保育のヒント~「科学する心」を育てる~

3歳児の飼育活動~アオムシ~/伊丹ひまわり保育園(兵庫県)

虫探しが大好きな子どもたち…。身近な場所で見付けた昆虫の幼虫を「自分たちで飼ってみたい」と、言ってきた時、どのようなことを大切にしていますか?

今回は、3歳児が、園庭で幼虫を発見し、自分たちで飼育を始める事例をご紹介します。

幼虫を間近で観察することで、子どもたちは、興味を深めていきます。そして、小さな生き物は、子どもたちにとって愛着を感じる大きな存在になっていきます。その過程から、「科学する心」の育ちを捉えることができます。

チョウチョになったよ/3歳児

アオムシとの出合い
  1. ある日、Aちゃんが、「先生、レモンの木の所にアオムシの赤ちゃんおったで!」と、教えてくれたので、みんなで一緒に見に行くことにした。
    1. Bちゃん:「どこにおるん?」
    2. Aちゃん:「ここ、ここ、この黒くて茶色いの」
    3. Bちゃん:「ホンマや、でも青くないやん」
    4. 保育者:「本当だ。黒いね。本当に青くなるの?」
    5. Aちゃん:「先生、虫かごで飼ってみようよ」
  2. 黒くて小さな体長1センチメートルほどのアオムシ。Aちゃんの一言で、周りのみんなの気持ちは一層高まり、クラスで飼い始めることにした。
アオムシに興味津々
  1. 飼育ケースにレモンの葉と一緒に入れたアオムシを、子どもたちは興味深く観察していた。幼虫を初めて見た子どもも多く、「黒くて茶色いな」「これがアオムシ?黒いやん」と、少し驚いた様子。虫に詳しい友達に「もうちょっと大きくなったら、緑色のアオムシになるんやで」と教えてもらうと、「そうなんや。早く緑にならんかな」と成長を楽しみにしていた。
  2. 子どもたちは毎日、飼育ケースをのぞいて観察を続け、気付いたことや不思議に思ったことを友達同士で話したり、保育者に伝えたりすることが多くなった。普段は虫が苦手な子どもも、ケース越しだと怖くない様子で、友達と一緒に観察したり、「可愛いね」と、共感し合ったりする姿も見られるようになった。
    1. Aちゃん:「ウニウニしてて、軟らかそう」
    2. Bちゃん:「“目”は、これかな?こっちかな?」
    3. Cちゃん:「葉っぱ食べてる!アオムシの口ってここにあるねんな」
    4. Aちゃん:「体が大きくなってる気がする。前は、こんなんやったもん」
    5. Cちゃん:「お尻から黒いの出てる。アオムシもウンチするねんな」
  3. 観察している子どもたちから、いろいろな言葉が出てきた。そして、幼虫が緑色のアオムシになった時には、「先生、緑色になったで!」「やっとアオムシになった」と、子どもたちは、朝一番に大喜びで教えてくれた。「でも、どうして黒から緑になったんやろ?」と、不思議そうにしていた。
  4. その後も、子どもたちは、アオムシをよく観ていた。また、「たくさん食べているから、新しい葉っぱをいっぱい入れてあげよう」と、園庭で拾った葉っぱを、飼育ケースに入れる子どももいた(クスノキ、カエデ、キンモクセイ、モクレンなど)。
  5. アオムシが、これらの葉っぱを食べない姿を見て、子どもたちは、「なんで食べへんのかな?」「お腹いっぱいなんかな?」「お腹痛くなったんと違うと?」と、しばらくケースを見つめながら考えていた。
  6. これは、「はらぺこあおむし」※1の絵本を思い出しての発言のようだった。
  7. チョウチョが出てくる図鑑や写真絵本※2の読み聞かせをして、一緒に調べてみることにした。絵本を見る子どもたちの目は真剣そのものだった。
調べてみよう
  1. 絵本を見た後のこと…。
    1. Aちゃん:「チョウチョにも、いろんな種類がいるんやな」
    2. Bちゃん:「羽の色が違ったもんな」
    3. Aちゃん:「モンシロチョウの写真があったけど、あのアオムシと僕らのアオムシ、形が違うな」
    4. Bちゃん:「このアオムシ、モンシロチョウと違うな。モンシロチョウは、キャベツとかを食べるって書いてたもんな…」
    5. Cちゃん:「アオムシの次は、サナギになるねんて」
    6. Dちゃん:「サナギになるまで、いっぱい、いっぱい食べるって書いていた」
    7. Cちゃん:「アオムシって、レモンの葉っぱ食べるんや」
    8. Dちゃん:「じゃあ、園庭の葉っぱじゃ、あかんな」
    9. Cちゃん:「初めにアオムシがおった、木の葉っぱ持ってこよう」
  2. 保育者は、“アオムシの形の違い”や“種類によって食べる葉が違う”など、子どもたちの気付きを受け止めた。
  3. レモンの葉を入れると、またアオムシたちが葉っぱをたくさん食べるようになった。
    1. Eちゃん:「葉っぱ、かじった跡がある」
    2. Fちゃん:「やっぱり、園庭の葉っぱじゃ、あかんかったんやな」
    3. Eちゃん:「また、ご飯いっぱい食べるようになって良かった」
    4. Fちゃん:「いっぱい食べて、もっと大きくなって欲しいな」
  4. その後、子どもたちは、脱皮の様子や脱皮後に皮を食べることにも興味をもった。
サナギになった
  1. 子どもたちは、アオムシの脱皮後の姿は見ることができなかったが、大きくなるに連れて可愛さが増してきて、「名前を付けたい」と提案があった。みんなで考え“はらぺこあおむし君”と名前を付けた。
  2. 「なんか、ウンチ、前より大きいやんな」との気付きもあった。
  3. しばらく経って、アオムシが葉っぱも食べず、全く動かなくなってしまった。子どもたちは、「はらペこあおむしの絵本みたいに、おなか痛くなったんかな?」と、とても心配していた。もう一度、以前読んだ絵本などを出してきて読み返していた。「サナギになる準備かな?」という話になり、様子を見ることにした。
  4. しばらく様子を見ていると、アオムシはやはりサナギになった。しかし、絵本で見たように枝や葉っぱに付くことなく、飼育ケースの中でコロンと横になっていた。「ちゃんとチョウチョになれるかな」と、子どもたちは、心配していた。
  5. 一週間以上たってもチョウチョが出てくる気配はなく、子どもたちは、「前よりちょっと茶色くなってる」と、小さな新しい発見をしていた。
  6. 翌週、子どもが「チョウチョになってる!」「アゲハチョウやったで!」と大興奮だった。しかし、休みの間、狭いケースの中にいたためか、片方の羽が曲がっていた。
  7. そのアゲハチョウの様子を見て子どもたちは、「お花の所に止まらせてあげたらいいんちゃう?」と意見を出し、園庭の隅にあるプランターの花の所に連れていった。
  8. 虫が大好きなMちゃんが、アゲハチョウをそっと腕に載せる、「ここにしてあげよっか」とみんなに話して花に移した。子どもたちは、チョウが飛び立つのを見守っていた。

振り返って

  • アオムシの飼育をしていく中で、毎日、熱心に観察することで、小さな変化に気付き、様々な疑問をもち、それを自分たちで調べようとする力が身に付いてきた。自分たちで調べることにより、「そうなんや、もっと知りたい!」との気持ちに繋がり、生き物への興味・関心がさらに深まっていった。
  • 自分たちで育てているという思いから、虫が苦手だった子どもも、虫に興味をもつようになり、「可愛い」「大切にしたい」という愛着の気持ちも芽生えてきた。それは、他の生き物との関わり方に広がり、園庭で見付けたアリやダンゴムシなども、「そっと触るんやで」と優しく接するようになってきた。
  • 毎日、熱心に観察を続けた3歳児にとって、チョウチョは完全変態で、成長過程が分かりやすいことも良かったと感じた。今回は卵からの成長に関わることはできなかったが、幼虫→サナギ→チョウの成長過程を間近で見ることで、3歳児でも命のことを考えたり、命の大切さを感じたり、命のサイクルが分かる体験ができることが確かめられた。
  • これからも保育者は、子どもたちの発見や気付きを大切にし、見守ったり子どもたちの思いに共感したりしながら生活していきたい。
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