、何よりも子どもたちにとっては、どこに行っても自分の今の興味や関心に寄り添い、声をかけてくれる大人の存在と出会える。さらに、園全体がより生活しやすい場としての心地よい場となり、子どもの心の安全基地を広げ、興味や関心のあることに安心してじっくり向き合える環境になっている。
図1 伝え合いボード

どこで、誰が、どのように人、もの、ことに関わっていたか、心が動いた子どもの姿を記入する。

ページの先頭へ