公益財団法人 ソニー教育財団    
ソニー子ども科学教育プログラム「科学が好きな子どもを育てる」 サイト内検索

HOME 活動内容 サイトマップ お問い合わせ リンク

2001年度入選プロジェクト校 
 愛知県岡崎市立緑丘小学校

科学好きな子を育てるみどりの環境教育
―わくわく総合学習・生活科・理科の学習を通して―
学校長
松井 幸彦
PTA会長
鈴木 裕之
教頭
成田  肇
研究代表者
伊藤 悦子
児童数
692
学級数
22
電話
0564-51-5693
はじめに

 開校27年目を迎えた本校は「すこやかに たからかに たくましく」を教育目標に掲げ、めざす子ども像の具現に努めてきた。その間、教育の中核にすえたのは環境緑化教育であった。「緑いっぱい 花いっぱい」を合言葉に、開校以来本校が取り組んでいる環境緑化教育は、まさに心の大樹を育てる子どもづくりを担っていると信じている。
 今では、「一人二鉢」「親子さし木活動」「みどりのパトロール」「学級の木の観察」などの緑化活動は、子どもたちの学校生活の中に当然のように根づいている。
 平成10年度からは学校の中だけでなく、学校西側を流れる六斗目川のごみ拾いや草刈りなどの美化活動の取り組みも始まった。
 翌年度から、ボランティア活動を主体とし、川の岸辺にブナの苗木を植え、花の苗植えや種まきをして花壇作りをしたほか、米のとぎ汁で作ったEM(有用微生物群)活性液を川へ流して水の浄化活動も始めた。その効果で汚れた川がみちがえるようにきれいになってきた。
 六斗目川の浄化活動は子ども(学校)からPTA・地域へと広がり、「魚のすめる六斗目川」へとよみがえりつつある。これには、岡崎竜城ライオンズクラブの全面的経済支援も受けている。
 これらの体験を進める中で、子どもたちの意識は、緑化から河川の浄化、環境保全問題へと発展していった。
 今では六斗目川を散歩する学区民から、「子どもたちが日曜日でも川の中の空き缶拾いやごみ拾いをよくしているのを見ます」という声も聞かれるようになり、自主的に活動する子どもが確実に増えてきたことを実感している。
 これらの実践をもととして、全校で「科学好きな子どもを育てるみどりの環境教育」に取り組む決意でいる。

1.今年度までの取り組み

 次の世代に素晴らしい自然環境を引き継いでいくためにも、子どもたちに、学区を流れ、常に親しんでいる最も身近な自然「六斗目川」を通して、自然の大切さ・自然と人との関わりを考えさせ、人間も地球に住む生物の一員であることを知り、自然や生命に対して思いやりとやさしさをもって行動できる子どもを育てていきたいと考えた。
 昨年度から、「総合的な学習の時間」を日課表の中に位置づけ、本校が今まで取り組んできた緑化教育と、「総合的な学習の時間」(本校では『わくわく学習』と命名)の一体化を試みた。学校の近くを流れる川(六斗目川)を取り上げ、全学年・全学級で「六斗目ビオトープ」をめざした環境緑化教育の実践である。

(1)全校での取り組み<めざせ六斗目ビオトープ>

 子どもたちは、自然の観察や動植物の飼育栽培活動を通して、自然環境や事象に対する感受性が育ち、自然の素晴らしさや生命の大切さを感じている。子どもたちの目は、学校の中から学区の環境へと広がり、身の回りの環境を守ろうとする意欲も生まれた。そして、六斗目川を核とする『わくわく総合学習』で、「六斗目川を魚や虫や鳥の集まるビオトープにしよう」と目を向けるようになった。このような子どもの姿は、地域の人に大きな影響を与え、地域の環境に対する意識を変えつつある。具体的には次のような活動をしてきた。

[1]六斗目クリーン作戦

 学校に隣接する六斗目川は、生活科や理科で活用し、子どもたちにとって身近で親しみのある川であるが、魚も少なくなり、汚染が目立つようになってきた。
 4年前、あるクラスからの「川をきれいにしたい」という声を受け、「全校で川をきれいにしよう」という児童会の呼びかけで、「六斗目を守れ 緑っ子レスキュー隊」が組織された。そして、「魚のすめる六斗目川にしよう」を合言葉に、全校行事として河川美化活動に取り組んだ。
 このような河川美化活動が、子どもたちの中に常時活動として定着し出すにつれ、子どもたちの活動に賛同した学区総代会やPTAも、土手の草刈りや危険物の除去などの子どもたちの手に負えない作業を行ってくれた。「魚のすめる川にしよう」という子どもたちの一途な思いが、学区民をも巻き込んだ大きな活動の輪へと発展していった。

「六斗目を守れ 緑っ子レスキュー隊」活動

[2]六斗目浄化作戦

昨年度より、川の浄化のために米のとぎ汁から作ったEM活性液を投入している。

六斗目川へのEM活性液の投入

[3]緑っ子ボランティア

本校では、ボランティア活動の機会を数多くとっている。活動の企画をするのは、児童会のボランティア委員会で、話し合いにより、活動内容を決めている。活動内容は主に六斗目川に関するもので、川の中のごみ拾い、川岸の土手の草取り、石拾いなどである。活動は火曜日の昼放課(35分間)や放課後に行う。昼の校内放送でボランティア委員が参加を呼びかけている。
 このボランティア活動を通して、子どもたちは自分で考えて行動することの楽しさ、みんなのために働くことの尊さを感じ取ってきた。

[4]六斗目環境サミット

 子どもたちの発達段階に応じて1年生から六斗目川を中核に置いた総合学習を進めてきている。6年生になると、「指標生物の採集」「水質検査」「六斗目川の歴史」「地域の工場での水質浄化の工夫」というように、六斗目川に関する調査・研究は深まりを見せてきた。研究内容については、校内だけでなく地域の方たちにも知ってもらいたいという子どもたちの要望から「六斗目新聞」を発行した。3学期になると、今までのように新聞だけでは活動内容がしっかり伝わらない、他学年や地域の人たちにももっとよく知ってもらいたいという気持ちが「六斗目環境サミットの開催」という活動に広がっていった。
 こうした一連の活動が、六斗目ビオトープづくりに実を結んでいる。

六斗目川未来予想図
(2)各学年の取り組み<わくわく学習>

 今年度までは六斗目川を中核とした環境教育学年テーマに基づいて学年別年間カリキュラムを作成し、実践を進めてきている。

  • 1年…おさんぽ だいすき
  • 2年…レッツゴーわくわくたんけん
  • 3年…発見!ぼくらのまわりの生き物
  • 4年…六斗目クリーン作戦
  • 5年…生き物のすめる六斗目川にしよう
  • 6年…発信!ぼくらの六斗目川
2. 来年度の教育計画
(1)主題構想

[1]子どもの実態

 本年度までの環境教育により、本校の子どもたちは目の前にある六斗目川に興味・関心を持ち、夢中になってさまざまな活動に取り組んできた。そして、年間を通して六斗目川と関わる中で、川のみならず、その周辺の自然にも興味・関心が広がってきた。自然をもっと知りたいと考える子が増え、疑問に感じたことに対して何とか解決したいという欲求も強くなってきた。
 このように環境教育により、

  • 身の回りの自然を見つめ、問題を見つける力
  • 自ら関わり、解決しようとする意欲
  • 自然のあるべき姿、願いを持つ心

が身についてきた。しかし、問題解決能力が十分身についていないために、自力で疑問を解決できずに満足感や充実感を味わえないで終わってしまうこともある。また、目的意識がはっきりせず、興味がすぐに薄れてしまう子もいる。

[2]めざす子ども像

理科の学習は、児童の既有しているさまざまな自然についての素朴な見方や考え方を、観察・実験などの問題解決の活動を通して、少しずつ科学的なものに変容させていく営みであると考えることができる。
 自然について見る眼が育ちつつある子どもたちの欲求を満たし、学習の満足感や充実感を味わうことができるようにするために、今後、理科の学習にも重点を置いていくことが好ましいと考える。理科の学習を通して、自然環境のよりよいあり方を理解していくことも環境教育を継続していくのに欠かせない。
 幸い、本校の周りには自然の中での体験活動ができる場が数多くある。環境学習の中核としてきた「六斗目川」を始め、北には農業大学校の森があり、さまざまな野鳥も見られる。このように恵まれた環境の中でこそ、「自然科学好き」の子どもが育つものと信じている。生物の存在や植物の成長を知ることや小さな営みを見つめることで、心を揺さぶり、自然に対する見方や考え方を変え、主体的な活動につながるのではないかと考える。「理科ばなれ」が危惧されている現在であるからこそ、未来を担う子どもたちを一人でも多く「科学好き」な子に育てたいと考える。
 そこで、本校の「めざす子ども像」を次のように掲げ、主題構想を立てた。

[3]主題構想図

(2)効果的な活動(学習)の場

[1]わくわく総合学習

 「六斗目ビオトープ」をめざした環境教育を中核とした実践に加え、各学級の計画による学級カリキュラムを充実させていく方向を考えている。また、学年カリキュラムも大きなテーマを決め、その中で子どもの実態に合わせて弾力的に運用できるようにした。

[2]生活科・理科の学習

  • 生活科において
     低学年の場合は、総合的な学習の時間がないために、生活科の中でカリキュラムの再編成を行っていく。環境教育のねらいと生活科の目標を満たすように、「六斗目ビオトープ」をめざした環境教育を生活科の単元の中に組み込ませていく。
  • 理科において
     各学年の単元から環境教育にアプローチできる単元を取り出し、わくわく学習の学級カリキュラムとクロスさせ、重点的に取り組めるように単元計画を立て直す。
     また、他教科や道徳、特別活動、学校行事などの時間においても環境教育に関わる内容を横断的に取り扱ったり、「六斗目ビオトープ」につながるように関連的に取り扱い、大単元として継続して追究するような授業展開を構想していく。
    学年の発達段階に応じて、
     【低学年】環境に触れ、親しむ
     【中学年】環境を見つめる
     【高学年】環境について考え、行動する
    を重視して、生活科(低学年)とわくわく総合学習(3年生以上)の学年別年間カリキュラムを立てていく。
(3)効果的な実践の手立て

[1]問題解決的な学習過程の工夫

 学習過程を4段階に分け、段階ごとに「めざす子ども」に培いたい力を、次のようにとらえて進めていく。

段階
「めざす子ども」に培いたい力
問題を探る 自分を取り巻く環境の中で問題が見つけられる力
練り合う 問題の追究と解決をする力
振り返る 自らの高まりを明らかにする力
生活に還元する 生活に生かす力

 このような問題解決的な学習過程の工夫によって、充実した体験や個性の発揮が可能となり、主体的な子どもが育つと考える。

[2]子どもの目標と教師の目標の明確化 -> よりよい学習課題

 子どもが、知的好奇心や探究心をもって自分を取り巻く自然環境に親しみ、目的意識を持った活動を行えば、調べる能力や態度が育ち、自然環境に対する見方や考え方が身につくと考える。すなわち、子どもが「何のために、何を、どのように調べるのか。それはどのようになるのか」を意識しながら、主体的に活動を行い、自然環境に対する認識を高めることである。「目的意識を持った活動」を行うには、やはり、そこに「子どもたちにとってどうしても解決したいという意識のもてる課題」が必要である。そこで初めて子どもの目標がはっきりしてくる。また、教師の目標は、その活動でどんな力が育っていくかを分析しておくことではっきりしてくる。

[3]高め合う集団としての交流の場の保障

 子どもたちの活動において、高め合う集団としての交流の場は常に必要であると考える。子どもたちは、体験を通して感じたことや考えたことから豊かな表現を生み、実践的な行動を生み出す。しかし、自分と対象の間だけで学びが深まり、高まっていくのではない。そのためには、人との関わりが不可欠である。他者の存在を意識したり、共同体としての学びを作り上げたりしていく中で、学びが深まり高まっていくのである。子どもたちは、学級集団の中で友だちの考えを受け入れて自分の考えを再構築したり、自分の見方を広げたりしていくのである。このような交流の場で、表現する力、自己評価・他者評価する力、情報収集能力を育てたいと考えている。それによって体験活動の振り返りができ、発表や討論・合意形成の技能が身についていくと考える。

[4]学習環境の整備

 学校西側を流れる六斗目川や校内の自然環境は今年度までに活動しやすい形に整備されてきている。そこで来年度は引き続き、活動の中心となる六斗目ビオトープのさらなる整備と、わくわく総合学習の学級カリキュラムや生活科の学習での活動場所を広げる意味で、次にあげるものを整備していきたいと考えている。

  • 六斗目川ビオトープ->町づくりへ
     六斗目川の整備は地域の人々の協力により、かなり充実してきているが、活動の幅をさらに広げるために、擬木による柵の延長、草刈りの整備、より自然な小川への補修についてさらに整備をしていきたい。
  • 自然教室の整備
     子どもたちが取り組む「わくわく総合学習」の情報交換の場・学習の場・活動の場として自然教室を開設した。 子どもたちが主体的に活動できる部屋にするために、調べ学習などに活用できる資料などを充実したり、学区の自然を紹介するコーナーなどを新設し、高学年などが各自で課題作りができるような環境を整えていきたい。
  • わくわく教室の整備
     体育館北にあるわくわく教室は、多くの木々が植えられ、四季の樹木の特徴が一目でわかる空間である。ヒバリ、ムクドリ、ツグミ、シジュウカラ、コサギなどの野鳥もときどきやってくる。樹木や野鳥、虫などと自由にふれ合い、学習に活用できるように、学級の児童全員が座って活動できる机といすなど、また野鳥が集まるような巣箱や餌台なども設置していきたい。
おわりに

 子どもたちは「わくわく総合学習」の時間が大好きである。魚のすめる六斗目川にしたいと願い、活動する子どもたちの瞳は輝いている。
 「先生、六斗目に小さな魚たちがいたよ。今年産まれたのかなあ」と、毎日のように川をのぞきに行く1年生の子。また、「ブナの木が倒れそうになっていたよ。ボランティアでなおしたらどうですか」と、進んで活動を提案する6年生の子。多くの子どもたちからかけがえのない感想や意見が出始めている。
 六斗目川の自然をこよなく愛する子どもたちの視野がさらに広まり、学区の自然を愛する子どもたちに育ってほしいと願っている。このような子どもたちこそ、未来の科学を支える力になると確信している。

活動のあゆみ
論文募集
論文紹介
大会・研究会
Copyright Sony Education Foundation