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A男が砂場の横に直径3cm位の穴を見つけた。幼児たちが次々と集まってきては「蛇の穴だよ」「おばけが出てくるところだ」「アリさんがおうちの人の分までごちそうをはこんだから(穴が)大きくなったんじゃない?」などと想像を膨らませていた。
そこへB男が「きっとアリさんだよ。だってアリさんのお母さんはすごく大きいって,ママ言ってたよ」と話し,他児もその意見に納得していた。
B男の「僕,アリさんのたくさんいるおうちを知ってるよ。きっとそこからトンネルみたくつながってるんじゃないのかなぁ」の話に,そこにいた全員で築山の木に向かった。
築山の木にはたくさんのアリが往来している。アリの群衆をじっと見つめる子や「気持ち悪い」と教師にしがみつく子などがいた。じっとアリを見ていたB男は「お母さんに会いたいよって泣いてるみたい」と真剣に話す。せわしなく往来するアリの様子から,他児も「そうだ」と言う。
D男が突然アリをつかみ「家に持っていく」と言い出す。理由を聞くと「欲しいから」だと言う。それを聞いたC子が「ママに会えなくなるとかわいそう。この子のおうちは幼稚園なんだよ」と訴える。D男はつかんだアリを見ながらじっと何かを考えている。
D男が「ありさんにお母さんの座っていたところを見せてあげるだけだよ。またここのおうちに戻すから」と言い,アリを持って穴のところに走っていく。砂場でくるみを使って遊んでいた子に「これ(くるみ)ちょうだい」とお願いをし,3個もらって再び築山に戻る。「他のアリさんの分もごはんもらってきたよ。おいしいよ。どうぞ。」とアリに差し出す。
「アリさんのお母さん,あんな遠く(砂場近くの穴)で何してたんだろうね。」
「こんなに長いトンネルを歩いてお仕事しているんだね」「ごはんをもっと作ってあげよう」などと話ながら,みんなで砂場に向かい,アリのご飯作りに発展していった。
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自分の思ったことや想像したことを言葉で表現する機会と捉えた。この際,考えている内容は問題にせず,思いを誰かに向けて発信したいという意欲的な気持ちや態度を重視する。 |
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自分のもっている知識と実際におこった出来事の違いを自分なりに納得できるように収めようと,様々な考えを巡らせている。 |
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3歳児くらいだと実際に起こり得ることとそうではないことの認識はあまりない。B男は本当に地中でトンネルがつながっているのではないか,と考えている。事実を教師がすぐに教えるのではなく,想像しながら実体験を重ね,徐々に事実を学ぶようにする。 |
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「ママに会いたい」と考えたことは,アリの気持ちを自分と同一視している。かかわる対象が虫であろうとも,気持ちを考え心情的にかかわろうとしている。 |
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普段から虫に対する興味が強いD男は,自分のものとして所有したい気持ちにかられた。 |
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アリの気持ちと友達から責められたことで,自分の気持ちを抑制しようとする。気持ちの切り替えとあきらめをつけるため,「アリさんのお母さんの座っていた穴をみせるだけ」にした。また,たくさんいたアリの群集を思い,「1つだけではくるみが足りない」と考え,3つもらったのではないか。 |
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自分たちなりに真剣に考えて1つの結論を見出し,満足感を感じた様子であった。 |
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懸命に話をする幼児に対して周囲が飽きたりしらけたりしないように,驚きや共感をもって聞き入れられるようにする。
・打ち出しの強くない幼児の思いを引き出すために,教師側からきっかけとなる話を投げかけていった。 |
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「そうなんだってね。アリさんのお母さんは大きな羽やお腹をもってて…」など,アリの母親に対する大きくて立派なイメージを広げていくようにした。 |
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幼児と一緒に期待感をもって築山に向かう。傍にいた幼児にも声をかけて誘う。 |
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虫に対する意識や愛着は幼児によって違いがあるため,無理にかかわらせないようにする。 |
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自分たちとアリを同一視して考える幼児の思いやりを認め,「みんなと一緒だね」と話す。 |
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友達の考えや思いに触れさせるため,幼児同士のやりとりを見守る。 |
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D男の決断を受け入れ,一緒に穴まで走る。「アリさん,お母さんの座っていた大きな大きな穴を見れて,きっと喜んでるね。」と,自分の欲求を抑え,アリのために決断に踏み切ったD男の気持ちをすくい上げるようにした。 |
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D男の思いを周囲の幼児に返し,アリのためを考えた幼児たちを褒め,一緒に活動を続けた。
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