「ザリガニとのかかわりを通して」
刈谷市立刈谷幼稚園(愛知県刈谷市)
5歳児 10月〜3月

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幼児の姿

 幼稚園の周りには城址公園や河川敷などの環境があり、四季を通じて自然の実体験が得られる場がある。10月始めに河川敷の用水路に園外保育に出かけたところ、遊びに来た経験のあるA児・B児らが河川敷に着くなり「こっちにザリガニがいるよ」「ザリガニは穴の中にいるんだよ」と小川の方に行き、枝を拾って穴に入れて釣ろうとした。「ちくわを持って来ればよかった。だってザリガニはちくわを食べるんだよ」と釣れないことを残念がって「今度いつ来る?」「今度は家からちくわ持ってくるね」などと言い、次の機会にザリガニを釣ることを期待していた。

教師の願い

 ザリガニをとり、幼児が長期間に渡って世話をすることを通して、友達と調べたり比べたり予測したりして考えを出し合い、生き物の住み家や生態を知ったり自然の変化を感じたりして欲しい。

事例1 「ザリガニ釣れた!」友達と喜び合う

10月13日
 給食の片付けの時、予定表を見たA児・B児は、「あっ、明日ザリガニをとりに行くんだった」「今日の給食にちくわあったよね」と言い、給食の残りのちくわを集めたり、釣竿を作ったりした。
 園外保育当日、河川敷に着くと早速前回ザリガニがいた場所に走って行った。しかし、引き潮のためにその場所には水はなく、A児「あれ?水がない」C児「ザリガニどこに行っちゃった?」B児「あっ、今光った。あっちに行くと水があるぞ!」と言い、勢いよく走っていった。D児「こっちに穴があるよ」A児「きっとザリガニの穴だ!」B児「釣ってみよう」と竿に餌をつけて糸を垂らした。すると、A児「あっ、今つかんだ!」B児「まだ上げちゃダメだよ」D児「ゆっくりね」と言い、小さなザリガニを釣ることができ、満面の笑みで「やったぁ!ザリガニが釣れた」と喜び合った。

事例2 「ザリガニは冬になると死んじゃうんだよ」脱皮したザリガニを見つけて

12月15日
 A児・B児らは、登園するといつものようにザリガニの入った水槽を覗いていた。
A 児:
「あぁ、今日も餌を食べていない」
B 児:
「本当だ。昨日も食べていなかったよね」とザリガニを触る。
A 児:
「うん。(ザリガニのはさみや胴がバラバラになっているのを見つけ)あれ?ザリガニ死んでいる」
B 児:

「本当だ。死んでる。餌はちゃんとあげているのに」

A 児:
「分かった。ザリガニは冬になると餌を食べなくて死んじゃうんだ。先生、知ってる?ザリガニは冬になると死んじゃうんだよ」
教 師:
「そうなの?」
D 児:
「冬眠したんじゃないの?」
B 児:
「冬眠?」
D 児:
「うん。お兄ちゃんがザリガニは寒くなると冬眠するって言っていた」
教 師:
「そういえば去年カメも冬眠したよね。ザリガニも冬眠するの?」
A 児:
「ふぅん。でもじゃあ何で死んだのがあるの?ほら。中身も食べられている」
C 児:
「本当だ。みんなかな?」とふたを開け、隠れ場所の鉢を動かすと3匹いた。
D 児:
「あれ?1、2、3みんないるよ」
教 師:
「本当だ。みんないるね」
B 児:
「本当だ。じゃあ何で1匹増えて死んでいるのかな?」
A 児:
「ちょっと待ってて」と言い、図鑑「ザリガニ」を持ってきて、皆で調べ始める。
D 児:
(脱皮の写真を見つけて)「ねえ、これじゃない?」
教 師:
「“脱皮”大きくなるために殻が窮屈になり、殻を脱ぎ、大人になる」と図鑑を読む。
A 児:
「分かった!脱皮したんだ」
B 児:
「冬だからあまり餌を食べないけど、ちゃんと大きくなっているんだ!」

事例3 「ザリガニが冬眠から覚めたか見に行こう!」

3月12日
 修了式が近づいた日、最後にこれまで慣れ親しんだ河川敷に行く計画をし、それぞれ、凧あげや春の草摘みなど、友達としたいことを決め準備をした。その中で、A児らは「ザリガニどこにいるかな」「多分暖かい所で冬眠しているから、暖かい所を探そう」と言い、水面をじっと見ながら、時々水に手を入れ暖かさを確かめながら歩いた。そして、「あっ、この辺暖かい」「本当だ。暖かい。ここならいるよ!」と言い、ビニール袋を手にはめて土の中に入れた。そして、「泡が出た!いる!」「あっ、今触った」「わっ、はさまれた」と、目をキラキラさせて土の方を真剣に見ながら言う。教師「ザリガニとれそう?」と聞くと、A児「うんうん。ここにいるけど、まだ出てきたくないみたい」
B児「まだちょっと早いみたい。僕たちが1年生になったら出てくると思う」
A児「早く春になるといいな」と言い、笑い合った。

考察

  • 事例1では、A児らは前回園外保育に行った経験から餌や釣竿が必要なことを知り、ザリガニを釣るという目的に気持ちを高め動き出した。目的のあることで幼児の心がわくわくして体が動き出していくことを感じた。また、干潮だったため「あれ?水がない」と川にあるはずの水がないことに驚き、「ザリガニ、どこに行っちゃった?」「あっ、今光った。あっちに行くと水があるぞ!」と言ってわずかな水面の光を見つけて走り出した。同じところに何度も出かけることで、自然はいつも同じでないことを感じ、自然の偉大さに触れられたのではないかと思う。
  • 事例2では、毎日世話をする中で、「死んでいる。餌はちゃんとあげているのに」とザリガニが餌を食べていないことに気付き、よく見ることで抜け殻を見つけ、ザリガニが死んだと感じたA児。バッタなどの飼育の経験から、寒い冬になったら死ぬと考えたのではないかと思う。そして、友達と自分の考えを出し合い、話し合っていく中で“冬眠”に気付いていった。D児たちは抜け殻にこだわり、“もっと知りたい”“本当のことを知りたい”欲求にかられていった。図鑑を持ってきて調べる姿に幼児の好奇心の強さを感じた。“脱皮”という言葉を知りながらも、実体験として直接脱皮の様子を目の当たりにし、不思議さに触れることができたと思う。
     また、「冬だからあまり餌を食べないけどちゃんと大きくなっているんだ!」と言っていることからも、大切にしているものの命を感じることができたと思う。
  • 事例3では、ザリガニの冬眠を通して、B児らは自分自身が春を感じ、春の暖かさから川のザリガニが冬眠から覚めたのではないかと想像していた。園外保育では実際に水や日差しの暖かさを感じて探している。ザリガニの冬眠と目覚め、暖かさ、自分たちの修了など、自然と自分を重ね合わせて、春の訪れを感じていた。幼児は自然に浸ることで、心が動き、感じていることを様々な形で表していくことを知ることができた。
  • 園内だけではなく、地域の自然に直接触れて十分にかかわれるようにしていくことで、より様々な感動体験を得られることが分かった。今後は、園外での体験ができる時間や機会を十分に保障し、継続できるように、意図的に計画的にしていくことが必要である。

まとめ

 幼児は、同じ場で繰り返し自然体験、実体験を積むことで、ザリガニの様子やその場の様子の違いに気付いたり、発見したり、親しみをもったりして、好奇心や探究心をより高めていった。また、友達と考えたことや気付いたことを話し合うことで自分なりの考えをもったり、こうではないかと自分なりに予想したりしていった。気付いたり考えたりしたことを友達に伝えたり、友達の気付きや考えを聞いたりすることで、幼児はより深く、広く考えていくことが分かった。集団生活の中で好奇心や探究心を深めるには、信頼関係のある安定した友達関係を築いていくことが大切である。

● み ど こ ろ ●注目して頂きたい点や事例の特徴を財団がまとめました。 
 身近な自然にいるザリガニ。大切に飼育しているザリガニ。そのどちらにも「生きている」ということを実感し「命」を感じるようなかかわりをしています。保育者は特別に何かを伝えたり知らせたりしているのではなく、子どもたちが十分に心を動かしていることに寄り添って応えています。子どもたちは不思議を感じて自分からかかわって追究して、自然やザリガニの変化を感じ、そこからさらに、命や生態に及ぶ気付きをしています。修了するという自分たちの成長、1年生になる頃はもっと暖かくなって、ザリガニもでてくるという想像や期待は、自分たちの「生・成長」「命」の実感にもつながっていると思われます。
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