子どもたちがお店ごっこをして遊ぶ中で、楽器を作っている姿が見られ始めた。「様々な楽器を作って遊ぶ中で“聞く”という感覚を通すことを中心としながら、子どもたちが試したり工夫したりできるのではないか」と捉え、楽器作りの遊びが広がったり深まったりできるようにかかわっていくことにした。
事例1 いろいろなものを使っていろいろな音ができるよ
“トレイに輪ゴムをかけた楽器”をお店ごっこで景品にしている。楽器を作っては、保育者や友達に聞いてもらうことを楽しむ姿が何日もかけて見られるようになる。
<いろいろな所で、いろいろなはじき方をしてみる>
- 最初は、主にトレイのくぼみの部分で輪ゴムを上につまびくように弾いて いたが、そのうちいろいろな所で、いろいろな弾き方をするようになる。
- トレイの横の部分や底の部分で輪ゴムを弾くと、音が違うことに気付き、「こんな音がするよ」と言う。輪ゴムを弾く時に、上だけでなく、下に押しつけるようにしてからポンとゴムを離して音を出している。また、ハープを演奏するように複数の輪ゴムを連続して弾いたり、琴のように、左指でゴムを押さえ、右指で弾いたりする。
- いろいろな素材を使って音を出す姿が見られるようになる。
- 割り箸で輪ゴムを弾いたり、身近にあったドングリで輪ゴムを弾いたりする。
- トレイに敷いていた色とりどりの飾りタフロープに、つまびいている輪ゴムがたまたま当たると、「あれっ、何か違う音がする」と違う音がすることに気付く。
- トレイやストローなどを三味線のバチのようにして、輪ゴムを弾く。
- 大きいペットボトルの凹凸を割り箸でなでるように滑らすと音が出ることを発見し、その後ストローの曲がる部分の凹凸を指でなでるようにして「やっぱりここでも音がする」と気付く。
<音を言葉で表現する>
- 音をよく聞きとり、聞こえてくる音を自分なりの言葉で表現するようになる。
- トレイに掛けた輪ゴムそのものを持ってトレイにずらすように動かし「ズリズリって音がする。キリギリスみたいじゃねえ」また、飾りにしているタフロープを割り箸で弾くようにつまびき「ジュウニ ジュウニ ジュウニって言いよるみたい」などと表現する。
- ストロー笛を作り、2本のストロー笛を一度に口にくわえて吹き「新幹線の音みたい」、ストローを短くして笛を作ると高い音が出るのを発見して「短いとヒヨコの音がする」などと表現する。
<音の違いに気付き、比べてみる>
- 音の違いに気付き、自分自身で、あるいは友達同士で比べる姿が見られるようになってくる。
- トレイに輪ゴムをはめる際に、トレイの方に切り込みを入れ、指差しながら「先生、これは不思議なんよ。いっぱい切って、半分切って、切らんのじゃったら、音が違うんよ。いっぱい切ったらピリピリって音がして、半分切ったのはカラカラって音がして、全然切ってないのは、ポタポタって音がするんよ」と言う。切り込みがたくさんある程、輪ゴムがピンと張った状態になり、輪ゴムを張っている物と張っていない物では音の響き方が違うことに気付いている。
- 友達二人で一緒に楽器を作っている。一人はトレイに紙テープを弦のように張り、一人はビニールテープを同様に張る。作った楽器の音を聞き比べながら「紙テープの方でやったらプッって鳴って、ビニールテープの方でやったらブッって鳴るんよ」と紙テープの方が張りやすく、音も鈍らずに張ったような音がすることに気付き、表現する。
- 友達二人で、それぞれに同じ大きさのトレイを2つ付けて、外見上は同じ形の楽器を作る。そして「先生、よく聞いとってよ。こっちとこっちじゃあ、音が違うんよ」と言いながら、二人が順番に音を鳴らす。(2つ合わせたトレイの中に入っているのは)一人はドングリだけ、もう一人はドングリとドングリの帽子を入れている。
事例2 いろいろな楽器ができるよ
子どもたちが楽器を作る際のヒントになるように、保育者は本物の楽器(小太鼓・マラカス・ギロ)を用意した。演奏会ごっこをするA児は本物の小太鼓の側で、ダンボールや割り箸を太鼓やバチに見立てて演奏する。しかし、演奏しながら本物の小太鼓の音と聞き比べをしたのか、本物の小太鼓と自分の太鼓を見て首をかしげ、演奏を止めてしまう。保育者が「どうしたの?」と尋ねると、演奏するにはよく聞こえる音の方がいいと気付いたA児は「これじゃあ、大きい音が出んのじゃもん」と答える。そこで、保育者も「そうだねえ。どうしたらいいかねえ」と一緒に考えていると、B児が「そうだ!大きいアルミ缶でやったらいいかもしれん。丸いので、お菓子が入っとるのがあるじゃろう?」と考えつく。保育者は急いで大きめのアルミ缶を探して持って来ると、さっそく子どもたちは割り箸で叩いてみる。すると、「こっちの方が大きい音がする」ということを発見する。
<聞こえてくる音を擬音で表現する>

- アルミ缶に木の実とドングリを入れると、「ナナナナナって音がするよ」
- 牛乳パックに葉っぱと少しの砂を入れると、「サラガラ音がする」
- 木の粉を入れると「ジャラジャラしてきた」
<聞こえてくる音を感覚的に捉える>
- ヤクルト容器を組み合わせて、もみじの葉と赤い実を入れると「やさしい音がする」
- 砂場の砂を入れると「きれいな音がする」
- 葉っぱをちぎって入れると「小さい音がする」
- 「バナナは木じゃなくて、葉っぱの仲間っていうこと」
<聞こえてくる音からイメージしたものを別のものに例えて表現する>
- スチール缶にドングリを2個だけ入れて振りながら「目覚まし時計の音がする」
- プリンカップにドングリを入れて速く振りながら「鈴のようにシャンシャンって音がする。やさしくすると、音がきれいになるよ。でもね、横にして回すと太鼓の音に聞こえるよ」
- 空き缶に落ち葉とドングリと木の実を入れて「トンカチの音がする」
- 牛乳パックに砂を入れてそうっと揺らすと「海の音がする。でも早く振ると違う音がするね」
- ペットボトルにさら粉を入れると「せんべいがカリカリする音みたい」
<音の違いに気付き、比べてみる>
- 「入れ物が紙とプラじゃったら、何か音が違う」「振るのと叩くのとでは音が違うよ」
- 友達と同じように牛乳パックに石を入れて、二人で音を聞き比べながら、「何か音が違うねえ。ぼくのはさら粉が入っとるけえかねえ」
- ペットボトルに石やさら粉を入れて振りながら「コロンシャカコロンシャカって音がするよ」同じように作った友達が「僕のはね、シャランシャカって音がするよ」
- アルミ缶の中にドングリを入れ、外にタフロープで飾りを作って振りながら、「タフロープがカシュカシュ言って、ドングリがカコカコと音がする」
- スチール缶に木の実とドングリを入れながら「木の実とドングリを入れるとカラカラ、ドングリを半分入れるとコンコンチャリン、ドングリをいっぱい入れるとチャリコって音がするよ」
<叩いて音の違いに気付き、比べてみる>
- 拾った枝、竹、長さの違う枝、新聞紙を丸めた棒など、いろいろな物で叩く。
- 地面、木、石、ダンボール、箱などいろいろな物を叩く。
事例3 エルマーの冒険の物語に合う音を作る
<家でも音を見つける>
- 紙コップにビーズを入れて「ビーズでも音がするよ」・二枚貝の貝殻を合わせて・紙皿を半分に折った先にペットボトルのふた(中にビーズやドングリを入れカシャカシャ音がする)を付けて・ノートをパラパラめくり「ノートの端っこでも音がする。竜が飛んでいくような音が聞こえる」
<小学校の楽器作りの授業に参加する>
- 小学生が〔・アルミホイルを巻いた木の枝を割り箸で擦っている・マラカスの中身に厚紙を切って入れている・アルミ缶を5つつなげて音を出している〕などの姿に刺激を受けて、園で工夫して作る。
サイがブラシで角を磨く音
ペットボトルに木の枝と紙を入れて作る。
ライオンがクチャクチャのたてがみを櫛でとかす音
一度シワクチャにしたアルミホイルを紙の筒に巻き付け、ダンボールに擦りつける。
ネズミが歩く音
半分に折った紙皿の先の2箇所に丸い小さな木を付け、耳の側でカスタネットのようにして音を出す。
考察
楽器を作って音を出したり演奏したりして、表現する喜びをしっかりと味わえるようになる過程において、発見する喜びを感じ、試したり工夫したりしようとする意欲や態度を育んでいることがわかった。