保育のヒント~「科学する心」を育てる~

「科学する心」が育まれる姿 Ⅰ/品川区立大井保育園(東京都)

保育中に保育者が見せる姿は、大きな環境の一つです。特に、魅力的な教材や環境に関わっている保育者に気付くと、集まって来て注目する子どもが現れます。

今回の事例は、荷物を運ぶための紐を台車に付けていた保育者に気付いた子どもたちが、「遊びたい」と要求して始まった遊びです。子どもたちは、次第に仲間が増えることにより、遊びながらルールを考え出し、繰り返すことで「重力」「加速」「摩擦」「遠心力」などを感じて、遊び方を工夫するようになります。

台車で遊ぼう/5歳児(6月)

私たちは、「科学する心を」を「いろいろなことにチャレンジし、試行錯誤を繰り返す意欲」と捉え、「科学の芽」を育むための保育環境や保育教材の工夫について園内研究を進めてきた。

「これで遊びたい」繰り返し遊ぶ中で遊び方を工夫する必要性を体験

子どもの姿

保育者が、修理業者が置いていってくれた台車に紐を付けていると、以前から台車の存在を気にしていた子どもたちが、「これで遊びたいです」と伝えてきた。「どうぞ」と貸すと、すぐに乗り手と引っ張り手に分かれて遊び始める。

当初は、乗る子どもと引く子どもが決まっていたが、次第に、「代わって欲しい」と言い出したり、「私も乗せて欲しい」と新たに乗りに来る子どもが増えたりした。

問題を感じる度に話し合って、「一度に何人乗るか」「何周ずつにするか」「どこに並ぶか」などルールを作り出した。

遊びながら学んだこと

低い所へ行く時は、速さが増す。

「そっち行くと、重くなって大変」繰り返し遊ぶことで砂の特徴を理解

子どもの姿

砂が集まり軟らかくなっている所は、車輪が埋まりがちで、引いたり押したりする力が強くなくてはいけないこと、カーブの時には速度を落とさないと回りきれなかったり、乗っている人が落ちそうになることを、繰り返し遊ぶことで実体験から理解していた。

「そっち行くと、重くなって大変だぞ」などと周囲に声をかけて知らせる姿も見られた。

砂に埋まってしまうと、周りの子どもを呼んで手伝ってもらったり、力持ちと言われている子どもに助けを求めたりしていた。

遊びながら学んだこと

軟らかい所を通る時は、力がいる。

「ここから、力抜け」繰り返し遊ぶことで、斜面の特徴や速度の変化を理解

子どもの姿

傾斜がある下りの所では、速度が増し、引く力が少しで良いことが分かってくる。

「ここから、力抜けー」とリーダーの子どもが声を掛ける姿も見られた。

また、カーブの時に乗っている子どもが回る方向に体を傾けることで、回り易くなることも分かっており、声を掛け合っている姿も見られた。

遊びながら学んだこと

2人で紐を引っ張る時は、曲がる時の力の入れ具合を、言葉を交わして相談した方が良い。曲がる時に、乗っている人が内側に体を倒すと、曲がりやすい。

スピードを落とさずに曲がろうとすると、乗っている子どもたちが落ちてしまう。

援助

保育者は、目的の達成に向かい自分たちで取り組んでいる姿を認めたり、友達と十分に関わりあっている姿を大切に見守ったりした。紐を引く手が痛いと言い出した時には、どうしたらよいか一緒に考えたり、ヒントを示したりした。活動の後には、友達と役割を分担したり、協力したり、互いの良さを活かしたりしながら、遊びや生活を進めることの大切さを共有した。

その後

その後も台車での遊びが続き、「他の子どもを乗せてあげたい」と考えた5歳児は、クラスで遊園地ごっこを行った。そして、台車で電車を作って年下の子どもたちを乗せて、遊べるように製作した。

考察

  • 子どもたちが使いたいと言って来た時に、保育者が、安全に使うための決まりなどを細かに確認せずに貸したことで、活動への意欲が削がれることがなく遊びだすことができた。
  • 初めは引いたり押したりする役割と乗る役割が固定化していたが、保育者は見守り、交替ですることを提案しなかった。そのために、台車を動かす楽しさを感じているグループができ、台車運転の特徴やコツを伝え合うまで十分に繰り返し遊ぶことができた。また、「地面が柔らかいと力が余計に必要」「曲がる時はスピードを落とさないと乗っている人が落ちてしまう」「下っている所では少しの力で台車が進む」などを知ることに繋がった。
  • 「カーブの時はなんだか注意が必要」という、台車遊びの体験での子どもたちの共通認識が大切だと考えている。このような経験により、将来の学習の中で「そういえば昔そんな遊びをしたな」と思い出されることが、学習と実体験を結び付けることになるのではないかと思う。
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