| 地域の豊かな自然環境を生かし、子ども自らが自らを創る |
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学校長 |
奥 庚一郎 |
PTA会長 |
糸永 英治 |
教頭 |
池町 真一 |
研究代表者 |
吉水 秀曜 |
児童数 |
403 |
学級数 |
14 |
電話 |
093-472-8808 |
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はじめに
本校は、広い曽根新田と縦横に流れるクリーク、北部九州最大の曽根干潟などの豊かな自然に恵まれている。そこではカブトガニ、ズグロカモメ、ニッポンバラタナゴなどの絶滅が危惧される生き物もいる。
地域の人々もこの豊かな自然に誇りを持ち、学校教育への関心や期待も強く、協力的である。
こうした地域環境を生かし、本校では、子ども自らが自分の「感性を創る」「学びを創る」「生き方を創る」環境教育を地域と共に展開している。
2 『子ども自らが自らを創る』教育の推進
(1)人とのかかわりで育む自分の生き方づくり
[1] 他校との交流「環境サミット」
他校の環境への取り組みを学ぶことにより、これまでの自分たちの環境への取り組みに自信を持ったり、他校の取り組みを取り入れ、活動に広がりをもたせたりすることができる。そこで、本校と同じように地域の自然を生かした環境教育に取り組む北九州市八幡東区の祝町小学校の6年生と「環境サミット」を行なった。「地域の環境保護のために」をテーマに交流し合い、子どもたちは「地域は違うけれど、地域の環境を守る思いは同じ。」等の発言がみられた。
[2] 人の生き方との交流
- −自然観察指導員「國廣 勝 先生」とともに−
子どもたちの興味・関心や実態に合わせて、淡水の生き物、干潟の底生生物、野鳥などの疑問に専門的な立場から話をしてくださっている。また、カブトガニの産卵調査活動では、子どもとともに調査活動を行い、産卵の様子や卵の成長などをビデオに撮り、子どもたちに感動的な出会いを演出している。このような國廣先生の自然を愛する生き方から、子どもたちは、自分が自然とどのようにかかわっていくかを学んでいる。
- −農業博士「先本清己さん」とともに−
先本さんは、地域で長年、農業に携わってきた方である。雨や風の強い日にも、汗水を流して、自分の生活を支え、わたしたちの食べる米や野菜をつくってきた。このような先本さんの農業へのこだわり、自然とともに生きることの難しさなどを学び、子どもたちは自然に対して畏敬の念を持つようになってきている。
(2)「曽根干潟クリーン作戦」による地域づくり
近年、ごみが散乱し、美しい景観や豊かな自然である曽根干潟に多大な影響を与えるようになってきた。平成5年9月、6年生が嘴に針のかかった野鳥を見た子どもたちから「曽根干潟の野鳥や生き物を守ろう」とごみ拾いをはじめたことから『曽根干潟クリーン作戦』が始まった。9年目となった今では、漁協・自治会・大浜保育所等が参加する地域行事として定着している。この活動により、ここ十年ほど減少したカブトガニが、産卵に訪れるようになった。
(3)環境教育の土壌づくりとしての校内環境整備
- −曽根干潟の部屋−
子どもたちが、曽根干潟について興味・関心を持ったり、自分の課題を調べたりできるように曽根干潟の部屋をつくった。地域の方や専門家からの寄贈を得て、曽根干潟に関するパネルや標本を展示し、書籍やビデオ、野鳥観察の道具等を揃えている。
- −いそね水族館−
曽根干潟やその沖に生息する魚や曽根新田のクリークの魚をいつも身近で見ることができるように水槽を並べ、いそね水族館とした。漁協の協力を得て、魚種を増やしている。これにより子どもたちは、魚や魚の棲む環境に興味・関心を持つようになってきた。
(4)地域の恵まれた自然を生かした学び方づくり
[1] 総合的な学習
6年は、総合的な学習「今、地球が危ない」において、曽根新田のクリークに生息する絶滅危惧種であるニッポンバラタナゴを中心に学習を行った。ニッポンバラタナゴを見たり、自然史博物館の武石学芸員の話を聞いたりした。ニッポンバラタナゴとの感動的な出会いは、子どもの感性を揺さぶり、学習意欲を高めた。 水槽を置き、ニッポンバラタナゴを常時観察しながら生態を調べる子。インターネットを活用し、食べ物や棲む場所を調べる子。自然史博物館への電話やファクスで調べる子等、自分なりの学習手段で意欲的に追究活動をし、自分の見方や考え方をつかんだ。そして「環境を守るために何ができるか」と考え、学習を生かした劇を上演し、絶滅に瀕するニッポンバラタナゴを育む豊かな環境の保護を他の学年や地域の人に訴えた。
[2] 学び方の基礎・基本を定着させる教科学習
本校では、各教科の特質とその教科で身につけさせる基礎・基本を確実に定着させることが『自分の学び方』を創り、総合的な学習に生かされると考えている。
5年生の国語「一秒が一年をこわす」では、内容の読み取りの際、細かな評価規準を設け、個に応じた手だてをとった。この手だてにより、子ども一人ひとりは要旨を読み取り、現在起こっている環境問題が地球的視野から見ていかに重大かということに気づいた。
また、「身近な環境」では、「地域の環境問題」を個々の問題意識を大切にして調べさせた。聞き手を意識した資料作り、発表が行えるように、「話す」「聞く」「書く」の言語活動を聞き手に評価させた。
このように各教科の基礎・基本をしっかり身につけさせる手だてを講じることにより、子どもたちは「自らの学び方づくり」をすることができるのである。
(5)感性をつくる特別活動・裁量の時間
- −野鳥観察−
曽根干潟は、世界的希少種のズグロカモメや、ツクシガモ等の国内有数の越冬地であり、年間を通して200種以上の野鳥が観察できる。 平成6年度から始まった野鳥観察で、子どもたちは、野鳥の生態の生きていくための工夫に気づき、自然の豊かさを味わっている。
- −カブトガニの産卵調査−
貫川河口には6月〜7月の満潮にカブトガニが産卵に訪れる。間近に見るカブトガニの産卵、5ミリほどの小さな卵から幼生が動き出すまでの30日間、卵の変化・水温等を調べる。この活動を通して、子どもたちは小さな命を育む曽根干潟の自然の偉大さを感じることができた。
3 今後の教育計画(子どもの豊かな創造性を拓く)
(1)創造性を拓く基本的な考え
[1] 創造力は手から
わたしたちが子どもの頃、自分たちで凧、独楽などいろいろなものをよくつくって遊んだ。友達に負けたくないという気持ちから、よいものをつくろうと工夫した。そんな遊びの中で、凧は重心を取るために「足」の長さと付ける位置が問題になることに気がついていった。
今考えると昔の子どもは、遊びの中で手を動かしながら考え、手先の器用さや手の感覚を身につけるとともに、無心のうちに自然科学の基礎をも学び、豊かな創造力を身につけていったように思える。
「手は第二の脳」といわれる。創造性を拓くためには、手を働かせ、考え、創り出すことが必要なのである。
[2] 子どもの創造力は、手を使った遊びの中から
創造性は、子ども自身が自分の発想に従って動かす手そのものの中に秘められている。そう考えると、子どもの創造力を育てるためには、日常の遊びの中で、掘る、掴む、削る、組み立てるなど、子どもの手に創造的な活動をさせる遊びを重視しなければならない。
そのためには、手を働かせて子どもの自由な発想をさせる場所や施設を充実させることが重要である。
[3] 創造力は子どもの発想の実現から
自分の発想したものや発想したことが生かされ、実現したとき、子どもは喜びや満足感を感じ、新たなよりよい発想が湧き起こってくる。このような子どもの発想を生かし実現していく繰り返しによって、子どもの創造力は、真の創造力へとつくりかえられていく。
[4] 子どもの発想を刺激する環境づくり
子ども個々が持っている独特な創造力、それは経験をもとに一人ひとり異なる。豊かな創造力を育むためには、体験や経験を何度も繰り返し、子どもの創造力を刺激することが重要である。
そのためには、日常の学校生活の中で子どもの発想を刺激する環境を整えてやることが必要である。
(2)創造性を拓く具体的プラン
[1] 子どもが手を働かせてつくるビオトープづくり
6年生の総合的な学習において、地域に棲む絶滅危惧種ニッポンバラタナゴを追究した。この学習で子どもたちは「自然に近い観察池をつくり、ニッポンバラタナゴを増やし、絶滅を防ぎたい」という思いを持ち、ビオトープを造ることとした。
「学校のみんなでつくるビオトープ」という意識を持たせるために、まず、ビオトープ実行委員会を各学級の代表で組織した。そして、その委員会を中心にビオトープづくりの活動が始められた。ビオトープの名前と設計図を全校から募集し、名前は、「曽根東ビオトープ」と決定し、設計図は、5年生の子どものアイデアが採用された。今、各学級が朝自習と昼休みの時間を使って掘っている段階である。
ニッポンバラタナゴを増殖させ絶滅から救うためにも、また、ビオトープでの観察を通して生命の尊さに気づく感性と科学的な見方と考え方を培うためにもぜひ完成させたいと考えている。
[2] 子どもの創造を生かすソーラー発電と風力発電
5年生の子どもが理科展の作品に「学校にあったらいいな」と、ソーラー発電と風力発電を組み合わせた模型を作った。この子は、環境日記の取り組みを通して、「環境にやさしいエネルギーに興味を持った」のだと言う。
化石燃料の使用で地球温暖化が問題になっているが、これを造ることが、環境教育を進める本校にとって重要な役割を担うと考える。ここで発電した電気をビオトープやいそね水族館に利用することで、子どもたちに「環境とエネルギー」を意識させ、「環境にやさしい生活」を意識付けたいと考えている。
[3] 子どもの発想を刺激する環境づくり
- ア 「ものづくりの部屋」
「ものづくりの部屋」には、ものをつくる道具や板切れ、紙等の材料とともに、パズル、積み木などの手を使って遊べるおもちゃや参考となる模型・図書などを置く。そこで子どもたちは、自分の好奇心、発想をもとに、自分自身の目的に従って、自由に、思考錯誤しながらものづくりに取り組むのである。
- イ 造形砂場の整備
子どもは、砂遊びが好きである。特に低学年にその傾向が強い。「山にトンネルを掘ろう」という課題を出したとき、子どもは、夢中になって取り組む。「掘りたいトンネル」も様々である。その子の個性に基づいた発想が生まれてくる。小さいもの、大きいもの。一本のものもあれば、複数のものもある。複数の中には、枝分かれしたものも出てくる。そして、その発想に従って掘っていったときに、「崩れる」という場面に遭遇し、トンネルの大きさと山の大きさ、山の強度とトンネルとの関係に気づいていくのである。そうしたつくりながら考えるという思考錯誤を繰り返しながら,知恵を育てていく砂場をつくりたい。
- ウ 理科展・木工作品展などの作品展示室
本校では、これまで理科展や木工作品展への作品応募に取り組んできた。その中で、観察、研究、模型など数々の優秀作品が生まれてきている。そうした作品を集め、展示する部屋を設けたい。その部屋を活用することにより、子どもたちは、友達の発想を取り入れ、その発想を広げ、創造性を伸ばしていくのである。
[4] 子どもの創造性を広げるために
- ア 地域を越えた環境サミットの開催
他校との環境サミットが、環境教育における子どもの意欲と学び方を育て、さらには自分の生き方を創ることに大変有効であるということが分かった。また、子どもたちは、このサミットを経験することで環境保全のために、地域を超えて、連帯することの必要性に気づいてきている。そこで、他地域との交流を拡大させ、地域を超えた環境サッミトを考えている。
- −北九州子ども環境サミット−
北九州市で環境教育に取り組んでいる学校を一同に会し環境サミットを開催したいと考えている。それは、公害を克服したことが世界的に評価されている北九州市にとっても、環境教育を進める北九州市の学校にとっても有意義なものとなるはずである。
- −京都市粟田小学校との環境サミット−
京都市の粟田小学校から「Lネットによる環境サミット」を計画している。この環境サミットの様子は、Lネット施設のある全国で視聴でき、ファックスやメールを通してリアルタイムで意見を聞くことができる。地域を超えた交流を創り出す先駆的モデルになる。
- −山は海の恋人サミット〜貫川流域の小学校を招き−
曽根干潟には、貫川が流れ込んでいる。貫川を通してプランクトンや有機物が流れ込み、それが干潟に棲む生き物たちの食物となっている。自然豊かな曽根干潟は、貫川との関係を抜きにしては語れない。
貫川流域の小学校との環境サミットにより、子どもたちに自然のつながりについて、気づかせるとともに、環境保全のためには、地域を超えて協力することが大切であるということを理解させたい。
- イ 「環境にやさしいものづくり選手権親子大会」 の開催
ものづくりは、「こんなものがあったらいいな」という内発的動機のもと、これまで身につけた知識と技能を駆使して行われる創造的活動である。また、自分のつくりたいものを完成させる過程で、子どもたちは、試行錯誤を繰り返しながら、新たな知識と技能を身につけたり、思考力を培ったりする。
こうした価値のあるものづくりを「環境にやさしい」というテーマで行うことにより、これまでの環境教育で学んできた知識を生かすとともに、これからの環境を意識したライフスタイルを創っていくのである。また、親子で取り組むことで、環境教育を家庭にも広げることにもなると考える。