6 おいしいお米ができますように! 〜地域・保護者との連携〜

すぎの子幼稚園・おおぞら保育園(群馬県桐生市)
[5歳児]

 毎年恒例の田植えや稲刈りの実体験は、地域や保護者の方の協力があって、はじめて本物に触れる体験ができると認識している。また、家庭・地域との連携によって、子どもたちの活動意欲につながる実践が行えると感じている。

事例1 田植え

 籾から育てた苗を持って各学年田植えを行う。地域の農業後継者の方々の協力・支援を受けて、手作業で田植えを実際に経験する中で、現在の機械を使用した田植えも見せていただき、昔と今の違いについて知る。

[5歳児の田植え]

保育者「みんなが籾蒔きから育てた苗をこれから、一本一本大切に植えましょう!」
A 児「おいしいお米ができますように!」
B 児「お米、いくつできるのかな?」
保育者「みんなで観察してみよう!」
C 児「何粒できるのかなぁ?」
保育者「楽しみだね!」

 自分たちが籾から育てた苗なので、新たな期待を膨らませながら、大切に植えることができた。また、保育者が事前に掲示したお米の成長記録の表の中に、米の粒がいくつあるかを数えた資料もあったことから、自分たちの米の数や成長にも関心がもてた。田植えをした後も、いろいろな条件での苗の生長の観察を行う。

[2歳児の田植え]

A 児「わーい!」
B 児「べたべたしている!」
C 児「これ、おこめ?」
保育者「みんなが食べるご飯になるんだよ」
A 児「ごはんになるの?」
保育者「じゃあ、みんなで植えてみよう!」

<園庭の畑の一部を柔らかくして水を入れた田んぼ>
土の感触を充分に楽しむ中で、田植えを身近な場所で体験し、親しみをもってかかわることができるように促した。しかし、苗が自分たちの食につながる米へと変化することには、まだ、結びつかない様子である。

事例2 苗の観察

<保護者との田植え>

わぁー!あったかい!!泥パックみたい!子どもは、よく転ばないね
[クラス前のテラスにて苗の観察]

A 児:「あっ!苗が枯れている。なんでだろう?」
B 児:「水をやらなかったからだよ」
C 児:「場所が悪いんだよ」
E 児:「土も少ないからじゃない」
保育者:「どうしてここではダメなの?」
C 児:「だって、太陽があたらないもん」

 保育者の方で枯れた苗を把握した上で、子どもたちが気付くことを願い、放置しておく。パックの中で苗を育てたことにより、苗の生長には、水と太陽と土が必要と子どもたちのかけ合いの中から発見がうかがえた。

[田んぼと園庭の苗を比べて]

A 児:「田んぼの苗は大きくなっているのに、どうしてここのは、こんなに小さいの」
B 児:「小さい子が植えたからだよ」
保育者:「どうして、小さい子が植えると小さいの?」
B 児:「???」
A 児:「水がたらないんだよ」
C 児:「土が悪いんじゃない。ここ田んぼと違うもん」

 園の畑の一部に作られた田んぼ(2歳児が 植えた)と自分たちが直接関わった田んぼ(3.4.5歳児が植えた)の苗の生長の違いに気付いた会話の中から、子どもたちの実体験から得た学習を読み取ることができる。
 水や土の状態に目を向け比較していること も分かる。

事例3 鎌での稲刈り

 5歳児は稲刈りに向けて、作物の畑の草取りや動物の餌取りを“鎌”を用いて、4月当初より練習してきた。稲刈りの日には、5歳児一人ひとりが鎌を持ち、一株ずつ稲を刈ることができた。
 また、地域の農業後継者の方々の協力で、コンバインを用いての稲刈り作業を見学することにより、昔の人の農作業の大変さを実感することができた。沢山、収穫できたお米を見て、3月の餅つきに子どもたち皆、期待が膨らんだようだった。また、稲を刈る中で見つけたカマキリの卵がどうしてここにあるのかを、子どもたちなりに考え、答えを導き出そうとする姿が見られた。また、水のある時と水のない時の田んぼの中の生き物の生息の違いにも気付いた。

[田んぼにて稲刈り]

A 児:「お米がいっぱいなってる!」
B 児:「あっ!カマキリの卵が稲についてるよ」
C 児:「かわいそうだから、別にしておこう!」
B 児:「そうだね!生きているからね!きっと鳥に見つからないように隠れていたんだよ!」
A 児:「B君もC君もとってもいい目をしているね。きっとかわいいカマキリの赤ちゃんが生まれてきてくれるよ」

みんな、上手に鎌が使えるのね!?

農業後継者の方の声より
21世紀の主役を担う子どもたちに、「安全な食と豊かな自然環境」を引き継ぐため、体験学習を通して学んでもらいたい。

事例4 餅つき

A 児:「あっ!お米が光っている!」
B 児:「はやく食べたいね」
保育者:「みんなが籾から作ったお米だね!」
B 児:「うん。きっとおいしいね!」
A 児:「みんなでおもちが食べられるってすごい!」
C 児:「だって俺たちが籾から作ったからだよ」

[ふかしたてのお米を食べる]

E 児:「うちのご飯と同じ!」

 職員と保護者役員の「親父の会」の方の協力を得て、もちつき大会を行う。<3月>
 一年かけて米の生長を見守る中で、子どもたち自身も実物に触れ、自分の手で作ったものを食すことができ、お米の“おいしさ”“ありがたさ”を一人ひとりが実感することになったのではないか。
 先人たちは、日本の風土に密着した稲作を作り出し、そして、その米を色々な方法に工夫して食する食文化を作り上げた。その先人たちの創意工夫に敬嘆する子どもたちの声も聞かれた。


ポイント

 籾から苗を育てて田植え、稲刈り、お餅にするという「お米の一生にかかわる」豊かな体験が伝わってきます。お米への興味から「観察」「発見」の喜びを経験し、2歳児の育てた苗との違いからいろいろな考えを出し合い、みんなで育てているお米という意識が高まっています。本物の鎌を使うことで真剣に稲と向き合う体験、田んぼという環境での生き物との出会いなど、様々な経験が重ねられています。そして、「地域や保護者の方の知恵や技、援助のおかげで、稲を育て収穫し、食するところまで体験できる」という、感謝や温かく見守られている喜びを実感することにも結びついています。