保育のヒント~「科学する心」を育てる~

保護者・専門家との関わりⅡ/学校法人岩崎学園 くりの木幼稚園(千葉)

子どもたちが好奇心や探求心を発揮して、“人、自然、もの、出来事”に意欲的に関わる姿を捉えたとき、どのように援助の工夫をしていますか?

今回は、園の自然環境を通して身近な自然に親しみ、豊かな自然体験を重ねる工夫をしている実践をご紹介します。本園の特徴的な保育の工夫の1つ、地域の科学ジャーナリストを迎えて、生き物や自然への興味を深める体験を重ねる取り組みです。

専門家との関わりを通して、広がる自然体験~虫~/3〜5歳児

「カプセルに入れるとよく見える」

柴田氏の話を真剣に聞く子どもたち
丸いカプセルの中に虫を入れて観察する

毎年、地域にお住いの科学ジャーナリスト柴田佳秀氏と連携して、虫探しや生き物への興味が深まる活動を重ねている。今年も子どもたちが楽しみにしていた柴田氏との虫探しの日が来た。活動の始めに、「観察したらなるべく逃がしてあげて」という柴田氏からの声掛けに真剣に頷く子どもたち。「カプセルトイのカプセルに入れると虫に傷が付かないし、観察もじっくりできるよ」「虫が嫌いな子どももこれなら見られるでしょう」とカプセルでの観察を紹介していただいた。子どもたちはその後、夢中になって虫を探し、見付けてはケースに入れたり、観察したりしていた。

虫探しの中で、「真っ赤なアリがいるよ」と柴田氏に見せる子どもがいる。見付けてすぐは真っ赤なのだが、少しずつ黒く変色していく。そのアリを見つめて目を丸くする子どもたち。「分からない。どこにいた?」と注意深く観察する柴田氏の様子を見て、子どもたちも興味津々。真っ赤なアリについて、「新種?」「クリノキアリって名前付けてもいい?」と、子どもたちは目を輝かせていた。柴田氏に調べてもらったところ、アリに擬態するカメムシであるホソヘリカメムシの幼虫だということが分かった。赤いのは赤ちゃんだからだろうとのこと。「アリじゃなくてカメムシなんだ!」「何で、アリのフリするんだろうね?」「アリは敵に食べられない虫なのかな?」と自分の考えを伝え合っていた。

虫を探して虫かごにコレクションしていく様子があったが、専門家を迎えてからは、虫の扱い方に注意を払ったり「見たら、放してあげよう」と自分から発言したりする子どももいる。

「ミツバチとの関わり」

虫に興味がある子どもだけでなく、あまり好きではない子どももカプセル越しに見て、「トンボの目って、キラキラしてるね」「細かい毛がいっぱい生えてる」「キョロキョロしてるね」と、カプセルに顔を近づけて虫を観察する姿が見られる。その様な中、柴田氏が、「危険な虫もカプセルに入れると安全に観察できるよ」と、ミツバチをカプセルに入れてくれた。子どもたちは普段、目の前で見られない生き物なので食い入るように見ていた。そして、「後ろ足に、黄色いのが付いている」「本当だ。両足に付いているね」「花粉じゃない?」「ハチって花粉を集めるんだよね」と意見を伝え合っている。柴田氏からは、「観察し終わったら先生に逃がしてもらってね」「見せてくれてありがとうって気持ちをもってね」という声をかけてもらった。

幼稚園で遊んでいると、小さいの、黄色と黒のシマシマ、真っ黒で大きいのなど、いろいろなハチが飛んでくる。その時は、「ハチが出た!」と、子どもたちが怖がってしまうが、カプセルに入ると怖さも和らぎ、じっくり観察することができた。

「親子で蜜蝋キャンドル作り」

蜜蝋を温める親子

子どもたちがハチに興味をもったことをきっかけに、近所の養蜂を趣味にしている方から蜜蝋を分けていただけることになり、親子で蜜蝋に触れて楽しもうと、「蜜蝋ろうそく作り」を計画した。

参加人数分の準備のために、カッター、ナイフ、ノコギリなどを使ったが、切り分けることができず、熱したハンダゴテで、やっと切ることができた。熱をかけて切っていると、子どもが、「焼き鳥の匂いする!」「焼肉じゃない?」と口々に言っていた。

細かく分けた蜜蝋を親子で手に包んで体温で柔らかくして、木綿糸を芯にしてロウソクを作った。冬の寒い時期だったので、柔らかくなるまで時間がかかり、親子で交代しながら両手で蜜蝋の塊を温めていた。時間をかけて温めていくと、「ん?柔らかくなってきた」「粘土みたいになったよ」「ちょっと甘い匂いするね」「黄色いのはどうして?」「花粉の色じゃない?」と子どもたち。参加した保護者からも粘土のように柔らかくなった蜜蝋を親子で相談しながら形にしていく。「どんな形にする?」「くまさんにする!」「ロケット!」「バラ」など、親子でイメージを共有して、子どもの想像したものを形にしようとする姿が見られた。

「蜂の巣って?」

蜜蝋装置の図
作成した蜜蝋装置
蜜蝋装置においた蜂の巣を見つめる子どもたち

柏市内に養蜂所(ハチミツ屋さん)があることを知り、連絡をすると、「ハチミツを搾ったあとの蜂の巣は廃棄してしまうので譲ってもいい」との返事をいただいた。蜂の巣を斜めにした鉄板の上に置き、夏の暑い日光の熱でハチの巣が溶けて下の容器に溜まると、丁寧に教えていただいた。

火も使わないので子どもの前でも安全だと知り、早速、子どもたちと試してみた。
「これに載せるとハチミツ取れるの?」「ハチミツ出てきた!」「これ食べられる?」と、蜜蝋より、ハチミツに興味津々な子どもたち。

保育時間終了後も園庭にこの装置を置いておくと、3歳児から5歳児までの異なる年齢の子どもたちが装置を見つめて思い思いに話し合っている。

  1. 「前にお父さんお母さんとろうそく作ったやつでしょ?」と5歳児が言うと、
  2. 「ろうそくって何?」と3歳児。
  3. 「んー」と、5歳児はひと呼吸おき、
    「花火やるじゃん?花火に火をつけるやつだよ」と言う。
  4. すると、「それ知ってる!」と3歳児。
    「これ火がつくの?」と不思議そうにしている。
  5. 「でもさー」と5歳児。
    「ハチミツも出ちゃうし、蝋も溶けたら混ざっちゃうんじゃない?」
  6. 「“混ぜ混ぜなもん”なんじゃない?」と言う子も。

2日間に亘って日光の下に置いておき、変化を見た。
「本当に溶けるの?」「ハチミツは出るけど、蝋は溶けないじゃん」「温かくなると溶けるんだよね?」「触ってみていい?」などと話す子どもたち。
鉄板を触って「けっこう熱いね」「触れるけど熱いね」「お日さまの力でこんなに熱くなるんだ!」「陰になるとすぐぬるくなっちゃう」という感想が出た。
また、鉄板だけでなく、蜜蝋にも触りたいと言った子どもたちは、約束をして触った。

約束……触るのはちょっとだけ・すぐ手を洗う・手に付いたハチミツを祇めない

考察

いろいろな昆虫や生き物に興味・関心が高い子どもたちなので、観察用の教材になるカプセルや、カプセルの中のハチを安全に観察したことは、子どもたち自身が興味の深まりを感じる楽しい体験になった。その体験を活かして親子で蜜蝋に触れる体験の機会を作ったり、ハチの巣から蜜蝋を取り出す試みをしたりしたことで、興味・関心がより広がったのではないかと考えた。地域の専門家や保護者の協力を得ることで、子どもたちは新たな情報や知識、技能を獲得するだけでなく、大人が真剣に自然や生き物に関わる姿からも、様々な学びをすることができた。

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