保育のヒント〜「科学する心」を育てる〜

好奇心/学校法人ろりぽっぷ学園 ろりぽっぷ幼稚園(宮城県)

子どもたちから溢れ出る好奇心は、保育の充実や質の向上の手がかりになります。

また、主体性の要にもなり、満足するまで消えることはなく、子どもたちの遊びの展開の原動力になります。

今回は、大豆に出合った子どもたちの好奇心に寄り添う保育展開により、子どもたちに「科学する心」が育まれ、保育者にとっても子どもの成長を捉えた保育の方向性を明らかにすることに繋がった事例です。

納豆を作ろう/4歳児

事前の様子

地域の“ふるさと復興プロジェクト”に取り組まれているOさんと出合い、園外の畑でも栽培活動をする子どもたちは、自分たちで育てる野菜を決め、土作りを行い、野菜の種や苗を買いに行くなど、「こんな野菜を育てたい」という思いをもち、意欲的に観察、草取り、水遣りを行っている。

「大豆に出合う」/9月~

エダマメの収穫を楽しみ、エダマメを手にとって「毛がある!」「実が膨らんでいるね」など、気付いたことを話していると、「あれっ!?こっちのエダマメ枯れているよ!」と、茶色くなっているエダマメを発見したAちゃんが言った。

そこで、Oさんが茶色くなった枝豆のさやを開け、中の豆を見せて、「これは大豆だよ。この大豆が豆腐とか油揚げとか、いろいろなものに変身するんだよ」と話してくれた。

「枯れると大豆になるんだ」「どうしたら変身するんだろう?」と、好奇心が揺さぶられた子どもたちは、早速、絵本のコーナーで大豆や豆の本を見付けて、「大豆は何に変身するのかな?」「黄粉も作れるんだ」「納豆もできるんだね」と調べて話し合っていた。

「どうして硬い大豆が、軟らかい豆腐になるのかな?」/10月〜

10月になり、改めて大豆の収穫をし、さやから大豆を取り出す作業を行った。大豆のさやは硬く、「硬ーい!」「手が痛くなるよ」「中の豆も硬いよ!」と、豆を取り出すのに苦労していた。その中で、Bちゃんが、「どうして硬い大豆が軟らかい豆腐になるのかな?」と言うと、Aちゃんが「調べてみよう」と言い、豆腐の作り方が載っている『へんしん だいずくん』(監修:中山章子、荒木俊光ほか、写真:榎本功、絵:古島万理子他、出版:ひさかたチャイルド)という本を見付けた。大豆を一晩水に浸けて置くと書いてあったので、水に浸けるとどうなるのかやってみることにした。

次の日、「大豆、大きくなってるよ」「お豆、シワシワになってきた」「指で潰れる!」「大豆はお水に入れると大きくなるし、軟らかくなるんだね!」と気付いたことを言い合い、次第に知りたいことが分かってきた。

「納豆菌を見てみたい!」

大豆の本が好きで様々な絵本を見ていた子どもが、『しょうたとなっとう』(原案・監修:小泉武夫、写真・文:星川ひろ子・星川治雄、出版:ポプラ社)という絵本を読んで欲しいと持ってきた。他の子どもたちも興味をもち、みんなで楽しんだ。絵本の中に「藁には目には見えない納豆菌が住んでいて、大豆を納豆に変身させる」と書いてあった。「納豆菌見てみたいな」「食べてみたい!」「魔法みたいだね」と話題になった。「もち米の栽培、収穫、脱穀」する5歳児の姿を側で見ている4歳児にとって、藁は身近な物であったので、保育者は、興味をもった子どもたちで納豆の探究ができるよう、環境に藁や大豆、絵本や図鑑を準備した。

早速、子どもたちは納豆について調べ、「本に『目には見えない』と書いてあったが、納豆菌がいるなら見えるのではないか?」と、藁を見たり触ったり、折ってみたり、音を聞いてみたりと、考えたことを試していた。「納豆菌、どこにいるのだろう?」「納豆菌がいるのにどうして(藁は)ネバネバしてないの?」「大豆もネバネバしてないしね」「どうしたらネバネバするのかな?」などと話し、新たな疑問をもった。

「納豆を作ろう!」

次の日、「どうしたらネバネバになるか調べてきたよ」「納豆の本にも書いてあったよ」と調べてきた子どもが、イキイキした表情で報告してきた。


調べて分かったこと
  • 納豆菌は茹でた大豆が好き
  • 茹でた大豆を入れると納豆菌が元気になる
  • 大豆は一晩水に浸けて軟らかくしてから茹でる
  • 藁づと(藁で作る入れ物)の作り方
  • 藁に茹でた大豆を入れたら温かくして2日置いておく
調べて分かったことや考えたことをやってみる
  • 藁づとを作る…「水かけると藁の匂いがする」「お水シュッシュッすると、藁が柔らかくなるね」
  • 大豆を茹でる…「お豆が踊ってるみたいだ」「温泉に入ってるみたい。気持ちいいーって言ってる」「ポップコーンみたいな匂いがする!」
  • 茹でた大豆を藁づとに入れる…「どうなるんだろうね。楽しみだな」「ネバネバするかなぁ」
  • 2日後、藁を開ける…納豆になっているかワクワクしながら目で見て、触って、匂いをかいでみる。
    「白くなってる」「納豆の匂いちょびっとする」「えー!?する!?」「ネバネバしてないよ」などと、感じたこと、思ったこと、考えたことを伝え合った。そして、どうして納豆にならなかったのか考え合い、寝かし足りないので、もう少し置いておくことにした。
  • さらに3日後、藁を開ける…「納豆の匂いが強くなってる!」「でもまだネバネバしてないよ…」「醤油かけてみたら?」「マゼマゼしたらネバネバするんじゃない?」と言い、匂いは納豆に近付いているものの、糸が引いていないことに納得できない様子の子どもたち。そこで保育者が、「どうしたい?」と子どもたちの意思を確認すると、「もう一回やってみよう!!」と意欲的な答えが返ってきた。そして子どもたちは、「なんでできなかったんだろう?」「次はどうしたら良いかな?」と、一生懸命に考えた。今まで調べた本を読み返したり、納豆を作ったことがあるという保育者に話を聞きに行ったりと、一人一人が自分にできることを考えて行動する姿が見られた。

「糸が出る納豆を作ろう!」

納豆の図鑑の「糸が引いていない納豆のイラスト」に気が付いた子どもたちは、「これ!糸出てないよ」「ぼくたちが作った納豆と一緒だよ」「温度が下がったからだって書いてある」と見付けて言った。そして、「温かくするのが足りなかったってこと?」「じゃあ、冷たくならないようにしないと!」「お布団に入れたら温かいんじゃない?」「夜お部屋寒くなるから、先生お家に持って帰って」「ストーブの所に置いておいてね」などと話し合い、作ることになった。

大豆の温度が下がらないように、茹でた大豆を急いで藁に詰め、タオルや毛布でくるみ、夜は保育者が家に持ち帰りストーブの前に置いた。

大豆を藁に詰めて2日後、子どもたちは、ドキドキしながら藁を開けて見る。
思い思いに関わり、「納豆の匂いするね」「あれ?前と同じ?」「えー」「でも、待って!スプーンで混ぜると糸が出た!」「やったー!」「納豆できた!」と、口々に言い、納豆ができたことを喜ぶ。

その後の出来事

クラス便りで納豆研究の様子を何度も保護者に伝えていたので、保護者も“面白そう!”と感じ、自宅で調べて納豆作りをしたり、「“納豆”でも(納豆を使っても)、大豆を納豆にさせることができるんだよ!」と、園に納豆を持ってきたりする子どもがいた。

今後の方向性

やってみたいと思ったことを、自分たちで実現させてきたことで自信や意欲が高まり、様々なことに挑戦してみようとする姿が見られるようになった。子どもたちの興味はどんどん広がり、好奇心を発揮して、身の回りの環境に関わっている。子どものつぶやきや心の動きを見逃さず、興味をもったことに存分に関わる環境を保障していけるよう、職員全員で連携を図り、園全体で子どもを見ていくことが大切となってくる。子どもの素直な好奇心から出てくる『知りたい』『やってみたい』という思いを、その時に、すぐに調べたり試したりするなど、実践へと繋げられるようさらに環境を整えていきたい。

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