B−1.「白いカルピスどうやったらできるのかな?」
重原幼稚園 (愛知県刈谷市)
[4歳児]

幼児の姿と教師の願い

 教師が用意しておいた野菜や草花に興味を示して、「何作ろうかな?」と考えるM児の姿があった。教師はM児と同じように作ったり、イメージに合う材料を一緒に探したりごちそう作りの楽しい雰囲気を一緒に感じたりしていくことで、M児がいろいろな材料を使って自分なりに考えたり試したりしながら好奇心や探究心を膨らませて遊んで欲しいと思った。

事例1「トントントンって音がするね」(6月27日)

教師が野菜や、花が置いてあるところに行き、「先生ごちそう作ろうかな」と言うと、B児「私も作る」
C児:
「私も」と言い、教師と一緒に取りかかった。M児は教師の側でじーと教師がやるのを見ていた。
教師:
「にんじん小さく切ってみよう。今日は何のごちそうにしようかな」と言いながらにんじんを切る。
B児:
「野菜炒めにしたら」と言う。
C児:
「水入れてスープにしようよ」と言い作る。
教師:
「野菜炒めとスープか、いいね」と言いながら野菜を切っていると
M児:
「先生。お野菜切るとトントントンって音がするね」と言う。
※1教師:
「本当ね。トントントンっていい音がするね」
M児:
「昨日お母さんがご飯作る時もトントントンっていってたよ」と言い、にんじんを切ってみる。
M児:
「本当に音するね」と何個も切ってみる。
※2教師:
「本当だね。トントントンっておいしそうな音だね。昨日、先生のお母さんがご飯作るときにトントンって音聞いたらおなかがグーってなったんだよ。なんだかMちゃんのトントンって音聞いてたらまたおなかがグーってなりそうになっちゃった」と言う。
M児:
「先生のお家昨日何のご飯だった?」と聞く。
教師:
「カレーだったよ」と言うと
M児:
「じゃあ私がカレーライスたくさん作ってあげるね」と言う。
教師:
「うれしいな」と言うと
※3M児:
「お野菜たくさんいれなくっちゃ」と置いてある黄色や赤の花や、葉っぱなどを「トントントン」と言いながら、楽しそうに切る。切っていると何か思い出したように「あっそうだ」と言う。
教師:
「どうしたの?」と聞くと
M児:
「お母さんね。カレー作る時、にんじんスリスリしてたよ」と言う。
教師:
「へー。にんじんスリスリしてたの。おいしそうだね」と言うと
M児:
「先生。スリスリするのある?包丁で切るよりもっと小さくなるやつ」と言う。
教師:
「こんなのかな?」と言って用具置き場へ行き、すりばちを出してみる。
M児:
「ちがうよ。丸い穴がいっぱいあいてるやつ」
※4教師:
「Mちゃんお母さんがお料理してるところよく見てたんだね。これかな?」とおろし金を出してみる。
M児:
「そうそう。これ!」と言っておろし金をもっていく。そして、にんじんをすり混ぜ合わせる。
教師:
「それいい考えだね。とってもおいしそう」と言うと
M児:
「うんおいしいよ。できた。先生たべていいよ」とお皿に盛り教師の前に出す。
教師:
「うん。とってもおいしい。お野菜すごく細かく切ったね。いろいろ入っててすごくおいしいよ」と言うと
M児:
「にんじんがかくし味だよ」ととても満足気な表情だった。

考察

  • トントンと音がするということに気付いたM児はそこから自分でもやってみよう、おもしろそうと遊び始めるきっかけになったのだと思う。そこで、※1、2のようにM児の気付きに教師も共感していったことで、M児のごちそう作りのイメージが広がり、いろいろな材料を選び、※3のように作る姿が見られた。教師が幼児の思いに共感したり、感じたことを言葉に出して言ったり、一緒になって楽しい雰囲気を感じることで、幼児が自分の思いを出したり、考えたりすることにつながるのではないかと思った。
  • 教師が※4のように一緒になって用具を探していくことで、すりおろすにはどうしたらいいかな?どんな道具を使おうかなと、好奇心を沸かせていくと思った。幼児のイメージによりそって一緒に用具を探していくことは、大切だなと思った。

事例2「白いカルピスどうやったらできるのかな?」(6月28日)

M児:
「先生。昨日の続きやろう」と、登園するとすぐに教師を誘う。B児、C児も「私もやる」と一緒に行く。M児、B児、C児、教師は、「いいよ。今日は何作ろうかな」「昨日ね。家、おうどんだったよ」「先生の家はね、野菜の煮物とお魚だったな」「私の家野菜炒めがでたよ。ピーマン残しちゃった」などと会話をしながら遊び場に向かう。
教師:
「今日は何作ろうかな」と昨日から設定したおろし器を出し、にんじんをすりおろす。
M児:
「私もそれやろう」と教師と一緒にやる。
M児:
「なんか。オレンジジュースみたい。きゅうりでもやってみよう」と作ってみる。
B児:
「Mちゃんすごいね。いっぱいできたね」
C児:
「Mちゃんジュース作る係りってことは?」と言うと
M児:
「いいよ。私ジュース係りね」
M児:
「ぶどうジュースとあとカルピス作ろう」
教師:
「おいしそうだね。飲んでみたいな」と言うと
M児:
「いいよ。作ってあげる」と紫の花をすりつぶし、「ぶどうジュースです」と嬉しそうにできたものをテーブルに運ぶ。次に花の白い部分だけをとり、すってみる。しかし、白い色は出ず「先生。カルピスみたいな白い色出ないよ」と言う。
※1教師:
「白い色出すにはどうしたらいいんだろう」と周りの子どもたちにも聞いてみる。
B児:
「白い砂入れてみたら」
C児:
「そうだよ。白い砂だけとって入れたらいいじゃん」
教師:
「それいい考えだね。白い砂入れてみようか」と言うと
M児:
「やってみる」とさっそく白い砂をかき集め水を入れてみる。「先生。白くならないよ」
B児:
「もっといっぱい混ぜたらいいんじゃない?」と言う。
M児:
「分かった」と言って、泡だて器でかきまぜる。「全然ならないよ。」と不満そう。
※2教師:
「もっとたくさん入れてみるのはどう?」と言うと、
M児:
「いっぱい集めよう。みんなも手伝って」とB児やC児と一緒に集めもう一度混ぜてみる。
教師:
「どうなった?」
M児:
「やっぱりだめ。白い色はできないのかな?」と言う。
※3教師:
「困ったね。白い色出したいよね。もっといっぱいかきまぜてみようか。こうやってまざるのはどう?」と言ってペットボトルに白い砂と水を入れて振ってみせる。
M児:
「私もやってみる」と何度も振ってみる。振り終わり見てみると、
C児:
「泡がたくさんでてきたね」と言う。
※4M児:
「あっ石けんでやってみるのは?だって洗濯ごっこやってた時、水白くなってたもん」と言う。
※5教師:
「石けんか。それいいね」と洗濯ごっこに使っていた粉石けんを出してみた。
M児:
「うん。それいいよ」とカップに石けんを移し水をいれてみる。B児やC児もその様子を一緒にみる。しかし、水をそそいだだけでは白くならず
B児:
「なんだ。だめじゃん」と言う。
※6教師:
「混ぜてみたらどうなるかな」
M児:
「混ぜてみる」と言ってまぜると泡が立ちそれが消えると水が白くなった。
M児:
「先生。白くなったよ。カルピスできた」と喜ぶ姿がみられた。

考察

  • M児がカルピスを作りたいと言って悩む姿があった。幼児が困ったり、こだわっていることを実現させようと考えていたりするときには、教師はすぐに答えを出すのではなく、※1、2、6のように問いかけることで、どうしたらいいのかを考えたり、試したりする姿につながるのではと思った。また、※3のようにできないという気持ちに共感し教師も一緒になって考えていくことで、子どもたちからいろいろな考えが出てこどもたちが納得すればその方法をやってみるのではないかと思った。
  • いろいろな方法を一緒になって考えていくことで、幼児は、そういえばこんなことがあったと※4のように今まで経験してきたことを思い出す姿があった。そして、教師が幼児の考えたことを※5のように認め、材料をすぐに出し試させることで、やってみよう、という意欲につながっていくのだと思った。

● ポ イ ン ト ●
 料理をするという模倣の遊びの中で、物や音からイメージを膨らませて楽しんでいる子どもの姿は、使う用具や素材が実際に知っている「本物らしい物」に変わることで、意欲的に物にかかわる姿に変容しています。この遊びの「創造する面白さ」が翌日にも継続され、できた物を見立てることで、新たな「ジュース作り」を発想し、遊びを展開しました。「オレンジジュースはできたけど、カルピスみたいな白い色はでない?」という疑問をきっかけに、一人ひとり考えを出しては試し、次第にできそうでできないことが共通の目的になり、協力して考え合い、試行錯誤する姿になりました。「石鹸でやったら、白くなった」という発見をして試す場面を見逃さず、諦めそうなところで保育者が「混ぜてみる」という助言をしたことで、更なる試行へとつながり、子どもたちは「白いカルピスを作る」という考えを実現することができ、創造性(科学する心)が育ちました。
Copyright Sony Education Foundation