保育のヒント~「科学する心」を育てる~

水の流れをつくる~土~/福岡市立雁の巣幼稚園(福岡県)

子どもが、砂や土と関わって遊ぶ姿を記録することはありますか?

今回は、「5歳児の子どもたちが土山でトンネルをつなげる遊び」に注目し、「科学する心」を捉えるために、記録を工夫している園の事例です。写真だけでなく、遊びの変化をイラストや図表で表し、遊びを振り返っています。子どもの思いを丁寧に読み取り、その思いに共感し、思いの変化を捉えた保育者の援助が、「科学する心」の育ちを支えていることが伝わってきます。

トンネルとトンネルをつなげよう/5歳児

遊びのきっかけ

5歳児になり、自分たちの大切な遊び場となった土の山。そこに新たな土が入り、その感触を楽しみながら握ったり、掘ったり、裸足で踏みしめたりして、砂との違いを感じていた。しかし、日が経つにつれ固まっていく土。雨上がり、土山が柔らかくなっていることに気づいた子どもがいた。登園してきたAちゃんが、「昨日と違う」と言って、土山に上がっている。園庭へと出た子どもは、裸足になって山に上がったり、土を握ったりして柔らかくなっていることを確認している。そのうちスコップを持ってきて、思い思いに掘り始める。

場面1<トンネルを作ろう!>

  • トンネルを掘っていたAちゃんが、「誰か手伝って!」と声をかける。隣で掘っていたCちゃんが、「こっち?」と聞き、向かい合わせになって反対側から掘る。どこまで掘れたか知らせ合いながら、やっと互いの手が触れる。
  • トンネルを掘る子どもたちの様子保育者は、「土の中は見えないのによくつながったね」と、Aちゃんの行動を認める。また、雨上がりの土の感触を味わってほしいと考え、小さなスコップだけを出し、遊びを見守る。
幼児に育くまれた「科学する心」
  • 友達と見えないものを確認し合う面白さを感じる。
  • 友達と力を合わせ、目的を達成する満足感を味わう。

場面2<トンネルをつなげたい>

トンネルを掘る子どもたちの様子
  • Aちゃんのトンネルができると、Cちゃんは、掘りかけてたトンネルの続きを掘る。Aちゃんは、自分のトンネルから「Cちゃんが掘っているトンネルへと水が流れるようにしよう」と提案する。Aちゃんは、自分のトンネルからCちゃんのトンネルへと土を掘って道をつなげた。Cちゃんが、Aちゃんのトンネルから水を流す。Aちゃんは、水が流れてくるかを、じっと見ている。水が見えてくると「流れた、流れた!」と歓声を上げている。
  • 保育者は、「つながるかな?」と言いながら、二人のやりとりを見守る。また、水を流したい様子だったので、必要に応じてすぐに使えるようタライに水を入れておく。バケツやじょうろも使えるようにしておく。
幼児に育くまれた「科学する心」
  • 土の道は水を流してもなかなか崩れないことに気づく。
  • 傾斜をつけることで水が流れやすくなることに気づき、傾斜の角度によって水の流れ方が変わることを試している。
  • 少し掘って道を作ることで,水が道を通ることに気づく(砂で作った道との違い)。

場面3<つながらないんじゃない?>

図①
  • 一人で掘っていたBちゃんも、「AちゃんとCちゃんのトンネルとつなぎたい」と言い出した。Bちゃんのトンネルは2人のトンネルより上にある。「水は流れないんじゃない?」と受け入れようとしないAちゃん。Cちゃんは、「こうすれば?」と言いながら、AちゃんとCちゃんのトンネルをつなぐ道を作った様に、BちゃんとCちゃんのトンネルがつながるための道を作り始める。しかし、水を流してみると水はBちゃんのトンネル内に留まり、逆流してしまう(図① Bの傾斜)。
  • 保育者は、Cちゃんが、Aちゃんの方法で、トンネルを作ろうと試している姿を受け止め、満足するまで試す時間を保障し見守る。
幼児に育くまれた「科学する心」
  • トンネルとトンネルを道でつなぎさえすれば、水が流れるだろうと予想している。
  • 道はつながったのに、なぜ水が流れないか不思議に思う。

場面4<流れるようにしたい!>

トンネルに水を流す様子
図②
図③
  • Bちゃんは、自分のトンネルから水を流すが逆流してしまい、「流れない」と、がっかりしている。
  • Aちゃんが、「Bちゃん、水が溜まっている所を掘ったら?」と言うと、Bちゃんが、「そうか」と言って、溜まった水がCちゃんのトンネルへと流れるように掘る。Bちゃんのトンネルから水を流すと、Cちゃんのトンネルには流れるようになったが、今度はAちゃんのトンネルへは流れない(図②)。3人とも、遊びながら、水の流れから、トンネルの高低差に気づいていく。
  • 保育者は、「どうして流れないのかな?」と、声をかけ、Aちゃんの言葉を待つ。Aちゃんの考えを聞き、掘り直しているBちゃんには、「流れるといいね」と言い、手を添える。
  • B→A→Cと、Aちゃんのトンネルにもつなごうと、3人でBちゃんのトンネルからAちゃんのトンネルへと道を作りはじめ、道がつながった。水を流して、予想通りにB→A→Cと流れたことを確認すると、「もうひとつトンネル作ろう!」と張り切るAちゃんに、Bちゃん、Cちゃんも賛成する(図③)。
  • 保育者は、また、流れたことを確認し、「Aちゃんの言った通りになったね」と、嬉しさに共感する。
幼児に育くまれた「科学する心」
  • いつも水は高い方から低い方へ流れることに気づく。
  • 傾斜さえ気をつけておけば,道をつなげることで水が流れることに気づく。
  • 友達と同じ目的に向かって力を合わせる楽しさを味わう。

楽しい「思い」の変化

「楽しい
        『思い』の変化」の図

考察

  • 砂とは違い、掘っても崩れにくいという土の特性から、「掘る」「トンネルを作る」というイメージをもち、実現できる遊びになったと考える。今までの経験から、土に水を入れても、砂のようにはすぐに吸収しないため、水をしばらく溜めたり、少量の水でもその流れを確認したりすることができる。この特性を生かし、トンネルからトンネルへと水を流す、成功すればまたトンネルを増やし、トンネル同士に水を流してつなげる遊びを繰り返し楽しむ姿になった。
  • 最初はトンネルを作ること自体が楽しかった子どもたちだが、トンネルとトンネルの間に、土を少しずつ試しながら掘って道を作ることで水が流れ、つながっていくことを発見し、より楽しくなっていった。2つのトンネルが3つになった時、それぞれの経験を生かして、高低差に気をつけたり、道でつなげたりとアイデアを出し合って、共通の目的を達成できたことで、「もっとつなげたい」という思いへと高まっていった。
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