3章「科学する心を育てる」工夫(環境)

1.森を元気にしよう〜炭作り〜(平成17〜18年度の活動)
会津若葉幼稚園 (福島県会津若松市)
[5歳児]

 「森の木を守りたい」「森を育てたい」という思いで、様々な取り組みをしている。
 3歳の時には山で拾ったドングリで苗を育て、5歳になったら、その苗を森に植える活動をしている。「森の案内人」という地域の方にいろいろ教えていただきながら一緒に活動をし、森の木を育てるために「間伐」をすることを知り、木を切ったり、切った木を使って製作活動をしたりした。園で育てたカブトムシを森に放したり、しいたけを育てたりしている。

森の木を強くするには… <身近な環境に興味をもちかかわる>(平成17年6月)

雪で折れた木が多いことに気付いたことをきっかけに、森を元気にすることについて話し合う。

  • まだ赤ちゃんで、これから太くなるんじゃない。
  • 水がないのかな?
  • 栄養が足りないのかな?
  • 栄養をあげれば太くて丈夫になるかもしれない。
  • 去年の年長さんは、本当に木を切っていた。
  • 切った木を見せてくれた。
  • 切ったところで何歳か分かるんだよね。
  • 木を切るって、森のために大切なんだ!
  • 木を切って捨てちゃうの?
  • 森のベンチも作ったんだよ。
  • みんなで切ったらどうする?
「森を守りたい」
「森の木を強くしたい」
「森の木を強くするために間伐をしなくてはいけない」
「切った木を大切に使いたい」

炭との出会い <地域の施設に興味をもつ>(平成17年9月)

(国土交通省 阿賀川河川事務所の木炭庵ひろば)

若葉の森に行く途中で、大きな電光掲示板や三角屋根の煙突から煙の出ている小屋を見つけ、興味をもつ。
掲示板から、三角屋根の建物が炭をつくり、川をきれいにしている「木炭庵ひろば」だと分かり、見学に行く。
「木の中の水が煙になってでる」「木より炭が軽かったね」「小さな穴がゴミをとるから水がきれいになるんだ」「炭は家の冷蔵庫の中で臭いをとっている」など気付く。

炭を作ってみよう <幼稚園の炭作りの環境にかかわる>(平成17年10月)

「大きな窯があった」
「今日も炭作っているのかな」「若葉の森で切った木を、炭にしたらいいんじゃない」
「水もきれいにできる」

森の案内人の方に教えていただき、お菓子のスチール缶を使って幼稚園で炭作りをする。

  • 煙が出てきた!木炭庵ひろばと同じだ!
  • できたら小さくなった。木の中の水が煙になったからだよ!
  • まつぼっくりが炭になるの!?
  • ドングリは炭になる?葉っぱは?

炭を使ってみよう <幼稚園のこと(環境)を感じたり考えたりする>(平成17年10月)

  • 触ると黒くなる。絵が描けるかな? → 炭で絵が描けるよ!炭で絵を描こう!
  • 水がきれいになるの? → 水槽に入れてみよう! → ザリガニの水槽に入れよう!
  • 臭いをとるの?  → くさい所に置こう! → みんなのトイレ・靴箱に置こう!
  • 畑の土が炭でいい土になるって教えてもらった → 今度(来年)の年長さんに教えてあげよう!

<3・4歳児>5歳児の炭の活動が伝わる。炭をトイレに置いてもらったことも分かり、お礼を言う。

いろいろな炭作りに挑戦しよう <幼稚園で炭作りができる環境に進んでかかわる>

 平成17年度は、幼稚園でスチール缶を使った炭作りができる環境を確保したので、様々な物を炭にする挑戦を楽しむことができた。また、子どもたちの興奮した話し振りから、保護者も興味をもって協力してくださるようになり、親子で相談して選んできたり、保護者の方自ら「こんなのどうですか?」と持ってきてくれたりする。

りんご、みかん、バナナ、パイナップル、ビー玉、クリップ、紐、リボン、靴下、チョコレート、飴、おせんべい、ジュースの缶、つまようじ、石鹸、枝、ろうそく、ティッシュ、積木、木のおもちゃなどが集まる。
1つひとつ結果を予想し、炭焼きをする。
結果の共通点に気付き始める子どもがいる。
 果物は全部炭になった。
 布はならないんだね。
 缶もならなかった。
 溶けてなくなっちゃったのもあるよ。
 枝でもおもちゃでも、木は炭になったね。

子どもたちの気付いたこと

  • 土から出たり木からできたりしているものは炭になるんだよ。
  • 中に水(水分)がないと炭にならないんじゃない?

家庭での様子(保護者の声)

  • 炭について調べたいと言うので、図書館に行ってきました。易しい本がなかったので残念です。
  • おばあちゃんが炭を入れてご飯を炊いているので、見せてもらってきました。
次年度にも引き継がれる

 平成18年度の年長組の子どもたちは、前年度の5歳児の炭の活動を見聞きし、自分たちのためにトイレや靴箱に炭を置いてくれたことなど分かっているので、「炭」という言葉は浸透し、年長組になると作れるという思いをもっている。

<保育者の意図:子どもたちが昨年の5歳児の炭焼きの活動をどんな風に感じているのか探りながら、炭の性質に気付けるように、生活の中で炭に触れる機会をどんどん取り入れていく>

  • 昨年の年長さんが作った炭を砕いて混ぜて土つくりをする。平成18年4月
  • 昨年の年長さんのやっていたことを思い出し、炭焼きに挑戦する。(4〜7月)
そうだ、こうやってやってたね。
缶が焼けて黒くなってきた。
缶の間から何か出てきた。煙だよ!
焼けたから出てきたんじゃない?
黒い水が出てきた!
         3、4歳児が見に来る          炭だよ! 炭作ってんの。
炭って、黒くて絵が描けるんだよ!
においが取れるんだよ。
畑の土も栄養が多くなるんだよ!
■できあがった炭を見る
できてる!炭になってる!真っ黒だもん。
石が光ってる。木が割れてる。
鉛筆折れてたのに芯が出てる。
絵描いてみようよ!
木で描けるよ!
石は描けないよ。なんでー?
松ぼっくりでも描けるけど、すぐ割れちゃう。
だって炭の松ぼっくり弱いんだもん。
冷蔵庫に入れると硬くなるんじゃない?
えー、でもそれは氷だから溶けちゃうよ。
■ 炭博士に会いに行く     (7月)
・流木などを炭にするので、川がきれいになり元気になる。→木炭を知る。
■ 木炭を使う
・畑に混ぜる。・水槽をきれいにする。・トイレに置く。
■ 森の中の伐採する木や枯れたり折れて落ちた木などを、若葉の森に作ったもらった炭焼き釜「にじの小屋」で木炭にする。

考察

 2年継続で活動を進め、子どもたちの体験や成長を見守ることで、異年齢の子ども同士のつながりや伝え合いを把握することができた。5歳児の「教えてあげたい」思いや3・4歳児の「憧れ」の思い、5歳児の「園のみんなのために、自分たちのできることやよいと思ったことはしよう」という思いなど、心の育ちを捉えることができた。

● ポ イ ン ト ●
 子どもたちは自然に親しむ経験を通して、「森の大切さ」「木を元気に育てること」「伐採してしまっても大切に使うこと」などの気持ちが育まれています。そのため、様々な疑問や気付きをし、考えたり試したりすることを楽しんだ炭作りの経験でも、「森や木」「自分たちの生活の場」を考えることにつながります。保育者により「子どもにとって身近な大切な環境」「子どもたちが繰り返しかかわれる環境」「自分たちの思いを実現する環境」が確保されていることの大切さが分かります。
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