保育のヒント~「科学する心」を育てる~

植物に付く虫~子どもの視点から見ると…~/二本松市立石井幼稚園(福島県)

栽培物の種類や環境を、子どもの視点から、見直したり工夫したりしていますか?
保育者が、子どもの興味や思いを大切にして関わり、栽培環境や保護者との連携を工夫したことで、子どもたちが、栽培物と虫との関係や虫の変態など、生き物への興味を深めていった事例をご紹介します。
一般的には害虫と呼ばれる虫も、「科学する心」が動く子どもにとっては、興味・関心の対象です。

何しに来たんだろう?テントウムシ/5歳児

トマトの葉っぱにテントウムシを発見!



  1. 子どもたちは、“子育て応援隊”の方(祖父母)3人と一緒に、ジャガイモの種芋やミニトマトを、保育室の目の前の畑(花壇を畑にしたもの)に植える。6月中旬には、追肥をしたり、雑草を抜いたりなどの世話をして、生長を楽しみにしながら大切に育てた。ミニトマトやジャガイモの葉っぱが大きくなってきた頃、子どもたちは、テントウムシ(ニジュウヤホシテントウ)を見付ける。
    1. 子どもたち:「テントウムシがいっぱいいる」
    2. 保育者:「本当だ!いっぱいいるね」
    3. 子どもたち:「何しに来たんだろう?」「遊びに来たんじゃない?」「葉っぱを食べに来たのかも?」
    4. 保育者:「確かめてみる?」
    5. 子どもたち:「うん、確かめてみよう!」
  2. 相談し、捕まえたテントウムシとミニトマトの葉っぱを飼育ケースに入れて、保育室で観察することにした。
  3. 次の日、子どもたちは、飼育ケースの中を一生懸命に観察する。
    1. 子どもたち:「ほら、ここ薄くなってる」「こっちは無くなってる」
    2. 保育者:「葉っぱに穴が開いていたのは、誰が食べていたのかな?(どこまで、気付いたのかな?)」
    3. Aちゃん:「テントウムシだよ!」
    4. 保育者:「このままで、みんなのトマトは大丈夫かな?」
    5. 子どもたち:「だめ、赤くなれないよ」「大きくなれない」「食べられちゃう」
    6. 保育者:「そっか、葉っぱが食べられちゃったら、大きくなれないんだ(子どもたちなりに考え、トマトを守るにはこのままにしてはおけないと気付いたんだな)」
  4. 子どもたちは、「大変!捕まえなくちゃ」と、慌てて外に出て、テントウムシを探し始める。
    1. 保育者:「捕まえたテントウムシはどうする?」
    2. 子どもたち:「遠くに放してあげたら?」「また、飛んできちゃうんじゃない?」
    3. Bちゃん:「このテントウムシは悪い虫だから、消毒してやっつけないとダメなんだよ。じいちゃんが言ってたんだ」
    4. Cちゃん:「やっつけたら、かわいそうだって!!」
    5. 保育者:「そうなんだ。そっか、かわいそうか(Bちゃんは、おじいちゃんと一緒に畑に行く機会があるから、害虫の扱いが分かるんだな。でも、Cちゃんの気持ちも大事にしたいな)」
    6. Dちゃん:「他の葉っぱを食べてもらおう」
    7. 保育者:「他の葉っぱ食べてくれるといいね」
    8. 子どもたち:「そうだね。その考えいいよ」「本当に食べるのかな?」「やってみたら分るよね」「前みたいに一緒に入れてみれば分かるよ」
  5. 園庭に生えている草を、何種類か飼育ケースに入れ、テントウムシも入れる(以前の経験から、「やってみたら分かる」という言葉と行動力に繋がったのだろう)。

翌日

    1. 子どもたち:「あれ?全然食べてない」「本当だ、穴も開いてないし、薄くもなってないよ」
    2. 保育者:「本当だね、どうしてだろう?」
    3. Eちゃん:「おいしくないのかな?」
  1. その後、子どもたちは、朝の身支度が終わると、テントウムシを見付けることが日課になった。見付けたテントウムシを、トマトの葉っぱ(食べてもよい部分)と一緒に飼育ケースに入れて、観察を続けた。

ジャガイモ畑にテントウムシを見付ける

  1. 子どもたちが集まって、ジャガイモの葉っぱの裏を見ている。
    1. 子どもたち:「あ、ジャガイモの葉っぱにもテントウムシがいる」「葉っぱの裏にも何か変なのがある」「見て見て、何か変なの。毛が生えてる。黄色いトゲトゲ」
    2. 子どもたち:「先生!変なの見付けた」「卵かな?」「幼虫?」「動かないね」「ケースに入れてみよう」
    3. 保育者:「どれ?ウワー、見たことないな、何だろうね?」と、子どもたちの不思議に思う気持ちに寄り添い、一緒に観察する。
  2. 図鑑を見て、テントウムシの生態、幼虫や卵の種類を調べ始める子どもがいる。
    1. 子どもたち:「こっちの“トゲトゲ”は動いてるよ」「うわぁー本当だ、動いてる、いっぱいいる」「何になるんだろう?」「もしかして、テントウムシの赤ちゃんかな?」「でも、テントウムシは、トゲトゲしてないよ?」「“トゲトゲ”もケースに入れよう」
  3. 話し合った結果、“トゲトゲ”を飼育ケースに入れることとなる。また、園での様子をお便りで保護者に知らせる。夏休みに入った次の日、この小さな“トゲトゲ”は脱皮をして、テントウムシになっていた。この日は、幼稚園の夏祭り(保護者参加型の参観)、保育者は、子どもたちだけでなく、保護者の方にも見てもらえる場所に飼育ケースを置く。
    1. 子どもたち:「“トゲトゲ”がテントウムシになってる!!」「見せて!見せて!本当だ。テントウムシだ!」
    2. 保護者:「え!何?このトゲトゲがテントウムシになったの?」
    3. Fちゃん:「そうだよ。僕たちが見付けて捕まえたんだ」
  4. 子どもたちは、自信満々に保護者に話をした。

夏休み明けのジャガイモ堀り(8月下旬)

  1. “子育て応援隊”のAさんから、「夏休み明けまで、ジャガイモの葉がこんなに残っていたから、大きなジャガイモになったんだよ」と、認めてもらった。
    子どもたちは、「みんなで、テントウムシをとったからだね」と言い、認められる嬉しさと収穫の喜びを味わった。

振り返って

  • 今年度は、保育室の目の前の花壇を畑にして、ミニトマトやジャガイモの栽培をした。毎日、観察のできる身近な環境になったため、テントウムシが葉っぱに集まったり、葉っぱが食べられていたりすることに子どもたちは気付き、テントウムシの幼虫を発見する姿に繋がった。
  • テントウムシとトマトの葉っぱの関係に興味をもち、生態を調べたり確かめたりして、テントウムシの幼虫の成長過程を実際に見られたことから、興味・関心がさらに高まったと思われる。
  • 保育者自身が、「今日は、どんな言葉が聞かれるかな」と、子どものつぶやきや発見を聞き逃さず受け止めようと心掛けたことで、「どうなるかな」「やってみよう」とする気持ちを引き出すことができた。また、その積み重ねが一人一人の自信に繋がったと思われる。
  • 保護者にも、参観日やお便りなどで子どもたちの様子を知らせたことが、子どもとの共通の話題になり、親子で一緒に考える姿に繋がった。また、曾祖父母や祖父母などと畑に出かけている子どもたちは、知識や情報が豊富で、テントウムシの話も家庭に持ち帰って話していたことが分かった。家庭と園の生活が繋がったことで、保育者や友達と、家庭や園での様々な情報を伝え合ったり、共有したりすることができた。
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