公益財団法人 ソニー教育財団    
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2001年度入選プロジェクト校 
 愛知県岡崎市立大樹寺小学校

「自立心を育てる教育」を通して
学校長
鈴木 敏雄
PTA会長
高井 鉱支
教頭
本多 久勝
研究代表者
佐宗 正義
児童数
805
学級数
25
電話
0564-22-1419
1.はじめに

 本校は,松平・徳川家の菩提寺として有名な「大樹寺」の広大な境内の一画に創設された学校で,今年128年と歴史も古く,校名も寺名そのままである。校庭南の総門からは,岡崎城が見え,大樹寺,総門,岡崎城は一直線上にある。校庭には旗掛けの松(3代目),家康の隠し井戸の一つがある。こうした歴史的背景と意義を生かすこと。また,自然体験のできる場が少なく,そのため数年前から学校に自然環境を整えようと,学校ビオトープ作りにも力を入れてきたこと。そうした本校の特色を教育の場に生かしつつ,「自立心を育てる教育」の研究を10余年にわたって継続している。常に一貫して「自立心を育てる教育」の授業の方途を探るとともに,総合的な学習の時間として「大樹学習A・B」を試行している。

2.「自立心を育てる教育」を通して,科学が好きな子どもたちを育てるために

 自立心を育てる教育とは,1.自ら学び,自ら考える力を有した力いっぱい学ぶ子の育成(学の自立), 2.豊かな人間性を有し他人の立場を考える子の育成(心の自立),3.たくましく生きるための健康や体力を有する健康で明るい子の育成(体の自立)を目指す教育であり,この3つの自立をバランスよく育成することをねらっている。
 また,自立心を育てる教育とは,〔生きる力〕を育む教育である。そして,その教育を推進していくことが,科学が好きな子どもたちを育てる教育につながると確信している。
 科学が好きな子どもを,

  • 自然事象に対して,興味・関心を意欲的にもつ子ども
  • 科学を学ぶ楽しさを実感できる子ども
  • 未知のものを追究し,新しいものを創り出すことのできる子ども

ととらえている。
 そこには,その子の関心・適正・能力といった個性に応じた学習の保障がある。また,自力で解決・発信したという存在感や成就感がある。さらには,人とのかかわり,自然とのかかわり,地域とのかかわりを通して豊かな人間性を育てることにもつながる。
 そこで,自立心を育てる教育・科学が好きな子どもたちを育てる手立てとして,

  1. 直接体験を重視した教育活動の推進
  2. 個性を生かした真の問題解決学習の推進

の2点を考え,実践している。

1.直接体験を重視した教育活動

 直接体験こそ,子どもが感動し,子どもの成長が期待できるものと確信し,研究を深めてきた。

(1)自然とのかかわりから

 5年前より「小さな自然広場『友遊』」をはじめとする『大樹寺ビオトープ』の整備に力を入れてきた。
 理科では,3年「花や虫をさがそう」,4年「季節といきもの」などにおいて,植物や昆虫の観察・飼育をしたり,1・2年生活科「がっこうたんけん」では,自然観察を行い,ヨモギを採集し,ヨモギ団子をつくり自然の恵みを味わったりするなど,ビオトープを活用した学習は,年々多くなっている。
 また,校外へ出て近くの公園の自然を観察したり,学区の鳥などの生態を観察・調査したりするなどの直接体験も大切にし,今後も大いに取り入れていく。
 大樹学習Aでは,556名中,350名程が理科に関する課題に取り組み,100名余りが学区の自然やビオトープの自然をテーマにした追究を行っている。
 大樹学習Bでは,理科学習の発展として植物や昆虫の観察,メダカの観察にビオトープを活用していく。
 自然とかかわり,生態系を学ぶことは,今後の環境教育にとっても欠かすことのできない教育の1つである。大樹寺ビオトープは,小さな自然ではあるが,大切な教育環境として今後も大いに活用していきたい。

(2)人とのかかわりから

 本校は,子どもたちが自分の興味・関心のある問題に伸び伸びとじっくり取り組み,分らないことが自然に分らないと言え,学習につまずいたり,試行錯誤することが当然のこととして受け入れられるような温かい雰囲気の授業を展開してきた。こうした中で,子どもたちは同年齢のお互いを認め合い,自分がかけがえのない一人の人間として大切にされ,存在感と自己実現の喜びを実感している。
 生活科における1年生と保育園児との交流「あきのプレゼント」,1年と6年の交流「おせわになっている おにいさん おねえさんへ」,2年生の「1年生をむかえる会」等,異年齢・同年齢の子ども同士が教え合い心を通わせる活動を積極的に取り入れている。また,お母さんや地域の方を講師として招くTT学習の機会も多く取り入れ,大人との交流による心の教育も図っている。今後も,さらに推進したい。
 3〜6年生の学年枠を外して異年齢グループで行う大樹学習Aでは,追究の仕方やまとめ方・発表の仕方など,年上の児童が手本を示し,年下の児童は年上の児童を敬い学ぶ,縦の人間関係のありかたを学ぶ機会ともなっている。手話を追究するグループは,聾学校を訪問し,体の不自由な子どもたちとの交流を深める計画をしている。

(3)地域とのかかわりから

 自分たちの住む町・学区には,どんな自然や施設・建物があり,どんな人々が住んでいるかを知ることは,今の自分の生活を振り返り,将来の自分を考えることにつながる。人として自立する上で,欠かすことのできない大切な取り組みと考え計画している。
 大樹寺ビオトープからさらに視野を広げ,タンポポなどの植物やチョウなどの昆虫の調査を行うなど,学区の自然について追究。学区の農業や工業,商業に関わる社会見学の計画。本校の特色でもある家康ゆかりの史跡の活用は,6年社会科の歴史の学習や大樹学習の追究テーマとして今後も大いに計画に取り入れていきたい。

2.個性を生かした真の問題解決学習

 子ども一人一人が,自分自身の問題を自力で解決していく,そんな授業こそ自立心を育て,科学が好きな子どもたちの育成に結びつくと,固く信じ研究を深めてきた。

(1)教科の授業で

 教科の授業は,真の問題解決学習の基盤づくりの場である。真の問題解決学習とは,教えられたことを覚えるのではなく,子ども自身が追究し得たことを身に付ける授業である。そこには,個性が尊重された授業が展開されなければならない。
 そのために,次の点を大切にしている。

  • 授業日記によって,個々の追究する問題を把握する。
  • 座席表を活用し,個々の変容を掌握する。
  • 個々の子どもの追究を生かした授業展開を図る。
  • 一人調べ,個人実験の時間を確保する。

 子ども一人一人を大切にした授業は,教科の基礎・基本も確実な定着にも結びつくと考えている。

(2)大樹学習の時間で

 大樹学習は,個々の子どもが興味・関心に基づいた問題を,子ども自身の力で追究する時間である。教科で培った問題解決の資質や能力を発揮し,増幅し,定着化する時間である。また,その力は,教科の学習にも反映し,相互のひびき合いのある授業をめざしている。

3.科学が好きな子どもたちを育てる来年度の計画

以下,実践を基に生活科,理科,大樹学習A・B等の来年度の計画を述べる。

1.生活科の授業をどうする?
  1. アゲハチョウいっぱいの大樹寺小学校にするため,大樹寺ビオトープのさらなる整備と充実を図りたい。
  2. テントウムシを扱って,歌を歌ったり,絵を描いたり,お話を書いたり,劇をしたりして,一部の子ども,一部の学級の追究だけに終わらず,学年や他学年へ発信する機会を設けたい。
  3. 個々の追究意欲を大切にするためにはやはり,一斉の探検だけでなく,個別やグループでの探検が必要だと思う。そこで,年度初めに各家庭・地域へ呼びかけ,子どもとともに学びながら,安全に引率していただけるボランティア・ティーチャーのリストを作成し,必要に応じて協力していただけるようにしていきたい。
2.理科の授業をどうする?
  1. ビオトープの中にチョウが冬越しできるような環境の整備にも力を注ぎたいと考えている。
  2. 自分たちの学習してきたことを異学年との交流の場を持って,堂々と披露する場を持つことができたらと考えている。
  3. 子どもたちは,日々の観察から気づいたことや疑問に思ったことを自分のことばで「観察日記・授業日記」に記録している。より密度の濃い座席表をもとに真の子ども主体の授業の構築(学習計画)をしていきたいと考えている。
3.大樹学習Aをどうする?
  1. 追究に行き詰まったとき,子どもが自分(達)自身の力で限界を乗り越えられるよう,子どものテーマに合った講師・関係諸機関の一覧,パソコンや映像機器などの利用マニュアル等,間接的な資料を作成・整備し,児童の目に触れるような環境を整えるようにしていきたい。
  2. 一人一人の追究を十分サポートするためにも,今後はこれまで以上に地域講師を依頼すると共に,専門的な知識・技能を持つ他学校の教師や大学生・諸機関の職員を講師として積極的に取り入れるようにしていきたい。さらにはパソコンを媒体としたサポートも整備していきたい。
  3. グループ内での意見交換,発表の場は確保されつつあるが,他グループの子どもの追究内容や追究方法にも目を向けられるようにしたい。そのために,一人一人の追究をパソコンにデーターベース化し,常時アクセスできるような環境を整備していく必要を感じている。
4.大樹学習Bをどうする?
  1. 現在40名ほどの登録者がある学区の「大樹学習講師登録者」を,さらに学区の方に呼びかけ拡大し,子どもたちの追究に応えられるよう計画している。
  2. 野鳥やその他の生き物についても関心を持ち,自然に積極的に関わっていくことを期待し,新たな教材の開発を進めたい。
  3. 来年度,高速通信回路によるインターネット接続環境が整備され,同時に動画像編集機器も充実する。このようなITを活用して,遠隔地の子どもたちとツバメの情報交換するテレビ会議等も計画している。
  4. 今年は,名古屋大学大学院工学博士「ものづくり博士」とも呼ばれる末松先生をお招きし,いろいろなからくりの仕掛けを教えていただいた。このように,ものづくりの楽しさを実感する授業も取り組んでいく。
5.おもしろ科学パーティーをどうする?
  1. 今まで理科が嫌いだったが,この会に参加して好きになったと感想に書いている子が多くいた。さらに,子どもたちの中には,この会で体験したことを家に帰って実践したり,「なぜかな」と思ったことを調べたりしている。来年度もさらに継続したい行事の1つとして計画している。
  2. 来年度は,3・4年生とその保護者を対象に実施しおもしろ科学パーティーを大樹学習の課題づくりの場の一つとして計画している。
  3. やや興味本位や驚きの面に偏り,創造的な取り組みに乏しかったことが反省される。ソニーおもしろ科学実験室を依頼したり,各企業の体験教室に参加したりするなど,ものづくりのような創造的な活動を,計画している。
4.平成14年度 科学が好きな子どもたちを育てる年間計画一覧表
対象学年
内容
4 職員 校内研修会:年間の研究推進について,全職員の意思統一を図る。
1・2年 1年生を迎える会(アサガオの種プレゼント):会の中で,2年生が1年生に自分たちが育てて収穫したアサガオの種を全員に渡して,大切に育ててもらうようにバトンタッチする。
3・4年 おもしろ科学パーティー:5年間継続してきた「おもしろ科学パーティー」を,3・4年生を対象にし大樹学習の課題づくりの場としても位置付け,内容も課題づくりにふさわしい実験にするよう大学側とも話し合いを済ませている。
5 全学年 ふるさと探検:4年生は,近くを流れる青木川に網やバケツなど思い思いの道具を持参して出かける。現地では,普段経験できない川遊びを十分満喫している。
職員 校内研修会:ビオトープも5年を経過し,自然本来の姿が見られるようになってきた。しかし,子どもたちは,年間をとおして多くの種類の昆虫や鳥が観察できるような規模のものを求めている。そこで,子どもたちが自然と共存していることが実感できるようなビオトープづくりを進めていきたい。また,教師自身が自然を知らなければ,科学好きな子どもは育たない。専門的な外部講師を招き研修を深める。
4・6年 校内授業研究:理科・社会科 これまでT・T学習は5年生の算数で実施してきたが,14年度からは理科の授業で実施したい。これは,科学が好きな子どもたちを育てるための一方策でもある。このことは,個人差に応じた指導や子どもの追究に応じた指導がより的確にできると考えるからである。
5・6年の
希望者の
親子
ソニーおもしろ科学実験室:希望者を募り教室を開催する。親子で実施することにより,手づくり・ものづくりの楽しさを実感させたい。子どもを変えるには,親の意識を変えていく必要があると考えるので,親子での参加とした。
3・5年 校内授業研究会:理科・社会科 直接体験を重視した学習を進めるためには,学習の場が教室から校外や地域へと拡大していく。そこでは,指導者の手不足と子どもたちの安全が問題となってくる。それを解決するために,保護者や地域に呼びかけ協力者リストを作成する。必要に応じて協力依頼し学習の効率化を図る。
3〜6年 大樹学習A,個人テーマ決定:大樹学習Aは,課題の設定内容によって,以後の学習に大きな影響を与える。そのため,子どもと教師が十分話し合い,これまでの生活経験や授業からの発展・直接体験の多少による個人差を認識した上で決めなければならない。また,家庭での支援や援助も欠かせない要素となる。家庭とも綿密な連絡をとり,十分時間をかけて最終決定をする。
6 2・4年 校内授業研究会:理科・生活科 教師が力量を高めるために全員年1回の授業研究を実施する。ツバメの生態を観察した実践を行い,パソコン上にまとめて,気候の異なる地域との情報交換をインターネットで実施する。可能であればテレビ会議なども視野に入れていきたい。
職員・PTA 校内研修会:ビオトープの昆虫やメダカが生息しやすいように整備拡充する
5年 リーフラリー(山の学習の中で):山での生活では,そこに生息する昆虫や鳥などの生き物に直接触れたり,見聞きしたりすることが可能である。この機会を捉え,オリエンテーリング形式で,リーフラリーを実施する。葉の形や特徴などから植物の仲間わけや名前調べをする。これも直接体験の有効な機会として捉えている。
児童会
緑化委員会
緑化さし木活動:アジサイ,ツツジ,サツキ,アオキ,アベリア,ムクゲなどの材料を使って,全校さし木運動を児童会の緑化委員会主催で行っている。
3・5年 校内授業研究会:理科・社会科 外部講師招聘
*前述のP.26授業研究の視点を踏まえて実施する。
7 1・6年 校内授業研究会:大樹学習B・生活科 来年度は光ファイバーによる高速インターネットが通信可能になる。子どもたちの学習成果を校内だけに留めることなく,広く範囲にわたって情報発信できるように進めていきたい。
希望者 自由研究相談会:科学が好きな子どもたちを育てるために,学校休業日などを使って,理科室を開放し希望者に科学実験の楽しさを体験させる。それが夏休みの自由研究の一助になればと願っている。


3〜6年 夏休みの自由研究:子どもたち一人一人が自分で見つけた課題に向かって追究し,その成果をまとめる。
職員 校内研修会:子どもたちの持つ多様な課題や個人差に対応できる教師の資質を高めるため,チョウやツバメ・めだか・ものづくりなど,各分野の専門的な講師を招いて,研修の充実を図りたい。
10 全学年 研究発表会(自立心を育てる教育):理科・社会科・生活科・大樹学習を中心に授業公開と研究発表会を予定してる。市内外に研究の成果を問いかけ,今後の研究の方向を見定めていきたい。
高学年
参加希望者
寺子屋授業:「今年も集まれ未来の博士たち」と題して,岡崎青年会議所が主催する「寺子屋授業」に希望者が参加し,科学的な工作やおもちゃなどのものづくりを体験する。
11 1年 豊橋総合動植物公園見学会:豊橋市にある動植物園で動物の生態や植物に直接触れることによって,自然とのふれあいを深めている。
児童会
緑化委員会
樹木名札付け:学校内にある植物の名札をつける。名札をつけるだけでなく,自分で木の特徴を調べたり,感じたりしたことを明記している。
12 6年 化石採集(瑞浪・化石博物館):日本を代表する化石産地の一つといわれている岐阜県瑞浪市に出かけ,子どもたちは太古の世界に思いを馳せ,自分の化石を採集している。忘れられない自然体験活動の一つである。
2 児童会
科学委員会
しいたけの菌打ち:過去3年間,冬場にしいたけの菌打ちを行ってきた。科学委員会の子どもたちが30本の原木に1000個の菌を打っている。原木は夢虫の中に入れている。今年も一昨年の原木からしいたけが芽を出した。
3〜6年 大樹学習発表会:一年間自分が追究してきた課題の成果を発信する場として位置付ける。発信の方法は,個人の能力や課題の内容によって異なるが,口頭発表や紙上発表だけにとどまらず,映像発表・インターネットによる発表など情報発信の場としていきたい。
おもしろ科学パーティー
5.おわりに

 「教育は人なり」本校の座右の銘である。教師が変われば,子どもが変わる。教師の資質の向上こそ,21世紀を担う子どもづくりである。襟を正し,自立心を育てる教育を通して,科学が好きな子どもたちを育てるため,日々研鑚に励みたい。

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