保育のヒント~「科学する心」を育てる~

ビオトープ大作戦!/出雲市立中央保育所・幼稚園(島根県)

身近に、子どもたちが生き物と出合える環境をどのように工夫していますか?

偶然発見した畑にできた窪みから、イメージが膨らんでいく子どもたち。子どもたちの「こうしたい」「もっと、こうしたい」「なぜ?」という思いを実現させて、試行錯誤をする姿から、「科学する心」の育ちを捉えている実践(5歳児)をご紹介します。

友達と考えを出し合い、ビオトープ作りに取り組んだ事例/5歳児

「穴がある!」心を動かす、「もっと、掘ってみたい」/5月

穴で遊ぶ子どもたち
  1. 畑を遊び場として活用し、子どもたちが遊びを楽しむことのできる環境を作った。栽培活動で土を植木鉢に入れたことから、畑に窪みができた。偶然できた畑の窪みを発見し、興味・関心をもち始め、水を入れて遊ぶ数名の子どもたち。
    1. Yちゃん:「穴がある」
    2. Mちゃん:「落とし穴みたい」
    3. Yちゃん:「水を入れてみよう!」
  2. その後、穴についてクラスで話し合うと、子どもたちからは「もっと掘ってみたい」「水を入れてみよう」「プールにしよう」「落とし穴がいい」「温泉がいい」などの意見がでた。
  3. それぞれのイメージで遊び始める子どもたち。Kちゃんは水を貯め、草を入れて「どじょうすくい」だと言う。

「水がなくなった!」「水を貯めるには、どうしたらいいの」/5月下旬〜6月

ブルーシートを敷く様子
ブルーシートに瓦を乗せる様子
  1. 登園して畑の穴を見に行った子どもたちが驚いていた。子どもたちたちは、「水がなくなっているよ」「土が吸ったんだよ」「太陽が当たったけんだよ」「もっと掘れば下から水が出てくるんだよ」「でも、固くて掘れないよ」などと話をしている。
  2. 保育者は、プラスチック製のスコップではなく、金属製のスコップを用意した。
  3. 子どもたちは、「プールにしようかな」「さくらんぼ組さんを入れてあげよう」と思いを伝え、1つの穴からプールを作ろうと、数日間遊びを進めている。最初は掘ることを楽しんでいたが、少しずつ目的が薄れてしまう様子なので、“作戦会議”をして、どこまで掘っていくのかを相談した。
  4. 池のイメージが共有しにくいようだったので、保育者は絵本「あまがえるりょこうしゃ」(文・絵:松岡達英 / 出版:福音館書店)を読んだ。そのことから、「あの畑のプール、池にしようよ」と、“池を作りたい”というイメージをもつ様子が見られた。
  5. その後、「水を貯めるには、どうしたらいいかな?」という保育者の問いかけに、「ラップみたいなのを敷いたらいいよ」と考えを出したり、ブルーシートを見付けてきたりして、池作りが開始された。今までの経験を生かし、シートの敷き方を考えたり、風が吹くことを想定して、重石に瓦を乗せたりした。

「大変だ!水がなくなった、なぜ?」/6月

  1. Nちゃんたちが昨日貯めた水が減っていることに気付き、知らせにくる。子どもたち一人一人が、原因について思ったことを話している。
  2. 解決できるように、クラス全体で話し合う場を設けた。「穴が空いていたから」「2個空いていたよ」「シートの下に水があったよ」「すき間があったもん」「水が乾いたってこと、風で乾いたんだよ」「暑いと乾くよ」「太陽が吸い取ったんだよ」など、友達に伝えようとする姿が見られた。
  3. 保育者は「どうしたら、いいかな?」と、子どもたちに投げかけた。
  4. 子どもたちは、「もう1枚、敷いたら」「ガムテープ貼る?」「(ガムテープが)水にぬれて取れていたよ」「新しいのにしたら?」など、解決方法を話し合う。
  5. Sちゃんが「お母さんが、土を入れたらいいって、言ってたよ」と伝えたことから、実際に試してみることになった。
  6. 実験の様子
    実験してみよう

    カゴを2つ用意し、同じシートを敷き、土を入れた水と入れない水で比較する。

    1. 「シートの上に水を入れる」
    2. 「シートに土を入れ、水も入れる」
  7. 昨日の実験結果を見た子どもたちは、「土がある方が、水が多い」「土が穴をふさいだのかな」「水も透明になっている!」「何で?」「雨が降ったから」「屋根の下だから、雨かかってないよ」「土が固まったから」などと、考えたことを出し合っていた。
  8. 保育者が「じゃあ、あの池どうしたら良いかな?」と問いかけると、子どもたちは「もう1回、最初からしよう」と、みんなでバケツを使い、穴の中の水を汲み、外に出し、池作りに再挑戦を始めた。失敗を経験したことで、目的意識をもって力を合わせて取り組む姿が見られた。
  9. Mちゃんは、「水、入れていい?」と、じっと待っている。
    Sちゃんは、「まだ!いっせーので、入れよう!」と、みんなに言う。
  10. 再挑戦に成功した子どもたちは、達成感にあふれていた。
  11. 池ができてくると、クラスで飼育している生き物(メダカやオタマジャクシ)を放してみたい気持ちが膨らんでくる。クラスで相談をする場を作ると、子どもたちからは「今、入れたら、死んじゃうよ」「水が透明になってからだよ」と、生き物のことを思い、ふさわしい環境を考える言葉も出てくる。

「なんで、透明にならないの?」「どうやったら、なると思う?」/6月中旬

  1. 池に貯めた水がなかなか透明にならない。
  2. 子どもたちは池が透明にならない(土が沈まない)ことを疑問に思い、「田んぼの水、透明だったが。だって、オタマジャクシいっぱい見えたもん」と、オタマジャクシ捕りで以前訪れた田んぼでの経験と比較する。
  3. 子どもたちは「土が固まってないからじゃない?」「太陽の光が当たると、透明になるよ」「水が多すぎなんじゃない?」と予想。水が多いと、濁りがなくなるのに時間がかかるのではないか、という考えのもと再び実験することになる。
  4. 実験の様子
    実験してみよう

    バケツを2つ用意し、どちらにも同じ量の土を入れ、水の量を変えて(多・少)濁りの様子を見る。

    1. 土を入れ、水を多く入れる。
    2. 土を入れ、水を少なく入れる
  5. しばらくして、水が少ない方が透明になっていることに気付いた子どもたち。「池の水を減らしてみようよ」と言うことになった。

「水が透明になった!」「やったー!」/6月下旬

池に生き物を放す
  1. 10日間待ち、水の量を減らすことで、ようやく池の水が透明になると子どもたちは大喜びをしている。
  2. 子どもたちは、「田んぼみたい」「早くメダカとか、入れようよ」「ドジョウも入れよう」と水が透明になることをひたすら待っていた。生き物を放したい気持ちが感じられたので、部屋で飼っていた生き物を放すと、子どもたちは、「泳いでるー」「気持ちよさそうだね」と感動を共有していた。
  3. その後、子どもたちの思いは広がり「池の名前、考えよう」「どんな名前がいいかな?」「みんなが楽しくなる名前」「違うクラスの友達にも、見てもらいたいな」「池に看板を付けようよ」と話し合った。自分たちの大切な池の名前“うきうきわくわくにじいろみんないけ”に決定し、看板を付けた。また、生き物が住みやすいようにと考え、水草や稲を入れたり、家庭から持ってきた生き物を入れたりした。
  4. 他のクラスの友達にも見に来てもらい、全園児の前で池の名前を伝えた。

考察

  • 今までの環境を見直すことから、遊びのイメージに広がりがもてるようになった。

    これまで畑として使用していた場所を遊び場の1つとしたことで、子どもが「~したい」という意欲や目当てをもって、戸外で遊ぶ姿が見られるようになった。

  • 失敗や疑問を解決するために、友達と一緒に試行錯誤していく過程を大切にすることに気付いた。

    子どもたちが、試行錯誤を重ねていくことで解決に向かった時の喜びや達成感が大きいものとなり、一人一人が自己を発揮しながら友達と力を合わせたり、考えを出し合ったりする姿が見られた。
    また、保育者自身が子どもたちの試行錯誤を支える環境を構成したり、情報などを提示したりできるように、教材研究をする大切さも感じた。

  • 遊びの中の学びを捉え、つなげていく、環境の再構成や援助の大切さが分かった。

    子どもたちの「どうして?」「なぜ?」を追求していく過程に、「科学する心」の育ちや学びの姿があると捉え、学びを繋げていけるように環境の再構成や援助の大切さが分かった。

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