保育のヒント~「科学する心」を育てる~

絵本をきっかけに、興味・関心が観察力につながる/岡﨑市豊富第二保育園(愛知県)

園の周辺や散歩道では、どのような発見を楽しむことができますか?
今回は、園で楽しんでいる絵本に出てくるキイチゴに、興味をもった子どもたちの姿をご紹介します。なかなか見つけられなかったキイチゴを発見した喜びやいろいろな種類がある面白さを体験する子どもたちは、大人の予想を超える感性により観察力が磨かれていきます。子ども同士でキイチゴの情報や知識を共有し、キイチゴを見つける目的のために夢中になって活動しています。

2018年6月16日 最優秀園実践発表会 開催

キイチゴを楽しむ

子どもの姿
絵本「バムとケロのもりのこや」(作:島田ゆか 出版:文溪堂)「14ひきのあさごはん」(作:いわむら かずお 出版:童心社)「のいちごつみ ばばばあちゃんのおはなし」(作:さとう わきこ 出版:福音館書店)など、様々な絵本の中で登場してくるキイチゴ。絵本を見ながら、「おいしそう」「キイチゴ摘みしてみたい」などの声が聞かれ始めていた。すると、「僕、食べたことあるよ!お散歩で食べたよ」とAくん。 友達が食べたことがあると聞いて、キイチゴに対するみんなの思いが強くなり、「探しに行きたい!」と言うようになった。
保育の工夫
キイチゴ摘みは、とても魅力的な活動だと思ったが、保育者自身もキイチゴがどこにあるかも分からなかったので、「きいちごだより」(作:岸田衿子 絵:古矢一穂 出版:福音館書店)「ベリーハンドブック」(作:木原浩 出版:文一総合出版)という本や図鑑を、身近に手にできるように用意し、子どもたちと一緒に探した。
  • 紫斜体太文字…興味関心の深まりや観察力に繋がる姿
  • 赤太文字…観察力

キイチゴ探し/4月

「この葉っぱ、キイチゴの葉っぱかなぁ…」
  • お散歩で、キイチゴの葉っぱに似ているものを見つける。「この葉っぱ、キイチゴの葉っぱかなぁ…」「んー、分からない」「イチゴないし」と言う子どもたちに、「そうだねぇ。どうしようか?」と、保育者が問いかけると、「また今度、本を持って来て、見てみたら」などが話題になり、この場所を覚え、又散歩に来ることになった。その後、何度か木の前を散歩で通り、観察するが花は1つも咲かず、少し残念そうな子どもたち。保育室で、「花、咲かないね」「違うのかな」「どこにあるんだろう」「また、散歩に行って探せばいいじゃん」などと、キイチゴの話題がよくあがるようになった。

キイチゴ見つけた!/5月

  • 子どもたちは、絵本「きいちごだより」を見ながら、「オレンジ色の実もあるね」「ジャムが作れるんだって!」「キイチゴ、たくさんあるんだね!」などと話す姿がある。いろいろな種類があることを知り、ますます見つけたい気持ちは強くなった様子だった。「知る」ことは、次の新しいことを「知りたい」「やりたい」につながっていくことが、会話の中から分かった。
  • 子どもたちは、散歩のたびに、キイチゴを探すようになった。回りをよく見て、「ないかなぁ」とつぶやきながら、歩く姿が見られた。
  • 保育者が、「あれ、もしかして…」とつぶやくと、「えっ、何々?」と、みんなの足が止まり、保育者の目線の方をみんなが見る。「あっ! あったよ!」と、見つけた友達の声に、「どこどこー」と、夢中で探す子どもたち。「ほら、あっち!」指をさして、まだ見つけていない友達に教えたり、「ほんとだ! 上の方にもあるよ!」と、他の場所の実を見つけて伝えたりしている。見つけたのはほんの数粒だったが、みんなの興奮はなかなか冷めず、園に戻り、園長や乳児クラスの担任保育者や友達に嬉しそうに報告した。「感動を身近な大人や友達に伝えたい」との思いが溢れた場面であった。
  • 見つけたかった宝物を発見したことで、5歳児は気持ちが満たされたようだった。本物の力に刺激を受け、自然と思い思いの言葉が表出し、喜びを共有した。

いろいろなキイチゴ/5月下旬~6月

「これはなんていう名前かな」
  • その後も、キイチゴの情報を得ると探しに行った。「どこにあるのかな」と、キョロキョロ見たり、走り回ったりして探す。
  • キイチゴを見つけると、「あったよ!」と、みんなを呼ぶ。子どもたちは、本に載っているキイチゴの調べ方の表を使って、自分たちで特徴を見比べる。そして、「痛たた…。トゲがいっぱいだね」「これはなんていう名前かな」「そうだ!本で見てみよう!」「トゲがあって…赤い実で…実がてっぺんに1つ…葉っぱは、5枚ある…『バライチゴ』だ!」と、話し合う。違う場面では、「こっちのは黄色いね」「トゲがないから、自分たちで採れる!」「なんか、すごく高いところは、届かないね」「トゲがなくて、黄色の実…『カジイチゴ』だって!」と言いながら、本のカジイチゴのページを開き、何度も見返している。

キイチゴ摘みに出かける

「(採れたイチゴ)どうしたらいいかな?」
本と見比べて観察する
  • キイチゴ摘みに出かけるが見つからない。すると、「なんで実がついていないんだろう」「誰かが食べちゃったのかな」と、疑問をもち、「鳥じゃない?」「そうだよ、鳥さんだ」「鳥さんが、赤ちゃんに持って行ったんだ!」と、キイチゴ摘みに出かけると、自分たちでどんどん言葉を発し、疑問をもち、友達や保育者が先導しなくても主体的に取り組む姿が出てきていた。
  • 採ってきたキイチゴについて、「どうしたらいいか?」「(給食を作ってくださる)Aさんならジャムを作ることができる!」と、話し合いお願いした。Aさんが作ったジャムを食べて、「おいしい!」「プチプチするね」「甘酸っぱいって感じがする」「もっと食べたくなっちゃった」「また、摘みに行こう!」と言い、その後、子どもたちは、散歩やお出かけの時には、草の奥の方までよく見て歩くようになった。
  • 子どもたちは、見つけた実の付き方の違いに気づくようになり、すぐに本を持ち出して、葉っぱの形や色、トゲがあるかなど観察していた。
    1. 子ども:「トゲはあるね。実は赤くて、たくさん固まっている?」
    2. 子ども:「うん、たくさん固まっているよ!
    3. 子ども:「茎は横にいってるか、上に伸びてるか…。うーん」
    4. 子ども:「待ってて!今見てくる」キイチゴの生っていた方へ見に戻る。
    5. 子ども:「横だと思うよ!」
    6. 子ども:「今は夏だから…ニガイチゴだ!」
  • 子どもたちは、「葉っぱの後ろ、白いね」「ほんとだ!」「ぜったいこれだよ!ニガイチゴ!」と、観察して気づいたこと出し合ってキイチゴの種別を共有し、名前を確認して探索を楽しんでいる。

考察

  • 子どもたちは、体験を重ねていくことで、疑問が次々に湧き、また疑問を解決する方法(図鑑、絵本、見つけやすい場所の情報など)も手に入れた。よく観察したり、見比べたり、また子ども同士の、伝え合いながら答えを導きだしていく姿が見られ、思考力や観察力の高まりや仲間との深まりを感じることができた。
  • 子どもたちは分からないこと、初めて見るものなどに意欲的に関わることができた。また、「知らないことは、調べれば分かる!」ということを、体験を通して知ることで、どんなことに対しても「調べてみよう!」という声がでるようになった。キイチゴ探しの活動を通して、探究活動が継続し、注意深く細やかに観察をすることができるようになった。
  • キイチゴへの興味や関心を深めている子どもたちは、見つけて採ることを優先する姿ではなく、生っている場所、季節、葉や実の生り方など丁寧に観察している。この姿から、子どもたちの“自然や植物へ向けられる豊かな思い”=「科学する心」の育ちが読み取れる。
  • 子どもたちが魅力を感じやすい「食べるもの」であり、絵本を通して身近に感じている「キイチゴ」を題材にしたことで、子どもたちは興味・関心が深まり、学ぶ喜びを実感した。
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