保育のヒント~「科学する心」を育てる~

園内研修の工夫/幼保連携型認定こども園 常磐会短期大学付属いずみがおか幼稚園(大阪府)

園内研修はどのような方法で取り組まれていますか?

今回ご紹介する園は、園の保育について園全体で共通理解を図り実践することにより、研修内容について前年度からの進化や新たな展開が視覚化され明確になっています。保育の工夫を考え合う具体的なやりとりを大切にすることで、焦点が絞られていく体験や遊びが共有されています。共有されたことは実践に活かされ、「科学する心」が育まれる場面を捉えることに繋がっていることが分かります。

エピソード記録を生かす~転がし遊び~/0〜5歳児

今年度の研究を進めるにあたり

平成27年4月から子ども・子育て支援新制度となり、本園は、『幼保連携型 認定こども園 常磐会短期大学付属 いずみがおか幼稚園』として0歳から5歳までの一貫施設として新たにスタートした。

昨年度は“子どもを軸にした保育”という保育スタンスをもとに0歳児から就学前までの6年間の成長を見守っていく施設として、保育教諭間で共通理解すべきことを再確認することに重点をおいた。そして、「みんなで子どもを見つめていこう!」「難しいこと、特別なことでなく、「当たり前の生活の中で、子どもの『科学する心』の芽生えを見つけていこう」と大切にしてきた。

図「昨年の研究の流れと、今年度の研究の流れとして追加したもの」

昨年度から今年度にかけ、ブレインストーミングの取り組み後、保育者が意識をもって援助をし、環境の再構成をどのように行っていくか、行っていったかに照準を置いていくようにした。また、そこで本園における幼児期の「科学する心」の育みを教職員全体で深めるようにもした。

実際には、活動の中で深め合う内容を事例として取り上げて読み取りながら、次に繋がる「考察」を0歳児から5歳児それぞれに行い、そこから本園の考える「科学する心」を捉えた。

「子どもの姿を見とる」ことは、子どもの姿を共通理解するのに一番の方法であることを、昨年の取り組みからも感じていることから、今年度もたくさんの子どもの姿を集めていこうと考えた。

参考:昨年度の取り組みについてはこちら(PDF)

園内研修の工夫:エピソード記録をもとに話し合う

「エピソード記録の画像」(日付)7月末、(時間、場所、歳児)10:00頃、プール、3・4・5歳児、(エピソード)ぴっころの際、プールに水を入れていたら(とゆを使って)水が出ていることに喜ぶ3・4歳児。どうすれば水が早くプールにたまるかを考えている5歳児。年長が年少にとゆのかたむきを変える事や、とゆのつなぎ目を近づけ水がもれない様にする事を伝えている姿があった。0歳児からの成長過程を見ることができることを活かし、遊びや生活の場面のエピソードを集めていくと、保育教諭同士から同じ場面を見ていても違う視点での意見が聞けたり、エピソードのみを聞いた保育教諭からは経験に基づいた意見が聞けたり、と様々な角度からの子どもの姿を再発見することができた。さらなる理解の深まりのために、浮かんできた子どもの活動の視点を「興味・関心」「人間関係」「考えたこと・工夫(こうしてみよう)」「あこがれ(やってみたい)」「気付き・発見」「つながり」「繰り返し・継続」「達成感」「不思議」9つに絞り、エピソードを分類する。エピソードは、9つ全ての項目に分類することができた。

「ブレインストーミング」7月~:「転がる」「転がす」遊びの姿から

「子どもたちがビニールプールに“樋”を使って水を溜めている」場面を見ていた保育者が複数いたことから、次のような話に繋がった。

話し合いの様子
  1. A保育者:「水がこぼれないように、“樋”の傾きや繋ぎ目を考えたり、手で水を押し流したりする様子は、『早くプールに水を溜めたい!』という子どもの気持ちが伝わってくるね」
  2. B保育者:「遊びで“樋”を使って遊んだりすることってあるんですか?」
  3. C保育者:「砂場で水遊びをするのに使ったり、作った泥団子やドングリを転がしたりして遊んでいるわ」
  4. B保育者:「“樋”を使っていろいろな遊びができるんですね!」
  5. D保育者:「0・1・2歳は“樋”ではないけれど、ペットボトルを繋げた物を斜めにして置いていて、子どもたちがドングリを入れ、転がるのを楽しんで見たり自分でもやってみようとしたりしています。ペットボトルのキャップを使ったりもしています」
  6. A保育者:「5歳児組は園外保育でキッズプラザ大阪(大阪市にある子どものための博物館)へ行くと、積み木やブロックを使ってビー玉を転がすコースを作って遊ぶ姿を毎年のように見るわ! あと、カプラとビー玉を使い、テレビ番組で放送しているようにコースを作って、ビー玉の動きを楽しんでいますよ!」
  7. C保育者:「お店屋さんごっこで、5歳児さんにビー玉転がしをさせてもらったり、預かり保育の時間に一緒に遊んでもらったりして、4歳児組でも保育室で真似しようとしてやってる子どももいます!」
  8. A保育者:「こうやって見ていると子どもってみんな『転がす』遊びが好きだね! その年齢毎に、ある時期になれば毎年同じように発生するキッズプラザの遊びのようなものが、それぞれにあるってことね!」
  9. D保育者:「『転がす』遊びの繋がりを感じますね。繋がりがあるからこそ、年齢なりの遊びの変化が見られるんですよね」
  10. A保育者:「5歳児になると、コースへのこだわりだけではなく、転がす物にもこだわったり、転がす物の軌跡を考えて遊んでいたりするものね! 自分たちでイメージしたように「転がそう」といろいろこだわって遊んでいるわ!」
  11. C保育者:「『転がす』遊びも深いですね! 経験したことが土台となって積み上がっているのを感じます」
  12. D保育者:「『転がす』遊びの中での子どもなりの学びを追ってみるのも面白そうですね!」
  13. B保育者:「3・4・5歳さんの遊び、見てみたいです!」
  14. A保育者:「『転がる』→『転がす』→『転がそう』になっていくのに、子どもと“もの”との距離感の縮まりや遊びへの興味の深まりを感じるよね!」
  15. D保育者:「『転がる』『転がす』遊びに視点をおいた年齢ごとの事例を出してみませんか…」
年齢ごとの事例

その後、それぞれの年齢で「転がる」「転がす」「転がそう」の事例を挙げた。

  • 0歳児:穴の開いた箱にポットン、コロコロ遊び
  • 1歳児:「フーしたら」コロコロ遊び
  • 2歳児:ペットボトルと蓋でコロコロ遊び
  • 3歳児:友達と手をつなぎグルグル回ってドテッと転がる
  • 4歳児:段ボールや椅子を使って坂を作って転がす
  • 5歳児:園庭の斜面を使って坂で作る。転がり方、転がす場所、斜面に使う物など工夫する。

夏休みの預かり保育でも、子どもたちはビニールプールに水を入れようと、試行錯誤していた。5歳児は水道からプールまで樋を使って入れようとするが一本では短く、もう一本繋ごうと考えた。しかし、ただ繋げただけではつなぎ目から水が漏れてしまった。5歳児が必死に考え工夫する姿を見ながらも、3歳児は繋ぎ目から漏れていく水を見て「おしっこしてる!」と楽しんでいた。5歳児は「ここ持って!」と協力し合い、その姿を見て、4歳児は一緒になって繋ぎ目を持っていた。

考察

園全体で保育について協議する時間を取るために、様々な工夫をしてきた。意見を出し合うことにより、保育者一人一人が自身の保育を振り返るだけではなく、保育の工夫の手がかりを得て実践することに繋がっている。また、担当する年齢の保育だけではなく、他の年令の保育の工夫や子どもの姿を知ることができ、異年齢交流の場面でも、年齢の違いによる姿を把握して保育をすることに繋がっている。

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