主体的に生きる心豊かな子どもの育成
―個性化教育の推進― |
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学校長 |
三浦 浩子 |
PTA会長 |
市川 悦司 |
教頭 |
大高 紘治 |
研究代表者 |
荻野 真市 |
児童数 |
58 |
学級数 |
7 |
電話 |
0564-82-3015 |
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はじめに
本校は全校児童58名のへき地小規模校であるが,私たちは「自然に恵まれた,個性的な教育が図れる理想的な規模の学校である」ととらえ,「子どもも教師も学習者」という視点をもち,教育から共育への転換を図ってきた。私たちは子どもの可能性を最大限に引き出したいと願い子どもの身近にある自然を教材化し,子どもの願いを核にした学習を地域と共に展開してきた。
1.本校の教育理念
将来の地域の担い手として,子どもを大切にしている夏山の地に育つ子どもたちは,思いやりの心,素直な心をもち続けて成長している。しかし,幼少の頃から集団生活を共にしているために集団での序列意識を自他共に認め合い,自分を過小評価しているような姿を目にすることがあり,それを私たちは残念に思うことがある。
また,豊かな自然環境と隣り合わせの生活をしていても,自然環境や人とのふれ合いが少なくなってきているのも現実である。しかし,子どもたちには多くの可能性が秘められている。その可能性は,自然に親しみ,人とつながり,社会とかかわる中で育むことができる。そして,その可能性を子ども自身が信じ,夢をもち,挑戦する心をもち続けることのできる「豊かな人間性」を育てたいと,私たちは願っている。
そのためには,感性・主体性・創造性を伸ばし,豊かな個性を育むことが重要であるととらえている。そして,その場を私たちは総合的な学習を中心にして設定し,次のような手立てを講じた。
| 手立て1 |
年間指導計画を作成する場合に,子どもたちが一つの単元の学習にじっくりとゆとりをもって取り組めるようにする。 |
| 手立て2 |
子どもたちの疑問・問題・興味・関心等を大事にし,子どもたちの願いと思いを核に体験活動を重視した単元を構想する。 |
| 手立て3 |
子どもたちの身近な自然や事象事物など,地域素材の教材化を図る。 |
| 手立て4 |
隣接学年だけでなく異学年との交流学習を実施することにより,学習の活性化を図ると共に,子どもたちの表現能力を伸ばす。 |
| 手立て5 |
地域の方を講師に招いてTTの授業を構成し,知恵や技術を学ぶ機会を設定する。 |
| 手立て6 |
Eメールの活用やホームページの検索など,コンピュータの活用を図る。 |
| 手立て7 |
ポートフォリオ評価により,指導と評価を一体化させる。 |
2.これからの教育計画
1.夢山での活動
(1)水車の力で発電した電力を活用する
夢山の水車小屋の中を明るくして作業をしやすくしたいというのが,子どもたちの共通した願いであった。6年生は水車の軸に取り付けてあるプーリーが発電機を回すためにのものであることを知り,水車の力で発電したいと考えるようになった。そして,夢山のイワナ池でエアーポンプなどが使用できるようにしたいという願いをもった。この活動を通して,発電の仕組みやクリーンエネルギーの意義に気づかせていきたいと考えている。
(2)水車の力で石臼を回転させて製粉する
これまで,子どもたちはソバやダイズを石臼で製粉し,調理に活用してきた。しかし,石臼を手で回して大量に製粉する作業が,時間的にも体力的にも大変だった。そこで,水車の遅い回転を利用して石臼を回し,製粉できるようにしたいと考えている。この活動を通して,子どもたちの活動に幅をもたせるとともに,動力の伝達の仕組みに気づかせていきたいと考えている。
(3)子どもたちが夢を実現できる遊び場作り
夢山では,これまでも秘密基地や遊具などを作り,子どもたちが夢を実現できる場,子どもたちの楽しい遊び場にしてきた。この活動を継続させ,遊具の新設や手直し,谷川を利用した水遊び場作りや夢山一帯をキャンプのできる場に整備する活動に取り組ませていきたい。この活動を通して,子どもたちが夢を実現させるための行動力と問題解決力を養っていきたいと考えている。
(4)自然を生かした学習
夢山では,植物や昆虫観察,ドングリやホオ葉などの自然物を使った遊び,シイタケやヒラタケの栽培など,自然を生かした学習に取り組んできた。この活動を継続し,自然の中で活動する体験や自然物を使って遊ぶ経験から,自然の素晴らしさや自然の仕組みの巧みさに気づかせていきたいと考えている。
2. 夏山川での活動
(1)昔のような夏山川で遊びたい
夏山川ピカピカ祭りで,親子で川掃除をしている時に「昔は川の水がこんなに汚れていなかったし,川の水も多かった。魚ももっとたくさんいた」という声が多く聞かれた。昔のようなきれいな夏山川で遊びたいという子どもたちの願いは,昔のようなきれいな夏山川を取り戻したいという親子二代の願いとなった。
(2)夏山川をきれいにし,三河湾のスナメリを救いたい
昨年度,額田町主催の環境保全の集いが本校を会場にして開催された。子どもたちは海洋生物研究者の林正道氏と出会い,夏山川をきれいにしたいという思いがさらに強くなった。
そして,本年度の秋の全校遠足で三河湾のスナメリを観察し海岸の掃除を行ったことで,夏山川と三河湾がつながっていることを再認識し,三河湾のスナメリを救うためにも夏山川をもっときれいにしたいという強い願いをもつようになった。
(3)昔のようにきれいな夏山川を取り戻したい
- 廃油粉石鹸の活用による夏山川の水の汚染防止
額田町の環境保全グループ「水すましの会」の指導により子どもたちは廃油粉石鹸作りに取り組んでいる。この活動を通して,てんぷら油が石鹸に変化する様子に気づかせていきたい。そして,この子どもたちの活動を家庭や地域へと広げていきたいと考えている。
- EM培養液の流入による夏山川の浄化活動
子どもたちは,給食室から出る米のとぎ汁や残飯を材料にしてEM培養液やEM堆肥を作り,農園での栽培活動や夏山川の浄化活動などに活用してきた。この活動を通してEMの効果に気づかせていきたい。そして,この活動を地域全体へ広げていきたいと考えている。
- 竹炭の利用による夏山川の浄化活動
平成11年度に,地域の方がなつっこ広場に炭焼き窯を作ってくださった。子どもたちは炭焼きを行い,竹炭を教室やトイレなどの空気の浄化や湿気取りに活用してきた。これからは,子どもたちに竹炭の活用方法を多様化させる中で,夏山川の浄化活動にも取り組ませていきたいと考えている。
3. なつっこ広場での活動
昨年度,3年生と6年生が中心になり,なつっこ広場に池を中心にしたビオトープを造り,ニジマスの稚魚,夏山川の魚やメダカを放流した。
しかし,今年の春から夏にかけて次々に魚が死んでしまうという深刻な事態に陥った。エアーポンプで酸素を供給したり,ポンプで池の水を循環させたりしたところ,魚が死ぬことは少なくなった。しかし,ビオトープの水はよどみ,池の石も水アカで汚れ,ぬるぬるとした状態になっている。
そこで,これからは,子どもたちに魚・昆虫・水生植物の様子を観察させることにより,魚や昆虫などの生き物がすみやすい環境を追究させ,自然に近いビオトープに改良する活動に取り組ませていきたい。そして,この活動を通して,子どもたちに自然の仕組みの巧緻さに気づかせていきたいと考えている。
4. 農園での活動
(1)農園を多目的に活用する
子どもたちは,農園で米や野菜の有機栽培に取り組んでいる。8aの農園を学校田,全校縦割り班の畑,学級の畑として活用している。学級の畑の一部を個人個人に分け「マイ畑」としても活用している。
子どもたちは栽培活動を通して,作物が成長する様子を観察し,どのようにしたら作物がよく育つのかを追究している。これからも,農園を多目的に活用し,子どもたちを栽培活動に取り組ませていきたいと考えている。
(2)土作りの大切さをとらえさせる
農園に牛糞・堆肥・EM培養液・EM堆肥を入れているために,作物がよく育つ土になっている。しかし,子どもたちは「一生懸命に世話をしているから,作物がよく育つのは当たり前だ」という意識が強く,土そのものには興味や関心をもっていなかった。そこで,5年生の担任はシマミミズが生ごみを分解する過程や糞粒を作る様子を子どもたちに観察させ,シマミミズが土を作っていることを実感としてとらえさせた。このことから,子どもたちは農園の土の状態に目を向けるようになった。
これからも,シマミミズや草が堆肥に変化していく様子を観察させたり,EM堆肥やEM培養液の効果を追究させたりすることにより,子どもたちに土と作物の成長との関係をとらえさせていきたいと考えている。
(3)自分たちの手でできるだけ農園を管理する
農園での栽培活動は,寿会や地域の方々の協力と指導を受けているが,普段の農園の管理や作物の世話は子どもたちが行っている。しかし,子どもたちが手作業で畑を耕したり畝を作ったりすることは,とても大変である。
そこで,高学年の子どもなら使用できるような小型の耕運機を導入し,子どもたちの負担を軽減すると共に,活動への意欲をさらに高めていきたいと考えている。
(4)子どもたちに夢と楽しさを与える果樹園作り
これまでも,子どもたちは学校で収穫した果実を使い,ジュースなどを作る活動に取り組んできた。本年度は,校地内にサクランボとブルーベリーを植樹した。
これからも果樹の種類と本数を増やすことで学校果樹園を整備し,子どもたちの活動に夢と楽しさ,そして活動に多様性をもたせていきたいと考えている。
(5)生命を育て,感謝する心を育む食教育の推進を図る
本年度は「生命を育て,感謝する心を育む食教育」をテーマに食教育にも取り組んでいる。食べることは子どもたちの最大の関心事であり,学習意欲を喚起させる。
農園や果樹園で自分たちが栽培した食材を調理し,味わうことを通して,感謝する心を育んでいきたいと考えている。
5. 飼育舎での活動
本年度は,産まれたばかりの子ウサギが他の動物に踏まれたりして死んでしまうことが多かった。このことがきっかけになり,子どもたちは「飼育舎の動物たちが幸せに暮らせるようにするためには,どうしたらいいのか」を真剣に考えるようになった。
6年生は,飼育舎を改良する活動に取り組んだ。飼育舎横のなつっこ広場の周囲に立ててある古電柱に海苔の養殖網を張り付けて囲いを作ることで,飼育舎となつっこ広場を一体化させ,動物たちが自由に遊べる空間を作り出した。
これからも,子どもたちに動物の様子を観察させることにより,飼育舎の改良とともに,よりよい飼育方法を追究させていきたいと考えている。
6. 子どもたちの思いを情報発信する活動
(1)全校児童への情報発信
これまで,子どもたちは自分たちの願いを児童集会で,情報として発信してきた。現在では,子どもたちもコンピュータの扱いに慣れ,高学年はデジタルカメラで撮影した映像を活用し分かりやすい文書を作成できるようになってきている。子どもたちが作成した文書を掲示し合うことで,情報交換をさせていきたいと考えている。
(2)家庭・地域への情報発信
子どもたちの願いや思いを機会あるごとに,家庭や地域に情報として発信している。地域の方々も子どもたちの願いを大事に受け止めてくださり,子どもたちの活動に対してとても協力的である。
これからも情報を発信し続け,子どもたちに家庭や地域と一体になった活動に取り組ませていきたい。それが,地域の活性化につながるものと考えている。
(3)他校との交流活動を広げ,情報発信をする
本校は,平成10年度から他校との交流活動を推し進めてきた。全校児童が遠足で相互訪問したり,夏山川の下流に位置する学校と「川の環境」をテーマにした合同学習を行ったりしてきた。交流活動を通して,子どもたちは自分たちの願いや思いを伝え合ったり,活動への刺激を受けたりしている。これからも,他校との交流活動をさらに活発にさせていきたいと考えている。
(4)ホームページでの情報発信
昨年度,本校もホームページを開設することができた。ホームページには全校活動,各学年の活動などを紹介している。これからは,子どもたちの力でホームページを作成し,幅広い情報発信をさせていきたいと考えている。
おわりに
このような活動を通して,「自然が好き」,「人が好き」,「ふるさと夏山が好き」という子どもたちを育て,豊かな人間性と創造性を伸ばし,一人一人が夢をもち,その夢の実現に向かって挑戦し続けることができるようにしたいと私たちは願っている。また,保護者や地域の方の「おらが村の学校をよくしたい」という思いを私たちは真剣に受け止め,「子どもたちが来たくなる学校」,「保護者が通わせたくなる学校」,「私たち職員が勤めたくなる学校」の実現をめざし,個性化教育の推進をさらに図っていきたいと考えている。