保育のヒント~「科学する心」を育てる~

遊びの展開/武蔵野短期大学附属幼稚園(埼玉県)

鬼ごっこは、子どもたちが自分たちで遊び始めたり繰り返したりする遊びになっていますか?

今回は、4月から鬼ごっこ遊びを繰り返し楽しんでいる4歳児の、6月と7月の事例です。

遊び場の特徴を生かしてルールを考えたり、場所を決めたりする子どもたちの言動や、遊びながら様々な学びをしている姿から「科学する心」が育まれていることが伝わってきます。

鬼ごっこ/4歳児

「鬼は、ここから入ってきたらいけないんだよ!」/6月

鬼ごっこが徐々に子どもたちの中に浸透し、自分たちで鬼ごっこを楽しむ姿が毎日見られるようになった。最初は鬼ごっこをするメンバーは固定されていたが、毎日繰り返し遊ぶ様子をみていた周りの友達も興味を示し始め、少しずつメンバーが増えてきた。一方で、鬼ごっこを行なう人数が増えたことで様々な問題が見え始める。

子どもの姿
遊具の上に逃げる子どもたち

鬼ごっこをする子どもたちの人数は多いのに、鬼は1人というルールでずっと行なっていたため、走ることが得意でない鬼になった子どもから、「全然捕まらなくて疲れちゃう」という声が出た 1。そこで保育者と子どもたちで話し合い、鬼を2人に増やすことにして遊ぶようになる 2ルールを変更する楽しさを感じたDちゃんは、“遊具には鬼は登ってはいけない”というルールを急に思い付き 3、すぐ近くにいた友達を連れ、遊具の上に登りはじめた。友達も、鬼が近くにいるのにタッチされないという楽しさを感じた 4ようで、徐々に遊具に登る子どもが増え、鬼をしていた子どもが、「みんなが上にいるからタッチできない!」と訴える 5

読み取り

初めは単純に鬼と子の役に分かれて鬼ごっこを楽しんでいた子どもたちだった。徐々に「もっとこうしたい」「これじゃつまらない」などと、いろいろな思いや考えが出てきた。6月に入り、初めてルールを変更して遊ぶという段階に及んだ。中でも次のことが捉えられた。

  1. 今までは走ることの得意、不得意に関わらず鬼ごっこを楽しんでいたが、実際に“なかなか捕まらない”という体験をしたことで、自分が困っていることを言葉で表現し、周りに伝えている。
  2. 保育者と共に話し合う中で、思ったことや考えたことを言葉で表現し、ルールを変えることになる。話し合うことが自分の思いを友達や保育者に伝えるきっかけになっていた。
  3. Dちゃんの中にルールを変更して遊ぶという考えがなかったため、新しい楽しさを感じ、自分が考えたルールを周りの友達に伝え、喜びや満足感を味わっているのではないか。
  4. 友達も本来の鬼ごっこの動きとは異なるルールを楽しんでいる。
  5. このルールでは、鬼を行なう子どもには捕まえることが難しくなり、困った状況を不満という形で表現している。

「絶対につかまえよう!僕はこっちから…」/7月

子どもたちはルールを変更した経験から、より楽しい鬼ごっこができるよう、遊び方やルールなどを工夫しはじめた。

今まで行なったのは、“氷鬼”・“かわり鬼”・“高鬼”・“しっぽとり”の4つだが、“氷鬼”をしたいという声が多く出るようになり、毎日繰り返し“氷鬼”を楽しんでいた。

先月は見られなかった鬼同士の協力や作戦も見られ、より鬼ごっこ熱はヒートアップしている。

子どもの姿

7月になって、子どもたちからは少しずつ友達同士で協力する動きが見られるようになってきた 1。鬼も子もそれぞれに力を合わせて行なう楽しさが味わえたようで“氷鬼”を積極的に行なうようになった。逃げる子どもたちは、「鬼が来ているよ!」という声掛けに加えて、自分が鬼に捕まってしまった時に、「助けてー!」と大きな声で叫んだり、友達が捕まってしまった時には、「○○くんが凍ってたから一緒に助けに行こう!!」と他の子どもに協力を求めたりして 2、友達を助けにいく姿がたくさん出はじめた。鬼も「まずは○○くんを捕まえよう!」「俺は砂場の方にいくね!」 3などと声を掛け、協力して捕まえる動きが頻繁になった。

読み取り

6月にルールを話し合い、鬼を増やしたことで、7月には協力する姿が多く見られるようになった。また、鬼ごっこに消極的だった子どもたちも積極的に参加して、体を動かすようになった。動きだけでなく遊びの中で自然と大きな声を出して、フェイントをかけたり、わざと鬼をおびき寄せて友達を助けたりと、逃げ方にもレパートリーが出て動きや声掛けも豊かになっていた。中でも次のことが捉えられた。

  1. 何度も繰り返し鬼ごっこを行なうことでルールや遊び方が浸透し、友達と協力することも楽しいなど、少しずつ楽しみ方が変化しているのではないか。
  2. 具体的な言葉による表現で、直接仲間に協力を求めるようになっている。
  3. 具体的な作戦を立て、仲間同士で伝え合いながら鬼ごっこを楽しむようになっている。

「ここだとつまらない。だって隠れる所ないんだもん」

子どもの姿

毎日、鬼ごっこをする中で、子どもたちから初めて場所に対する意見が出た。これまでは、鬼ごっこをする場所にこだわりはなく、皆が集まっていた所や、保育者がいた所で自然と鬼ごっこを始めていた。ある日、「今日も鬼ごっこやろう!」と園庭のコンクリートの場所で話していると、Aちゃんが、「向こうの土の方でやろうよ!」と皆に声を掛ける 1。保育者が「どうして?」と問いかけると、「だってこっちだと隠れる所がなくてつまらないんだもん!あと、広すぎて全然捕まらないしなあー」 2と言う。それを聞いたBちゃんは「でも、こっちの方が広いから、なかなか捕まらなくて面白いよ!」 3と、追いかける側の意見と逃げる側の意見の両方がぶつかった 4。 そこで実際に2つの場所でやってみると、コンクリート部分では 「休憩する所(日陰)がなくて疲れちゃう」「乗り物に乗ってる子どもとぶつかっちゃった」などの意見が多く出された 5。一方、土部分では、「虫がいっぱいいて、蚊にさされちゃった」との意見もあったが、「木の裏に隠れたら最後まで見付からなかったんだよ」「暑かったから、砂場の所で休憩してたよ」など、賛成する意見の方が多く出てきた 6

読み取り
話し合う子どもたち

今回は遊んでいくうちに、子どもたちの中で“場所”によって異なる楽しみ方に気付いたことから、意見がぶつかったのだと考えられる。中でも次のことが捉えられた。

  1. 1.2‥子どもたちなりに自分の中でしっかりとした理由をもって提案している。
  2. 2.3‥周りに流されず、それぞれがもっている思いや意見を伝え合うことができている。
  3. 4‥‥子どもたちが“追いかける側”と“逃げる側”を経験したことで双方の意見が出て、ぶつかり合っている。
  4. 5.6‥子どもたちが経験したことをもとに、良い点や悪い点について意見を出し、話し合うことができている。
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