公益財団法人 ソニー教育財団
科学する心を育てる ソニー幼児教育支援プログラム

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論文募集

シンポジウム 「幼児期に育つ科学する心」

大竹節子氏

幼保一元化施設の立ち上げと「科学する心を育てる」取り組み

 ソニー幼児教育支援プログラムのことを知った4年前は、折しも、私たちが品川区で幼稚園と保育園を同じ屋根の下に入れて教育保育を一体的につくり出すという新たな試みを行っている頃でした。
 幼稚園の教員、保育園の保育士が一緒に知恵を出して、多くの試行錯誤をしながら保育内容を模索している時でした。“豊かな子ども時代を過ごせるような場所をつくりたい”という漠然とした願いがありました。

 今の子どもたちに失われてしまったと言われている三つの間があります。『時間・空間・仲間』です。最近では、さらに『手間』も入れて四つの間ではないかと言われています。この四つの間を真剣に考えて保育空間をつくり出すことにしました。

意図性を込めた環境づくり

 0歳〜5歳まで接続し、それぞれの発達を十分に遂げていく保育空間の構成を皆で考えました。
二葉すこやか園の子どもには園で過ごすたくさんの時間があります。この時間を有意義にするために皆でカリキュラムをデザインすることにしました。
 朝の7時半から夜の7時半まで12時間の保育時間の真ん中を「わくわくタイム」と名付けています。子どもたちの脳がいちばん生き生きとして、体もゴムまりのように弾む時間をとても大切にしようという思いが詰まっています。

 教育には計画が必要です。幼児期は環境を通して行うことが大事という幼稚園教育の基本に着目し、科学する心を育む、好奇心を育てるためには、「感じ、考え、創り出す保育空間」を構成しようと幼・保の職員で、幾つかの環境プロジェクトをつくりました。
 私たちは、幼児の発達の保証ということでは大変大きな専門性を有していますが、「科学する心を育む」という際に今度は何に着目するのか視点を変えてみました。つまり知性がどのように育まれるのかということを考え始めたのです。子どもはたくさんのことを感じ取って、多くの事柄を認知し、知性も多重に起こってくるのではないかと、少し本を読んで勉強しました。脳科学から裏付けられた子どもの“新たな問い”の出方を皆で考えてみたのです。それを環境に仕掛けるということをやってみました。ここで「ただ遊ぶ」という環境の中に、少し質が加わり、「意図性を込めた環境」へと変貌させようとしたわけです。

子どもの発達を保障する環境づくり

 さらに、子どもたちの遊びや生活を支えていくためには、心の(情緒性の)安定がいちばん大事だと考え、家庭的な環境つくりと情緒性を大事にした保育をスタートしました。
 幼児期は未分化な発達が徐々に分化していく時期なので、試行錯誤、試し、繰り返しや多くの失敗ができる場所を大切に室内環境も考えました。4歳の子どもたちがいろいろな素材に出会って試したり、工夫したりするために、少し手間をかけて保育者が教材を用意しています。身近なものの中に実はたくさん科学性を育む素材が転がっています。5歳になると、取り組みも友達と一緒に深く考えたり、コリントゲームなどのようなものを作って転がり方を考えたりする姿も見られていきます。

 0歳から5歳までの子どもたちと過ごすうちに、共通してかかわりが自然に生まれてくるのは「自然の中」からであることに気付きました。私たちは、園の環境をもう一度見直し、自然の交流が生まれてくる場所をたくさん作りました。異世代で交流をしていくと優しい気持ちがお互いに芽生えてきます。手を引いて道を歩く子どもたちや虫取り網を持って散策する子どもの姿も見られます。
 ちょうちょが花の蜜を吸いに来る。「皆もご飯を食べるでしょう。ちょうちょもご飯を食べるよね」と働きかけ、「ちょうちょのレストラン」を作ろうかと先生と子どもで名前を付けたりしました。

豊かな感性を育む環境づくり

 幼児期に豊かな感性を育てたいと皆で考え、園舎裏の細道にフィーリングロードをつくりました。元々は裏の道ですが、中学生のボランティアと一緒に、子どもたちがいろいろな感覚を感じ取れるように、素材の違うものを踏み付けて足の裏から気付くような道をつくりました。
 子どもたちは、「森の道」と呼んでいます。四季折々で香りのするもの、花の咲くものなどを置いています。そのような素材を媒介として、コミュニケーションも生まれます。園舎を何周も回遊することで楽しみ、新たな問いを見付ける姿も見られます。

 遊び込む環境も、とても大事です。たくさん、じっくり遊び込むことを幼児期にしっかりと保証していきたいと思っています。感じ、考え、自分なりに試す空間の中で、5歳になるとさらに、試行錯誤し、集中時間もとても長くなってきます。
 このようにして、「自分なりに不思議さ、気付き、発見を繰り返していくうちに、子どもの中に次から次へと新たな問いが生まれてきます。このような保育空間の構成が、もしかしたら科学する心のベースにあるのでは」と思っています。

大竹先生のインタビュー記事

秋田喜代美氏 | 小泉英明氏 | 山田敏之氏 | 青木清氏 | 神長美津子氏 | 大竹節子氏
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