シンポジウム「科学する心を育てるには」
コーディネーター 喜多方市立塩川中学校 校長 高梨 光一 先生
パネリスト 福島大学附属小学校 教諭 渡邊 雅子 先生
福島市立岡山幼稚園 主任教諭 佐藤ミイ子 先生
みなみ若葉幼稚園 副園長 吉田 育子 先生
高梨先生:
人間としてバランスのとれた生き方をするために、幼児期の自然体験が大切だと考えられます。科学する心を育むアプローチとして、どんな配慮・工夫があるかお話ししてもらいます。
吉田先生:
本園は幼児期に直接的な体験を楽しく繰り返し行うことで、感じる心、感動する心が膨らみ、それが“自ら見て触れて、感じて、考える”力を育てるという考えで、研究を進めてきました。
疑問や感動を受け止め、深める援助・興味関心を持続させることに主眼をおき、好奇心・探究心を促すことで更なる意欲へとつなげていけるよう、日々の保育を見返りながら幼児の実態に応じた柔軟な保育計画を立て、実践しています。
佐藤先生:
「科学する心を育てる」ために、こんにゃくの栽培やひまわり畑での活動などを通して「自然とのかかわり」「人とのかかわり」「小学校との連携」の3つの窓口から、幼児の姿を見つめ、発見、驚き、感動している場面を捉え、幼児の心を揺さぶる環境構成の在り方を探ってきました。
大切なことは教師自身がどれだけ感性が豊かで、子どもの小さなつぶやきを見逃さずに受け止め、共感していけるかです。
渡邊先生:
科学というのは自分の論理に根拠をもたせることだと考え、子どもたちが直接体験できる「環境作り」と「教師の働きかけ」を大事にしています。生活科で具体的な体験をして身近な自然や社会に関心を持ち、自分の可能性を信じられるような子どもを育んでいきたいと考えています。子どもが何に気付き、どんな活動をしているのかを認め、成就感や次への見通しを持つことができるように、共感したり問い返しをしたりしながら支援しています。
質問者:
個々の子ども達の気付き以外に、例えばグループ活動などでは気付きの部分もかなり広がると思いますが、幼稚園と小学校生活科との違いも含めてお話しをうかがいたい。
渡邊先生:
一緒に活動する仲間も「環境」ですので、同じ場所と時間を共有することは子どもの中で良い循環が起こっています。友達との共通点や違いなどを視界に入れた活動は視野が広くなってくると考えています。活動の中で話し合いやぶつかり合いも出てくるので、それも大事な経験だと思います。自分なりの論理をお互いにぶつけ合って、活動の発展を求めています。
佐藤先生:
幼稚園では、グループ活動というより友達2、3人集まって、友達の体験を受けてさらに色々な発見が再確認できるということで、友達との関わりは気付きや発見にとても良い環境だと思います。
吉田先生:
若葉幼稚園の森に出掛ける時は、それぞれ興味・関心を持つことが違うので、その目的を共有してグループ作りをして探険をしています。グループに分かれると教師だけでカバーできないところがありますので、お手伝いのお母さん達にグループに入っていただいて、メモに取っていただいたりして、実際に森の中を歩きながら子ども達がどんなことに興味を持って、どんな言葉を発していたのかということを出来るだけ教師が把握して次の活動につなげられるようにしています。
高梨先生:
森や畑など恵まれた環境のある幼稚園とそうでないところがあると思いますが、そうした時に、園庭や散歩など、どんな工夫をしてどんな体験の場を仕組むか、環境構成についてお話しをお願いします。
渡邊先生:
先程お話した通り、実感を伴える原体験となるような体験がすごく大事なのかなと考えて、なるべく広範囲に触れさせてあげて、それを活用できる場所がほしいなと考えています。また、生活科で雨の日も雪の日も探険に行きますが、雨の日ならではの発見がたくさんあって、豊かな表現に結びつくのは環境設定ならではのものかなと思います。
佐藤先生:
子どもたちの心を揺り動かすような体験のために計画をしっかり立てて活動しています。
ひまわり畑での活動は地域の方々の協力あってのことなので、とてもありがたいなというところと、保護者の方々にも幼稚園で子どもと一緒に体験することが必要だなと感じるところがあり、私たちは親育てもやっていかなければと思っています。
吉田先生:
幼稚園の森は初めは手付かずだったのですが、子どもたちの活動のために色々な大人の手も加えて少しずつ森の整備を行うようにしています。この間の、若葉幼稚園の森で遊ぶ会のときも保護者の方にお手伝いいただいて森の整備を行い、炭焼きをしたり木工クラフトなど活動がどんどん広がってきているような状態です。
高梨先生:
地域の方やボランティア団体の方も上手に活用するということも1つのポイントですね。
また、保護者の方自身も一緒に子どもと体験しながら労働力としても頑張っていただく、それまた大変大事なコーディネートだと思います。
フィールドを持てないなりにこんなことで触れさせていますという例、いかがでしょうか?
小金井小学校 高久先生(意見):
本校では周りに田んぼが多い環境でして、生活科でも田んぼの周りを回って虫を見付けたりだとかそういう活動をしています。
総合学習の方では、5年生が近くに田んぼを借りて米を育てています。あまり自然環境に恵まれているところではありませんが、少しずつ工夫しながら取り組んでいるところです。
高梨先生:
「工夫」というのがすごく大事ですね。
では、「触れて感じた」後にどう「考えさせる」か、渡邊先生のお話の中に「教師の問い返し」とありましたが、見取るとか認めるとか、子どもが「考える」ためのコツはありますか?大人は「先、先」とお節介をしがちですが、どうやって我慢して子どもの言葉や気付きを待つかというところに焦点を当てて教えていただければ。
渡邊先生:
子どもの小さな気付きを逃さないようにアンテナを高くすることです。「そういう子どもの匂いがするよ」と言う先生もいるのですが、その匂いを感じ取れずにいい場面を見逃してしまうことが多いので、活動の様子を撮った写真や子どもが書いたカードなど、ありとあらゆるものを駆使して拾っていくしかないと思っています。
佐藤先生:
私もすぐ声を掛けてしまいそうになりますが、ちゃんと子どもの心を見取るまでしっかりと耳を傾けて、その幼児の気持ちを拾ってあげなきゃいけないかなと。場の状況を把握していかないと余計なお節介の言葉が出てしまうんじゃないかなと私は思います。
吉田先生:
絶えず子どもの心に寄り添えるように、子ども達の発した言葉をよく聞いたり、何をしたいのか表情をよく読みとったり、聞き逃さないように見逃さないように努力しています。
それと、園全体の教職員が一人ひとりの子ども達の成長や1日の出来事で共通理解が持てるように、子ども一人ひとりが発したつぶやきなどを気軽に情報交換をして日々の保育に生かしています。
高梨先生:
つい、情緒的な表現で流してしまうこともありますが、事実をしっかり見つめると科学的なところに繋がるものを捉えることが出来るような気がしますね。
脳科学者の茂木健一郎さんが、子どもに求められるのは「コミュニケーション能力」と「創造性」だと言っています。この2つが育つために大事なのは感情を持たせることだそうです。「その場、出くわした時に鮮やかな感情を持たせる」ためには、当然実体験・直接経験がないと難しいのです。実体験をしっかり持たせて、そして、子どもたちをその気にさせる上手な言葉かけが科学する心にも繋がるのかと感じました。
今日のお話の中でまさに創造性と共にコミュニケーション能力が高まっていく実践をたくさん聞くことができました。