公益財団法人 ソニー教育財団
科学する心を育てる ソニー幼児教育支援プログラム

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出雲市立乙立幼稚園 実践提案研究会レポート

 2007年9月28日、前年度の優良プロジェクト園である出雲市立乙立幼稚園で、「科学する心を育む遊びの創造」〜自然に浸り、自然を感じ、よろこんで遊びを創り上げる活動の工夫〜 を研究主題として、実践提案研究会が開催されました。公開保育では3歳児と小学校1・2年生の合同活動「もりもりレストランを開こう」、4・5歳児の混合クラスの活動「乗り物で遊ぼう」が展開されました。その後研究発表、研究協議、指導講評と研究会が深まり、更に、出雲科学館館長 曽我部 國久先生からは、幼児期の「科学する心を育てる」に迫るご講演がありました。

公開保育

3歳児・小学校1・2年生合同活動 「もりもりレストランを開こう」

 小学校と幼稚園が同じ建物の中に生活している併設園の良さを生かし、3歳児と小学生が、6月に一緒に作った笹巻きを使って、「もりもりレストラン」を開き、お客様をもてなした。お客様に挨拶したり、質問に答えたり笹巻きを運んだり小学生に手伝ってもらったりしながら、いろいろな人とのかかわりを楽しんだ。

4・5歳児混合クラス 「乗り物で遊ぼう」

 自分の乗り物を工夫して作ったり、乙立地区にある山やバス停、ガソリンスタンドなど、みんなで作った遊び場で車を動かしたりして遊んだ。「友達と競争しよう」、「風を送って走らせよう」「コースを走らせてゴールさせよう」など、自分のめあてに向かって取り組んだり繰り返し遊んだりする姿が見られた。また、その中で、友達と手伝い合ったり役割分担しながら遊ぶ姿も見られた。

研究発表

  1. 「科学する心」の捉え方(研究のねらい)
    1. 自然に親しみ、自然のふしぎさやおもしろさに気づき楽しむ心
    2. 五感をはたらかせて自然を感じ取る力・心
    3. 自分の願いをもって考え工夫しようとする心
  2. 研究仮説
    1. 身近な自然の事物・事象を生かし、出会わせ方・活動の場や機会の設定を工夫すれば、子ども達は繰り返し遊び、「自然に親しみ、自然のふしぎさやおもしろさに気づき楽しむ心」や「五感をはたらかせて自然を感じ取る力・心」が育つであろう。
    2. 子どもの遊びを、どのように発展させることができるかを見通して支援・働きかけを行えば、自分の願いをもって考え工夫しようとする心が育つであろう。
    3. 小学校の生活科と連携した合同活動や、身近な人々との関わり合いを大切にした活動を展開すれば、子ども達の遊びの広がりや深まりが期待できるであろう。
  3. 研究内容
    1. 素材の選択
    2. 出会わせ方
    3. 場や機会の設定
    4. 見通しをもった支援
    5. 「異同・変化」の気づきの注視
    6. 地域・家庭・小学校との連携
  4. 今年度の全体構想
    1. 日頃から身近な自然に眼を向け、自然の不思議やおもしろさに気づき、遊びを作っていこうとする意識をもたせるための「もりもり科学館を作ろう」の活動。
    2. 食に関する活動を、「遊びを創り出す活動」に高めるための、「もりもりレストランを開こう」の活動。
    3. 1・2年生生活科との合同活動を中心とした乙立小学校(併設)との連携。

研究協議

自評

坂本(3歳児担任)

  • 1学期から地域の自然とふれあう活動に取り組んできた。その活動の中に1・2年生との合同活動を位置づけて実施し、今回、第1回目の「もりもりレストラン」という合同活動を計画した。「もりもりレストラン」に向かう活動の中で、3歳児は3歳児なりに工夫したり、難しいところは小学生に手伝ってもらったりしながら自然や人とのかかわりを深めてきた。

三原(2年担任)

  • 「作って食べる」楽しみだけでなく、「人と接する楽しみ」を感じていて、とてもよい活動になった。
  • 「自分たちが作り上げたレストラン」という自信に満ちた顔が印象的だった。

原(4・5歳児担任)

  • 2学期の「乗り物で遊ぼう」は、1学期の「舟で遊ぼう」の発展として取り組んでいる。
  • 年中児は、思うようにできないと保育者に頼ることがあり、できないところは手伝ったり認めたりして励ました。
  • 年長児も乗り物やお金を作ったり、駐車場係をしたりする活動が続かない子どもへの対応が不十分だった。
協議

3歳児

  • 連携について勉強になった。幼・小が同じ建物にあるという実態を活かした活動であった。
  • 3歳児らしく、自分をだして伸び伸びと活動していた。1、2年生が3歳児の思いを大切にしながら支えていた。
  • 1、2年生の活動をじっと見て、どうしたらいいか学んでいる姿があった。
  • 日頃の1、2年生の支えの積み重ねが出ていて、連携のすばらしさを感じた。
  • 3歳児へは、次の活動の「おいもレストラン」の提示はいらなかったのでは。おいもができたときに「どうしようか?」と子ども達の思いをだしていくようにしたほうがよいのでは。

4・5歳児

  • 工夫しながらじっくりと取り組んでいる姿が心に残った。
  • 子ども達が工夫しやすい環境が整えてあって良かった。どのように素材と出会って、選んだのか過程を聞きたい。
  • 子ども達は、まだ試行錯誤の段階である。自分の工夫をしながら友達と一緒に考えたり、教師の支援を受けたりしながら遊びを展開している。
  • 子ども達の姿から「おもり」が今日のキーワードだったのでは。
  • めあてを持たせたり、見通しを持たせるための言葉がけがよかった。自然物を素材に使うともっと楽しいのでは。
  • 友だちのことをよく見ている子が多く、回りの子ども達からの声がけやヒントを活かしながら活動が進んでいた。
  • 遊んだ後の話し合いを、その「ねらい」に返るような話し合いにする必要があったのでは。
  • 今日の失敗を明日に繋げて活かすような場があると良かった。
  • めあてを持って活動すると、子どもが自然に考えて工夫して活動が出来ることがわかった。
  • 乙立ならではの保育がなされている。その中で、頑張る力、あきらめない力が育ちつつある。
指導講評
  (北陵幼稚園園長 長島一枝氏)
  • 乙立幼稚園ならではの研究主題であり、研究の内容が具体的で、日々実践しやすく評価ができる。
  • 幼稚園を支える地域環境、温かいつながりが、子どもたちが育つ上での重要な支えとなっている。
  • 幼・小の連携もしっかりできている。
  • もりもりレストランの活動は、地域の自然を利用し、1、2年生をモデルにしながら活動ができていた。
  • 今日の公開は、「もりもり科学館」へ向かっていく過程の一端の公開。
  • 素材の工夫や場の設定など、たくさんの物の中から選択する力も身に付いている。
  • 最初のねらいの言葉がけは、素晴らしかった。最後のまとめの発問が、初めの投げかけの内容に返ると良かったのではないか。
  • 教師の力量を問われている。教師自身の人間性を問われている。
  • 「科学する心」とは、幼児教育そのものであり、自分で考え、工夫できる子ども達には、科学する心が育っている。
講演 (出雲科学館館長 曽我部 國久氏)

 風船などの身近な素材やヘリウムガス、液体窒素などの普段接することのない物質を使った興味深い実験を通して、参加者の方々も体験しながら主題「科学する心を育てる」に迫るご講演がありました。

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講話 「幼小の連携・接続」 ソニー教育財団 高木恭子氏

 この度の教育基本法の改定により、学校教育は幼児教育から始まると位置づけられた。(資料より)幼児期と学童期の滑らかな接続についての課題から改定点を抜粋すると、今までの教育の「方針」から「目標」と改定された。
 小学校の生活科の内容と、幼稚園教育の領域「環境」の内容の対比から、相互の教育の関連性やそれぞれの特徴を把握することができる。幼稚園教育要領の内容は、目指す教育の観点から書かれ、小学校の生活科は、子どもたちが獲得するための指導について書かれている。幼児教育は豊かな心情や思考力の芽生えを培うことを目指している。それは、多様な体験を通じて豊かな感性を育て、創造性を豊かにすることである。小学校では、生活上必要な習慣や技能を身に付けて、自立への基礎を養うことを目指しており幼稚園と微妙に違う。しかし、自然体験や身の回りの体験を大切にすることに関しては、幼稚園と生活科と重なりがあり、相互し合える様に連携が必要と言われている。
 また、中教審でも、環境の変化による幼児教育の方向性が協議され、家庭や地域社会、幼稚園等の三者による総合的な幼児教育の推進と幼児の生活の連続性、発達や学校との連続性を踏まえた幼児教育の充実があげられた。中教審での論点は、小学校以降の生活科や学習の基盤は、幼稚園教育で培われているということであり、現行の幼稚園教育の基本である「遊び」を中心とした生活を通して、一人ひとりに応じた総合的な指導と一緒に作り上げたり成し遂げていったりするという協同性を大切にすることがうたわれている。本日の保育のレストランの活動では、関わっている小学生は、3歳児が一人でできるような添い方をしていた。3歳児と小学生が一緒に活動して、協同の中での学びだと思った。
 幼児期から学童期に入る時の問題は、環境の違いに大きな戸惑いがあることである。小学校側は、学びや生活の芽生えが幼児期から育まれているということを知って、入学時のスタートを考えてほしい。接続期のカリキュラムでは、教師の交流が不可欠である。

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