C−6.「大きなシャボン玉は、ゆっくり、のんびり」
住吉幼稚園 (愛知県刈谷市)
[5歳児]

 前年度、「シャボン玉おじさん」のデモンストレーションを親子で見たことで、親子共に感動し、自分たちも試してみようと、進んでシャボン玉遊びに取り組むことができた。

実践1 「勝手にできた!風で自然にできたよ。見て〜」

6月20日
  • 1. 子どもたちが昨年度の経験から自然にシャボン玉遊びに興味を持ち始めたので、教師は環境の中にシャボン玉の材料を用意した。自分からシャボン玉を試そうと取り組むようになった。「おもいっきり吹くとちっちゃいのがいっぱい生まれてくるよ」得意そうに教師に吹いて見せるA児。イ「わぁーほんと!吹き方、変えたらいっぱい生まれてきたね」とA児に共感し子どもの発見を受け止める。A児は教師の言葉がけで一度にもっといっぱい作りたいという思いになり、周囲を見渡すと思いついたようにストローを数本持ってきてくっつけて吹いてみる。「あれっ?」と声をもらし首をかしげたり、「全部からは難しいな…」とつぶやいたりして試していたが、しばらくすると止めた。
  • 2. A児は次に、材料置き場の中から輪を選んできて遊び出す。「先生、見てて」「くっついた」「大きい!」と自分のシャボン玉について見て欲しいこと、感じたことを伝えてくる。その様子を見ていた周りの子どもたちもやり始める。
  • 3. 教師も一人一人の声に共感しつつ、ロ風の方向へ手を振りかざしてみたり、息を吹きかけたりする姿を見せて遊ぶ。子どもたちはそれをじっと見入るようにしていたかと思うと、同じように真似て手を振りかざしてやろうとする。M児「わぁ、ながーいのができた」T児「見て、連続して出来る」と新たな発見に顔がほころぶ。A児も他の子どもたちの様子を見て手に持っていた輪を同じ方向にかざし、風が通ると“ふ〜わふ〜わ”とシャボン玉が出来て流れていく。A児は目をパチッと大きくし「勝手にできた!風で自然に出来たよ。見て〜」とまたやって見せる。教師も「ホント、風が作ってくれるね」と共感すると、子どもたちはみんな風の通る向きに手を固定し、かざして何度も何度も試して楽しんだ。

考察

 子どもたちは、様々な材料に触れ、実際に体験する中で、「すごいなぁ」「どうしてだろう」という驚きや不思議さを通して、新しい気づきに出会っている。子どもの小さなつぶやきを見逃さずにのように教師が共感することで、もっといっぱい作るにはどうしたらいいかと考え、ストローを何本もくっつけて試す行動へとつながった→1。思うようにならないで、違う物を選んでまた試して→2遊びが続いていったのは、選択できる材料が整えられていたからだと考えられる。子どもが自分で選択して試すことのできる環境の大切さを改めて感じた。子どもの新たな発見に向かうためには、子どもの「見てて」という思いや不思議な体験をした時に「伝えたい」という思いをしっかり受け止め共感することが大切であることが分かった。
  また、のように風の方向に教師の手をかざすという新たな発見→3につながるヒントをさりげなく遊びの中でやって見せ、子どもに揺さぶりをかけることにより、一層の好奇心をもち、繰り返し何度も試すという意欲につながっていくことが分かった。教師は子どもの心にゆさぶりをかけ、教えるのではなく、子ども自身が気づいていけるようなプラスアルファの発問や態度が大切であり、周りの子どもたちの行動にも大きな刺激を与えていることが分かった。

実践2 「大きいシャボン玉はゆっくりのんびり」「どうして浮かぶの?」

6月27日
 シャボン玉遊びも毎日続けられている中、子どもたちは、大きいシャボン玉作りを試すようになってきた。そこで、大きなフラッパーを材料の中に置いておく。大きいシャボン玉が出来ることを予想し、場を広いところに設定し、とんでいく様子がよく見えるようにした。
  • 4.子どもたちはいつもと違う材料を見つけ、S児「わぁ、これは何だ?」と興奮しながら新たな材料に興味を示しとびつく。いつものように“ちょんちょん”と液につけるが風にかざしたとたんパチンと割れてしまう。「う〜ん。おかしいな」と一人ごとをつぶやくが、「これ大きいから長くつけなきゃ」と思い直したようにつけ直す。教師は「そうか…、大きいのは割れやすいんだね」とこたえ、一緒に長めにつける。M児も丁寧につけて割れないようにそっと手をかざす。M児は、「わぁ〜、でぶでぶのができる。見て〜」と目を輝かす。S児も「なが〜い、ぶよぶよ、泳いでるみたい」と感じたことを伝え合っては繰り返し取り組んでいる。出来たシャボン玉は、ゆっくり動いていくので「なんだか大きいシャボン玉さんは、ゆっくりだね」と教師が声をかけると周りの子どもたちも「ほんと、のんびりしてるよね」とみんなシャボン玉のゆっくりした動きを不思議そうにながめている。「どうしてゆっくり動くのかねぇ…」と教師自身も子どもたちの不思議な思いを受け止めて声をかけていくと、T児が突然「わかった!重いからじゃない?」と気づいたように言う。M児も「いっぱい液つけたからじゃない?」と言う。子どもたちなりの考えを出し合っている様子を見守りながら「なるほど、重いからゆっくりのんびり流れていくのかね」と教師は共感した。
  • 5.しかしT児は納得できないような口調で「だけどさぁ、なあんで液は空に浮かばんのにシャボン玉になると浮かぶんかなぁ」とつぶやいた。M児はゆっくり“くる〜”と自分が一回転して「つながってるよ〜。先生見て〜」と喜んだり、T児は上から下に自分がしゃがんで縦長のシャボン玉を作ったりと手や体の動かし方や動かすスピードを工夫して何度も何度も繰り返し楽しみ、遊びが続いていった。

考察

 子どもの興味に合う大きいフラッパーを用意したことで、子どもたちは新たな発見をし、繰り返し試す中で今までのシャボン玉の動きとの違いに気づいていった→4。子どもたちの「なぜ」「どうしてだろう」という思いを受け止め「どうしてゆっくり動くのかねぇ…」と教師自身も一緒に考えてみようとすることで、不思議だなと思う心にゆさぶりがかかり、子どもなりに原因の追究をする姿勢が芽生え感じたことや考えたことを言葉に出してみるという姿に変化していった→5形や作り方のみならず、子どもたちは液のつけ方のところでも考えたり工夫したりし、慎重に手をふりかざしたりしている。うまくできるにはどうしたらいいか、いろいろと考えて試行錯誤しながら見つけ出していった。子どもが不思議なことに出会った時、答えを急ぐことよりもこの不思議な出来事に対して「どうしてかな」と子どもたち自身で考えを出し合っていけるような教師の援助が科学する心の芽につながっていく。

実践3 「うわ〜」「すご〜い」「ぼくもやりたーい」

7月13日
 シャボン玉遊びは少しでも大きく作る方へ興味が移り、材料についてもハンガーやフラッパーなどを使い、繰り返し試しながら遊びが続いている。
  そこで、シャボン玉を誕生会に取り入れ、誕生児の親子が紐つき棒で特大シャボン玉に挑戦するという催しを取り入れた。誕生児の親子が二人ペアになって紐つき棒で膜を作り慎重に引き上げる。
  • 6.その様子を子どもたちは、全員息をのんで、真剣な目でのぞき込み、上にむくむく〜と膨れ上がったり、ぼよんぼよんと重そうな大きいのができたりすると歓声が上がる。「大っきい」「ぼよんぼよん踊ってるみたい」「あかちゃんしゃぼん玉もおまけでできた」と口々に感じたことを発する子どももいれば「ひも、引っ張った方がいいよ」「伸ばした方が大きいのができるよ」と気づいたこと考えたことを言ったりする子どももいた。

考察

 子どもたちの興味を生かして教師による教材の提示をし、新たな感動につながる体験となるようにゆさぶりを試みてみた。新たな材料、大きなシャボン玉を実際に見ることによって、「わぁ」「すごい」「おもしろいなぁ」など驚き・感動・想像・発見へとつながり「やってみたい」という好奇心・意欲・興味・感心へとつながった→6。子どもたちにとって「見る」ということは、自分で試してみたいという欲求へと直接つながり、次への意欲への大切なステップであることが分かった。
 その後、幼児同士で大きなシャボン玉作りに挑戦し何度も試したが、思うようなシャボン玉はできず、難しさを知った。そのため、新たな教材を見つけ、大きなシャボン玉作りから、たくさんのシャボン玉を作る「シャボン玉の国」の遊びになっていった。
 さらに、3歳児へシャボン水をプレゼントするという活動に展開していった。

● ポ イ ン ト ●
 この事例では、シャボン玉のでき方や大きさ、数や動きなど気付いたことを豊かな言葉で表して伝え合い、保育者や周囲の友達が受け止めたり共感したりするやりとりがあることで、「どのようにシャボン玉ができるか」注目して楽しむ経験を重ねることができました。そして、昨年の共通体験から大きなシャボン玉作りに挑戦する遊びに展開したことで、「なぜ、シャボン液は浮かばないのに、シャボン玉は浮かぶのか?」という疑問をもち、考え合ったり確かめたりする姿につながりました。シャボン液の様子、シャボン玉のでき方や動きなどの違いが、様々な表現になって伝わり、「大きい」「きれい」ということだけでなくシャボン玉の量感や膜がつながってできる様子など物の本質を感じて楽しみ、繰り返し試す姿が引き出されました。こうして、気付いたことや考えを、豊かな表現で伝え合い、試したり「確かにそうだ」と納得したりする姿から、「科学する心」の育ちが分かります。
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