保育のヒント〜「科学する心」を育てる〜

「科学する心」が育まれる飼育体験/学校法人押野学園 幼保連携型認定こども園せんだい幼稚園(鹿児島県)

園庭や日常的に活動できる近隣の環境で、子どもたちが興味を深める生き物との出合いはありますか?

見付けた生き物を、子どもたちが「クラスに持ち帰り飼いたい」と言った時、飼育するか否かの判断は、どのようにしていますか?

今回は、飼育している生き物への興味を深め、自分たちで考え合って積極的に関わり、飼育物への愛着が育まれていることを保育者が読み取っている事例をご紹介します。

コオロギの飼育/5歳児

「コオロギを飼おう」/4月~

園庭の“な~もの森”でコオロギを見付けた子どもがいた。Hちゃんはそれを見て、「これはエンマコオロギだよ」と、コオロギを見付けた子どもに細かい種類まで教えていた。飼ってみたいという声があがったため、飼うにあたって環境と餌について子どもたちに聞いてみる。子どもたちが「涼しい所にいる」「土の所に住んでいる」と何人かが答える中、Hちゃんは、「コオロギは夏から秋にいるはずなのに、今(の季節に)いるのはなんでだろう?」とつぶやいたことで、子どもたちの好奇心がさらに揺さぶられた。そこで、餌について話し合い、「キュウリを食べる」「葉っぱもちょっと食べる」「鈴虫の餌。鈴虫を飼った時の餌の説明の中にコオロギも食べると書いてあった」などの意見があがり、飼育箱を用意して飼い始めた。

「キュウリ食べるかな?」/4月

コオロギがキュウリを食べるという話を家でした子どもが、家からキュウリをカットしたものを持ってきた。また、鈴虫の餌も食べると言った子どもは、鈴虫の餌を持ってきた。早速、飼育箱の中に入れてしばらく時間が経った時に、キュウリの上にコオロギが乗っている姿を子どもたちが見付け、「キュウリ食べてる!」「口は動いていないけど、乗ってるから食べてるんだよ」と話していた。(その後、キュウリを食べている様子はあまり見られなかったが、鈴虫の餌を食べている姿はよく見かけられた。)

「鳴き声を聞いてみたい」/5月〜

図鑑で調べて、オスのコオロギであることは分かった。飼って27日経つが、コオロギの鳴き声を、未だに誰も聞いたことがなかった。子どもたちが帰った後に、コオロギが鳴いていることに気付いた保育者が動画に撮った。翌日、子どもたちはその動画を視聴した。子どもたちは、「本当だ、鳴いてる!」と喜ぶ一方、実際に自分でその姿を見たいという思いをもった。

その数日後、日中にも鳴くようになり、しばらく鳴いている様子を、子どもたちが飼育箱の前でじーっと観察する日が続いた。ずっと観察していた子どもたちからは、「口で鳴くんだと思っていたけど、口で鳴いてるんじゃないね」「羽と羽で音を出してる」と自分たちで発見したことを教え合っていた。

「コオロギの赤ちゃんが見たい!」/5月中旬〜

コオロギと同様に園内で見付け、クラスで飼っていたテントウムシが卵を産んだ。すると、「このコオロギも卵を産むのか」「どのように子どもが産まれるのか」が、クラスでは話題になった。みんなで話し合うと、「卵から生まれる」「お母さんのお腹から、(成虫と)同じ形で生まれる」「幼虫から大きくなる」などの意見が出た。

テントウムシの卵を見たことで、コオロギの赤ちゃんを見たい気持ちが高まっていた子どもたちは、早速、図鑑を広げ、赤ちゃんがどのように産まれるのかを調べていた。(コオロギについて、気になることが出てきた時に自分たちですぐに調べられるように、コオロギについて詳しい記載がある図鑑や絵本をクラスの中に置いている。)

「メスコオロギを捕まえよう!」/5月下旬〜

図鑑を見ることでコオロギも卵を産むことを知った子どもたちの関心は、「どうやったらこのコオロギが卵を産むのか?」に移っていた。

同じく図鑑の情報から、今飼っているコオロギがオスであることを知っていた子どもたち。虫博士のHちゃんが、「メスのコオロギがいればいいよ」と発言すると、メスのコオロギを捕まえるための話し合いが始まった。

子どもたちは、「容器にメスコオロギをおびきよせて捕まえる」と、イメージを共有していたが、何を使ってどのようにすればいいかは結論が出なかった。


すると、凧揚げをするためにビニール袋に紐を付けている友達を見たSちゃんが、「分かった!これ(袋)で捕まえたらいいんじゃない?」と、ビニール袋を使うことを提案した。凧作りをしていたRちゃんも、それを使うことを快く了承した。早速、コオロギを見付けた“な~もの森”へ駆けて行き、子どもたちはどこに仕掛けを置こうか話し合った。飼っているコオロギを見付けた付近に、コオロギが好きな餌を入れたビニール袋の仕掛けを置くことに決まった。さらに、「風が吹いたら飛んでいっちゃう!」と仕掛けが飛ばないように重りを乗せたり、ゴミと勘違いされないように「さわらないでね」と貼り紙をしたりした。

翌日も朝一番から、「今日は、今日こそは絶対にコオロギのメスを捕まえる!この仕掛けを作ったから絶対大丈夫!」とキュウリに鈴虫の餌とかつお節をまぶしたものを袋の中に入れ、ずっと仕掛けの様子を見ていた。昼に、再度中身を確認しに行くと、コバエが3匹入っており、「コバエか!」と言いながらも仕掛けに虫が入っていたことだけで子どもたちは満足気だった。その後、「入ってくる所がたくさんあった方がいい」「紙コップの方がいいかも」などと、何度かいろいろな仕掛けを作っては試していたが、コオロギを捕まえることはできなかった。

考察

コオロギを飼うようになって、以前よりも「みんなで大切な命を育てている」という自覚が一人一人に芽生えてきた。メスのコオロギを捕まえようという試みは成功しなかったが、自分たちでコオロギを捕まえるという目的を達成するためのイメージをもちながら、考えて取り組んでいる姿が見られた。今回の試みも、卵を見てみたいという気持ちだけでなく、「コオロギが一匹だけでは寂しいからね」「一緒に遊べるお友達がいたほうがいいよね」と、コオロギのために何かしてあげようという気持ちも背景にあったようだ。また、餌の種類を変えてみたり、メスを捕まえるために工夫した仕掛けを作ったりと、自分たちで考え、行動することが確実に増えてきている。

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