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2001年度入選プロジェクト校 
 東京都杉並区立杉並第十小学校

自然に親しみ、進んで働きかけ、考える子どもの育成
学校長
平部 武彦
PTA会長
池亀美津子
教頭
永井 昌美
研究代表者
小野 正裕
児童数
462
学級数
13
電話
03-3313-1364
はじめに

 本校は、今年開校65年の歴史があり、昭和61年に国の旧蚕糸試験場跡地に移転して15年目になる。学校の周りには門も塀もなく、プールや体育館・特別教室等を地域に解放する「地域に開かれた学校」であり、地域住民のために「防災設備を備えた学校」で、教室はワークスペースがあり、しかも公園と一体となった特色のある学校でもある。
 樹木の多い「蚕糸の森公園」は、四季折々に飛来するカルガモ等の野鳥や美しい自然の変化が都会に居ながら観察できる環境である。しかし、門も塀もなく地域住民の「憩いの場」である学校と公園は、何時でも誰でも出入りが自由である。故に、運動場や公園には毎日のように空き缶やタバコの吸い殻・ビニル袋等のゴミが散乱している環境でもある。
 そのため、本校児童や教職員・保護者の自然環境や社会環境に対する意識は大変高く、学校移転当初から「子どもの手によるゴミ拾い活動」と、PTA活動の一環として行われている「学校周辺の花一杯運動」の環境保全は、本校の伝統として今日まで脈々と引き継がれている。

 本校では、これまで特に自然環境を取り入れた活動や問題解決学習に力を入れてきた。
 そのため、自然を調べる活動や理科授業の好きな子どもたちが多く、これからも地域の自然環境や特性を生かしながら、科学(理科)の分野に視点を当て、活動の広がりと深まりに工夫を凝らし、「科学が好きな子どもたちを育てる教育活動を推進していく。

1. 身近かな自然を教材化した総合的な学習と理科学習

 本校は、平成11・12年度と杉並区教育委員会の研究奨励校として総合的な学習に取り組み、12年12月にその研究の成果を区内外に発表した。研究内容は、主に学校と一体になっている「蚕糸の森公園」の自然環境を活用した活動が多く、教科学習の発展から総合的な学習へ、または、総合的な学習から教科学習へ移行する、といった総合的・横断的な学習活動であった。身近な自然環境を意図的・計画的に取り入れた教育計画と活動は、子ども一人一人に自然現象の巧みさや不可思議さが驚きと感動を与えた。
 また、子どもたちが課題をもち、解決のために自分の足、耳、手、目、頭を使って調べて分かったことを、保護者や地域の人々に知らせる活動は、子どもの自主性と主体性まで培い、活動後の成就感と満足感は、地域の自然を身近にし、地域の人々との交流は、子どもたちのコミュニケーション能力まで高める相乗効果が見られた。そして、低学年の草花の栽培や蚕糸の森公園探検活動、中学年のゴミ問題(環境学習)から理科学習への発展など、公園の自然環境の教材化は、本校の総合的な学習のカリキュラムの基礎にもなっている。
 このように自然環境を生かした学習活動は、子どもはもとより教師にも自然を調べる理科学習の楽しさや面白さを体験させた。その結果、平成13・14年度の校内研究の重点は理科学習となった。2年間にわたる理科研究は、授業研究を中心に進めることで、「科学が好きな子どもたちを育てる」課題に直結するものと考える。

2. 子どもと保護者が守り育てる花一杯運動と栽培活動

 学校周辺を花一杯で飾る活動は、平成12年度から子どもと保護者が一緒に行う教育活動に位置付けている。この考えは教師の側から提案され、保護者も快く賛同してくれた。花の植え替えは年3回であるが、元々「土いじり」が好きな子どもたちである。活動には目を輝かせ、嬉々として参加している。

花の植え替えをする子どもたち

 この活動には、本校PTAに対して11年間、区から草花の苗と活動助成金の支給があったが、昨今の財政難から平成12年度から苗の支給だけとなった。しかし、保護者の地域環境に関する意識は高く、助成金がなくても子どものために活動の意義も高いと、伝統でもある花の植え替えの継続を選択した。
 本校ではこれを良い機会と考えた。伝統を守り、自然環境を豊かに創造することは大切である。しかも、子どもと保護者の共同作業は教育的価値が高い。そこで14年度からは、子どもと保護者が種から草花を育て、学校周辺の花壇に植え替える計画である。

  • 全校児童に一人一鉢栽培で草花を育てる。
  • 保護者も一鉢栽培で草花を確保する。
  • 花の植え替えは年4回とし、3?6年生が行う。
  • 共同作業は、同学年の保護者と行う。

 この活動は、草花を育てる楽しさと成長の喜び、草花の美しさを感じる感性を育て、自然を愛する豊かな心情や環境保全の意識・態度まで育成する。また、親子共同の作業は、親子の心の触れ合いが生まれ、会話から子どものコミュニケーション能力も高まる。この活動の継続は、理科学習が好きになる素地になるものと考えている。

3. 自然の巧みさを丸ごと教材化するビオトープ

 都会で自然界の生き物の生態を自然のままで観察することは、これまで難しいと考えられていた。しかし、この難問を解決してくれたのが「簡易ビオトープ」である。
 「わあーすごい!本当にトンボになった」、ヤゴの生態や体の作りを観察し、トンボに変身する様子を自分の目で観察した子どもたちの驚きと喜びは大変大きく、生きた教材に勝るものはないことを実践授業で実感した。
 この経験を生かして本校では、各学年・各学級ごとのベランダに、施設の特色を利用した簡易ビオトープを設置し、何時でも観察できるようにした。このような教材教具の工夫と活用は、自然界の不思議さや巧みさを子どもに直接経験させることができ、生命誕生の喜びと感動から生命を尊重する心情も育てることができる。また、このような自然の状態で昆虫などを飼育し、その教材化を図る学校の努力が、子どもの知的好奇心をゆさぶり自然を調べる資質・能力の伸長につながる。
 問題点は、ヤゴの餌になるメダカを多量に飼育する施設の確保である。それには大型のメダカ池か大型水槽が必要である。また、メダカは5年生の「生命の誕生」の単元にも教材として活用され、教材価値はとても高い。

簡易ビオトープ

 理科学習は、自然の事物・現象を対象とした問題解決学習であり、また、理科学習の基礎・基本でもある事実に基づいた観察・実験は、子どもたちにとっては直接体験学習である。
 本校では、この考えを基準に、より効率的なビオトープの開発と設置等を充実させ、理科学習の広がりと深まりの実現に努力していく。

4. 親子で参加する天体観測と物づくり

 この活動は、理科主任が始めてから10年が経過し、観察会に本校教員も多数参加し、本校の特色ある教育活動の一つになっている。観察時期は、4年生の「月と星」の単元に合わせて2学期と3学期に1回ずつ実施してきた。天体観察は、3台の天体望遠鏡を使用する本格的な活動である。

望遠鏡で観察する子どもたち

 参加できる学年は4年生以上で、観察が夜の時間帯に行われるので保護者同伴が原則である。中には保護者代わりの中高生もいる。「わあー!土星の輪が見えた」「月の表面の凸凹がはっきり見えたよ」の感動の声が屋上の暗闇に飛び交う。わずか年2回の観察会であるが、参加者は年々増えつづけ、今年も100人を超える子どもや保護者が参加した。
 この活動は、無限の可能性を秘めている子どもたちの能力開発につながると共に、未知の世界の姿を観察できた感動は、子どもたちに宇宙へのロマンと夢を呼び起こし、子どもの豊かな感性や想像力まで培うことができるものと考える。しかし、課題もある。夜の観察会であること。天候に左右されること。観察時間帯が時期によって異なる等である。

 そこで、14年度には新しい試みとして、観察時刻まで「物づくり」が提案された。

  • 観察会は、4回に増やす
  • 物作りは、星座早見盤・月球儀・簡易望遠鏡・観察ワークシート等

と、天体の観察や観測に役立つ「物づくり」を観察会と一体化する方法である。このやり方は、子どもに観察する楽しさやできる喜びを与え、科学(理科)の好きな子どもが育つものと確信する。

5. 意図的・計画的な環境学習から理科学習へ

 本校は、12年度からJICA(国際協力事業団)の要請に応えて、4年生の社会科「ゴミの学習」の授業を、タイ・インド・フィリピン等の10ケ国の発展途上国の研修生に公開して2年目を迎える。
 研修生への授業公開の内容は、各家庭から出たゴミを地中に埋め、「土に埋めたゴミはどうなっているか、1ケ月後に掘り出して観察しよう」の課題で進められた。まず、ゴミを埋める花壇を掘り起こし、地中にはミミズやカブトムシの幼虫、様々な小さな生き物がいることを確認し不燃ネットにゴミを入れて埋める。約1ケ月後、研修生も参加して埋めたゴミを掘り起こし観察する。「わあーすげえ、生ゴミはなくなっているぞ」「貝殻はそのままだ」の声が飛び交う。研修生が子どもたちに話しかける光景も見られる。
 この活動は、今後「地中の微生物の働き」の理科学習につながっていく。また、環境学習の一環としてゴミの分別化や堆肥化、リサイクルの必要性、ゴミから発生する有毒ガスの問題にも意識化させることができる。

掘り出したゴミを観察する子ども

 この研修会での公開授業が、途上国の学校教育に与える影響は大きい。将来は、インターネットで海外の学校とゴミ問題について交流していく計画もある。本校では研修会後、全校児童との交流会に発展していった。

楽しい交流会
6. 野鳥に巣箱のプレゼント

 本校と一体となっている蚕糸の森公園は、ムクドリ、ヒヨドリ、シジュウカラ、ハクセキレイ、カルガモ等の野鳥を四季折々に観察することができる。このことは、公園には樹木が多く野鳥の餌になる木の実や虫等がいることの証(あかし)であり、自然が豊かなことを実証している。
 昨年、6年生が総合的な学習の時間に野鳥の種類と数を調べる「野鳥観察学習」をした。また、学年のベランダに餌台を設置し野鳥を招いた。このような活動から、「野鳥に巣箱をプレゼントしよう」の活動が始まった。

 巣箱製作指導には、地域の「東京土建杉並支部」の強力を得ることができた。力を合わせて20個の巣箱を作りあげ公園の樹木に取り付けた。
 この活動から子どもたちに、自然界の生き物と共生できる意識が生まれ、自然環境を守り育てる能力や態度まで育つものと考える。そして、このような活動の継続が子どもに動物愛や郷土愛を醸成することになり、人間性豊かな子どもが育つものと確信する。

木に取りつけられた巣箱
7. キッズの初級編に挑戦

 本区では、区を挙げてキッズISO14000Sに取り組んでいる。本校からも5年生39人がキッズ入門編に応募し、夏休み期間中に自宅のガス、電気、水、ゴミの分別を調べる活動を体験し、10月に行われた区主催の「環境博覧会」で本校の児童6名が、区民にポスターセッションで省エネの大切さや環境を守る必要性を訴える体験を行った。
 本区では14年度、もっと大がかりな環境博覧会を計画している。杉並区から全世界に環境保全の大切さを発信する大博覧会である。そのため14年度は初級編への応募を行う。本校からも大勢の子どもたちを参加させる計画である。この活動は、自宅で観察し、結果を家族で話し合ったり、地域に発表することで、地域ぐるみで環境に対する意識が高まり、地球環境にやさしい子どもたちが育っていくもととなる。

8. 学校表彰の推薦を受ける

 本区では毎年「科学創意工夫展」を実施している。本校は、工夫展に参加するため全児童を対象に「夏休み自由研究」を奨励している。約400人の児童が参加し、その内150人位が自然事象の観察記録や物作りに挑戦する。本校児童の研究物は、観察記録のまとめ方、事実に基づいた分析が高く評価され、「教育委員会賞」等の特別賞や優秀賞を多く獲得している実績がある。これを受け区科学センターから文部科学省主催の「創意工夫育成功労学校表彰校」に推薦された。21世紀は「科学の世紀」「環境の世紀」と言われる。本校では、子ども一人一人に自然環境の重要さを意識化させ、自然科学と人間の科学を調和させる人間を育てたいと願っている。

「科学創意工夫展」に向けた自由研究
おわりに

 国の発展・進歩や国民の生活向上の背景には、科学の進歩・発展がある。また、科学には後退はなく進歩のみある。今、地球上では自然環境の悪化、貧富の差の拡大等が国際的課題である。様々な課題を解決できるのも科学の力であり、教育の力によるものである。
 本校では、「科学が好きな子どもたちを育てる」ことを目標に校内研究を理科学習とし、学校でできる体験活動を意図的、計画的、継続的に推進していく。

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