
広島大学附属三原幼稚園 実践提案研究会(第1回) 開催レポート
2009年9月6日(日)、2008年度の優良プロジェクト園である広島大学附属三原幼稚園にて、実践提案研究会を開催。今回は、広島県内幼稚園・保育園連絡協議会セミナーとの共催で実施しました。
研究テーマ
「科学する心を育てる『面白そう やってみよう!』―幼小中一貫教育を生かして―」
研究報告
4歳児の事例 ―きれいな色の光が見えるよ〜影遊びを通して―
子どもたちが見つけた色付きの影を保育者が写真に撮り、クイズ形式にしてみんなで遊ぶことをきっかけにしながら、色水遊びやステンドカラーシールでの遊び、クリスマスツリーの製作遊びなどをした。その中で子どもたちが様々な光と影の美しさに感動したり発見したりする姿が見られた。この実践を通して、「子どもが自分の思いを伝えたいという気持ちをまず保育者が丁寧に受けとめること」や「保育者が子ども自身の感動や発見に共感すること」の大切さがわかった。
<参考資料>ウェブマガジン「見えた!科学する心」vol.111
5歳児の事例 ―身近な素材を使って音を作って遊ぼう―
お店屋さんごっこの中で楽器作りをしたことをきっかけに、いろいろな素材を使って音を作って遊ぶ姿が見られ始めた。次第に多様な素材や多様な扱い方をしながらの楽器遊び、作った楽器で友だちと一緒に演奏会ごっこ、1年生の楽器作りの授業参観、大好きな「エルマーのぼうけん」の物語のイメージに合わせた音作りなど、様々な遊びや活動に展開していった。この実践を通して、「一人ひとりの発見や表現に応じた保育者のかかわり」や「友だち同士の刺激や認め合いを支える保育者の役割」の大切さがわかった。
<参考資料>実践事例集vol.6
小学校との連携
子どもの実態や活動内容について小学校教諭と話し合いを積み重ねる中で、例えば「幼稚園は個人差が大きいので大まかなねらいを設定しているということはよく分かるが、『素材から出る音の特徴に気付く』というのは具体的にどのような子どもの姿なのだろうか?」という声が出てきた。保育者が予測しないあるがままの子どもたちの発見や表現を丁寧に受け止めることの大切さと共に、子どもたちを見取る視点の明確化の大切さを学び合うなど、具体的な内容を通して幼小の連携を図っている。
講演「子どもの不思議心は先生の不思議心から」
大阪教育大学名誉教授
元大阪教育大学附属幼稚園長
有賀正裕 先生
- 【科学リテラシーの涵養】
- 現代の子どもたちは理科嫌い、理科離れと言われ、「実体験の不足」 「興味が持続しにくい」「想像力の欠如」といった実態が挙げられる。「子どもたちは“何故?”“どうして?”“不思議だな?”といったように日々の中で疑問に感じることがなく、また、疑問に対して調べてみようとする意欲も湧かない」と言われている。これらの原因として次のことが挙げられる。
- 科学技術の発展により、生まれた時から便利な生活であること
- 欲しい情報が簡単に手に入ること
- 身の周りがブラックボックス化し、原理や理屈が見えにくくなってきていること
- 面白いことが世間に溢れていて、興味が薄れていること
- 自己関心のみが強くなっていること
- 不思議の「心」の閾値が高くなり、大仕掛けなことをしないと感動、驚きが沸きにくいこと
- 科学は、酸性雨、シックハウス、薬害など悪いイメージがあるのではないかということ
理科嫌い、理科離れは子どもたちだけでなく大人にも広がり、無関心、無感動になっている。子どもの頃から無理強いすることなく、少しでも科学に興味をもたせることは必要。そうすることで、科学リテラシーの涵養につながる。
- 幼児期の科学教育
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子どもは自然の事物や現象を自分なりに捉える力をもっている。しかし、幼児は言葉を巧みに操ることはできず、概念を伝えるのは非常に難しい。科学は最終的に概念化されていくものであり、概念化されないと客観的に捉えることができないため、幼児期からの科学教育は難しいと言われている。
また、幼稚園で科学教育が行われても家庭での生活にどのように反映されているのか。実際には、科学教育が幼稚園と家庭で共鳴されていく形になっていない。科学教育よりもむしろ、『かがく遊び』で教育と生活を結んでいくことができないだろうか。それが、子どもの不思議心の芽生えにつながり、最終的には科学の概念につながっていくのではないだろうか。
- 不思議心・科学する心が育つために −指導者に望むこと−
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- 指導者自身が“不思議だな”“何故”“どうして”を楽しめる人でなくてはならない。指導者は、子どもの“ふしぎだな”“なぜ”“どうして”について、子どもと一緒に調べたり体験したいと思ったりする心が大切。(サイエンスそのものだけではない)
- 「かがく遊び」は平素の生活から見出し、身近なものを利用することが原則。できるだけ簡単なことがよい。単純なものほど、子どもにはわかりやすい。
- 子どもの常識をくつがえし、納得させることができるか。
- できるだけ遊びに広がりをもたせること。単発では子どもたちは物足りない。
- 効果を期待しないこと。大人は子どもにすぐに「何で?」と聞く。子どもは面白いと思っているのに何故「何で?」と聞かれなければならないのか。性急な答えや無理な感想を求めないこと。
- 子どもが達成感や満足感を得られているか。子どもがただ単に見て満足するだけでなく、成果、感動、不思議さを人に伝えることができるためにも、大人が聞き上手になることが大切。
- 「かがく遊び」を通して保護者を取り込み、科学教育と家庭を結びつけること。
- 幼児に正確な知識を与えすぎる必要はないが、指導者自身が、正確な知識をもつことは大事。
- 驚きの閾値を高くしすぎないこと。子どもの前で大々的なことをし続けると、常に大々的なことをしないと子どもが感動しなくなる。
- 自然に驚き、自然に親しむよい環境が大切。よい環境とは“豊かな風景をもつ豊かな空間”である。豊かな風景とは風のある景色であり、目、耳、鼻、肌、舌、心で感じ取れる空間、歴史が感じ取れる空間、光と共に闇が感じ取れ、音があると共に静寂さが感じ取れる空間のことである。
- 美しさを感じる経験をして欲しい。美しさを感じることは、人を成長させるうえで大切。
- 常に子どもたちの「自然・科学する心」を育てていこうとする気持ちをもち続けること。
- おわりに
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「かがく遊び」はゆっくり、大らかな気持ちで取り組んで欲しい。先生たちは、科学だけでなくても文化でもいいし、歴史でもいいし、何か一つ興味をもたれてその興味を基に子どもたちの保育にあたっていただければ十分ではないかと思う。
ワークショップ
講演の中にワークショップも取り込まれ、実際に教材に触れて体験をすることで、参加者の不思議心が刺激された。
- 例:
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- 3D立体メガネや紙コップ、セロファンを利用した万華鏡作り
- 共振する振り子の遊び
- 紙コップやストローを利用して、空気の流れによってものの動き方が変わる遊び
- など
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