保育のヒント~「科学する心」を育てる~

興味に寄り添う〜キノコ/伊那市立竜東保育園(長野県)

子どもたちの興味に寄り添う時、どのようなことを大切にしていますか?

今回は、子どもの一つの発見に保育者が丁寧に寄り添ったことで、子どもたちが対象への興味を深めていく姿をご紹介いたします。

子どもたちの興味に応えるために地域の施設を利用したり、対象に一緒に関わり共に探求したりする保育者の関わりが、「科学する心」の育ちを支えています。

キノコを発見して…/5歳児

※キノコと関わる活動は、触れてよいものか等、安全に十分に配慮して実施している。

4月上旬

  1. ドングリの木に登っている子どもたち。木の枝にプニョプニョした物を発見したRちゃんが、「ドングリの木が大変」と、みんなを呼ぶ。
  2. 「何これー?プニョプニョしてる」「グミみたい」「図鑑で調べてみようよ!」と興味をもった子どもたちが、園中を駆け回って図鑑を探し始める。
  3. 保育者は、子どもたちの発見に一緒に驚き、子どもたちの興味・関心を受け止める。
  4. Yちゃん、Aちゃん、Rちゃんたちが話し合いながら、「図鑑がない」「自分たちで図鑑作ればいいじゃん」「図書館行けばいっぱい本あるじゃん!」「洗ってみようよ?」「匂いがキノコみたい」「水に入れてみよう」「プニョプニョキノコのお風呂だー」などと伝え合い、枯れ枝のキノコを水に入れる。
    1. Yちゃん:「何で、沈んでいるのと沈んでいないのとあるんだ?」
    2. Rちゃん:「弱ってきたもんで、沈んじゃったんじゃない?」
    3. Rちゃん:「明日まで置いておこうよ」
  5. 保育者は、子どもたちの言動を見守りながら、匂いを嗅いだり触ったりして子どもたちの感じていることに共感する。月曜日の展開を待つことにする。
  6. 休み明けの月曜日、子どもたちは、「プニョプニョ見てくる」と一目散に走っていき、ドングリの木に群がる。
    1. Yちゃん:「あれ?何にもないよ」
    2. Kちゃん:「金曜日に全部取っちゃったからじゃない?」
    3. 保育者:「そうか、金曜日に全部取っちゃったもんね。他の木にはないのかなぁ」
  7. みんなで、園内の木を探し回る。
    1. Rちゃん:「ないね」
    2. Tちゃん:「ドングリの木にしかできないのかなあ」
  8. バケツの中のドングリの木の枯れ枝のキノコの変化を楽しみにしていた子どもたちは、バケツの中を覗いて、「プニョプニョが出てきてる」と大きな声をあげる。
    1. Hちゃん:「栄養分が木に残ってるから水に入れると出てくるんじゃない?」

4月中旬

  1. プニョプニョの正体を知りたいという子どもたちの思いを叶えるために、クラスで市立図書館へ行くことにする。
  2. 子どもたちは、着くまでの道中「図鑑あるかねえ」「何だと思う?」とワクワクしている。
  3. 図書館の職員に「こんな感じで、木にいっぱいくっ付いていてー」と絵に描いて伝える子どももいた。
  4. 子どもたちは、「木を調べればいいのかドングリを調べればいいのか?」「もしかして虫かもしれない?」と、様々な図鑑を広げて調べ始める。
    1. Yちゃん:「これじゃない?」と絵図鑑を広げ見せに来る。
    2. Tちゃん:「あっこれだよ、きっと」と言うと、Yちゃんの目がキラキラする。
    3. Rちゃん:「タマキクラゲっていうんだ。玉みたいだし、クラゲみたいに浮かぶからタマキクラゲって言うんじゃない?」
    4. Eちゃん:「タマキクラゲって分かって良かったね」
    5. Sちゃん:「お母さんにも教えてあげようっと」
  5. 保育者は、子どもたちの思いを受け止め、これからに繋がる言葉をかける。
  6. 次の日、Aちゃんが、「夜、雨が降ったもんで、タマキクラゲ出てきてるかも?」と言うと、子どもたちは、ドングリの木に走っていく。
    1. Rちゃん:「あったーあったー」
    2. Tちゃん:「先生!タマキクラゲ出た!」と大騒ぎ。
  7. 早速、木に登って採り、保育者が準備した籠に入れてテラスで干すことになる。昨日、キクラゲの仲間ということが分かり、食べてみたい気持ちが出てきた。また、子どもたちは、その後、他の自然物にも興味を示し、関わったり調べたりする姿が多くなった。

6月中旬

  1. Yちゃんが、キノコを発見する。
    1. Yちゃん:「こっちこっち。このプランターの所にあったの」
    2. Sちゃん:「なんか、細長いね」
    3. Kちゃん:「なんていうキノコか、図鑑で調べてみようよ」
  2. 友達が早速、図鑑を持ってきた。キノコ図鑑を広げてみんなで探す。
    1. Sちゃん:「これだね。ア・シ・ナ・ガ・イ・タ・チ・ダ・ケって書いてある」
    2. Yちゃん:「アシナガイタチダケ?」
    3. Tちゃん:「棒の所が長いから足長って言うんじゃない?」
  3. みんなは、「他の所も探してくる」と、キノコ探しが続いた。
  4. 数日後、Iちゃんが、芝の中に白いキノコを発見する。
    1. Hちゃん:「わー何これ。スポンジみたい」
    2. Kちゃん:「これも、キノコかなあ?」
    3. Rちゃん:「あそこにもあるじゃん」
  5. と言って指す方を見ると、別の芝の場所にもあった。キノコ図鑑を広げてみんなで探す。
  6. みんなで調べた結果、タヌキノチャブクロと分かり、さらに、子どもたちは、キツネノチャブクロも発見する。キツネノチャブクロの天辺から煙の様なものが出る(胞子)様子も見て、さらにキノコへの興味を深めていった。
  7. 7月には、自分たちで図鑑を作りたいという気持ちが膨らんできたので、保育者は、図鑑作りが楽しめる環境を整えたり、図鑑作りを見守りながら子どもたちの取り組みを認めたりしていった。そして、図鑑にどんなことが書かれていたら見た人が嬉しいと思うかを尋ねた。
  8. 「写真が載っていると、すぐ分かっていいと思う」「匂い」「食べられるか食べられないか」「出てくる季節」「色とか」「どういう所に出るかとか?」などのたくさんの考えが次々に出された。子どもたちは、友達同士と話し合い、協力して、図鑑作りを楽しんだ。

考察と今後に向けて

  • 子どもたちにとり、キノコは身近にあって見付けやすく、図鑑も豊富なため、対象をよく観たり考えたり、調べたりするという姿が続いたのではないかと思う。
  • 自分たちで調べて「分かった」という喜びを感じ、「調べる」ことの楽しさも味わうことができた。
  • 日頃から、登ったり基地を作ったりして親しんでいるドングリの木に、タマキクラゲを発見したのは数名だったが、その活動に保育者が一緒に興味を示すことで、他の子どもたちも興味・関心が広がった。
  • 子どもたちが発見したことを大切にしてきたことで、子どもたちは、さらに不思議に思い、匂いや手触り、音、色、形などを感覚・感性を働かせて観察したり、調べたりする経験ができ、みんなで共有することにも繋がった。
  • 図鑑作りは、子どもたちの強い思いで作成にいたった。友達同士で考え合ったり話し合ったりする姿に成長を感じた。子ども同士で話し合い活動を進める力がついてきているので、保育者は、取り組みを認め、見守るということがさらに重要になってくると感じた。
  • タマキクラゲを食べる活動を含め、地域の「きのこ博士」との交流を工夫するなど、今後も子どもたちの興味に寄り添い、探求の実現に向けて取り組んでいきたい。
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