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2003年度入選プロジェクト校
  愛知県刈谷市立刈谷南中学校

科学が好きな生徒を育てる刈南プロジェクトII
学校長
杉浦 泰彦
PTA会長
岩瀬 正俊
教頭
小笠原 豊
研究代表者
柴田 芳之
児童数
643
学級数
24
電話
0566-21-0025
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実践評価
1 本校が考える「科学が好きな生徒」

 科学が好きな生徒を本校では次のように定義した。

「自然の事物・現象に興味を持ち、進んで追究し、自然の奥に潜む素晴らしさを感じ取ることができる生徒
  • 身の回りの自然の事物・現象に興味を持ち、自分なりの課題を見つけることができる生徒
  • 見つけた課題に対して、進んで追究しようとする生徒
  • 追究活動を通して、自然の事物・現象の奥に潜む神秘さ、荘厳性、巧みさに気づき、実感することができる感性豊かな生徒
2 科学が好きな生徒を育てる刈南プロジェクトII

 週2.5〜3時間ある理科の授業こそ、科学が好きな生徒を育てていく原点であるとの観点に立ち、理科授業を中心に据えたプロジェクトを組む。
 プロジェクトTでは、「自然との関わりの重視」「人(友達、専門家等)との関わりの重視」「問題追究を豊かにする環境の整備」の3つのキーワードを立てて実践を行ったが、プロジェクトUでは、科学が好きな生徒像に迫るために、プロジェクトTより、より細かく設定された6つのストラテジー(戦略)をたてて実践を行うこととした。

(1)プロジェクトの基盤となる6つのストラテジー(戦略)
  1. おや、不思議だ。なぜだろうという問いを育てる(興味・関心・意欲の重視)
  2. 科学の方法を身につける(探究のプロセススキルの育成)
  3. じっくり観る目を養う(実験・観察等、直接体験の重視)
  4. 論理的に発表し合い、互いに高め合う(情報収集・処理能力の育成)
  5. 個々のこだわりを生かす(個別追究の重視)
  6. 追究意欲を奮い起こし、追究を支援する環境を整える
    (問題追究を豊かにする学校環境・人的環境の整備)
(2)ストラテジーの具体策
  1. おや、不思議だ。なぜだろうという問いを育てる。
    • ア 問題意識を持たせる工夫
       授業の導入部では、次のような工夫をし、生徒の疑問を誘発する。
      • 生徒の先行経験や既知の事項では説明できないような事象と出会わせる。
      • 知っているようで知らない曖昧さや盲点を刺激するところから疑問を持たせる。
      • 何も疑問がないと思われる自然の事物・現象をじっくり五感を使って観察させるところから疑問を生じさせる。
    • 振り子付き台車
      振り子付き台車
      この台車は振り子のエネルギーで
      進むことができるのだろうか
      イ 教材教具の工夫
       生徒の問題意識を芽生えさせ、学習意欲を喚起することができる教材教具の工夫を行う。教科書教材に工夫をこらし、調べたい、知りたいという気持ちを起こさせる学習材にする。
  2. 科学の方法を身につける
    • ア 総合学習で大切にしている4つの場を理科においても踏まえた指導過程の工夫
       総合学習とタイアップして生徒の問題発見・解決能力を育成するような理科指導を展開する。本校の総合学習では、追究の過程をしっかり押さえた学習を行うために、以下に示す4つの場を設定している。
      総合学習で大切にしたい「4つの場」
      1. 「把握する」→学習課題をつかむ。
      2. 「追究する」→解決の計画を立て、それに基づいて追究する。
      3. 「表現する」→自分で調べたことや自分の考えを他に向けて発表する
      4. 「自分に返す」→今までの追究活動の中で学んだことをもとに日常生活をとらえなおし、自分にできることを考え、実践するといった活動をする
      プロジェクトIではこの4つの場を指導過程に位置づけ、生徒の問題追究のための力を育てるのに効果的であった。プロジェクトIIでは生徒の実態、単元の学習内容や時間数などを考慮して4つの場をフレキシブルに位置づけていきたい。
    • イ 問題解決能力を効果的に育成する年間カリキュラムの作成
       次の点に留意して年間カリキュラムを作成していく。
      • 各学年一学期に一つは重点的に取り組む研究単元の開発を行っていく。また、問題解決的な単元を開発していく際には、大単元を貫くものでなくとも単元の内容、必要な時間数、生徒の実態などを考慮して最適なスパン(まとまりのよい小単元)の追究学習を創っていく。
      • 単元に4つの場をフレキシブルに位置づけていく。そして1年を通して見たときそれぞれの場をまんべんなく学習できるようバランスをとった計画を立てていく。
      • 探究のプロセススキルを、観察、測定、分類、予想、仮説の設定や検証、モデル形成の6つに大別し、主にどのスキルをどの単元で主として育成していくのかを考え、計画的に育成できるようにしていく。
  3. じっくり観る目を養う
     プロジェクトIIでも観察・実験の重要性を念頭においた手だてを講じていく。
     具体的には、次のようなことに取り組んでいく。
    • 一人一台を使って顕微鏡観察
      一人一台を使って顕微鏡観察
      観察・実験はできる限り一人一人に取り組ませるようにしていく。そのために必要な実験器具等の整備を可能な限り行う。現在は、顕微鏡観察については一人一台を使って観察できるように整備が進みつつある。
    • 授業においては仮説の設定や検証・修正のための実験を重んじて取り組ませる。このような目的的な観察・実験を単元に位置づける。
    • 植物教材などは学校周辺のどこに行けば大量に入手できるかを記録しておく。また、塩ビパイプやガラス板、動物の臓器やイモリ、マウスといった教材の入手先も記録しておく。
  4. 論理的に発表し合い、互いに高め合う
    • ア 目的に応じた効果的・効率的な情報収集の仕方を身につけさせる
       必要とする情報をいかに効果的・効率的に集めるかを見極め、実行する能力を育てていきたい。どの方法で情報を集めるのが最もいいかを考えさせた上で情報収集に当たらせたい。そして集めた情報を客観的に分かる形(文章による記述、図やグラフ化、写真、モデル化等)で整理させる点にも重きをおいて指導していく。
    • イ 集めた情報から自分の考えを構成させる
       集めた情報を分析し、自分の考えを構築していくという段階にも力を入れて指導していきたい。
       具体的には次のようなことをする。
      • インターネットや文献から情報を得る場合、文章の引用は必要な部分のみに限定し、しかも文中の言葉をできるだけ平易な言葉に置き換えさせる。
      • できるだけ図やグラフ、モデル、写真などを使い、見てイメージできるようなまとめ方をさせる。
      • 得られた情報(事実の部分)とそこから思ったこと、感じたこと(意見の部分)を分けて記述させる。また、意見の部分はできるだけたくさん書かせること、文章の苦手な生徒に対してはイメージ画やイラスト等、自分なりの表現方法でまとめさせること。
    • ウ 討論や話し合いの場を工夫し、論理的思考力を育てる
       具体的な工夫としては、次のことが考えられる。
      • 班での、あるいは全体での討論や話し合いの場を計画的に設定していく。
      • 討論や話し合いの場において具体物やデータを重視させることで事実に基づいた話し合いが展開でき、論理的な思考を引き出すことができる。
      • 地震の動きを視覚化する教具によりイメージを深めさせる
        地震の動きを視覚化する教具により
        イメージを深めさせる
        討論や話し合いの場において考えやイメージを深めさせたり、あるいは揺さぶりをかけたりするための教材教具を工夫する。
      • 話し合いの場面において必要に応じてホワイトボードを活用させることで、事実や考えを視覚的に整理しながら意見を述べ合うことができ、論理的な思考力を伸ばしていきたい。
      • 討論後の考えの変化が分かるようにノートをとらせる。
    • エ 「表現する場」でコミュニケーション能力や表現力の育成をはかる
       「表現する」場を単元の中にまた、単位時間の授業の中に計画的に位置づけていく。
       具体的には、次のようなことを行っていく。
      • 多彩な発表方法(ポスターセッション、ワークショップ、レポート、身体表現等による発表)を体験させる。
      • 相手を納得させるような発表の方略を立てさせる。
  5. 個々のこだわりを生かす(個別追究の重視)
    • ア 個の考えを生かした問題解決的学習を行う
       生徒が探究心を持って、主体的・創造的に問題解決に当たることができる場と、自分たちの考えに基づいた追究活動を保証する。そのための一人一人へ支援を可能にする実験計画書を書かせる。また、追究過程での志向の流れを把握し、支援するための個人カルテを活用する。
    • イ 「自分に返す場」で学習の意味づけを行ったり、生徒のニーズに合わせた学習を展開する
       プロジェクトTでは、単元の終末段階において「自分に返す」場を位置づけ、自分なりの学習の意味づけを行わせた。プロジェクトUではさらに「自分に返す」場を自分の理解度やニーズに応じて「補充的な学習」や「発展的な学習」を行う時間として活用していくといった方向も取り入れる。以上のように複線化された学習においては、教員でTTを組んで行うなど指導体制の上でもより個に応じた指導助言が可能となる手だてを講じていく。
  6. 追究意欲を奮い起こし、追究を支援する環境を整える(問題追究を豊かにする学校環境・人的環境の整備)
     科学が好きな生徒を育てるための環境作りを「物、時間、場の提供を主眼とした学校環境の工夫」と「人的環境の工夫」の2点から取り組んでいきたい。
    • ア 物、時間、場の提供を主眼とした学校環境の工夫
      1. 問題解決のための環境支援
        • 調べ学習に耐えうる書籍類を整備している
          調べ学習に耐えうる書籍類を整備している
          情報収集環境の充実を図る
           追究活動に耐えうるような書籍、図鑑、あるいは単元に関連した教具類などを理科室に整備しておき、必要に応じて自由に使えるようにしていく。また、昨年度より各理科室にインターネット接続のコンピュータを一台ずつ整備した。このような調べ学習に適した環境整備を進め、授業の中でこれらを積極的に活用させていく。
        • 先輩の学習の足跡を資料としてストックし、授業で活用する
           顕微鏡観察のスケッチ、仮説の設定や検証、モデル、実験結果の考察、「自分に返す」場で行った個別追究の結果等に関する資料をストックしていき、授業で活用できるようにしていく。
      2. 「科学の目」を育てるための環境支援
        • 生徒に働きかけ、生徒が働きかけるアクティブな科学的環境の整備を行う。
           科学関連の新聞記事を掲示し、今日的な科学の話題に目を向けさせたり、自然を身近に感じられるような理科室環境を充実させたい。プロジェクトTでは教師が意図的に掲示を行っていたが、プロジェクトUでは生徒自らによる掲示にしていきたい。
        • 自らの力を試す奨励・啓発活動を推進する
           具体的には次のようなことに取り組んでいく。
          ・夏休み一人一研究の勧め
           夏休みの比較的自由になる時期を使って、自分が見つけたテーマについての追究にどっぷり浸からせるものである。具体的な指導としては、夏休み前に行うテーマの見つけ方から、仮説の立て方、データの取り方・まとめ方までの事前指導、担当教諭による徹底したテーマ相談・夏休みを利用した追究途中でのアドバイス等である。優秀な作品には、郷土の偉人にちなんだ「加藤与五郎賞」が授与されるため、毎年この賞を目指して、早い時期からテーマ決めに取り組んでいる者もいて、それがよい意味で生徒相互の刺激となっている。
          ・各種コンクール応募の勧め
           毎年科学部の生徒が行った理科研究を日本学生科学賞に応募している。幸いなことに、毎年生徒のがんばりが評価され、数年来連続で全国入賞に輝いている。また、本校ではこの他、発明と工夫展、市村アイディア賞、原子力作文コンクール等、各種コンクールへの応募を勧めている。これらにおいても、毎年賞を受けることができ、日々の学習で培った力が各方面で認められていることに私たちは確かな手応えを感じている。
        • サイエンスルームを充実し、指導に生かす
           生徒の自主的活動の啓発や追究の支援として「サイエンスルーム」を設置している。この部屋には理科関連の各種コンクールで賞を得た先輩たちの作品が代々展示されている。生徒が自分の追究テーマを決める時や追究方法を考えるとき、そして追究に行き詰まったときなどこの部屋を活用し、先輩の作品を参考にすることができるようにいっそうの整備の充実を図っていく。
        • 刈南大学「東海地震対策講座」
          刈南大学「東海地震対策講座」
          かりなんセミナー、刈南大学の充実
           かりなんセミナーとは、身近な地域の方を講師に迎え、生徒の希望により講座を選択させ、異学年混成集団で取り組んでいく者である。また、刈南大学とは保護者対象の学習会である。これらの活動を「科学が好きな生徒を育てる」といった視点からも実施するために次の点に留意して取り組んでいく。
          ・開講講座の中に意図的に「科学のすばらしさ、自然のすばらしさ」が実感できるような講座を開設していく。ま たその際には、実験や観察、ものつくりなどの活動を取 り入れ、科学のおもしろさを肌で感じられるような内容 にしていく。
          ・開講講座についてはできるだけ受講者の要望に応える形で実施していく。
          ・地域の方で特に科学の分野に詳しい方、科学に造詣の深い方を講師として依頼する。
        • 学区の小学生を対象とした「夏休み創意工夫工作・理科研究アシスタントプログラム」、「南中理科授業体験会」を開催する。
           「夏休み創意工夫工作・理科研究アシスタントプログラム」とは中学校の理科室を夏休みに数日間開放し、学区の小学生を集め、創意工夫工作、理科研究への取り組みを支援するものである。「南中理科授業体験会」は学区の小学生を対象とした体験会である。
           実施に当たっては、科学部の生徒や選択理科受講生徒などから有志を募り、活動の補助をさせる。これは、小学生側にとってはきめの細かな指導が受けられることになる。中学生側には、教えるという活動を通して「科学のおもしろさを伝える喜び、貢献の喜び」を感得できるとともに、「科学が好きな生徒をより一層好きにする」手だてともなると考える。
        • 南中学区「サイエンスフェスティバル」を開催する。
           学区の小学生を対象にした、「サイエンスフェスティバル」を企画したい。これは、中学生や小学生に直接体験を通して科学のおもしろさを味わわせ、科学好きにしていくとともに、小中の連携を図り、つながりを密にしていくことがねらいである。
    • イ 人的環境の工夫
       生徒が追究活動をしていく中で、生徒の要求や追究の深さに応じて専門家の方や科学に造詣が深い方から学ぶ機会を設定していく。また、理科の学習において、支援をしていただける外部の方の一覧表を作成する。
       このことはプロジェクト1.でも行ってきたが、プロジェクト2.では、専門家の方の言葉を通してその方の科学に対する思いや姿勢をも感じ取らせたい。そのために、次の点に留意していきたい。
      • 専門家の方と事前の打ち合わせをし、思いのたけを存分に語っていただくようにする。
      • その方の働いている場所、活動しているフィールドに出かけていってそこで学ぶ場を設ける。
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