保育のヒント〜「科学する心」を育てる〜

保育を振り返る(5領域)/姫路市立御国野幼稚園(兵庫県)

子どもたちの遊びの記録の取り方や読み取りなどは、どのように工夫されていますか。子どもたちの遊びや生活が充実するように保育を振り返ることを、どのように援助の手がかりに結び付けていますか? 今回は、これまでの実践を生かして、「主題についての考え方」「援助の在り方」「事例を読み取るための考え方」を事前にもち、記録を丁寧に読み取る工夫をしている事例です。写真により記録にない情報も見えてくることが分かります。

砂場遊び/4歳児

当園での「科学する心」の捉えと保育者の援助の在り方

科学する心
子ども自らが様々な事象と出合い、心揺さぶられ試行錯誤し遊びに没頭し遊び込む姿こそ「科学する心」が育っている姿といえる。それは、幼児にとって楽しい活動であり、発見や気付きの喜びが多くあり、繰り返し取り組みたい活動になっている。このように子どもが、主体的に活動する中で、「科学する心」は育っていくと考える。
保育者の援助の在り方
保育の多くの場面で、保育者が見守ったり共感したりすることで、子どもの意欲は高まり楽しんで遊んでいるように見えていた。しかし、子どもたちが遊び込めるほどの、より質の高い遊びになるためには、今までのように認めたり共感したりするだけでなく、子どもたちの内面にあるイメージや思いを十分に引き出し、意欲を繋いでいく援助が重要になることが分かってきた。
そのために保育者は、時にはモデルとなったり遊びの提案をしたりすることも重要である。子どもたちは、友達や保育者など身近な人に思いや考えを受け止められ、引き出されると、試したり工夫したりしながら粘り強く遊びに関わり、主体的に遊びを進めていくのではないかと考えた。
事例を読み取るために
子どもたちの活動している姿の記録を取り、内面の理解と行動の理解に分けて5領域の表にし、援助の在り方(保育者の言葉がけや環境構成)について保育の振り返りをする。

事例「川づくり」/6月

ねらい
砂、泥、水、土の感触を味わいながら友達と思いを伝え合ったり、相手を受け入れたり自分が受け入れられたりして遊ぶ楽しさを味わう。
環境構成と保育者の援助
砂、泥、土、水を使って思い切り遊び、面白さや満足感を味わえるように、子どもの事態を踏まえていろいろな遊び方を想定し、必要な遊具や用具を用意しておく。
砂場で遊ぶこどもたちの様子 「だめ!もっとほらな水たまらんやん」「めっちゃ大きい川つくろ!」、「あっちもつくってるで 皆で繋げよー」「私水くんでくるね!」「うん 僕もここ繋げる」、「土がドロドロして柔らかいね」「うわっ! 冷たくて気持ちがいい」
保育の場面
保育の様子 保育者の読み取り
「Tちゃん、川つくろう?」「いいよ。どこにする?」とTちゃんを含めた数人の幼児が砂場で穴を掘り始めた。
「もう、水流してもいい?」「まだ、だって掘らないと水が溜まらないで」(①)と言いながら穴を掘っていると、「あっ!あっちでも穴掘ってるで」「ほんまや!繋げたら大きい川ができるで」「一緒に繋げようか」「いいで」と川を繋げるために掘り進めていった。(②) ①水が速くなくなる②繋げて大きな川にしたいな
川が繋がると「やったー」(③)と喜び、「先生、見てー」と言いに来る。 ③みんなでつくると楽しいな
(a)「すごいね。できたね。」と保育者も共に喜ぶ。
「水、流そう」と端と端から水を流し「水が来た!早く掘らな水がなくなってしまう。」「こっちもお水持ってきて」などと水を溜めるのに夢中(④)になって遊び始める。 ④どうして水がなくなるのかな
(b)保育者も「ここ」と聞きながら水を入れて一緒に遊ぶ。
しばらくすると「水があふれてきた」「もう入れるんちゃう」「私も入れて」と水に入り楽しそうにはしゃいでいる。(⑤) ⑤水や土は気持ちいいな
「先生見て。川が完成したよ。」「先生も入って!冷たくて気持ちいいよ」 「泡もできてる」「この泡石鹸見みたい。フワフワ」と誘いに来た。(⑥) ⑥何で泡ができるの?
(c)保育者も裸足になり、一緒になって遊び「ほんとだ。冷たくて気持ちがいいね」と楽しさを共有する。
子どもも嬉しそうに「泳いでみたいね」「魚がいるといいのに」と思い思いにイメージを広げながら、水や泥の感触を楽しんでいた。(⑦) ⑦川にいるみたいだ
ところが、たくさんの子どもたちが一斉に入ったため、水が溢れたり踏んでしまったりして壊れてしまった。
子どもは、怒ることもなく「修理しないと」「そこに土集めて」と川に溜まった砂をすくい上げて積み、溢れ出ないように楽しそうに補修しながら、遊びを続けていた。(⑧) ⑧あっ、壊れた
保育者の読み取りと援助
5領域
健康 人間関係 環境 言葉 表現
読み取り 内面 感じる 体を動かすのが楽しい ②友達と繋げると面白くなると感じている ⑤泥や土、水などの感触を楽しむ ③自分の気持ちを話すのが楽しい ①速く水を入れたらいい
考える ④友達と試行錯誤しながら遊ぶ ⑧どうしたら、修繕できるか考える ⑥遊びを楽しくするためにイメージを伝える
行為 表す 手を洗う ⑦イメージを広げ楽しさを伝え合う 川を修繕する 土を積み上げるよう伝える 大きな川をつくる
援助
  • (a)認める
  • (b)雰囲気づくりをする
  • (c)共に遊ぶ

考察

友達同士誘い合って遊ぶ姿が、砂場遊びでも見られるようになってきた。水や土、泥の感触を十分楽しむうちに気持ちよさを感じ、大きな川づくりへと発展していった。(保育者は、子どもたちの遊びを見守りながら、一緒に遊んだり裸足になったりして楽しさを共有していった。)また、保育者が子どもの言葉や思いを受け止めたり表現に共感したりすることで、砂場の雰囲気が開放的になり、友達同士の会話も弾み、子ども同士で遊びの楽しさを共有していったと思われる。

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