公益財団法人 ソニー教育財団    
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2001年度入選プロジェクト校 
 愛知県刈谷市立刈谷南中学校

科学が好きな生徒を育てる刈南プロジェクト
学校長
杉浦 泰彦
PTA会長
市川 裕大
教頭
伊藤 良平
研究代表者
柴田 芳之
児童数
679
学級数
20
電話
0566-21-0025
I 本校が考える「科学が好きな生徒」

 科学が好きな生徒を本校では次のように定義し、刈南プロジェクトの基盤とした。

自然の事物・現象に興味を持ち、進んで追究し、自然の奥に潜む素晴らしさを感じることができる生徒」

  • 身の回りの自然の事物・現象の中から自分なりの課題を見つけることができる生徒
  • 見つけた課題に対して、進んで追究しようとする生徒
  • 追究活動を通して、自然の事物・現象の奥に潜む神秘さ、素晴らしさ、巧みさ に気づき、実感することができる感性豊かな生徒
  • 友達や専門家の方などとの関わりを通して、自然に対するものの見方・考え方をより高めることができる生徒
II 科学が好きな生徒に迫るためのキーワード

 まず私たちは、先に挙げた生徒像に迫るべく3つのキーワードを定め、プロジェクトの基本とした。

  1. 自然との関わりの重視
  2. 人(友達、専門家等)との関わりの重視
  3. 問題追究を豊かにする環境の整備
III 科学が好きな生徒を育てる刈南プロジェクト
1.理科授業の方略

(1)自然との関わりの重視

 生徒と自然の事物・現象をどう関わらせ、どのように生徒を真正面から対峙させるかを特に重要と考え、そのための手だてを工夫する。

  1. 単元構成の工夫
    • ア 総合学習とタイアップした問題解決的学習を組む。
       総合学習とタイアップして生徒の問題発見・解決能力を育成する理科授業を展開する。
       本校の総合学習では、追究の過程をしっかり押さえた学習を行うために以下に示す「4つの場」を設定している。
      1. 「把握する」 → 学習課題をつかむ。
      2. 「追究する」→解決の計画を立て、それに基づいて追究する。
      3. 「表現する」→自分で調べたことを他に向けて発表する。
      4. 「自分に返す」→今までの追究活動の中で学んだことをもとに日常生活をとらえ直し、自分にできることを考え、実践するといった活動をする。
         理科も総合学習で押さえるこの「4つの場」を入れ込んだ単元構成をする。4つの場を総合学習とタイアップすることにより追究学習のスキルを身に付けさせることができ、より深い追究学習が促されるようになると考える。
    • イ「自分に返す」場で、学習したことを自分のものにさせる
       単元の終末段階において「自分に返す」学習の場を位置づけ、自分なりの学習の意味づけをさせる。具体的には次のような活動を考えている。
      • 学習内容を深化、拡充する発展的な追究活動。
      • 学習内容を他へと広げる活動。(発表会、ホームページを活用した情宣活動、街角発表会等)
      • 学習内容を通して実際の生活を見つめ直す活動。
      • 学習内容に対する自分の思いを文章に綴る活動。
    • ウ 生徒の問題意識を柱とする単元構成
       生徒の問題意識を柱とする単元構成を行い、生徒の主体的な学びを醸成する。
       具体的には2つの方法を考えている。一つは単元の導入部において、いろいろな試行活動を行わせた上で、生徒の疑問点を出させ、それをもとに学習課題を作り・追究するという流れで単元構成をする。もう一つは単元の導入部において、生徒に疑問をもたせる事象提示を行い、そこから生じた疑問を解決する方向である。
  2. 直接体験の重視
    「把握する」「追究する」「表現する」「自分に返す」の4つの場で《できる限り本物と出会わせ、本物を通して自然を学ばせる。
  3. 個の考えを生かした問題解決的学習
     生徒が探究心をもって、主体的・創造的に問題解決に当たることができる場と自分たちの考えに基づいた追究活動を保障する。
     そのために一人一人へ支援を可能にする追究計画書を書かせる。また、追究過程での思考の流れを把握し、支援するために個人カルテを準備する。
  4. 導入の工夫
     授業の導入部では次のような工夫をし、生徒の疑問を誘発する。
    • 生徒の既成概念を崩すような事象の提示。
    • 試行活動や教師による演示との出会わせ方とその教具を工夫する。
    • 生徒の盲点を刺激する。
    • 自然の事・物現象を五感を通して観察させる。
  5. 教材・教具の工夫
     生徒の興味・関心を高めたり、学習内容の理解を深めることができる教材・教具の開発を行う。開発した教材・教具については整理していつでも取り出すことができるようにしておく。

(2)人とのかかわりの重視

友達との話し合いや意見交換をする場、追究内容を発表する場等の工夫を通して、コミュニケーション能力の育成を図ると共に、自ら追究をより高いものにさせる。

  1. 練り合い、深め合う追究の場の設定
     課題追究の過程で意見交換の場を設定し、互いに考えを練り合い、高め合う場としていきたい。具体的な工夫としては、次のようなことを考える。
    • ホワイトボードを活用させ、事実や考えを視覚的に整理し、筋道を立てて意見を述べる力を培う。
    • 具体物やデータを重視させ、事実に基づいて話し合う力をはぐくむ。
  2. 「表現する」場で自分の思いを、対象を意識して表現する力の育成を図ると共に、自然に対するものの見方・考え方を高めさせる。
    具体的には次のようなことを行う。
    • 多様な表現活動(ポスターセッション、ワークショップ形式の発表、レポートによる発表、身体表現など)を行わせる。
    • 聞き手を意識した発表技術を身につけさせる。
  3. その道の専門家から学ぶ場の設定
     生徒が追究活動をしていく中で、追究をより確かな ものにしたり、深めたりするため、生徒の要求や追究の深さに応じて、科学に造詣が深い方から学ぶ機会を設定する。このことは、進んだ科学の素晴らしさや先端科学の現状にまで目を向ける力をはぐくむことができると考える。
2.問題追究を豊かにする環境整備の方略

(1)科学センター的役割を担う理科室環境の整備

  1. 情報収集環境の充実
     追究活動で参考にできるような書'籍、図鑑、あるいは単元に関連した教具類を理科室に整備して、必要に応じて自由に使えるようにしておく。また、インターネット接続のコンピュータも理科室に設置し、自由に操作できるようにしておく。
  2. 生徒個々の日常の問題や授業からの発展問題の解決を支援する環境システムの構築
     「自分に返す」場で行った課題のテーマや追究内容をまとめたものを冊子にして、理科室に整理しておく。そしてその内容を自由に参考にできるようにし、追究課題を見つけるときや追究計画を立てるときなどの良い参考資料とさせる。将来的には生徒の追究した内容をデジタルポートフォリオとして整理し、校内ネットワークを使って自由に取り出せるように整備していきたい。
  3. 理科教育支援人材バンクの整備
     理科の学習において、支援をしていただける外部の方の一覧表を作成する。

(2)生徒に働きかけ、
   生徒が働きかけるアクティブな科学的学校環境の整備

 科学が好きな子どもを育てていくために、日々の生活の中で生徒が自然の事物・現象に接することができるように環境の整備をしていくことが大切である。そこで、まずは自然を身近に感じられるような理科室掲示に着手していく。

自らの力を試す活動の奨励・啓発活動の推進

  1. 夏休み一人一研究の勧め
     夏休みに、自分が見つけたテーマの追究にどっぶり浸からせるものである。追究結果はレポートにまとめ、提出させる。今までの学習の中で培われた課題解決能力が発揮されるときである。
     具体的には、夏休み前に担当教諭による徹底したテーマ指導、仮説の立て方、データの取り方・まとめ方までを事前指導する。また、夏休み中にも追究相談活動を行う。本校では、このようにして、夏休み中に取り組んだ理科研究の中から優秀な作品に加藤与五郎賞を贈っている。生徒の間では、この賞は名誉なものとなっており、毎年この賞を受賞することを目標に、早い時期からテーマ決めに取り組んでいる。
  2. 各種コンクール応募の勧め
     毎年、科学部の生徒が行った理科研究を日本学生科学賞に応募している。幸いなことに、毎年生徒のがんばりが評価され、数年来連続で全国入賞に輝いている。
     この他、発明と工夫展、市村アイディア賞、マイクロマシンコンテスト、原子力作文コンクール等、各種コンクールヘの応募を勧めている。これらにおいても、毎年賞を受けることができ、日々の学習で培った力が各方面で認められていることに私たちは確かな手応えを感じている。
  3. サイエンスルームの運営
     生徒の自主的活動の啓発や追究の支援として「サイエンスルーム」を設置している。この室には理科関連の各種コンクールで賞を得た先輩たちの研究作品や発明工作作品を展示している。
3.科学好きな生徒を育てる理科授業計画案

(1)単元名 1年「東海地震―来たるべき地震に備えよう―」

(2)キーワードの具現化

  1. 自然とのかかわりの重視
    • 生徒の興味を引き出す教材・教具の工夫
       近い将来起こることが確実視されている東海地震を中心とした学習を組んでいく。そうすることで、切実感あふれる授業を展開する。また、来たるべき地震について備えようとする態度をはぐくむ。
    • 生徒の問題意識を柱とした単元構成の工夫
       導入部で東海地震に関するニュース番組を視聴させ、東海地震は決して対岸の火事ではなく、私たちの生活に大きな影響を与える可能性が極めて高いものであるという認識をもたせる。次に、生徒から東海地震について調べてみたいことをあげさせ、課題づくりを行う。
    • 個の考えを生かした問題解決的学習
       単元の終末部分「自分に返す」場で、東海地震についてさらに調べたいことを決めさせ、個別追究させる。
       この追究活動で、問題発見・解決能力の質を高めると共に理科学習のおもしろさを一層引き出す。
  2. 人とのかかわりの重視
    • 「表現する」場で地震について互いに理解を深めさせる
       「表現する」場では、東海地震について調べた内容をポスターセッション形式で発表させる。聞き手を意識した発表をさせることにより、自らの地震に対する理解を深めさせると共に、コミュニケーション能力や表現力の育成を図る。
  3. 科学を学ぶ環境の整備
    • 地震に関する文献を理科室に整備、インターネット接続のコンピュータを設置、また、生徒が追究内容をまとめた模造紙を掲示して追究を支援する。

(3)単元計画

  • 把握する
    • 1st stage 東海地震って何(1時間)
      • 東海地震に関してのVTR視聴。
      • 東海地震について興味をもったこと・知りたいと思ったことを書く。
    • 東海地震について調べたいことを出し合い、課題づくりをしよう。(1時間)
       東海地震について調べたいことを出し合い、学習課題を作る。
       予想される課題例
      1. 東海地震発生の要因?
      2. 東海地震発生時の被害?
      3. 地震への備えと注意点?
  • 追究する
    • 2nd stage 東海地震はなぜ起こるのか(1時間)
      • 東海地震発生のメカニズムを調べる。
      • P波、S波の伝わり方の特徴を調べる。
    • 3rd stage 東海地震が起きたとき、どんな被害が起きるのか(2時間)
      • 兵庫県南部地震のデータから震源距離と震度の大きさの関係を調べる。
      • 兵庫県南部地震・三河地震のデータをもとに、東海地震が起きたときの土地の変化や被害を予測する。
      • 予想震度を体験する(起震車の活用)
      • 地震についての注意点と準備を知る。
  • 自分に返す
    • 4th stage 東海地震について調べたいことを決めて追究しよう(3時間)
      • 学習事項から関連して出てくる疑問や思いを「ウエビング」により整理し、追究課題を設定する。
      • 追究を行い、調べた内容を模造紙にまとめる。
  • 表現する
    • final stage 発表会を行い、地震に関しての理解を深めよう(1時間)
      • ポスターセッション形式による発表会を行う。
4.授業以外の教育活動の方略

(1)今までの取り組み

  1. かりなんセミナー
     身近な地域の方を講師に迎え、生徒の希望により講座を選択し異学年混成集団で取り組んでいくものである。昨年度は25の講座を設けた。
  2. 刈南大学
     親に対する子育て支援のため、親を対象とする学習会として刈南大学を行っている。昨年度は計8回の講座を行った。

(2)これからの取り組み(計画)

  1. 科学が好きな生徒を育てるための基本的な考え(略)
  2. キーワードの具現化
    • ア 自然とのかかわりの重視
       かりなんセミナーや刈南大学の講座に、実験や観察、もの作りなどの活動を取り入れ、科学のおもしろさを肌で感じられるような内容を取り入れ、「科学のおもしろさ、自然の素晴らしさ」を生徒は無論のこと、保護者にも啓発していく。
    • イ 人とのかかわりの重視
       かりなんセミナーや刈南大学では、地域の科学の分野に詳しい方、研究所や企業で科学に直接携わっている方、科学に造詣が深い方を講師として依頼していく。
    • ウ 科学を学ぶ環境の整備(略)
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